展望抜群な雨飾山
雨飾山は標高1,963mで新潟県糸魚川市と長野県北安曇郡小谷村とにまたがる独立峰で、妙高戸隠連山国立公園に含まれています。また、日本百名山の著者深田久弥氏が、特に深い思い入れが強く印象に残った山と著述していることでも有名な山です。
展望抜群の山頂部は“猫の耳”と呼ばれている双耳峰で、三角点のある南峰(西峰)と、阿弥陀三尊、大日、薬師の両如来、不動明王の4体の石仏が祀られている北峰(東峰)で構成されています。
雨飾山は信仰の山
雨飾山はその秀麗な山容から昔から敬われていて山岳信仰の対象とされていました。北峰に置かれている石仏は糸魚川の羅漢上人が担ぎ上げたとされ、すべて北向き置かれていることから元々は越後側の人々の五穀豊穣を願う山であったのではと言われています。
雨飾山という名の由来
雨飾山という名前の由来には定説がありません。山頂部分が双耳峰であることから、“両飾山”または“両粧山”とも呼ばれていたということから“両”が“雨”に転訛し、いつのまにか雨飾山という名になったというのがひとつの説です。
「荒菅山(あらすげやま)」とも呼ばれていた時期もあるとのことです。また、この地方の人々が山頂に祠を建てて雨ごいの祈願をしたからだという説もありますが、この地方の降雨量は多いことから疑問視されています。
雨飾山の自然
雨飾山は6月下旬頃まで残雪があります。ふもとにあってブナの巨木に覆われている鎌池は、周辺の景色が神秘的な雰囲気を漂わせている湖で、5月から6月は目の覚める様な新緑を見ることができるため花の百名山にも選ばれています。
笹平周辺から山頂までは高山植物を眺めながら登れます。フキに似てオタカラコウ、オオバミソホオズキ、イワオトギリ、キリンソウ、キヌガサソウなど等、種々な花の道となり、その景色はまさに百花繚乱の趣です。
雨飾山は紅葉の名所
大海川の河原沿いには5月中旬から6月下旬頃まで水芭蕉(ミズバショウ)の花が咲きます。10月上旬頃からは山頂部分から紅葉に染まる景色となり11月上旬頃までが見ごろの季節となるのです。
特に鎌池周辺と荒菅沢は晩秋まで赤や黄色に彩られた風景が素晴らしく、多くの登山者が訪れます。
雨飾山の登山コース
雨飾山への登山時期は6月下旬から11月上旬までで、登山道は新潟県側と長野県側からあり、変化に富んだ3っのコースがあります。新潟県側からは雨飾温泉から薬師尾根を登るルートで、短距離ですが急登の連続です。
長野県側からは登山口までの取り付きが悪いのですが、比較的楽な登山路となる大綱ルートと、姫川の支流中谷川上流に位置する小谷温泉から雨飾高原キャンプ場の登山口からのルートです。
登山装備は十分にしましょう。
雨飾山の南面にあり、秋には晩秋まで絶景の紅葉名所となる“布団菱”と呼ばれている乳白色をした大岩壁は、前沢奥壁とともにロッククライミングの登攀技術を要する対象とされています。
標高は低いのですが、6月上旬まで残雪があることと、ハシゴ場も設置された急登の岩場も多くありますので、マップ・コンパスと十分な登山装備は必要です。
初心者向け大綱コース
一般的な初心者向けコースです。山頂直下に少々の登りづらい急斜面がありますが、アップダウンもなく危険な箇所も少ないルートで、途中にはお花畑もあり、ほぼ全般に樹林帯の中を歩く単調な登山道で最短の日帰りコースとなります。
大綱口登山道入口までは道幅の狭い林道ですので、車の運転には注意してください。大綱登山道入口からのスタートです。最短ルートですが山頂までは約1,000mの標高差があり、ずっと登りが続く登山道となります。
登山ルート概要①
草原の道を進み、横川の支流となる前沢の滑りやすい河原を70mほど歩きます。前沢の右岸に渡って進むと急斜面となり、ハシゴ場もあるので注意しましょう。美しいブナ林となり、登山道が徐々に傾斜を増します。
灌木林なので展望はよくありません。傾斜がきつくなってきたら三点確保をしながら登りましょう。山頂から北西の方向に伸びている尾根まで登り、東方面にほぼ直角に折れる尾根沿いの道を進んで行きます。
登山ルート概要②
急登を終えたあたりから森林限界を超え、展望が開けてきて稜線の周囲にはシナノオトギリやシモツケソウなどの高山植物が見られます。岩場を左手側から巻いて登ると山頂が見えてくるでしょう。
岩場があるので注意してハイマツ帯の稜線を進むと石仏が並び立つ山頂の北峰に到着します。そのまま尾根伝いに三角点のある南峰に登り、山頂からのパノラマを堪能したら、往路をたどっての下山です。
アクセスルートDATA
登山口へのアクセス | JR大糸線平岩駅より車利用約40分 (車)長野道豊科ICより約130分 |
山行 | 日帰り 難易度:☆☆☆★★ 体力度:☆☆☆★★ |
登山情報 | 距離:約8.2km 累積標高差:上り・下り1,181m マップ上標準コースタイム:約5時間30分 |
コースタイム | 大綱登山口スタート→(30分)前沢→(30分)水 場→(45分)林道途中のぞき→(45分)稜線→ (30分)雨飾山山頂→(25分)稜線→(30分) 林道途中のぞき→(35分)水場→(30分)前沢→ (30分)大綱登山口ゴール |
景色のよい小谷温泉コース
長野県側の小谷温泉から林道も通じている雨飾高原キャンプ場の雨飾山登山道入口から、山頂からの南側に伸びる尾根を進み、標高1,445mにある大海川上流の荒菅沢を渡って雨飾山に登頂します。
湿地帯の登山道やロープの設置がある急登もありますが、途中に休憩する場所もあり比較的歩きやすい登山道でしょう。山頂までは4時間ほどで登頂できる、中級者向け日帰りコースです。
登山ルート概要①
雨飾高原キャンプ場登山道入口からスタートします。右手に大海川(おおみがわ)を望みながら湿地帯のなかの木道を進み15分ほど歩くと急登が始まり、荒菅沢まで90分山頂まで180分と表示された道標があります。
広葉樹の中を登りブナ平と呼ぶ平坦な場所に着いたら、ここで休憩するのがおすすめ。そこから緩い斜面を登っていくと、“布団菱(ふとんびし)”と呼ばれている大岩壁が目の前に広がります。水場のある荒菅沢(あらすげさわ)に着いたら、ここでも小休止をおすすめします。
登山ルート概要②
荒菅沢の対岸に渡って急登を進んでゆき、ロープが設置されたジグザグの急斜面を更に登ってゆくと低木帯を抜けて一気に展望が開け、秋には紅葉が見ごろとなる荒菅沢奥壁が見えるでしょう。
展望のよい岩場の尾根道を登りますが、二か所にはしごが設置されている急登があり、そこを抜ければ笹に覆われた平坦な尾根道の笹平に出ます。笹原の先に雨飾山山頂が見えますので、そのまま進み最後の急な斜面を登れば雨飾山山頂に到着です。下山は往路を辿ります。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR南小谷駅より雨飾高原バス停まで約35分 (車)上信越道長野ICより約90分。 |
山行 | 日帰り 難易度:☆☆☆★★ 体力度:☆☆☆★★ |
登山情報 | 距離:約8.0km 累積標高差:上り1,043m 下り1,061m マップ上標準コースタイム:約7時間 |
コースタイム | 雨飾高原キャンプ場登山口スタート→(120分) 荒菅沢→(90分)笹平分岐→(30分)雨飾山 山頂→(20分)笹平分岐→(75分)荒菅沢→ (90分)雨飾高原キャンプ場ゴール |
急登が続く梶山新湯コース
雨飾温泉の登山スタート地点にある雨飾山荘は明治13年に建てられた古い山小屋です。雨飾山荘より薬師尾根を通って雨飾山頂に登る最短ルートで、根知川の上流にある雨飾温泉からの薬師尾根コースとも呼ばれます。
狭い急登が続く尾根道が中ノ池の手前まで標高差が約1,000mあります。6月下旬頃まで残雪があって登山道は雪で覆われてルートが分かりづらくなるので登山計画には確認が必要です。中上級者向けコースとなります。
登山ルート概要①
雨飾山荘の“都忘れの湯”脇にある登山道からスタートです。すぐに急登となり30分ほどで展望が開ける“難所ノゾキ”から更に狭い稜線を登りきると、一旦緩い斜面を進むとハシゴ場がある短い岩場があります。
樹林帯のなかを進み狭い尾根から平坦な尾根道と続き、再びハシゴが架けられた急斜面を登ると、稜線上に“一ぷっく処”と名前がある展望のよい場所で小休憩しましょう。再び狭い稜線を滑落に注意して進みます。
登山ルート概要②
灌木帯のなかを登ると左手が切れ落ちている狭い稜線になり、滑落に注意して進みます。狭い稜線の急斜面は残雪時にはアイゼンの装着が必要です。灌木帯のなかの登山道を進むと“中の池”に着いて展望も開けます。
中の池の初夏にはミズバショウの花が見られるでしょう。急斜面を登り笹原のなかを進むと“笹平”の稜線に取り付きます。雨飾山山頂に登頂し笹平を見下ろすと、“女神の横顔”と呼ばれている山頂へと続く道の線が見えるでしょう。
アクセスルートDATA
登山口へのアクセス | JR糸魚川駅より山口バス停まで約40分、徒歩約120分 (車)北陸道糸魚川ICより約30分 |
山行 | 日帰り 難易度:☆☆★★★ 体力度:☆★★★★ |
登山情報 | 距離:約6.5km 累積標高差:上り・下り1,150m マップ上標準コースタイム:約7時間20分 |
コースタイム | 雨飾温泉登山道入口スタート→(170分) 中の池→(60分)笹平分岐→(30分)雨 飾山山頂→(20分)笹平分岐→(40分) 中の池→(120分)雨飾温泉ゴール |
雨飾山山頂からの絶景を眺めよう!
雨飾山への登山が注目されるようになったのは近年になってからです。バリエーションが多い登山道と、布団菱(フトンビシ)と呼ばれる迫力のある岩壁や、稜線歩きの爽やかさが登山の魅力となっています。
標高が2,000mに満たない山容ですが頂上からの眺望は抜群で、天候がよければ日本海まで望めるという人気のある山なのです。高山植物を楽しみながら眺望の素晴らしさも味わえますよ。
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