ウエイトリフティングの歴史は紀元前に遡る
遠い昔から人類、特に男性は重い石を持ち上げ力自慢を競った歴史が世界各地にあります。力=パワーは生命力の象徴ともいえ、権威でもありました。
そんな、重い物を持ち上げて力比べを行ったことが、現代のウエイトリフィティングのルーツといわれているのです。重い物を持ち上げる能力を、ウエイトリフィティング競技として確立し、洗練されたスポーツとして成立させ、オリンピック種目まで発展していった歴史を紹介します。
ウエイトリフティングの歴史
人類の歴史で男性の力強さは生きる力、生命力に通じるものがあり古代の神話にも怪力の神様が登場しています。その伝統が日本で力石を持ち上げる神事となり現代も行われているのです。
力自慢は天岩戸をこじ開けたアメノタヂカラオの神話から続く長い歴史があります。神話に通じるウエイトリフティングについて、歴史やルールや競技の特徴など、ウエイトリフティングを観戦するときに役立つ情報を詳しく紹介します。(記事は2021年7月16日時点の情報を基にしています)
ウエイトリフティングの歴史①:神の領域の競技
ウエイトリフティングは、神の領域の特別な石を持ち上げる儀礼的な神事の一種であった歴史がありました。古代エジプトやギリシャに重い石を持ち上げた記録があり、中国でも同じようなイベントが行われていたことが歴史に残っています。
ウエイトリフティングの歴史②:近大五輪より古い歴史
ウエイトリフティングの国際組織は、近代オリンピックの歴史よりも古く、1890年にオーストリア=ハンガリー帝国で設立され、翌年に国際大会がロンドンで開催されていました。
ウエイトリフティングがオリンピック種目に採用されたのは、1896年の第1回アテネ大会からで、オリンピック競技としても長い歴史を誇っています。
その後の1900年のパリ、1908年のロンドン、1912年のストックホルムオリンピックでは、ウエイトリフティングは採用されませんでした。
ウエイトリフティングの歴史③:ルール変更が多い
1920年の第7回アントワープオリンピックになると5クラスの体重別になり、1928年第9回アムステルダムオリンピックから「クリーン&プレス」「ジャーク」「スナッチ」の3種目で行われるようになったのです。
しかし、「クリーン&プレス」は1972年第20回ミュンヘンオリンピックが競技として最後の歴史で、その後廃止されました。
ウエイトリフティングの歴史④:2000年から女子競技も
1896年の第1回オリンピックからウエイトリフティングは男子のみの種目でしたが、2000年のシドニーオリンピックから女子の種目として追加され、ウエイトリフティングに新しい歴史が開かれました。
2021年の東京オリンピックから男女ともに7階級になり、スナッチとクリーン&ジャーク2種目の合計点で争われます。
日本のウエイトリフティングの歴史
日本におけるウエイトリフティングの歴史は昭和初期まで遡ります。日本では約90年の歴史があり、オリンピックではメダルも獲得した競技で、足腰が強く重心が低い日本人向きの競技といわれていました。
ウエイトリフティングは決して競技人口は多くありませんが、女性ウエイトリフターが増えたことでオリンピックのメダル候補も増えています。そんな今日のウエイトリフティング界につながる日本の歴史の紹介です。
日本のウエイトリフティングの歴史①:加納治五郎が紹介
日本のウエイトリフティングのルーツとえるのが、村の祭礼や宗教的な年中行事などで行われていた石を持ち上げる力競べです。バーベルと石の違いはありますが相当な重量を持ち上げる点は、ウエイトリフティングと同じといえます。
力石は昭和の始め頃までは日本各地で持ち上げられていましたが、過疎化や少子化で力石の習俗は廃れ、力石は民俗文化資料になったものも多数です。
1936年に全日本重量挙選手権大会
日本の重量挙げ=ウエイトリフティングの歴史は、1933年(昭和8年)に講道館柔道の嘉納治五郎氏が、当時の重量挙げ大国、オーストリアから正式なバーベルを購入したことがスタートです。
加納治五郎氏は競技の研究を行い、1936年(昭和11年)にルールや競技方法などを公にし、同年には第1回全日本重量挙選手権大会を開催しています。
日本のウエイトリフティングの歴史②:第1回国民体育大会の種目
1937年(昭和12年)には日本重量挙連盟が発足したのですが、第二次世界大戦により一旦解散します。しかし、1946年(昭和21年)に日本ウエイトリフティング協会として再発足し、11月の第1回国民体育大会にウエイトリフティングが競技種目となり、全日本選手権大会をかねて開催されました。
日本のウエイトリフティングの歴史③:オリンピック
日本がオリンピックのウエイトリフティングに初参加したのは、1952年の第15回ヘルシンキ大会です。バンタム級の白石勇選手が出場しています。
その後、1960年の第17回ローマオリンピック、1964年(昭和39年)の第18回東京オリンピック、1968年(昭和43年)の第19回メキシコオリンピックにも参加し、日本人金メダリストが誕生しているのです。
ウエイトリフティングは五輪でメダル9個
2000年(平成12年)の第27回シドニーオリンピックから、ウエイトリフティングが女子選手の競技として採用され、日本から3名の選手が参加しています。
2012年(平成24年)第30回ロンドンオリンピックと、2016年(平成28年)の第31回リオ・デ・ジャネイロオリンピックにも日本人女子選手が参加しメダリストになりました。
日本のウエイトリフティングの歴史④:日本人メダリスト
ウエイトリフティングの日本人メダリストの歴史は、1960年(昭和35年)のローマオリンピックまで遡ります。三宅義信選手がバンタム級で銀メダルを獲得しました。
1964年(昭和39年)の東京オリンピックでは三宅義信選手がフェザー級で金メダル、一ノ関史郎選手がバンタム級で銅メダル、大内仁選手はミドル級で銅メダルを獲得しています。
メキシコ大会で金・銀・銅
1968年(昭和43年)のメキシコオリンピックでは、三宅義信選手がフェザー級で金メダル、大内仁選手はミドル級で銀メダルを獲得し、三宅義信選手の弟にあたる義行選手がフェザー級で銅メダリストになっています。
1976年(昭和51年)のモントリオールオリンピックでは、安藤謙吉選手がバンタム級で銅メダル、平井一正選手がフェザー級で銅メダルを獲得しました。
ロンドン大会で三宅宏美が銀メダリストに
1984年(昭和59年)のロサンゼルスオリンピックでは真鍋和人選手が52キロ級で銅、小高正宏選手が56キロ級で銅、砂岡良治選手も82.5キロ級で銅メダルを獲得し、3人の銅メダリストが誕生しました。昭和の時代はウエイトリフティングの歴史に残る活躍をした選手が多数いたのです。
2012年(平成24年)のロンドンオリンピックで三宅宏実選手が女子48キロ級で銀メダルを獲得し、2016年(平成28年)のリオデジャネイロオリンピックでは銅メダルを獲得しています。
ウエイトリフティングは6番目のメダル数
日本は2016年のリオデジャネイロオリンピックまでに、男女のメダルをあわせて金が2個、銀が3個、銅が9個と合計で14個のメダルを獲得という数字は体操や柔道には敵いませんが6番目に数が多い、五輪の歴史に残る実績です。
ウエイトリフティングメダリスト一覧表
大会 | クラス | クタス | メダル |
1960年 ローマ | 三宅義信 | バンタム級 | 銀 |
1964年 東京 | 三宅義信 | フェザー級 | 金 |
一ノ関史郎 | バンタム級 | 銅 | |
大内仁 | ミドル級 | 銅 | |
1968年 メキシコ | 三宅義信 | フェザー級 | 金 |
大内仁 | ミドル級 | 銀 | |
三宅義行 | フェザー級 | 銅 | |
1976年 モントリオール | 安藤謙吉 | バンタム級 | 銅 |
平井一正 | フェザー級 | 銅 | |
1984年 ロサンゼルス | 真鍋和人 | 52kg級 | 銅 |
小高正宏 | 56kg級 | 銅 | |
砂岡良治 | 82.5kg級 | 銅 | |
2012年 ロンドン | 三宅宏実 | 48kg級 | 銀 |
2016年リオデジャネイロ | 三宅宏実 | 48kg級 | 銅 |
ウエイトリフティングのルールと競技特性
ウエイトリフティングは体重別でクラス分けされ、現在のオリンピックでは男子が61kg、67kg、73kg、81kg、96kg、209kg、109kg超級の7階級です。女子のウエイトリフィティングは49kg、55kg、59kg、64kg、76kg、87kg、87kg超級の7階級になります。
体に触れると反則
ウエイトリフティングのユニホームは決まりがあり、レスリングのユニフォームのシングレットと同じように、タンクトップと短パンが一体になったワンピーススタイル着用になります。
ウエイトリフティングはバーベルを持ち上げたときに肘と膝をまっすぐに伸ばさないと反則になり、審判がそれを確認するため長袖は禁止です。
また、ウエイトリフティングはクリーンの状態以外では、手のひら以外の体のどこの部分もバーベルに触れると反則になります。
競技スタートは検量
ウエイトリフティングでは競技開始の2時間前に検量が行われ、出場するクラスの制限内の体重でなければ失格になります。
ウエイトリフティングの競技会場は10m四方のステージの上に木製のプラットフォームがセットされ、その上で競技を行うのです。
プラットフォームから4m離れた場所に競技者の演技の成否を決定するレフリーが3名座ります。
「スナッチ」と「クリーン&ジャーク」で競う
現在のウエイトリフティング競技は「スナッチ」と「クリーン&ジャーク」の2種類で戦います。
「スナッチ」は両手を肩幅より少し広めに広げてバーベルを握り、床から一気に頭の上まで持ち上げる競技です。
「クリーン&ジャーク」はバーベルを床から鎖骨まで持ち上げ(クリーン)、タイミングを計って、さらに頭の上に持ち上げる(ジャーク)ルールになります。
1分の時間内で試技
競技場では選手は自分の名前が呼ばれてから、1分の時間内に試技を行わなければ失格になります。また、競技はスナッチが先で、後からクリーン&ジャークを行います。スナッチを3回失敗するとその時点で競技終了です。また、最終的に試技の成功、失敗は3名のレフリーの多数決で判定されます。
試技重量の申告も戦術
選手が試技する重量は事前に申告するルールです。申告した重量が軽い選手から競技を開始します。この時駆け引きがあり、相手より重い重量を申告し、相手にプレッシャーをかけることもありますが、実力ギリギリの重量を申告して失敗すると記録ゼロになるのです。
ウエイトリフティングのプチ情報
日本のウエイトリフティングの競技人口は3,500~4,000人と決して多くありませんが、最近の筋トレブームでバーベルを持ち上げている人は多くいます。
競技を行うか行わないかは別にしてウエイトリフティングファンは多くいるはずです。そんな人々から初心者の方までウエイトリフティングに関する気になるプチ情報を紹介します。
三宅ファミリーでメダル6個の歴史
ウエイトリフティングといえば三宅ファミリーです。一部既述がありますが、ローマ大会、東京大会、メキシコ大会で活躍した、三宅義信と弟・義行で、金メダル2個、銀メダル1個、銅メダル1個を獲得しています。
また、義行の娘の宏実は、ロンドン大会で銀メダルを獲得して、ウエイトリフティングで日本女子初のメダリストとなった輝かしい歴史に残る活躍をしました。
ウエイトリフティングのメダル43%が三宅ファミリー
三宅ファミリー3人で金2個、銀2個、銅2個の6個のメダルを取り、ウエイトリフティングの全メダル14個のうち約43%を占めています。三宅ファミリーのオリンピックでの活躍はウエイトリフティングの歴史に残る大きな功績として輝いているのです。
五輪スタートは体操競技の一種目
現在のウエイトリフティングは単独種目になっていますが、第1回のアテネオリンピックでは体操競技の一種目として開催されていました。そんな歴史もあって、現在でもウエイトリフティングの最終的な成功、失敗の判定は3人の審判の判断になります。
競技者が規則に沿ってバーベルを持ち上げたかどうかを判定するのは最終的に審判であり、採点競技の体操種目の名残が見られるのです。
過去には片手で持ちあげる競技も
第1回のアテネや第3回のアントワープオリンピックでは、ウエイトリフティングに、片手でバーベルを持ち上げる「片手ジャーク」の種目がありました。この競技についてはそうとうな腕力が求められたようです。
また、その頃はウエイトリフティングとはいえ、現在のような体重によるクラス分けもなくストレートに力比べを行っていた歴史があります。
歴史上人間が差し上げた最重量は?
重量挙げ130年の歴史で持ち上げられた最重量は、男子の場合は105kg超級のラシャ・タラハゼ(ジョージア)がスナッチで217kg、ホセイン・レザザデ(イラン)がクリーン&ジャークで263kgを持ち上げ、歴史上人間が持ちあげた最重量です。
女子は75kg超級のタチアナ・カシリナ(ロシア)がスナッチ155kg、クリーン&ジャークで193kgを持ち上げています。タチアナ・カシリナは合計で348kgと歴史上で最も重い重量を持ち上げた女性です。
公式バーベル一式の値段は?
オリンピックでも使用されるバーベルメーカーが日本にあります。創業以来90年以上の歴史を誇る「株式会社 ウエサカ ティー・イー 」で国内で唯一、世界公認バーベルの製造メーカーです。
職人技で製造されるバーベルは最高品質で、オリンピックモデルのs型競技用バーベルセットは男子用240kgで798,600円(税込)、女子用185kgで684,200円します。
ウエイトリフティングの歴史を知って楽しもう
ウエイトリフティングについて、歴史から競技方法や競技時間にルールなどを採り上げました。人類の極限に挑戦するアスリートの姿を見ていると思わず全身に力が入ります。
ウエイトリフティングの歴史やルールを知っていると、何倍も楽しく観戦できるのです。ウエイトリフティングの選手を応援して、選手がバーベルを持ち上げるパワーの後押しをしましょう!
ウエイトリフティングの歴史が気になる方はこちらをチェック!
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