ボート競技はどんなスポーツ?その魅力は?
ボート競技を簡単に言うと、2,000m(公式レースの基準)の直線コースを最短時間で走ったボートが勝ちという、非常に単純な競技です。とにかく早くゴールに着けばいいので、見た目にも勝負がはっきりとわかりやすいスポーツになります。
競技は1回のレースで6艇がスタートします。横一線のスタートラインに舳先をそろえて静止し、一斉にスタート後はコースを変えてはいけません。まっすぐに進み、舳先のバウボールがゴールラインを通過すればゴールです。
ボート競技の難しさと見どころと魅力はこれ
ボート競技は、一見陸上競技の短距離走のように見えそうです。単純に力任せで逃げ切ればいいのでは?と思うかもしれませんが、ボート競技はシングル以外複数の選手が乗艇する、チームプレイの競技なのです。
各艇にはスピード調整やスパートのタイミング、他艇との駆け引きなどの役割りを持った選手が乗っていて、全員の力をまとめてチームワークでレースを進めます。選手全員が一体にならないと、ボート競技で勝利は望めません。
ボート競技を観戦する時の見どころはここ
ボート競技では、乗艇人数が一番多いエイトが時速約20㎞ほどで、最もスピードが出せる種目です。実際に乗っていると車の100㎞程に相当するスピード感で、これがボート競技にハマる魅力の一つだといわれます。
見ている方では、終盤の残り500ⅿほどからの激しいせめぎ合いが見どころです。こぶし1つほどの差での先頭争いの中、相手や自艇の選手の体力を推し量ってスパートをかけるポイントを探ります。このあたりがボート競技のだいご味でしょう。
ボート競技の始まりは?歴史を詳しく知ろう
ボート競技の歴史は紀元前のエジプトから
人間が早さを競い合うのは、持って生まれた闘争本能によるものでしょう。自分の身体を使って走る、泳ぐ、跳ぶことから始まり、乗り物ができればそれを使って競争します。舟の歴史では、ボート競技は紀元前千四百年頃のエジプトの記録が最初です。
ボート競技で優れた成績を残した選手個人についての記録なので、歴史的にボート競技の創立はそれ以前でしょう。その頃の日本は縄文時代の終わりで、丸木舟がありました。記録がないだけで、丸木舟のボート競技はあったかもしれません。
ボート競技の名称「レガッタ」の歴史はベネチアから
紀元前にエジプトにボート競技の歴史があったのは明らかですが、どんなレースなのか詳細は不明です。現代のボート競技と似た形と確認できるレースの歴史は、13世紀のイタリア・ベネチアで行われたものが最初といわれます。
1274年にベネチアで行われた国家的な祭事で、ゴンドラ以外の小舟を使った行事が開催されました。この祭事名 Festa Nationale della Regataにちなんで、ボート競技のことをレガッタと呼ぶようになり、その歴史が現在まで続きます。
近代ボート競技の歴史はイギリスから始まった
現代のような形でのボート競技の歴史はイギリスのテムズ川から始まったとされています。この競技の参加者は川船の船頭(ウォーターマン)たちでした。
この催しの歴史は1715年に開催されたボート競漕から始まります。勝者には主催した喜劇俳優ドジェットから銀のバッジがついた赤いコート、高額の賞金が授与されました。この歴史的なレースは「Doggett's Coat andBadge」と呼ばれ、現在まで続けられています。
ボート競技の歴史は賭け事&スポーツとして発展
最初は賞金レースだったボート競技には、ロンドンの富裕層がスポンサー、興行主として次々に参入し、現在の競艇のような賭事の要素が入る形に発展します。19世紀半ばの最盛期には、5,000回ものレースが行われたという歴史記録もありました。
一方で18世紀の後半には、アマチュアスポーツとしてのボート競技が創立されます。ボート競技の歴史のスタートで、賞金レースの参加者はプロとみなされ、この競技への参加は貴族か学生に限られました。
ボート競技の歴史は学生主体のアマチュアスポーツから
初期のボート競技は観戦者も含めて貴族やその子弟で次第に組織化され、厳格なルールで運営されました。そして、18世紀末には大学や地域の競技クラブが創立され、1788年には最初のレースが行われた歴史記録が残ります。
1829年になって、初めてオックスフォードとケンブリッジの最初の対校戦が行われました。歴史的な有名大学の対校戦の始まりです。現在ではヨーロッパを代表する人気のボート競技になり、ザ・ボートレースといえばこの対校戦を意味します。
ボート競技がイギリスからヨーロッパ・アメリカへ伝わる
イギリスでボート熱が高まり、それがヨーロッパに広がるのにさほど時間はかかりませんでした。19世紀中ごろにはアメリカでもボート競技の人気が高まり、各校にボート部が創立されアメリカのボート競技の歴史が始まったのです。
アメリカでの対校戦の歴史は1852年、エール大学とハーバード大学で始まります。やがてアメリカ全土でボート競技が活発化、現在までの歴史を見ると、オリンピックでのメダル獲得数トップはアメリカで、イギリスに大差をつけるまでになりました。
20世紀にオリンピック種目に採用され世界的な競技に
世界のほとんどの国・地域が参加するスポーツの世界選手権といえばオリンピックです。ボート競技も100年余りの歴史を積んで欧米から世界中に普及し、1900年の第2回パリ大会から競技種目になりました。
300年以上の歴史があり世界中で行われるボート競技ですが、国際選手権などで活躍するのは長い歴史を持つ欧米諸国です。発祥のイギリスやその周辺、元植民地が表彰台を占める図式は、大きく変わってはいないようです。
日本のボート競技の歴史は19世紀からスタート
日本にも和船があり、それを使った競漕は古い歴史を持っています。山口県萩市や長崎県松浦市、長崎市、沖縄や相生の競漕が有名です。ほとんどが神事・祭礼に伴って行われるもので、勝ち負けによって豊作や大漁を願ったり、その年の吉凶を占う行事でした。
和船による競漕は、民俗的なスポーツとしての位置づけです。長い歴史のなかで沖縄のペーロンなどのようにスピード競争化、現代のボート競技に近くなったものもありますが、和船なのでボート競技との共通項はほぼありません。
日本のボート競技の歴史は幕末に始まる
18~19世紀にかけて欧米ではスポーツとして人気が高まってきましたが、ちょうど歴史的に鎖国下にあった日本には伝わりませんでした。歴史的に最初のボート競技の誕生は幕末の1861年のこと。それまでは長崎での短艇訓練のみでした。
この年に長崎にいたグラバーたち商人が長崎レガッタを創立したことが、当時の英字新聞記事に残っています。続いて1863年には横浜で外国人兵士がレガッタを開催しました。日本人抜きの日本のボートの歴史の始まりです。
日本人のボート競技の歴史は明治になってから
そして1868年(明治元年)以降、横浜、神戸に在留の英国商人たちがボート競技のクラブを次々に創立、1871年にはクラブ間定期戦が行われます。ここまでの10年の歴史の間、なぜか日本人の間には普及しないままです。
その後1877年になって英国から招いた指導者が、現在の東京大学にあたる教育機関で漕艇を教え始めました。これが歴史上日本人が競技用ボートに乗った最初になります。ここからは急速に普及が進み、本格的な日本のボート競技の歴史が始まりました。
日本のボート競技対校戦の歴史は英国の54年後
日本のボート競技の歴史は、外国人指導者による学生スポーツとして始まります。中心になったのが東京大、一橋大、東京外大の前身校で1877年にボートを購入、関西でも京大、同志社大の前身校がボート競技を始めました。
1882年には筑波大の前身校が教科に採用、本格的な指導者育成の歴史もスタートしました。そして1883年になって、東京大と現筑波大との間で定期対校戦の歴史が始まります。英国に遅れる事54年という歴史の差がついてしまいました。
民間会社や旧制高校・中学への普及の歴史
学校の後は日本郵船や三井物産などの民間会社にボート競技が普及、旧制高校や師範学校など各種学校への普及も進み、日本のボート競技の歴史は明治中期、1890年代に一つのピークを迎えます。
その後も各地でボート競技部の創立が相次ぎます。学内、対校、企業対抗レガッタが定期化、1895年には初の全国大会が琵琶湖で開催される歴史的なイベントがありました。明治の終わりから大正にかけ、現高校総体、インカレ、国体などでボート競技が正式種目になっています。
日本の国際的なボート競技の歴史は20世紀から
国内では学校、企業で盛んになったレガッタも、世界戦デビューは1928年(昭和3年)の第9回アムステルダムオリンピックからになります。そして、1936年には英国マローレガッタに遠征した東京大が優勝するまでに成長しました。
順調に発展した日本のボート競技の歴史も戦争で中断しますが、戦後はいち早く復活します。各種国際大会には継続的に出場し、2000年のザグレブ世界選手権では優勝しました。これは、オリンピック・世界選手権を通じての歴史的な初優勝です。
厚くなった選手層でオリンピックを戦う
国内でのボート競技はほぼ全国的に普及していて、高校生のインターハイの競技種目になっているし、中学生の全国選手権大会も開かれています。2005年には世界選手権を長良川で開催し、海外レガッタへの遠征でも金メダルの数を重ねます。
国際的に活躍した経験のある選手も増えていて、選手層の厚みも増しました。今後のオリンピック、世界選手権での活躍に期待したいものです。
ボート競技の種目を漕ぎ方別・人数別で解説
ボート競技の種類は多く、一見して理解できないほど入り組んでいます。競技の種類を大きく分けると、使うオール(櫂)の数で2つに分けられます。まず1人が2本のオールで漕ぐのをスカル、1人が1本だけで漕ぐのをスイープと呼びます。それぞれについて整理すると次のようになります。
ボート競技の種類を分けるとこんなにあった
スカルで行うボート競技は次のとおりです。
競技名 | クルー(乗員)数 | 記号 |
シングルスカル | 1 | 1x |
ダブルスカル | 2 | 2x |
クオドルプル | 4 | 4x |
舵手付きクオドルブル | 4+舵手1 | 4x+ |
スイープは次のとおりです。
競技名 | クルー数 | 記号 |
ペア | 2 | 2- |
舵手付きペア | 2+舵手1 | 2+ |
フォア | 4 | 4- |
舵手付きフォア | 4+舵手1 | 4+ |
エイト | 8+舵手1 | 8+ |
※ナックルフォア | 4+舵手1 | KF |
この中で例外がKFで、このクラスは日本独自の規格です。艇の断面が広くて安定しやすい入門・練習用のボートで、競技では初心者、ジュニア、シニアクラスで使われます。
競技の関係者の間では、右端の欄のひと目でわかる分類記号がよく使われます。数字は漕ぎ手の数、次のxはスカル、+は舵手付き、-はを舵手なしの意味で、慣れれば非常に便利な表記方法です。
主なボート競技の特徴を種類ごとに解説
では、たくさんあるボート競技の種類の中から、人気が高く目にする機会が多いものをいくつか紹介していきます。一人で戦う過酷なシングルスカル、連携プレイが勝敗を決める舵付きフォア、ボートの華・エイトの3種目を取り上げました。
個人技が冴えるシングルスカル
シングルスカルは、チームで戦うのが基本のボート競技では例外的な個人競技です。コースは同じ2,000ⅿで、漕ぎ手が一人でスピードが出せないので競技時間も長くなり、約7分間を一人で戦い続けます。体力を限界まで使い尽くす過酷な個人種目です。
ペース配分や展開を誤るとゴール直前で力尽き、一気に最下位に転落の可能性もある反面、計算通りにレースが展開して、トップでゴールする快感も独占できます。良くも悪くも自分次第という、個性が光る種目でもあるのです。
役割分担でチームで勝負する舵付きフォア
舵付きフォアは漕ぎ手が4名に舵手が1名の計5名のチームで戦います。クルーにはそれぞれ役割が決められていて、全員が自分の役割りを果たすことで勝利を手にできる、チームプレイの競技です。
舵手はコースを維持するほか、レースの状況を読んで細かい指示を出す司令塔です。先頭にいる舳手はクルーのバランスを観察、注意喚起もします。4人目の整調(ストローク)はリズムを整えペース調整の受け持ちです。5人が全力で取り組まないと勝てない典型的な団体競技といえます。
最多のクルーで華やかなエイト
エイトは漕ぎ手が8名と舵手1名で、ボート競技では最多の人数で戦います。動力源の漕ぎ手が多いので、競技タイムは2000ⅿを5分台後半と時速20㎞に達する最速のボート競技です。
チーム競技のボートでも最多人数なので、動きの統一性が何より大事。全員が同じ動作を全力で繰り返し疾走する美しさは、エイトならではの魅力でしょう。特に終盤の大声援の中、競り合いを制しようとラストスパートをかける迫力あるシーンは、エイトでは最大の見せ場です。
長い歴史のボート競技は楽しみ方もいろいろ
現在のようなボート競技は、18世紀の初めに始まりました。それから300年近い歴史を刻んできて、オリンピックや世界選手権のほか、ローカル大会も数多く開催されています。
ただ、日本国内を見るとわかるように、競技人口はまだまだマイナーな状態です。費用や施設などいろいろな事情があってのことですが、東京オリンピックを期に、応援することから親しんでみましょう。勝負がわかりやすいスポーツなので、まずは観戦から入ってみてください。
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2021年は変則的なオリンピックイヤーになりました。これを機にスポーツ観戦に熱中する方も少なくないでしょう。部屋でテレビ観戦も結構ですが、この記事のような歴史など、ある程度予備知識を持っていた方がより楽しめるのではないでしょうか。
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