ウインドサーフィンとは?
1967年、あるヨットマンとサーフィン愛好家が出会います。彼らはヨットとサーフィンの未来に限界を感じ、ヨットより手軽に、サーフィンより自由に海を走り回れるものができないかと考えました。
そして双方のメリットを活かして生まれたのが「ボードセーリング」というスポーツ、のちの「ウインドサーフィン」でした。
ウインドサーフィンとヨットとの違い
ウインドサーフィンとは、船体である「ボード」に、推進力となる風を受けるための帆「セール」を取り付けたボート、あるいはそれを使って行うスポーツのことです。
一見ひとり乗り用のヨットですが、ボードはサーフィンボードと基本的に同じもの。セールは360度回転するようにできており、ヨットのように自立しません。そのため、ウインドサーフィンはサーフィンのように立って乗り、手を離せば水の上に倒れてしまうセールを自分の手で支えて操縦します。
ウインドサーフィンのここが魅力
ウインドサーフィンのいいところは、まずサーフィンのように沖で波待ちをしなくていいところです。もちろん無風では乗れませんので、風を待つ必要はあります。しかし、風さえあればヨットのように岸から沖まで出て行けるので、より広いエリアでよりたくさんの時間を海上や湖面で使えるのです。
さらにウインドサーフィンは組立て式なので、1番かさばるボードさえ車に積み込めれば、自前の道具でどこへでも出かけられるというメリットもあります。
ウインドサーフィンは乗り方いろいろ!
ウインドサーフィンはいろいろな乗り方があるのも魅力です。ここでは人気の競技4つをご紹介しましょう。
コース
規定の周回コースで複数回レースを行い、その点数を競うのがコース競技です。オリンピックのウインドサーフィン競技もこれに当たります。
スラローム
コースに似ているのが、ジグザグに設置されたブイをかわしながら走るスラロームです。コースがほぼ円を描いて戻って来るのに対し、スラロームは方向転換を繰り返しながら長い距離を駆け抜けます。
ウェイブ
サーフィンのような波乗りだけでなくジャンプやループ(前後方向の回転技)技を競うのがウェイブです。大波に乗ってジャンプしたときの高さはゆうに5メートル!風を利用するウインドサーフィンならではの競技といえるでしょう。
フリースタイル
水面を高速で滑走しながら技を繰り出すのがフリースタイルです。ウェイブのように大波を使わず、強風の中小さな波や瞬間の風を捉えて飛び上がり、ループやスピン(横方向の回転)、トランジション(方向転換)などの技を競います。
ウインドサーフィンの醍醐味は?
車を運転する方は、教習所で「ハイドロプレーニング現象」について習ったのを覚えていますか?雨の日に高速走行すると、タイヤと路面に水の膜ができて車が浮いた状態になり、横滑りして危険なので注意するようにと習ったはずです。
しかし、ウインドサーフィンの世界では、この横滑りする状態で水上を滑走することを理想とします。ですから新米のうちは、誰もがプレーニングを目指して練習するのです。
プレーニングが叩き出すパワーとは?
ではプレーニングができるようになると、どのくらいスピードが出るのでしょうか?
例えばオリンピック級のレースでは、時速数十kmから50㎞。そして特殊条件下での最高記録はなんと時速98.66kmです。まるで車並みのスピードですが、体感速度はさらにその2~3倍といわれています。
まだあるウインドサーフィンの魅力!
競技を目指すならプレーニングの技術は欠かせませんが、難易度は比較的高くそれほど簡単ではありません。しかし、ウインドサーフィンの魅力は速く走るだけではないのです。
例えば隣の島まで遠乗り(ツーリング)をするという楽しみ方もあります。また風のない日にはセールを倒して簡単な筏を組み、波に揺られておしゃべりしたり水に飛び込んで水遊びをしたり、仲間同士のんびりするのも楽しみ方の1つです。
ウインドサーフィンの最大の魅力は自然と一体になれること
しかし、最も大きな魅力は自分の体1つで自然と向き合うことでしょう。
風をうまく捉えられたときはなおのこと、波や風に翻弄されているときには、ぐずぐず細かいことを考えているヒマはありません。必死で格闘しているうちにいつしか日頃の疲れが飛び、心が自由になっていることに気が付くはずです。
オリンピックにおけるウインドサーフィン
実はウインドサーフィンはセーリング競技の1種目として扱われているため、「セーリング競技」「RS:X級」で探さないとなかなか見つかりません。
「セーリング競技」については後ほど説明しますが、「RS:X」はウインドサーフィン用ボート(ボードとセール)の型のことです。公平性を期すために規格を統一したもので、全長2.86m・幅0.93m・重さ15.5kgのボートを使用することを意味します。
「セーリング競技」とは?
「セーリング」とは、動力を使わず帆に当たる風の力を利用して水上を航行していくことで、ヨットがその代表例です(海外では帆のない動力付き大型クルーズ船もヨットと呼ばれます)。
オリンピックも始めはヨットレースだけでした。その後ウィンドサーフィンなどヨット以外のボートが競技に加わるようになり、セーリング競技と呼ぶようになったのです。
オリンピック東京2020大会の競技種目
オリンピックで使われるセーリングボートの型は8種類です。しかし男女別の競技がありますので、種目としては、1人または2人乗りヨット:男/女7種目、2人乗り双胴船(カタマラン):男女混合1種目、ウインドサーフィン:男/女2種目の10種目となります。
ウインドサーフィン「RS:X級」は東京大会まで!
RS:Xは幅広い風速域で乗れるため、競技が無効になりにくいボートです。その一方、微風時は体力のある選手に有利で、オリンピックに参加するためにはどうしても年齢や体力などの制限がありました。
そのせいか2019年の選考会では、次世代型のIQフォイルが選ばれ、RS:X級は今大会で見納めとなります。
次回大会で使われる「IQフォイル」級とは?
「フォイル」とはフィンの一形態で、模型飛行機のような形をしています。これに水が流れると、飛行機と同じ上に浮かぼうとする力が生まれるので、走り出すとボードごと水から浮上するのです。
水の抵抗が減るという最大のメリットにより、パフォーマンスを格段に向上させたフォイル。パリ2024大会では波もなく海上を飛ぶ、新しいウインドサーフィンの形を見ることができるでしょう。
ウインドサーフィンを始めるなら
難易度は?
ウインドサーフィンは一見難しそうに見えますが、敷居はそう高くなく、ほとんどの方は1日で乗れるようになるようです。練習すれば、中程度までなら比較的楽に上達することができるでしょう。
しかし、間口が広く、奥はさらに広くて深いのがウインドサーフィンです。それ以上を目指すとなると、難易度がぐっと上がります。
何歳から始められる?
年齢制限はありませんが、手が届かなければセールを操ることさえできません。しかし、身長が1mあれば一応子供用ボートで練習を始められます(※スクールによる)。
ですが、3歳ごろから始めたというトップパフォーマーも少なくありません。最初は両親に連れられてボードの上で波に揺られているだけでも、十分なのではないでしょうか。
オリンピックをいいきっかけに!
ウインドサーフィンの魅力はたくさんあって、ここではご紹介し切れません。しかし今年は1年遅れとはいえオリンピックイヤー!ウインドサーフィンは男女とも予選が7月25日26日と28日29日の四日間、決勝は31日土曜日に開催される予定です。この機を逃す手はないのではないでしょうか。
日本からは富澤慎選手と須長由季選手が出場します。テレビのプログラムでRS:X級のレースを見つけたらぜひチャンネルを合わせてみてください。そして日本代表を応援しつつ、その魅力の一端に触れてみませんか?
ウインドサーフィンに興味を持った方はこちらもチェック!
「海っていいな。でもウインドサーフィンは少しハードルが高いかも…」という方には、もっと気軽に海と親しめる「SUP(サップ)」をご紹介いたします。サーフィンより手軽で、ウインドサーフィンへの道しるべにもなる「SUP」。ぜひこちらもご一読ください。
SUP(サップ)って何?その意味や魅力など話題のマリンスポーツを徹底紹介!
SUP(サップ)という新しいマリンスポーツをご存知ですか。聞いたことはあるけど、具体的な意味や使い方は知らない人も多いでしょう。SUPとは専...
SUP(サップ)の魅力とは?その楽しみ方と体験できるスポットや持ち物をご紹介!
SUPを体験したことがありますか?ボードの上に立って乗るのは難しそうですが、乗り方をマスターすればいろいろな楽しみ方を体験できます。本記事で...