日本が発祥の国際競技・柔道の歴史をご紹介
柔道は日本で始まり、日本が国際社会に普及した歴史のある世界的なスポーツです。現在、柔道は世界中で行われていて、JUDOと聞いて知らない人はほとんどいないでしょう。
そんな世界の柔道、2021年の東京オリンピックでは金メダルラッシュの期待が寄せられています。今回は柔道の創始者の日本人の先生はだれか、どのように世界に普及していったのか、柔道の歴史が現在の柔道に伝えるものとは何か、柔道というスポーツの歴史についてご紹介します。
日本発祥の柔道が世界のJUDOとなった歴史とは?
柔道は日本起源の歴史あるスポーツです。しかし、柔道は世界のJUDOであり、日本の柔道人口よりもはるかに多くの柔道家が世界にいます。たとえば、全日本柔道連盟が報告している2019年の日本の柔道人口は15万人弱ですが、ブラジルの柔道人口は200万人、フランス柔道柔術剣道及び関連武道連盟の2019年のデータによりますと、フランスの柔道人口は56万人でした。
世界の柔道となった日本発祥の柔道、その歴史の誕生についてさっそくひもといていきましょう。
柔道の歴史の起源とは?
柔道の歴史の誕生は柔術にあり
柔道の歴史は1882年、日本古来の武術である柔術を学び、その練習を通して立派な人間を育てていくという考えに至った嘉納治五郎という先生から始まります。
嘉納治五郎先生は、歴史の古い柔術を学び、そこで技術と指導の体系を確立させました。つまり「術」は「道」があってこそ生まれるとの考えから、柔術から柔道という名をつけたといわれています。柔道の歴史の誕生はここから始まりました。
柔道の歴史の誕生は東京都台東区の永昌寺
嘉納治五郎先生が柔道教室を始めたのが、現在の東京都台東区にある下谷永昌寺です。友人や門弟とともに敷地内の空き地に12畳の道場を建て、そこで柔道教室が創設され歴史的なスタートを切りました。初年の生徒数は9名だったといいます。
現在でもこの歴史的な地を訪れることが可能です。永昌寺の境内の一角に「講道館柔道発祥之地」と刻まれた石碑があります。なお、永昌寺は浄土宗の寺院で、その起源は1558年と歴史が古い寺院です。
永昌寺
- 住所〒110-0015
東京都台東区東上野5丁目1-2 - 電話番号03-3841-5289
- アクセス銀座線 稲荷町駅→徒歩1分、日比谷線 上野駅→徒歩4分、都営大江戸線 新御徒町駅→7分東西めぐりんバス 台東区役所→徒歩3分
世界中の柔道家が訪れたい講道館とは
世界中の柔道家が、日本で真っ先に訪れたいという場所が講道館です。講道館は、柔道について知識のある方であればだれもが知っている場所ですが、ともすると日本人であっても聞いたことがないという方もいらっしゃるかもしれません。
講道館とは柔道の創始者である嘉納治五郎先生が柔道を研究し、その道を講ずるための館として創設された歴史ある場所で、現在では東京都文京区にあります。講道館では柔道を学べるほか、柔道の見学、柔道関連グッズの購入も可能です。
講道館
- 住所〒112-0003
東京都文京区春日1-16-30 - 電話番号03-3811-7152
- 公式サイトURLhttp://kodokanjudoinstitute.org/
- アクセス都営地下鉄三田線/大江戸線春日駅下車(出口A1・A2)徒歩1分、東京メトロ南北線後楽園駅下車(出口6)徒歩3分、東京メトロ丸の内線後楽園駅下車(出口3)徒歩3分、JR中央線・総武線
水道橋駅下車徒歩...
大阪にも講道館はある
講道館は、大阪にも柔道センターを有しています。講道館大阪国際柔道センターです。こちらの講道館も、東京の講道館と同様に、海外からの柔道家も多く訪れる場所となっています。しかも、京都などの観光と合わせて、日本の柔道を体験する旅行者もたくさんいらっしゃるようです。
講道館を訪れると、柔道がいかに国際的なスポーツであるかがわかります。もちろん日本の柔道家もここで学び、ここで精進していることは歴史を振り返ってもわかります。
講道館大阪国際柔道センター
- 住所〒536-0022
大阪市城東区永田4-15-11 - 電話番号06-6961-0640
- アクセス地下鉄中央線「深江橋」1号出口より北へ200m
柔道の歴史を築いた嘉納治五郎先生とは
名家に生まれた虚弱な神童
柔道の歴史を誕生させた嘉納治五郎先生は、兵庫県の名家に生まれました。実家は酒造や廻船業で名高く、東京で勉強する機会を得て上京し、東京大学に入学するほどの秀才だったそうです。
ただ、学生のころから体が弱く、非力な者でも相手を倒せる柔術に関心を持ち、家族に反対されながらも柔術を学ぶようになりました。柔術のこの教えこそ、柔道においてもその基本的な考えを同じくする「柔よく剛を制す」という歴史ある基本に通じています。
「柔よく剛を制す」の歴史的な意味
この表現は、歴史的には古代中国の老子の思想を基調に書かれた兵法書である『三略』の一説、「軍神に曰く、柔は能く剛を制し、弱は能く強を制す」が由来です。これは、柔らかいものは弱そうであるが、そのしなやかさでかえって硬くて強いものを制することを意味します。
つまり、相手の力を利用し、小さい者でも大きな者を制することができるという柔術や柔道の神髄を言い当てた表現です。この考えを道へと昇華させ、嘉納治五郎先生は柔道の父と呼ばれるようになりました。
「精力善用・自他共栄」という歴史的な教育者としての名言
このふたつの言葉は、柔道の起源となった嘉納治五郎先生による歴史的な言葉です。「精力善用」とは、柔道の修行によって磨かれていった力は、相手を負かせることに使うのではなく、世の中に役立つためにその力を使うように諭した教育的な言葉といえます。
また、「自他共栄」とは、相手を信頼し、助け合うことによって、お互いに栄えることができるという意味で、この精神で柔道を修練することこそ大切だという嘉納治五郎先生の教育指針のひとつです。
日本のスポーツの道を開き教育に従事
柔道誕生の父、嘉納治五郎先生は、教育者としても尽力されました。中でも、日本ではじめて留学生に日本語教育を行い、のちの中国文学革命の旗手となる魯迅も学んだ学校を創設するなど、歴史に残る国際的な事業にも従事されたとのことです。
また、日本のスポーツ界においては、1909年、東洋ではじめての国際オリンピック委員会の委員となり、1912年には日本が初めて参加したオリンピックに団長として参加するなど、世界を舞台に多大な貢献をしました。
柔道が普及された歴史とは?
戦前の柔道普及の歴史
日本で始まり、誕生した歴史ある柔道は、次第に従事者の人数を増やしていき、1931年から正式に学校でも必須科目として行われ始めました。また、警察などでも採用され、地域での対抗試合や全国規模の大会などへと日本全国に普及していったのです。
一方、国際社会においては、海外の柔道家が講道館の門をたたき、修行を積み、自国で柔道を普及させていったとされています。さらに、海外からも日本の指導者を派遣してほしいという声が高まり、国際交流もはじまりました。
戦後の柔道の発展の歴史とは
世界的なスポーツとして普及していった柔道は、第二次世界大戦直後、武道禁止の命によって学校での柔道が禁止されてしまいます。しかし、戦後の最悪な状況にあっても、柔道愛好者が稽古を再開するなど、自発的な活動は行われ続けていきました。
こうして1948年、全日本柔道選手権大会が始まり、翌年には全日本柔道連盟が結成されるなど、戦前以上に柔道は全国的に普及していきました。この勢いは国内にとどまらず、世界へと羽ばたいていったのです。
柔道の世界への普及と国際柔道連盟設立
世界においても柔道は組織化され、普及していきました。1951年に創立した国際柔道連盟は、元はヨーロッパ柔道連盟で、アルゼンチンの加盟申請から結成され、1952年には全日本柔道連盟も加盟されるに至ったのです。
この国際柔道連盟は、アフリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、南北アメリカの柔道連盟を下部組織として現在に至ります。この柔道の歴史の流れこそ、柔道をオリンピック競技へと進化させる大きな礎となっていくのです。
柔道の歴史を変えた1964年の東京オリンピック
幻の東京オリンピックにそもそもの発端が
1964年に開催された東京オリンピックは、柔道のオリンピック競技としての歴史の起源ともなる競技会でした。そもそもの発端は、1940年に開催が予定されていた東京オリンピックです。この東京オリンピックが開催されていたら、史上初のアジアで開催されたオリンピック大会で、柔道が公開競技として採用が決定されていたのです。
しかし、日中戦争などの歴史の影響で日本政府がオリンピックの開催権を返上し、競技会そのものが開催されませんでした。
柔道が正式にオリンピック種目になるまで
戦後、柔道はオリンピックの種目となるべく検討されてきました。まず1959年の国際オリンピック委員会総会にて、1964年の東京オリンピックの開催が決定されます。そして、1960年の国際オリンピック委員会総会にて、柔道がオリンピック種目して正式に決定されるのです。
こうした歴史を踏まえて、1964年のオリンピックでは男子柔道が競われました。次の1968年のオリンピックでは柔道は除外されましたが、1972年から再実施されています。
女子柔道は1988年のソウルオリンピックから
ところで、女子柔道の歴史は、1988年のソウルオリンピックが起源となっています。この年、女子柔道は公開競技となりましたが、翌1992年のバルセロナオリンピックでは正式採用されました。
なお、2020年のオリンピックからは男女3名の混合団体戦が実施されるようになります。すでに柔道世界選手権では東京オリンピックと同じスタイルで行われていますが、オリンピックとしての新種目に注目が寄せられています。
2009年からランキング性が導入
2009年以降の柔道の国際大会において、ランキング制度が導入されるようになりました。これにより、それぞれの大会の成績が各選手にポイントとして与えられるようになったのです。
このランキング制度により、選手たちは過去の実績よりもそれぞれの国際大会で成績を残してポイントを獲得することでランキング入りすることが重要となりました。しかし、何らかの理由で国際大会に出られない選手には不利になるなどの問題点も指摘されています。
歴史ある柔道のこれからについて
柔道は1882年に嘉納治五郎先生が誕生させて以来、長い歴史とともに現在まで歩んでいます。そんな柔道の歴史を受けて、これから柔道をウォッチしたり柔道に従事したしたりする方が注目するべき点について確認していきましょう。
柔道の技は日本人にとってわかりやすい
柔道は日本発祥のスポーツであることからも明らかなように、技などの名称がすべて日本語となっています。つまり、日本人にとって非常にわかりやすいスポーツなのです。たとえ細かい技のポイントがわからなくても、技の名前を聞けばそれがどの部位の技なのか、何となくわかります。
たとえば「出足払い」と聞いたとき、出てきた足を払うのかなと想像できるのは日本語だからこそのなせる業です。柔道ウォッチの際、技の名前に注目すると観戦が楽しくなります。
柔道を通して世界中に友だちができる
柔道は世界中で親しまれています。柔道を通して日本に興味を持つ人も多く、柔道がきっかけで世界中の人たちとの交流が深まる機会は意外と多いものです。子どものころ、柔道を習ったことがあるという人も多く、柔道を介して友情が芽生えることも少なくはありません。
海外の人たちとの交流に関心のある方は柔道について覚えておくと、出会いのきっかけになるかもしれません。柔道の歴史を少し見直しておくことをおすすめします。
柔道観戦が楽しくなりつつある
ほかのスポーツ競技と同じように、柔道でも決まり技をスローモーションなどで見ることができるようになりつつあります。360度カメラなどが導入され、技をわかりやすく解説してくれることで、さらに柔道というスポーツを楽しく観戦することができるようになりました。
柔道は歴史を重んじるスポーツでもありますが、このように新しい観点から楽しめるスポーツとしても大きく前進しているということを忘れないでいたいです。
柔道の歴史を知って柔道観戦を楽しもう!
日本発祥のスポーツである柔道には、140年近い歴史があります。嘉納治五郎先生が発案し、多くの柔道家たちに教え、その教え子たちがそれを受け継ぎ、今日まで歴史を築いてきました。
そんな歴史を簡単に振り返りながら柔道の試合を観戦すると、さらに深く柔道というスポーツを楽しむことができるのではないでしょうか。東京オリンピックをはじめ、柔道世界選手権など、さまざまな試合が観戦しやすくなった昨今、ぜひ柔道の歴史を感じながら観戦を楽しみましょう。
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柔道だけではなく、ほかのオリンピック競技についてもっと知りたいという方は、こちらの記事も参考にしてみてください。それぞれに細かいルールがあり、観戦する際も実際にやってみる場合も、知っておくと楽しみ方も深くなります。

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