飛び込みは欧米では人気の高い水泳競技
長い歴史のある飛び込みは、日本の競技人口は愛好者も含めると約700人と少ない点や施設も少ない点から、メジャーな競技とはされていません。しかし欧米における飛び込みの人気はとても高く、競技人口も多い水泳競技として人気があります。
飛び込みは男子と女子ともに「高飛び込み」「飛板飛び込み」「シンクロナイズドダイビング」の3種あり、それぞれに見どころがあります。ぜひダイナミックな水泳競技としての飛び込みの歴史などについてチェックしてください。
飛び込みの「レジャー」と「競技」の歴史
レジャーとしての起源と歴史
英語で「ダイビング」ともいわれている高飛び込みの歴史は古く、それにはいくつかの起源があります。海賊が出没していた1700年前後に船員がマストから海に飛び込んで遊んでいたとするものや、ハワイの先住民族が滝つぼから飛び込んで遊んでいたとするものなどです。いずれも度胸試し的なレジャーだったことがうかがえます。
日本でも川遊びで飛び込みをした経験がある人もいることから、高飛び込みは国や時代に関係なく冒険心をくすぐる歴史的な遊びといえるでしょう。
水泳競技としての起源と歴史
水泳競技としての飛び込みの歴史は、残念ながら正確な記録が残っていません。ドイツの歴史において飛び込みの種類や型が考えられたとの記録があるそうですが、やはり正確な情報ではないようです。
近代飛び込みの歴史として認識されているのは、ドイツやスウェーデンの機械体操の選手が、トレーニング時での安全性のために床よりもやわらかい水面を利用したというものです。のちに体操選手が独立し、飛び込みをメインに取り組むようになったと歴史では伝えられています。
世界最初の飛び込みの競技大会
飛び込みの歴史において水泳競技として世界で最初に開催されたのは、1886年(明治19年)のドイツでの水泳選手権といわれています。世界初の国際競技大会としての歴史は、1890年(明治23年)にイギリスがスウェーデンの選手を招いたものです。
しかし歴史を振り返るとその型はシンプルなものといわれており、足または頭から水中に飛び込むだけのものだったといわれています。
オリンピックにおける飛び込みの歴史
米国セントルイス大会から開始
飛び込みの歴史を振り返ると、男子の正式種目になった最初のオリンピックは、1904年(明治37年)に米国で開催された第3回オリンピック・セントルイス大会からです。女子の歴史では1912(明治45年)からの種目になっています。
歴史上「高飛び込み」のみが、オリンピック大会における飛び込み競技の正式種目とされていました。しかし1908年に開催されたロンドンオリンピック大会から「飛板飛び込み」も正式種目になったという歴史があります。
演技種目が発達したパリ大会
歴史を振り返ると飛び込みの演技種目が著しく発達したのは、1924年(大正13年)の第8回オリンピック・パリ大会といわれています。第二次世界大戦によって飛び込みの歴史は中断されますが、戦後の歴史ではアメリを始め旧ソビエトや中国の選手たちが活躍するようになりました。
この間の飛び込みの歴史としては、オリンピックが開催されるたびに競技ルールの改正や施設の改善などがされ、世界的な発展を遂げています。
評価は芸術性から技術性へ
第17回のオリンピック・ローマ大会までの歴史では、飛び込みの競技の中心的評価は美しさにポイントを置いた芸術的要素でした。しかし第18回の東京大会からは技術的要素を重視する傾向が強くなり、回転やひねりなどの高度な技が評価されるようになったという歴史があります。
第22回オリンピック・モスクワ大会頃からの飛板の性能向上もあり、現在でも飛び込みの歴史上最高の前宙返り4回転半の宙返り、ひねり4回転半の大技を出す選手が現れました。
進化し続ける飛び込みの技
飛込みの歴史が長くなり、最近のオリンピック大会の歴史を確認すると技術がさらに進化していることがわかります。代表的なのは、前宙返り2回転半・3回ひねり・前逆宙返り2回半・2回半ひねりとなり、飛び込みの技術として非常に有名です。
長い飛び込みの歴史において、選手たちのたゆまぬ努力や体力強化による技術向上、そして施設などの環境整備の歴史があるからこそ、飛び込みの魅力が増してきているといえます。
「飛び込み3種」の共通な見どころ
飛び込みの競技は「高飛び込み」「飛板飛び込み」「シンクロナイズドダイビング」の3種類となり、それぞれに見どころが異なります。しかし共通点があり、飛板の踏み切りから入水までの1.8秒で演技を行わなければならないことです。わずかな時間で演技をしなければいけないため、選手には非常な精神力が求められます。
選手から伝わる緊張感やスリルなどを想像することも、飛び込み競技を観賞する醍醐味といわれています。
高得点の入水方法
飛び込み競技の演技は入水して終了となりますが、高度な技として入水時に水しぶきを上げない「ノースプラッシュ」という方法があります。通常は高い位置から入水すると水しぶきが上がるのは必然ですが、高得点を狙える選手はノースプラッシュが可能なのです。
さらに、唇をはじく小さな音だけの水飛沫が上がらない入水方法の「リップ・クリーン・エントリー」も高得点になっています。これらの点にも注意して飛び込み競技を観賞してみてください。
「飛び込みの3種」の各見どころ
飛板飛び込みの見どころ
「飛板飛込」は、弾力のあるジュラルミン製の飛板を利用して踏切り、空中高くに飛び上がる水泳競技です。飛び板の弾力を利用することから、「高飛込」よりもさらに技術が必要とされています。
見どころは宙返りとひねりの高度な技術自体もですが、その姿がいかに美しく優雅な演技をしているかが大きなポイントになっています。飛び込みの評価は高く飛ぶほどに技術的な難易度が上がるため、見どころが大きくなる点も特徴です。
高飛び込みの見どころ
「高飛込」の見どころは、高さ10mに固定された台から選手は助走をつけて踏切り、空中に飛び出して行う宙返りやひねりの演技にあります。踏切台では正面だけではなく、逆立ちした姿勢で入水する演技も見ものです。
10mの高さからの時速は、自然に落下するだけでも50㎞もあり、それ以上の高さになるとさらに速まります。緊張感が高まるスピードと共に、美しく繰り出される複雑な技術が見ごたえの水泳競技です。
高飛び込みは2013年から世界水泳選手権で実施
「高飛び込み」の歴史は、断崖絶壁などから飛び込みを行うことに起源があり、競技の歴史は世界選手権の2013年からとなります。選手の競技舞台は、港湾などの水深が充分に確保できる、屋外に設置された男子27m・女子20mの飛び込み台です。
「高飛込」は「飛板飛込」よりもリスクが高いことから、必ず足から入水することや3名のダイバーが待機するなどの特徴があります。
シンクロナイズドダイビングの見どころ
シンクロナイズドダイビングは、3mの飛板飛び込みと10mの高飛び込みの2種類があります。選手2名が演技をシンクロさせて行う競技となり、完成度とシンクロナイズゼーション(同調性)を競います。技術の完成度よりも同調性が重視される点が、この競技の特徴です。
シンクロナイズドダイビングの歴史は、1998年の豪州パースで開催された世界選手権から始まります。オリンピックの歴史は正式種目になった2000年のシドニー大会からです。
飛び込みのオリンピック注目選手
2020年東京オリンピックの上位選手
オリンピックの歴史上では欧米選手の上位独占が定着していましたが、近年は状況が変化しました。2021年に延期された2020年東京大会では、男子の「飛板飛び込み」「高飛び込み」「シンクロ板飛び込み」は中国選手がメダルを獲得したのです。
「シンクロ高飛び込み」の金メダリストはイギリス選手ですが、銀メダルは中国選手が獲得しています。女子では全種目において中国選手が金メダリストになり、近年、国を挙げて育成環境を整えている中国の成果といえます。
日本の男子選手の歴史と成績
日本人が飛び込み競技に参加するようになったのは、1928年のオリンピアゾーン・アムステルダム大会でした。歴史上の最高位は、4位に入賞した1936年の芝原恒雄選手です。
2021年の東京オリンピックは、「飛板飛び込み3mに」寺内健選手と坂井丞選手が5位に入賞しています。「高飛び込み10m」は玉井陸斗選手が7位と健闘しました。オリンピックの歴史を振り返ると日本人選手にとって飛び込みは、高い壁といえそうです。
日本の女子選手の歴史と成績
歴史では女子のオリンピック参加は1912年(明治45年)からとなり、歴史上の最高位は男子と同じく1936年の大沢礼子選手による4位です。
20201年開催の東京オリンピックでは、「飛板飛び込み3m」に榎本遼香選手と宮本葉月選手が5位に、「高飛び込み10m」では板橋美波と荒井祭里が6位に入賞しています。「飛板飛び込み3m」は、2000年大会から2016年大会まではエントリーせず、競技人口の薄さが感じられるようです。
日本の飛び込み競技の弱点
男子も女子も日本選手のメダル獲得が実現しない第一の理由は、専用の練習場所である飛び込みプールを確保できないという環境不備があげらます。
他の水泳競技であれば一般的な競泳プールでも練習ができますが、飛び込みの場合はそうはいきません。その結果、日本の飛び込みの歴史において選手並びに指導者数が少ないという課題が指摘されています。しかし次回オリンピックは、今回入賞した若手の坂井丞・玉井陸斗・榎本遼香・宮本葉月選手の活躍を期待しましょう。
飛び込みのルールに詳しくなれる作品
長い歴史のある飛び込みの競技内容やルールは細かく、覚えるのはなかなか大変です。そこで飛び込みを題材にした漫画やアニメ、小説などで知識を仕入れるのもおすすめです。様々な作品を通して、楽しみながら飛び込みの歴史やルール、見どころなどについてインプットできるかもしれません。
おすすめの作品『ラフ』あだち充
『ラフ』は、名作『タッチ』でお馴染みのあだち充が1987年から2年間にわたって発表した漫画です。2006年には長澤まさみさんと速水もこみちさんの共演で実写映画化もされています。野球モノのようにストーリーが長引くことなく簡潔に表現された内容は、あだち作品の傑作上位に挙げる人も多いようです。
作品では飛び込みだけではなく他の水泳競技も絡めて描かれており、水泳競技の奥深さが感じられるといわれています。
おすすめ作品『DIVE!!』森絵都
『DIVE!!』は2000年から2002年にかけて発表された、森絵都のスポ根をテーマにした青春小説です。内容は、赤字のために存続の危機に陥っていたダイビングクラブを立て直すべく、オリンピック出場を掛けて青春の情熱をぶつけ合う物語となります。
2003年のNHKのラジオドラマ化と映画化、2008年と2017年に漫画化、2018年には舞台版の上映、そして2021年にはドラマ化がされるなど、息の長い良作として愛されています。
おすすめ作品『永遠の1.8秒』
『永遠の1.8秒』はシンクロナイズドダイビングを題材にした、成海璃子さんと星井七瀬さん主演で2007年に放送されたテレビドラマです。シンクロナイズドダイビングの選手でもある仲のよい2人の女子高生が、1枠しかない大学推薦のために微妙な関係になりながら、それぞれの道を模索していくという物語になっています。
作品の題材としては珍しいシンクロナイズドダイビングの息の合った演技と2人の瑞々しい演技も見ものです。
次のオリンピックは飛び込みに注目!
水泳競技としての飛び込みは、日本ではあまりメジャーなイメージがありません。しかし演技力の技術的な高さや芸術的な美しさ、1.8秒に込められた選手の精神力を垣間見られることは、実に感動的なことといわれています。
次回のオリンピック・フランス大会は、もう少し先の2024年の開催となります。ぜひ今のうちに飛び込みの歴史やルール、見どころなどをチェックしてみてはいかがでしょうか。
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出典:photo-ac.com