マラソンスイミングのルールはシンプル
マラソンスイミングと聞いて、はっきりと競技の姿が頭に浮かんでくる方はそれほど多くないのではないでしょうか。
しかし、マラソンスイミングはルールも整っていて世界大会もあります。オリンピック種目にも採用されていて、2020東京大会ではお台場海浜公園で開催されました。
マラソンスイミングは自然環境で10kmを競うレース
マラソンスイミングのルールはシンプルで、簡単に言えば屋外で自然環境を利用し河川や海で10kmを早く泳ぐ競技です。
今回は、マラソンスイミングのルールを紹介します。加えて、ルールだけでなくその歴史や水泳技術などの見どころも取り上げて詳しく紹介しますので最後までお見逃しなく。(なお、本記事は2021年12月30日の情報です。)
マラソンスイミングの基本ルール
ここからは細かいルールについて説明します。競技ルールを知ればマラソンスイミングをより深く理解でき、さらにマラソンスイミングならではの独特のルールを知ることにより、いっそうマラソンスイミングに興味が湧いてくるはずです。
ルール①:競技エリア
マラソンスイミングが行われる競技エリアは、競泳のようにプールを使用して行われるのではなく、海や川や湖などの自然の水域を利用するとルールで定められています。そのエリアにブイを設置して周回コースを設定し、10kmの長距離になるようにコース設定されるのです。
屋外の自然環境だけに、競技中に水泳の邪魔にならないよう、波や流れを避けてコース設計されます。また、事故などがないように安全性も確保して、流れがゆるやかな環境で競技が行われるのです。
水温の規定がある
マラソンスイミングは約2時間水中で泳ぎ続けることから、ルールでは、競技が行われる水温は16℃以上31℃以下と規定されています。
自然の水温は常に変化するもので、長時間の水泳競技だけに水温の体力の消耗に対する影響力は無視できるものではありません。ですのでレース当日の周回コースの水温を推測し、対策を立てる事前準備が重要といわれています。
大会参加は年齢制限がある
マラソンスイミングの公式の競技会に出場できるのは、14歳以上の競技者だけに限られています。なお、年齢については競技会が開催される年の12月31日時点の競技者の年齢となっていますので気をつけましょう。
マラソンスイミングのレース中のルール
ルール①:泳法
ルールではマラソンスイミングの泳ぎ方は自由で、どのような泳法でも泳ぐことができます。平泳ぎでもバタフライでも泳ぐことは可能ですが、最も早く泳げるクロールで泳ぐ選手が大多数です。
ですがマラソンスイミングではプールで泳ぐクロールの泳法と少し技術が異なり、他選手との接触をさけるため「ハイエルボー」といわれる泳法で泳ぎます。ハイエルボーは、クロールの抜き手の肘を空中で曲げるのが特徴です。
ルール②:スタート
マラソンスイミングのスタートは、視覚と聴覚の両方に訴える合図でなければなりません。また、すべてのマラソンスイミングは、競技者全員が固定された壇上から同時に飛び込むか、泳ぎ始めるのに十分な深さの水中から、スタートの合図で競技を始めます。
なお、固定された壇上からスタートする場合は、競技者は無作為の抽選により檀上の立ち位置が決められるのです。
男子競技が先にスタート
マラソンスイミングに参加する競技者が多い場合は、男子競技と女子競技を別々にスタートしなければなりません。また、男女別々にスタートする場合は、常に男子競技が女子競技の前にスタートしなければならない決まりになっています。
ルール③:フィニッシュ
マラソンスイミングでフィニッシュに垂直なゴール板が設置されている場合、そのゴール板にタッチすることでゴールが認められるルールになっています。
ゴール板は定位置に固定された垂直な板状で、少なくとも5mの広さが必要です。また、ゴールにはスローモーション機能および計時機能を備えたビデオ録画装置で、ゴールの両側および上部から撮影して記録します。
マラソンスイミングのウエア
水中を長時間泳ぎ続けるマラソンスイミングで着用するウエアは、プールで行う競泳と異なり、競技用のウエアにもルールがあります。そんな、マラソンスイミングで使用されるウエアと、腕に装着する自動計測装置についての紹介です。
ルール①:ウエア
マラソンスイミングは2時間近い競技だけに、レースで着用するウエアの影響が大きく、ウエアについては細かいルールが定められています。競技中着用するウエアは、勝負に有利となる浮力を増すようなウエアは認められていません。
ルールでウエアは体を覆う部分に制限
競技中に着用するウエアは、ワンピースまたはツーピースの水着1枚だけです。また、男女共に首を覆うウエアや、肩を覆ったり、肩を超える長さの水着や、足首を超えるウエアの着用はルールで禁止となっています。
また、競技中はゴーグル、耳栓、ノーズクリップの使用は可能です。スイミングキャップも2枚まで着用できます。
ルールでは水温20°C未満でウエットスーツ着用可
マラソンスイミングでは、体力の消耗が激しくなる水温が20℃未満の水中で競技を行う場合は、男子選手も女子選手もウエットスーツの着用が許可されています。ですが、使用するウエットスーツは胴体から背中と肩や膝までを完全に覆い、首と手首と足首は超えないサイズにしなければなりません。
擦れ防止のワセリンの使用は可
マラソンスイミングは2時間ほど泳ぎ続ける競技だけに、擦れて皮膚が傷つくこともあり、擦れによる傷防止のためスタート前にワセリンやなどの使用は可能です。また、日差しが強い日は、日焼け防止のクリームなども使用できます。
ルール②:マーキングと自動計測装置
マラソンスイミングで出場する選手は、登録番号を両手の甲と両腕の上腕にはっきり認識できるようにマーキングします。
また、競技ルールでは計時用のマイクロチップトランスポンダーシステムを含む自動計測装置の使用が望ましいと規定されているのです。自動計測装置が用意されている場合は装置を手首に装着してレースに臨みます。
マラソンスイミングの特別ルール
ルール①:給水方法
マラソンスイミングは約2時間も続く競技だけに、体力の消耗が激しく、技術とともに体力が重要な勝因になり、マラソンスイミングではルールでレース中に給水が認められているのです。レース中の給水は水中の選手へ、陸上から渡すことが認められています。
ルールでは5m以内のポールで水分を渡す
ルールでは、大会ごとに給水用の桟橋が決められていて、その場所からフィーディングポールと呼ばれる釣り竿のような竿を伸ばして給水を行います。
ポールの長さはルールで5m以内と決められていて、ポールの先端に付けたカップにドリンクや補給食などを入れ、競技する選手に渡すのです。
マラソンスイミングは2時間ほど泳ぐ水中の長距離レースで、体力の消耗を抑えるために水分補給は欠かせません。
ルール②:歩くことは禁止
マラソンスイミングのルールでは、コースのどの地点でも水深は1.40m以上を必要とします。ちなみに、レース中に足が底に届けば水中で立つことは許され、失格にもなりません。
ただし、競技中に水中を1歩でも歩いたり、ジャンプして移動することは禁止されていて、これらを行うと失格となるルールになっています。
基本ルール
項目 | ルールの詳細 |
競技エリア | 海・川・湖 |
距離 | 10km |
泳法 | 自由形 |
ウエア | 首や肩や肩を超える長さ禁止 |
給水 | 可能 |
マラソンスイミングの見どころと戦略
10kmを2時間かけて泳ぐマラソンスイミングは水泳技術だけでなく、勝利するための戦略も重要になってきます。レース展開やスタミナ配分に、ルールに従うウエアや水分補給まですべて万全に準備して対応しなければ、簡単には勝利できないようです。そんな、マラソンスイミングの見どころや戦略を紹介します。
見どころと戦略①:天候対策
マラソンスイミングは台風や暴風雨など極端な悪天候になれば中止となることはありますが、多少の雨や風であればレースは行われます。
また、晴れていてもレース中の風向きが重要です。風により波は常に起き、風向きがレース中に変わることもあります。少しでも、波や風の影響を受けないようにするか、風や波も味方に付けるようなレース運びが必要なのです。
見どころと戦略②:スタミナ配分
10kmを2時間ほどかけて泳ぐマラソンスイミングですが、フィニッシュ時にタッチの差となることもあり、レースは駆け引きが重要です。
また、2時間近く泳いでラストスパートのスプリントで決着するために、スタミナの配分も考える必要があります。そこからレースのペース配分やスパートの仕掛けどきが重要なのです。
見どころと戦略③:コース特性と位置取り
マラソンスイミングは屋外の海や川や湖でコースが設定されます。そのためコースが全く同じ条件になることはありません。それぞれのコースに独自の特徴があり、事前に潮の流れや川の流れを把握しておくことが重要です。
また、10kmも泳ぐのでどのポジションを確保するかで体力の消耗が変わってきます。先頭を切って泳ぐよりも、先頭の選手に上手について泳いでいくと、水の流れが起きてその流れに乗って軽快に泳ぐこともできるのです。
見どころと戦略④:ラストスパート
10km泳ぐだけに後半勝負となるレースが多く、相手の出方を見ながら何kmくらいでスパートをかけるかが勝負の決め手となることがあります。
7kmや8kmあたりから徐々に差を広げて逃げ切るレースや、あくまでトップを泳ぐスイマーに付いていって、ラスト数百mで抜き去る作戦もあるのです。
マラソンスイミングの起源と発展
古代から人間が川や海を泳いでいた記録があります。その頃の水泳は生きていくための生活の一部だったのようです。当時は川や海で泳いでいたので、現代のオープンウォータースイミングの起源ともいえます。
中世になると海運の発達や、海軍の増強で水泳が必須訓練となり、水泳が発達していき、遠泳も必要となり、1時間も2時間も泳ぐ訓練もありました。
ドーバー海峡横断など遠泳が人気に
近代になり、第一回のオリンピックから競泳は正式種目として採用されました。しかし、長距離を泳ぐマラソンスイミングは水泳種目には選ばれていません。
ですが屋外の水泳の人気が無かったわけではなく、1875年8月25日にイギリス人男性のマシュー・ウェッブがドーバー海峡を横断したように、屋外で長距離を泳ぐ遠泳も行われていました。
オープンウォータースイミングはヨーロッパで人気
その後も人々は海や河川や湖などで遠泳を楽しみ続けました。1980代になるとヨーロッパから屋外で長距離を泳ぐ水泳大会が開催されるようになり、日本はじめ世界各地でも遠泳大会が盛んに開催されるようなっていきます。
やがて長距離水泳が人気となっ来たのを受け、国際水泳連盟がアウトドアの水泳大会に統一性を持たせました。ルールも整備してオープンウォータースイミングとしてマラソンスイミングを競技をとして成立させたのです。
1991年に第一回大会開催
マラソンスイミング初の正式な大会は、1991年に国際水泳連盟がオーストラリアのパースで開催した世界選手権。当時は男子、女子ともに25kmのレースが行われ、5時間以上かけて泳いだハードな競技会だったのです。
そこから2001年になると10kmのレースがマラソンスイミングとして公認されました。どんどん発展を遂げるマラソンスイミングは現在、世界各地で大会が開かれるほど人気種目になっています。
マラソンスイミングは北京五輪から正式種目
マラソンスイミングは、2008年の北京オリンピックから正式種目として水泳競技の一種目として採用されました。それ以後のオリンピック大会では連続して採用され、2020年東京オリンピックではお台場海浜公園で実施されています。
2020東京五輪の結果と世界記録
以下は2021年に開催された、2020東京オリンピックのマラソンスイミングのメダリストと日本人選手の結果です。日本人男子選手も女子選手も13位でしたが、着実に力をつけ、今後は世界でさらなる活躍が期待できます。
マラソンスイミング女子成績
順位 | 選手 | 国 | タイム |
金 | アナ・クーニャ | ブラジル | 1:59:30.8 |
銀 | シャロン・ファン・ラウエンダール | オランダ | 1:59:31.7 |
銅 | カリーナ・リー | オーストラリア | 1:59:32.5 |
13位 | 貴田 裕美 | 日本 | 2:01:40.9 |
マラソンスイミング男子成績
順位 | 選手 | 国 | タイム |
金 | フロリアン・ベルブロック | ドイツ | 1:48:33.7 |
銀 | ラショフスキー・クリシュトーフ | ハンガリー | 1:48:59.0 |
銅 | グレゴリオ・パルトリニエリ | イタリア | 1:49:01.1 |
13位 | 南出 大伸 | 日本 | 1:53:07.5 |
マラソンスイミングの世界最速記録
マラソンスイミングは同じルールで泳ぎますが、競技エリアにより泳ぎ切るタイムは大きく変わってきます。そのため、あくまで参考記録としての捉え方ですが、現在の時点で最も早くマラソンスイミングを泳いだ記録が以下になります。
世界記録
性別 | 選手 | 国 | タイム |
女子 | アンジェラ・マーラー | ドイツ | 1:48:41.9 |
男子 | スピルドン・ジアニモティス | ギリシャ | 1:40:29.5 |
日本記録
性別 | 選手 | タイム |
女性 | 平下 心 | 1:57:34 |
男性 | 東 翔 | 1:50:24 |
マラソンスイミングのルールを知って楽しもう
マラソンスイミングのルールについて競技環境や水泳技術や戦略などを広範囲に取り上げて紹介しました。オリンピック種目にも採用されている競技ですが、日本全国で市民が参加できる大会もあり、新しい水泳の楽しみ方の一つとして人気になっています。
マラソンスイミングのルールを知って、全国各地で開催されている市民大会に参加したり、世界大会を楽しく鑑賞しましょう!
マラソンスイミングのルールが気になる方はこちらをチェック!
10kmの長距離を泳ぐマラソンスイミングのルールを中心に戦略や技術も取り上げました。マラソンスイミングはオリンピック種目としては歴史が浅いのですが、最近は一般市民にも人気になっている水泳競技の一つです。
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