池塘(ちとう)の鑑賞は山登りの醍醐味
山上にある池塘は神秘的な雰囲気で、登山者たちの心身を癒してくれます。周辺には夏には高山植物が咲き、秋になると草紅葉とのコラボレーションもきれいです。また、池塘に青空や夕陽が映り込む姿は、絶好のシャッターチャンスとなるでしょう。
以下では池塘のある山の楽しみ方を解説し、おすすめの登山スポットを東京都心から日帰り・宿泊に分けてご紹介していきます(本記事は2022年9月20日の情報をもとにしました)。
池塘の特徴&楽しみ方
1.池塘の成り立ちについて
池塘とは高層湿原にできた湖沼のことです。高層湿原は枯れた植物が完全に分解されずに堆積したドーム状の地形で、数千年もの長い時間をかけて形成されます。そのドーム状の部分にくぼみができて、雪解け水や雨水がたまることで池塘が作られるのです。
池塘は植物を分解する微生物が少ない気温の低いエリアに多く、国内では北海道や本州の中部地方以北を中心に分布しています。
2.一般的な池や沼との違いは?
一般的や池や沼は上流の川から水が流れ込んで形成されされたもので、川に由来する多彩な生き物が生息しています。一方で、池塘の底にある泥炭には栄養分が少なく、成り立ちからもわかるように川などからの栄養分も流れ込まないため、生き物や植物が少ないのが違いです。
3.池塘の魅力とは
通常の山は標高が高くなるほど植物が少なくなり、殺伐とした風景になっていきます。ですが高層湿原は一般的な植生とは違い、険しい道を上った先にあるので、ギャップを楽しむことができるでしょう。
鏡のように青空や夕焼けを映し出す姿や、霧がかかった幻想的な景色など、季節や時間帯によって、さまざまな変化を見せてくれるのが池塘の魅力です。
4.登山の装備で安全な湿原散策を
池塘の周辺には樹木が少ないため見晴らしがよく、高山植物や草紅葉の絶景を見渡すことができるでしょう。また、木道が整備されている登山スポットも多く、初心者でも気軽に楽しむことができます。
ですが、標高は高いので防寒ができる服が必要です。通常の登山コースに比べて地面が濡れている箇所が多いため、滑りにくいトレッキングシューズを着用しましょう。また、紫外線や雨への対策も忘れずにお出かけください。
都心から日帰り登山ができる名所2選
1.苗場山(なえばさん)
苗場山は新潟と長野にまたがる標高2145mの山です。日本百名山にも選ばれ、多数の登山道が整備されています。山頂付近の稜線上には約4㎞四方の平坦な湿原が広がり、約3000か所もの池塘があるのが特徴です。
初夏からはワタスゲやヒメシャクナゲといった多彩な高山植物が咲き、秋になると大規模な草紅葉を鑑賞できるのも苗場山の魅力となります。山頂からは、晴れた日には富士山や日本海までの眺望を満喫できるでしょう。
池塘を満喫できるおすすめコースはこちら
苗場山の日帰りの定番は秡川(はらいがわ)コースで、登山口駐車場→和田小屋登山口→下ノ芝→中ノ芝→上ノ芝→神楽ヶ峰と経由するルートです。夏から秋にかけてはかぐらスキー場のリフトが登山用に運行され、登山時間を1時間短縮できます。
コースは木道が整備された区間が多く、初心者でも快適に登山ができるでしょう。エメラルドグリーンの田代湖を眺めながら登っていくと山頂に到着し、広大な湿原や池塘の散策を堪能できます。
基本情報
苗場山
- 住所〒949-6212
新潟県南魚沼郡湯沢町三国 - 電話番号025-784-4850(湯沢町産業観光部観光商工課)
- アクセス関越道・湯沢ICから車で約40分(祓川登山口駐車場)
2.至仏山 (しぶつさん)
スマホで撮影した写真を少しアップしますね。これはオヤマ沢田代。 pic.twitter.com/cqgG2N7NTi
— ぱぐずきん (@Lapulove) September 25, 2016
至仏山は群馬県の尾瀬国立公園のなかにあり、日本百名山にも数えられる人気の登山スポットです。山全体が蛇紋岩からなる珍しい地形で、「オゼソウ」などの固有種を含めた多彩な高山植物を鑑賞できます。
ふもとの尾瀬ヶ原には約1800か所もの池塘があり、展望スポットからは池塘群の全貌を俯瞰することができるでしょう。登山ルート中の稜線には「オヤマ沢田代」という湿原は、木道から間近に池塘を観察できる名所です。
山登りと湿原を満喫する欲張りなコース
登山と湿地散策の両方を楽しむなら、上ノ大堀川橋を経由して登頂するのがおすすめ。鳩待峠→山ノ鼻→上ノ大堀川橋→山ノ鼻→至仏山山頂→小至仏山→鳩待峠と周回してみましょう。
上ノ大堀川橋周辺は尾瀬でも人気のエリアで、木道からゆったりと植物を鑑賞できます。山ノ鼻から山頂までは急登となりますが、森林限界を超えると尾瀬を一望できるエリアです。山頂から小至仏山にかけては絶景を眺めながらの稜線歩きを満喫しましょう。
基本情報
至仏山(登山口の鳩待峠)
- 住所〒378-0411
群馬県利根郡片品村戸倉 - 電話番号0278-58-3222 (片品村観光協会)
- アクセス尾瀬戸倉バス停からシャトルバスで約30分
宿泊してゆっくり過ごしたい登山の名所2選
1.月山(がっさん)
月山は山形県にある標高1984mの山で、日本百名山にも選ばれています。駐車場がある8号目には弥陀ヶ原(みだがはら)という約8km四方の湿原が広がり、大小数10ヶ所の池塘が点在しています。
一周2.2kmの散策コースが整備されているので、最初に散策するのがおすすめです。木道からは月山と尾瀬のみに生息する「オゼコウホネ」のほか、チングルマやニッコウキスゲといった多彩な高山植物も鑑賞できるでしょう。
見どころが多彩でファミリーにもおすすめのコース
8合目を起点とする「羽黒山登山口コース」は、登りが3時間、下りが2時間30分ほどの所要時間です。弥陀ヶ原→御田原参篭所→無量坂→仏生池→行者返しと経由するルートで、山頂には月山神社が鎮座しています。
岩場が多いルートですが、弥陀ヶ原を一望できる無量坂や、1周20mの遊歩道がある仏生池などがあるので、休息しながら登ることができるでしょう。山頂からは、鳥海山や日本海までの絶景をお楽しみください。
基本情報
月山
- 住所〒997-0131
山形県鶴岡市羽黒町川代東増川山地内(8合目駐車場) - 電話番号0235-62-4321(月山ビジターセンター)
- アクセス山形自動車道・庄内あさひICから約40分
2.八幡平(はちまんたい)
秋田県と岩手県にまたがる標高1614mの八幡平は、日本百名山にも選ばれた人気の登山スポットです。名前のとおり山頂付近は比較的平坦ですが、小さなピークが点在するので変化を楽しめるでしょう。
長径570mの八幡沼をはじめとして、ガマ沼や鏡沼といった名前が付いた池塘が多く、周辺では夏にはニッコウキスゲやハクサンチドリなどのお花畑を満喫できます。また、秋になると草や木々の紅葉のコラボレーションが見事です。
変化のある湿地&雄大な山々を堪能
池塘を眺めながらの登山をするなら「黒谷地(くろやち)湿原コース」がおすすめです。黒谷地口→黒谷地湿原→源太森→八幡沼と経由して登頂し、スタート地点との間をバスが運行している「山頂レストハウス」に下ります。
整備された木道歩きは快適で、ファミリーも気軽に楽しめるでしょう。山頂からはきれいな稜線を描く岩手山を満喫、レストハウス近くの「見返り峠」からは天気がよければ月山や鳥海山までを見渡すことができます。
基本情報
八幡平
- 住所〒028-7100
岩手県八幡平市 - 電話番号0195-78-3500(八幡平山頂レストハウス)
- アクセス東北道・松尾八幡平ICから車で約20分
池塘のある山を巡ってみよう
多彩な生き物が生息する一般的な池・沼とは違い、神秘的な雰囲気を漂わせる池塘は、登山の見どころになっています。周辺には木道が整備され、初心者やファミリーでも歩きやすいのも魅力です。
4か所とも日帰りコースをご紹介しましたが、各登山スポットには山小屋なども準備されているので、宿泊を挟んでのプランを立てることもできます。ご自分のスキルやスケジュール合わせて池塘周辺の登山を満喫してみてはいかがでしょうか。
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