オリンピック新競技!スポーツクライミングとは
2020年に開催される東京オリンピックで、新たに行われることになったスポーツクライミング。新種目追加のニュースによってその競技を知った方も多いのではないでしょうか。 日本国内の競技人口は現在60万人ほどで、年々増加傾向にあります。人気急上昇中のスポーツクライミングとは一体どんな競技なのか、早速見ていきましょう!
スポーツクライミングの発祥と種類って?
フリークライミングが元となっている
フリークライミングとは、命綱などの用具で安全性を確保しながらも、自力で岩壁を登っていくことを言います。登攀の成功よりも、その過程を楽しむという趣旨が強いのが特徴です。 スポーツクライミングは、よりこの趣旨に着目し改良されて誕生しました。危険の多い自然壁ではなく、人工壁で競技が行われます。最近では屋内に作られたクライミングジムも人気を集めています。
スポーツクライミングには種類がある
スポーツクライミングが競技として生まれたのは、20世紀半ばのことだと言われています。当時ソビエト連邦で行われた大会では、いかに早く壁を登れるかというスピード重視の競技が行われました。 その後ヨーロッパやアメリカでも競技人口が増えていき、現在では「リード」「ボルダリング」「スピード」の3種目でそれぞれ競技が行われています。種目の特徴の違いについて詳しく見ていきましょう。
持久力が要の「リード」って?
そびえ立つ壁に立ち向かう選手の姿が印象的
「リード」という種目は、定められた制限時間内に到達できた高度を競い合います。3種目の中で最も長い距離を登攀するため、見る人を圧倒するような十数メートルの高い壁が印象的です。 選手たちは命綱を付けていますが、そびえ立つ壁を登っていく姿は見ていて少しひやっとします。壁に下げられたクイックドローにロープをかけ、なるべく力を温存しながら攻略していきます。
短時間で戦略を立てることもポイント
「リード」では、毎回異なるルートが作られます。選手はアイソレーションという場所で待機し、競技直前までルートを確認することができません。また他の選手の登攀を見ることも禁止です。 競技直前に、オブザベーションというルートを下見する時間が設けられます。「リード」の選手には持久力や技術力に加え、短時間で効率の良い戦略を組み立てる力が必要になります。
「リード」の点数はどうやって決まる?
「リード」のオブザベーションは6分間、競技時間は8分間に設定されています。制限時間を超えるほか、落下や反則をした場合はその時点で終了というルールです。 点数は、到達したホールドの番号によって決まります。下から順番に番号が振られていて、20番目のホールドまで登った場合スコアは「20」となります。 21番目に触れたものの落下した場合はより点数が高くなり、スコアは「20+」です。
「ボルダリング」はチェスに似ている?
ロープを使わずに行う「ボルダリング」
ジムが各地に作られ、競技人口が伸びている人気の種目がこの「ボルダリング」です。ロープを使わずに、身体一つで5mほどの壁を登ります。 「ボルダリング」は課題と呼ばれるルートを、制限時間内にどれだけ多く完登できたかを競います。落下した場合に備えて、命綱の代わりに地面にマットを敷いて行います。
「ボルダリング」は難易度が高い?
5メートル以内の比較的低い高度で行う種目なので、初心者でも気軽に楽しめると評判の「ボルダリング」。しかし、3種目の中で最も高い技術や身体能力を必要とする競技だと言われています。 全身の筋肉を最大限に活用しダイナミックな動きで登るため、身体にかかる負荷も大きくなります。短いオブザベーションの間に、いかに早く完登するか作戦を練るトレーニングも必須です。
「ボルダリング」のルールとは?
「ボルダリング」も「リード」と同様に、アイソレーションとオブザベーションが設けられます。完登すべき課題は4つあり、オブザベーションはそれぞれ2分間です。 競技時間4分の間に、課題をいくつ完登できたかで勝敗が決まります。制限時間内であれば、何度でも挑戦できます。 またボーナスが付くホールドが4つ設定されており、そのホールドを保持することでよりスコアが高くなります。
点数が並んだ場合のルールも細かく決められている
スコアは「完登数/完登に要したトライ数」で示されます。3つの課題を5回で完登した場合は「3/5」です。同様にボーナスポイントも「ボーナス数/ボーナスに要したトライ数」で示します。 完登数が同じ時はそのトライ数を比べ、さらに同じならボーナス数、さらにそのトライ数と順に比べていき、より数が少ない選手から順位が決まるルールです。
あっという間に壁を登る「スピード」
「スピード」はあらかじめルートが決まっている
「スピード」はその名の通り、最も速く壁を登れる人を決める競技です。10メートルや15メートルの壁を、重力を感じさせない動きで駆け上がります。試合は1対1の勝ち抜き式で、ゴールにあるパッドをより早く叩いた者が勝ちです。 ルートはあらかじめ設定されていて、どの大会も全て統一されています。そのためオブザベーションはなく、選手は練習でルートを身体に覚え込み、大会に臨みます。
速いだけではダメ!精神力を問われる「スピード」
壁を登る速さを競う「スピード」ですが、良いタイムを叩き出すためには技術や身体能力はもちろん、強い精神力も必要になってきます。1対1の隣り合わせで競技が行われるため、相手の威圧を全身に受けるからです。 相手がどんな選手でも構わず、自分の登攀に集中できるかどうかが、レースの勝敗を分ける一つのポイントとなります。
「スピード」のルールをご紹介!
「At your marks」「Ready」の掛け声に従って位置につき構えます。その後、ランプの点灯を合図にスタートを切ります。1つの大会でフライングを2回してしまうと失格というルールです。 タイムはコンマ数秒の僅かな差を競って争われます。15メートルの壁を登る場合、男子は5秒台、女子は7秒台で一気に駆け上がります。
競技会の歩みと日本人選手の活躍とは?
90年代から国際大会が盛んになる
スポーツクライミングの国際大会が初めて行われたのは、1989年のことです。このワールドカップが開催されたことをきっかけに、世界選手権やユース選手権など、数々の国際大会が行われるようになりました。 種目もはじめは「リード」のみとされていましたが、徐々に知名度を上げて現在の3種目に定着しました。スポーツクライミングは、まだまだ発展途中の新しいスポーツなのです。
オリンピックでは複合種目が行われる?
東京オリンピックで用いられるルールは、まだ明確には決まっていません。現在提案されているのは、1人の選手が3種目全てを行い、総合的に順位を決めるという複合種目です。 最終的なスコアは、3種目の順位の掛け算で出されます。スコアの数字が最も少ない者が金メダルを手にすることができるというルールです。これからさらに検討されて、新たなルールが作られることも考えられます。
日本は古くからのスポーツクライミング強豪国!
国内ではまだまだ知名度の低いスポーツクライミング。実は日本は、古くからの強豪国なのです!1991年に行われた初めての世界選手権大会では、平山ユージ選手が銀メダルを手にしました。 国際大会を主催する「日本山岳・スポーツクライミング協会」も早くに作られ、選手たちをサポートしています。しっかりした体制を整えることで、オリンピックでいい結果を残すことにつながるでしょう。
日本は「スピード」が弱い?
日本は世界屈指の「ボルダリング」の強豪国です。国別ランキングでも4年連続で1位となっています。一方国内には「スピード」の練習環境が整っている場所が少なく、複合種目を行うオリンピックを迎えるにあたって懸念材料となっています。 ユース世代の選手たちは日本代表になることを見据えて、3種目を均等に鍛えバランス良く力をつける取り組みが始まっています。2020年以降のオリンピックにも期待できそうですね!
期待が高まる!スポーツクライミング女子注目選手
華麗な身のこなしは必見!野口啓代選手
ワールドカップや世界選手権で何度も優勝している、実力ある選手です。小学校6年生の時の全日本ユース選手権で、中高生を抑え優勝したことで脚光を浴びました。 2016年シーズンでは、ボルダリングの世界ランキングで4位につけています。オリンピックの日本代表候補として期待されている1人です。
若手世代を代表する野中生萌選手
父親の影響でスポーツクライミングを始めたという野中生萌(みほう)選手。主にボルダリングを得意とし、数々の国際大会で優秀な成績を残しています。 1997年生まれの野中選手は、東京オリンピックの際は23歳ということで、体力的にも精神的にも力が発揮しやすいだろうと注目されています。
実力派揃い!スポーツクライミング男子注目選手
「リード」で金メダル!是永敬一郎選手
2017年10月、「リード」種目のワールドカップで是永敬一郎選手が優勝し、日本人3人目となる快挙を成し遂げました。1996年生まれで、若手選手の中でも注目の1人です。 日本は「ボルダリング」が強い国ですが、是永選手は今の日本の「リード」を牽引している人物と言えるでしょう。3種目の総合力が必要となるオリンピックでは、力ある代表として活躍するだろうと期待が高まっています。
高い身体能力の持ち主!楢﨑智亜選手
是永選手と並んで日本代表候補として注目されているのが、楢崎智亜選手です。世界選手権で日本人初の優勝を収めた実力者で、「リード」に加え「ボルダリング」「スピード」にも積極的に取り組んでいます。 年間総合チャンピオンでもあり、オリンピック日本代表はもちろん、金メダル候補として最も近い人物の1人と言えます。
藤井快選手は「ボルダリング」で連覇達成!
主に「ボルダリング」を得意とする藤井快(こころ)選手は、ジャパンカップで初連覇を果たした人物です。「リード」や「スピード」にも精力的に取り組み、優秀な成績を残しています。 難しい課題にも最後まで食らいつくなど、強い精神力の持ち主です。東京オリンピックでも代表として活躍が期待されます。
世界で活躍するスポーツクライミングの選手とは?
「スピード」の記録保持者!ボルディヤフ選手
2014年の世界選手権で、スポーツクライミングのファンを震撼させる出来事がありました。ウクライナのダニエル・ボルディヤフ選手が、「スピード」競技で5秒60の世界新記録を樹立したのです。この記録は2017年現在も未だ破られず、功績として讃えられています。
アメリカで大活躍!白石阿島選手
アメリカで素晴らしい成績を収め、オリンピックに向けて注目されている選手がいます。白石阿島選手は「ボルダリング」で、なんと全米ジュニア選手権4連覇を達成しました! 2001年生まれのかわいい女の子ですが、その実力は折紙付き。代表として選ばれた場合、日本とアメリカのどちらの選手として出場するかは分かりませんが、その雄姿を純粋に応援したいですね。
スポーツクライミングを応援しよう!
いかがでしたか?スポーツクライミングのルールや注目選手についてご紹介しました。日本国内の知名度はまだまだ低いですが、オリンピックをきっかけにもっと身近なスポーツになるといいですね! ルールが分かるようになると、競技を見るのがより楽しくなります。スポーツクライミングをより理解して、日本代表選手をみんなで応援しましょう!