秋の花とは:はじめに
世界には四季のある国がいくつもありますが、縦長で幅の狭い日本列島の四季は変化に富み、秋は一段と美しい風景となります。涼風が吹く時期から晩秋にかけて、景色を彩る秋の花はとても貴重な存在だと気づくでしょう。
今回紹介する秋の花
今回は日本を代表する秋の七草、そして秋に見かける花や樹木花など植物図鑑によく登場する花を16種類紹介します。「秋の花を知りたい」「秋咲く花選びに迷っている」という方の参考になれば幸いです。
秋の花は植物ホルモンで季節を感知?
日長が短くなると咲く秋の花
9月中旬~10月中旬、日長(にっちょう)が短くなる時期に咲く植物を短日植物といい、菊やコスモスなど秋の花は花芽形成を始めます。短日植物とは、単に日照時間が短くなって夜長になればいいというものでもなく、一定の時間が秋の花の種類ごとに決まっているそうです。
植物ホルモン「フロリゲン」
専門家の研究によれば、秋の花の花芽形成にはフロリゲン(florigen)という植物ホルモンが関係していることがわかったのだそうです。フロリゲンとは、葉が夜の長さを感知すると葉で作られ、茎経由で茎頂へ到達して受け入れられると、花芽形成のスイッチが稼働するといいます。
日本を代表する花<秋の七草>
植物名 | 別名 | 1年 | 多年 | 開花時期 | 花言葉 | |
① | ハギ | 庭見草 | - | - | 7~10月 | 思案 |
② | キキョウ | オカトトキ | ○ | 6~10月 | 永遠の愛 | |
③ | クズ | 裏見草 | ○ | 8~9月 | 活力 | |
④ | フジバカマ | コメバナ | ○ | 10~11月 | 優しい思い出 | |
⑤ | オミナエシ | ハイショウ | ○ | 6~9月 | はかない恋 | |
⑥ | オバナ | ススキ | ○ | 9~10月 | 通じ合う心 | |
⑦ | ナデシコ | ダイアンサス | ○ | 4~11月 | 純愛 |
秋の花①万葉集にも登場するハギ(萩)
マメ科ハギ属で、野山に自生し樹高2.5mほどに成長する落葉低木。赤紫色の花びら5枚が左右対称に咲くのが特徴で、葉は小葉が集合しています。ミヤギノハギやヤマハギなどの種類があり、株立ちやトンネル仕立てにすると見応えがある秋の花です。
学名 | Lespedeza |
英語名 | Bush clover |
原産地 | 東アジア、北米 |
育て方
日あたりと排水性のある土を好みます。2月末~3月中旬もしくは11~12月が植えつけ適期で、晩秋株元から切り戻すのがポイント。地植えの場合水の心配は不要ですが、2月に寒肥を与えましょう。鉢植えなら水切れに注意すれば肥料は不要です。
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秋の花②楚々とした美しさのキキョウ(桔梗)
キキョウ科キキョウ属で、茎の先端につぼみが膨らんだあと星型に開花する秋の花で、楚々とした花姿に人気があります。キキョウの根には沈咳効果のある成分サポニンが含まれ漢方処方に配合されるのだそうです。
学名 | Platycodon grandiflorus |
英語名 | Chinese bellflower |
原産地 | 日本、中国、朝鮮半島 |
育て方
肥沃な用土と日光を好みます。2月中旬~4月中旬が苗の植えつけ適期で、地植えは夏以外の水やり不要、鉢植えなら土が乾き始めたらすぐ水を与えましょう。3月に緩効性肥料を置けば、ほとんど手のかからない花です。
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秋の花③繁茂と有益性をあわせ持つクズ(葛)
マメ科クズ属のつる性木本で、つるを伸ばして他の植物や木に巻きつき、体を支えて自生する秋の花です。花は下から上へと密に咲く総状花序。繁茂し過ぎて困ることもあるクズですが、根からくず粉や漢方薬ができるという有益な側面を持っています。
学名 | Pueraria montana var.lobata |
英語名 | Kudzu |
原産地 | 日本、中国、朝鮮半島 |
育て方
生命力にあふれるクズは成長が早く、所かまわずつるを伸ばします。観賞用のクズは春に苗を植え、鉢植えでの栽培がおすすめです。栽培の手間はかかりませんが、意図しない場所へつるが伸びていないか、定期的なチェックが必要でしょう。
秋の花④花の形が袴に似ているフジバカマ(藤袴)
キク科ヒヨドリバナ属の植物で、日本には奈良時代に渡来して帰化したといいます。逆さにした花が袴に似ているのが名前の由来となりました。晩夏、長い茎の先端に藤色の筒状花を咲かせる秋の花で、茎や葉を乾燥させるとクマリン成分がもたらす芳香が特徴です。
学名 | Eupatorium japonicum |
英語名 | Boneset、Throughwort |
原産地 | 中国、朝鮮半島 |
育て方
日あたりと保湿性のある用土を好みます。植えつけ適期は3月前後で、地下茎を旺盛に伸ばすので、地植えは限られたエリアでコントロールしましょう。水を好むので、鉢植えは毎日、地植えでも数日晴天続きなら水を与えるのがポイントです。
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秋の花⑤花姿に似合わぬにおいのオミナエシ(女郎花)
スイカズラ科オミナエシ属の植物で草丈は1~1.5m、茎の先端に咲く米粒状の黄色い花が咲く秋の花です。耐寒性が高く、山野に自生します。根は乾燥させて解毒や利尿に処方されますが、花姿に似合わない臭気があるので室内向けではありません。
学名 | Patrinia scabiosipholia |
英語名 | Golden lace |
原産地 | 日本、東アジア、シベリア |
育て方
日当たりがよく、土質を選ばずに育ちます。2~3月ごろが苗の植えつけ適期で、草丈が高いので花壇の後ろに植えましょう。地下茎で旺盛に育つため、初心者の方でも栽培できる秋の花です。
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秋の花⑥季節感あふれるオバナ(尾花)
オバナとはイネ科ススキ属「ススキ」の一般名で知られる秋の花で、草丈1~2mのオバナが秋風に揺られると、日本の秋を象徴する風景となります。オバナの花穂には無数の小さい花が集合していて、羽毛をつけた種となり、遠くへ飛ぶのが特徴です。
学名 | Miscanthus sinensis |
英語名 | Japanese silver grass |
原産地 | 日本、中国、朝鮮半島 |
育て方
オバナは日あたりと風通しのいい場所と排水性のある用土を準備の上、2~3月に植えつけます。鉢植えなら8号(φ24cm)に1株を目安にしましょう。6月ごろ、株元から40cm前後の場所で切り戻して、草丈をコントロールするのがおすすめです。
秋の花⑦花姿がいろいろあるナデシコ(撫子)
ダイアンサス科ナデシコ属の植物で300もの種類があり、花色は赤、白、ピンク、紫など。軽やかな葉と花びらの先端が裂けた星のような形をしているのが魅力ある特徴です。四季咲き品種のおかげで秋の花として楽しめます。
学名 | Dianthus superbus var. longicalycinus |
英語名 | Dianthus |
原産地 | アフリカ、ヨーロッパ、北米、アジア |
育て方
日あたりと排水性のある用土を好みます。砂利が混じった土でも育つので用途に応じて種類を選びましょう。苗の植えつけは3~5月と9~10月で、四季咲き品種は梅雨や真夏の蒸れ防止に、花後高さの半分までに切り戻しが必要です。
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季節を実感させる<秋の花7選>
植物名 | 別名 | 1年 | 多年 | 開花時期 | 花言葉 | |
⑧ | キク | 家菊 | ○ | 10~11月 | 深い愛 | |
⑨ | コスモス | 大春車菊 | ○ | 6~11月 | 繊細な心 | |
⑩ | リンドウ | 竜胆 | ○ | 9~10月 | 強い正義感 | |
⑪ | ヒガンバナ | 曼殊沙華 | ○ | 9~11月 | 情熱、再会 | |
⑫ | ポットマム | 西洋菊 | ○ | 9~11月 | 清らかな愛 | |
⑬ | センニチコウ | 千日草 | ○ | 7~11月 | 永遠の恋 | |
⑭ | シュウメイギク | 秋牡丹 | ○ | 9~11月 | 薄れゆく愛 |
秋の花⑧立体感と優美さで人気のキク(菊)
キク科キク属の植物で平安時代に中国から渡来し、大輪から小輪まで多彩な花姿がある秋の花です。小さい花が集合する「頭状花序」で、立体感と華やかさがあり、バラやカーネーションとともに世界三大切り花の1つとなっています。
学名 | Chrysanthemum morifolium |
英語名 | Chrysanthemum |
原産地 | アジア東部 |
育て方
植えつけ時期は6~7月、日当たりがよく水はけのいい場所に植えましょう。地植えなら日照り以外水やりは不要ですが、鉢植えは表土が乾いたらたっぷりと水を与えます。植えつけ後2週間の摘心がポイントです。
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秋の花⑨親しみのもてるコスモス(秋桜)
キク科コスモス属の植物で、江戸時代末期に種が渡来しました。ギリシャ語のkosmos「美しい」が名前の由来だといいます。羽状葉や花が揺れる姿に風情があり、ピンクや赤のほか品種改良で生まれた多様な色で人気がある秋の花です。
学名 | Cosmos |
英語名 | Cosmos |
原産地 | メキシコ |
育て方
秋咲き品種のコスモスは、6~7月に日当たりのいい場所に種まきします。種はぱらぱらとまいたり3~4粒ずつまいたりし、発芽したら間引きしましょう。多肥は避け、1m位に伸びたら支柱を立てるのがおすすめです。
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秋の花⑩凛として群れないリンドウ(竜胆)
リンドウ科リンドウ属の植物で、野原や森林に群れることなく自生する秋の花です。草丈約1mで先端が5烈する青紫色の花を咲かせ、ササリンドウ、エゾリンドウなどは秋の花として花材にも選ばれます。
学名 | Gentiana scabra |
英語名 | Japanese Gentian |
原産地 | 日本、中国 |
育て方
種まきや植えつけは3月末~4月、市販されている「山野草培養土」を用いると便利です。春は日差しを好みますが、夏は遮光50%、秋は日を当てて育てます。水切れさせないように管理し、植え替えは1~2年ごとに行いましょう。
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秋の花⑪遠目にも華やかなヒガンバナ(彼岸花)
ヒガンバナ科ヒガンバナ属の植物。花弁が反り返る秋の花で、球根に「リコリン」を含みます。リコリンとは毒性成分ですから誤食してはいけません。真っ赤な「ラジアータ」やユリに似た「キツネノカミソリ」などの品種が有名です。
学名 | Lycoris radiata |
英語名 | Red spider lily |
原産地 | 中国 |
育て方
球根が出回る6月ごろから8月までが植え時。日光を好みますが、半日蔭でも栽培可能です。排水性と保湿性のある用土に植え、鉢植えの場合のみ適度な水やりをしながら育て、7月ごろの休眠期を経て9月に開花します。
秋の花⑫可愛くて丈夫なポットマム
キク科キク属の植物で、20世紀半ばに大輪ではなく、小さい菊を鉢植え向きにアメリカで開発されて人気が出ました。菊の英語名を略して「マム」呼ばれたそうです。秋の花として人気があり、ポンポン咲きやデコラ咲きはじめ咲き方が多数あります。
学名 | Dendoranthema × grandiflorum |
英語名 | Florist's chrysanthemum |
原産地 | 中国 |
育て方
地植えでも鉢植えでも楽しめます。植えつけ適期は3~5月で、戸外の日当たりのいい場所で育てましょう。鉢植えの水やりは鉢土が乾いたらたっぷりと与え、4~7月に摘心や切り戻しを行うのがポイントです。
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秋の花⑬スラリとしたセンニチコウ(千日紅)
ヒユ科センニチコウ属の植物で長楕円の葉と花に見える苞の隙間に小さい花を咲かせるのが特徴です。80cmほどのすらりとした秋の花で、剛健な1年草ですが、球根で約3℃で越冬する種類もあるといいます。
学名 | Gomphrena globosa |
英語名 | Globe amaranth |
原産地 | 熱帯アメリカ |
育て方
種まきは4~6月、苗は5~8月が植えつけ適期で、日光と排水性のある用土を好みます。鉢植えの場合水やりは夏場に朝夕2回、それ以外の季節は表土が乾いたらたっぷりと水を与えましょう。多肥を避け、夏前に切り戻しをするのがコツです。
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秋の花⑭優しい姿が魅力のシュウメイギク(秋名菊)
キンポウゲ科イチリンソウ属の植物。昔渡来して以来菊を思わせる優しい花姿で親しまれてきました。キンポウゲ科の宿根草で「がく」が花びらのように見えるのが特徴で、地下茎を伸ばして草丈70cm前後まで元気に成長する秋の花です。
学名 | Anemone hupehensis var.japonica |
英語名 | Japanese anemone |
原産地 | 中国 |
育て方
種まきや植えつけは3~4月が適期、半日向の場所と湿り気のある弱酸性の用土が好適です。地植えの水やりは日照り以外不要で、鉢植えは水切れに注意します。地植えは花後の切り戻し、鉢植えは1~2年ごとに植え替えしましょう。
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樹々に咲く<秋の樹木花2選>
樹木にも秋の花が咲きます。サザンカやヤツデ、シロダモが有名ですが、秋によく見かけるキンモクセイとバラをみていきましょう。
名前 | 別名 | 分類 | 開花時期 | 花言葉 | |
⑮ | キンモクセイ | 丹桂 | 常緑高木 | 9~10月 | 初恋 |
⑯ | バラ | ソウビ | 低木 | 周年 | 愛情 |
秋の花⑮秋の芳香といえばキンモクセイ(金木犀)
モクセイ科モクセイ属の木で、江戸時代に渡来しクチナシ、ジンチョウゲとともに「三香木」といわれています。常緑の高木で、秋には甘い芳香を拡散するオレンジ色の花が咲き、花を干して低血圧症や胃炎の生薬に用いられるそうです。
学名 | Osmanthus fragrans var.aurantiacus |
英語名 | Sweet olive |
原産地 | 中国 |
育て方
植えつけ適期は3~4月で日向~半日蔭の場所と、水はけのいい肥えた土を好みます。地植えは元肥だけでも育ちますが、鉢植えなら8~9月の花肥と花後のお礼肥を与えましょう。剪定は、3月花後の軽い剪定と11月の整枝剪定の2回です。
秋を彩る独特な香りが魅力、キンモクセイの花言葉をご紹介!原産地や開花時期も解説!
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秋の花⑯秋も美しい四季咲きのバラ(薔薇)
バラ科バラ属の低木で、その栽培史は紀元前の中国やギリシャまでさかのぼり、14世紀以降のヨーロッパでさらに開発されて大輪から小輪まで華麗なバラが誕生しました。一季咲きと四季咲きがあり、繰り返し開花する四季咲きが秋を一段と美しく彩ります。
学名 | Rosa |
英語名 | Rose |
原産地 | アジア、ヨーロッパ、北米など |
育て方
苗は1年生苗と2年生苗があり、12~2月が植えつけ適期です。初心者の方には育てやすい2年生苗をおすすめします。バラ用用土で8~10号に植え、根を枯らさないよう注意して表土が乾いたらたっぷりと水を与えましょう。
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秋の花とは:まとめ
秋から晩秋にかけて咲く人気の花を、秋の七草や樹木花と合わせて一覧で紹介しました。植物図鑑で写真を見ても、道路わきや公園で見過ごしていたかも知れない秋の花は、それだけ身近な存在で、種や苗から栽培も楽しめます。秋は花を愛でるのにちょうどいい季節です。縦長で季節の移り変わりを楽しめる、日本を代表する秋の花を楽しんでみてはいかがでしょうか。
秋の花が気になる方はこちらもチェック
秋の花をもっと知りたい方は、次の記事が参考になるでしょう。秋の花が持つ花言葉や名前の由来についての情報が豊富に載っています。「暮らし~の」の各季節の花に関する情報をお役立てください。
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出典:photo-ac.com