フジバカマ 苗
フジバカマってどんな花?
フジバカマという花をご存知でしょうか。決して派手な装いをした花ではありませんが、かの有名な万葉集や源氏物語に登場し、秋の七草にも数えられるなど、古くから日本人に親しまれてきた植物です。
フジバカマは元来、野に育つ丈夫な植物なので、育てるのは比較的簡単。今回は、フジバカマを元気に育てるための栽培のコツ、注意したい病害虫について詳しくご紹介します。風情ある山野草を自宅で楽しんでみましょう!
フジバカマの特徴
フジバカマはキク科の多年草で、生長すると草丈は60cm~120cmほどと大きなサイズになります。原産地は中国あるいは日本と考えられており、かつては日本各地の野に群生していました。
花が咲く時期は8月~10月頃です。すらっと伸びた茎の先に薄紫色の小さな花を房状に付けます。葉は縁がギザギザで、3つに裂けた形をしているのが特徴です。生乾きの状態になると桜餅の葉のような香りがするので、芳香剤としても用いられていました。
準絶滅危惧種に指定されているフジバカマ
古くから日本の野に根付いていたフジバカマですが、残念なことに、近年その姿を消しつつあります。フジバカマが、もともと広く自生していた場所は、湿り気のある、手つかずの河原や土手などです。
洪水対策として護岸工事が進められた現代では、自然のままの河原は減り、フジバカマが好む環境の多くが失われてしまいました。フジバカマは現在、環境省の準絶滅危惧種に指定されています。
旅する蝶アサギマダラとフジバカマ
フジバカマにはもうひとつ、注目すべき特徴があります。それは、アサギマダラという、特別な蝶に好まれる植物だということ。アサギマダラは季節によって長距離の移動を行う珍しい蝶です。その飛距離はすさまじく、日本から遠く台湾近辺まで「渡り」を行うことで知られます。
フジバカマはそんなアサギマダラが好んで蜜を吸う貴重な植物です。生態調査を兼ね、この美しい蝶を呼ぶためにフジバカマ栽培行っている地域が全国各地にあります。
フジバカマの仲間
園芸用に「フジバカマ」として売られているものには、昔ながらのフジバカマと若干異なるサワフジバカマがあります。これはフジバカマとサワヒヨドリの雑種です。茎が赤みを帯びており、花色が濃い特徴があります。
また、草丈が40cm~100cmと在来のフジバカマよりもサイズが小型で、花色が濃く、花の付き方や葉の形状が若干異なる、コバノフジバカマという種類もあります。草丈が抑えられ、葉の香りも強いことから、庭植えに好まれる種類です。
フジバカマの育て方~栽培のコツ
フジバカマの育て方(1)準備する物
ここからはフジバカマの育て方について、ご紹介します。フジバカマは暑さや寒さに強く、野に群生するほど逞しい性質をもっていますから、いくつかのポイントを押さえれば、栽培は比較的容易です。簡単に枯れることもありません。まずは、植え付け用の土と苗を準備しましょう。
日当たりは?
花を沢山咲かせるためには、フジバカマを日当たりの良い場所で育てることが大事です。日陰になる場所でも育つには育ちますが、花付きに影響が出てしまいます。お日様にしっかり当てて元気に育てましょう。
土の準備
地植えにする場合は、あまり乾燥しない場所、保水性のある土壌を選ぶことが大事です。土をよく耕し、腐葉土をすき込むなどして、肥沃な土を準備しましょう。
鉢植えの場合は、市販されている草花用培養土を用います。自分で配合する場合は、赤玉土6:腐葉土4の割合で用意し、元肥とともによく混ぜ合わせましょう。元肥には緩効性肥料を少量用います。
増えすぎ注意!
フジバカマは条件が合うと地下茎でどんどん増え広がってしまいます。あまり広げたくない場合は、あらかじめ土中に仕切りなどを埋めて置くと良いでしょう。また、生長すると草丈・横幅ともサイズが大きくなります。なるべくゆとりのある場所を選ぶといいですね。
フジバカマの苗を準備する
フジバカマを植え付ける季節は春です。2月~4月頃が適しています。この時期になったら園芸店などで苗を購入してきましょう。近所のお店で手に入りにくい場合はインターネットなどを利用してもいいですね。
フジバカマ 苗
フジバカマの育て方(2)植え付ける
植え付けの時期は2月~4月頃です。植穴を掘り、苗をポットからそっと取り出します。根鉢は崩さない方がいいでしょう。フジバカマは生長すると高さが出て横幅も大きくなるので、地植えの場合、株間を大きくとっておくことがポイントです。
鉢植えやプランターで栽培する場合は、1株1鉢にとどめ、余裕のあるサイズの鉢に植えつけるようにします。
フジバカマの育て方(3)日々のお世話
フジバカマへの水やり
フジバカマは乾燥した状態を嫌います。地植えの場合、毎日の水やりは必要ありませんが、3日以上晴天が続く場合には水をたっぷり与えましょう。水不足でしおれていないかどうか、こまめにチェックします。
鉢植えの場合は、地植えよりも乾燥しやすいので注意が必要です。水不足で最悪枯れることもありますので、雨の日以外は水やりを行うようにしましょう。
フジバカマへの追肥
地植えにした場合、植え付け後のフジバカマに追肥は基本的に不要です。しかし、大きく育てたいとき、元気がないときには液肥や緩効性化成肥料を控えめに与えましょう。
鉢植えの場合は、春から夏の生育期に緩効性肥料を与えます。肥料が多すぎると葉ばかりが茂ることになるので、控えめに施すのがポイントです。花が咲き終わったら、薄めた液肥を規定量与えましょう。
フジバカマの剪定
地植えにしたフジバカマはそのままにしておくと草丈が2m近くにまで生長します。5月~6月に全体の3分の1~2分の1の高さに剪定すると、花が咲く夏~秋にほど良い草丈で楽しめるのでおすすめです。
また、秋にフジバカマの花が終わったら、枯れた地上部を株元付近から刈り取りましょう。
フジバカマの冬越し方法
秋になって、枯れた地上部を刈り取ってしまうと、一見何もなくなってしまいます。しかし、フジバカマは宿根草なので、地面の下には地下茎が残っていて、翌年の春には再び新しい芽が出てきます。
鉢植えの場合は、冬の間も、土が完全に乾いてしまわないよう、時々水やりをしてあげる必要があります。忘れずにお世話することができれば、長い期間に渡って毎年フジバカマを楽しむことができますよ。
フジバカマの植え替え
鉢植えでフジバカマを育てていると、根がどんどん生長し、じきに鉢の中が根でいっぱいになってしまいます。根詰まりで株が弱ることがあるので、1年に1回のペースで植え替えの作業を行いましょう。植え替えの時期は新芽が出てくる前の2月~3月です。
植え替えの手順は、まず根を掘り起こし、地下茎が伸びすぎているようなら3分の1~2分の1の長さに切って短くします。その後、新しい土に元肥を加えて植えつけましょう。
フジバカマの育て方(4)増やし方は?
株分けで増やす方法
フジバカマを増やす方法としては、株分けがあります。株分けのタイミングは新しい芽が出る前の2月~3月です。根を堀り上げて切断したら、最初の植え付けと同じ要領で植えつけます。
挿し芽で増やす方法
フジバカマは挿し芽で増やすこともできます。5月~6月頃が挿し芽(挿し木)を行う適期です。夏前の切り戻しで出た茎を使うことが可能です。挿し芽の方法は、茎の先端を2~3節で切り取って挿し穂とし、下の方の葉を取り除いたら、しばらく水につけて水揚げします。30分ほど経ったら、挿し木用の用土に挿し、明るい日陰で乾燥させないように気を付けながら管理し、発根を待ちましょう。
種まきで増やす方法
フジバカマを種まきで増やす方法は主流ではありませんが、種が手に入ったら挑戦してみましょう。種まきの時期は2月~3月頃です。種まき用土に種をまき、水を切らさないように管理します。発芽率は良いので、早ければその年に開花させることができるでしょう。
気を付けたいフジバカマの病害虫
フジバカマは比較的病害虫に強い植物ですが、観賞用に育てる上で気を付けておきたい病害虫もいくつかあるのでご紹介します。
フジバカマの病害虫①うどんこ病
フジバカマを育てる上で注意したい病気はうどんこ病。うどんこ病とは、葉の表面にうどん粉のような白いカビが生える病気です。放っておくと株全体が弱って枯れることもあります。見つけ次第、病変部を取り除き、風通しを良く保ちましょう。広がるようなら、殺菌剤を散布します。
フジバカマの病害虫②アブラムシ
フジバカマにつきやすい害虫は、アブラムシです。暖かくなってくると増えやすいので、日ごろからよく観察し、見つけ次第駆除しましょう。アブラムシは植物の柔らかい部分に群がり、数が増えると植物が枯れることもあります。
アブラムシが増えてきたら殺虫剤で対処するしかありません。苗を植え付ける際に、あらかじめオルトラン粒剤などのゆっくりと長い期間かけて効く殺虫剤を土に散布しておくのも効果的でおすすめです。
フジバカマの病害虫③コナジラミ
フジバカマを育てる上で心配されるもうひとつの害虫がコナジラミです。コナジラミは、葉の裏側などにつき、植物の汁を吸汁して増える害虫になります。幼虫は淡黄色、成虫は白色ではねをもった姿です。
コナジラミがつくと植物の生育が悪くなったり、排泄物(甘露)が原因ですす病がおきるなどします。見つけたら殺虫剤で対処しましょう。発生初期ならば、成虫を捕獲できる黄色粘着テープの設置も有効です。
まとめ~フジバカマを栽培してみよう!
フジバカマの植え方からお世話の仕方、増やし方まで栽培方法を詳しくご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。もともと丈夫な多年草なので、うまく育てることができれば、あまり手をかけることなく、自然に毎年咲く花を楽しむことができるはずです。
情緒あふれる山野草、フジバカマをぜひお庭で育ててみてください。もしかしたら、あなたの育てるフジバカマに旅する蝶、アサギマダラが立ち寄ってくれるかもしれませんよ!
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