オリンピックの華・競泳の歴史
オリンピックで人気の水泳は、男女ともに種目が多い競技として有名。ヨーロッパ、南北アメリカ、オーストラリアに中国やアジア各国にも強豪選手がいる激戦区の種目ではありますが、日本の得意種目の一つで、歴史上オリンピックで多くのメダㇽを獲得しています。
水泳好きな日本人は多い
日本で水泳は人気が高いスポーツです。年に1回以上は泳ぐという方は、国内で約1200万人いるといわれており、その中でも競泳に関係する競技の人口は約21万人もいます。小中学校始め体育時間の水泳授業も盛んで、水泳は日本人にとって身近なスポーツといえるでしょう。
今回は、「世界の競泳の歴史」「日本の競泳の歴史」に「ウエアの歴史」や「競泳4泳法の歴史」などを詳しく紹介します。
世界の「競泳」の歴史
古代の人間は生まれながらに備わった泳ぐ能力を活かして水中で食べ物を得たり、川を渡って新天地へ移動してきました。
「泳ぐ」という行動は人類が生きていくために欠かせない能力だったのです。そんな人類が泳ぐ能力を競泳まで進化させた歴史を紹介します。
世界の競泳の歴史①:産業革命時に競技水泳が誕生
人類は長い期間、生きていくために生活の一部として川や海を犬かきや横泳ぎで泳いでいたようです。
水泳の技術に大きな転機が訪れたのは19世紀に起きたイギリスの産業革命の頃。このころから水泳を競技として捉え、泳法を考える人々が現れだしました。
最初のきっかけとなったのは、生活にゆとりが出た人々の間で水泳の賭けレースが流行したこと。泳ぎにスピードが要求されるようになったことで、泳法が改良されていったのです。
世界の競泳の歴史②:19世紀に現代の競泳が始まる
競技水泳の始まりと言われているのが、19世紀にイギリスのハイソサエティの青少年たちが学校対抗で競った水泳大会です。
世界初の公式水泳大会は、1837年にロンドンのハイド・パークのサーペンタイン・レイクをプールのように区切り開催されました。これが競泳の歴史の始まりといわれています。
世界の競泳の歴史③:競泳は第1回五輪から実施
競泳(水泳)は1896年にギリシャのアテネで開催された、第1回オリンピックから実施されている歴史を誇る競技です。種目は100m、500m、1200m自由形の3種目のみ。この頃は、レースに参加した選手全員が平泳ぎで泳いていました。
ちなみに、古代オリンピックでは、水泳は競技種目として採用されていませんでした。水泳は近代オリンピックから採用されたのです。
世界の競泳の歴史④:1956年に4泳法がそろう
アテネ大会後に背泳ぎが普及し、1900年の第2回パリ大会から背泳ぎが正式種目に追加されています。その後の1904年の第3回セントルイスオリンピックからクロールが登場し、自由形に採用されたことで平泳ぎが独立した種目になりました。
さらに1952年の第16回ヘルシンキオリンピックでは平泳ぎで多数の選手がバタフライの手のかきを用いるようになったことで、1956年メルボルンオリンピックからバタフライが独立種目になっています。
世界の競泳の歴史⑤:2年毎に世界水泳大会開催
水泳は世界中で人気が高いスポーツで、オリンピックだけでなく、2年に一度開催される国際水泳連盟(FINA)主催の世界選手権、日本では「世界水泳」と呼ばれる競泳大会も、オリンピックについで人気になっています。
世界水泳は1973年にユーゴスラビアのベオグラードで第1回が開催され、2001年に福岡で第9回が開催されました。また、2022年には再び福岡で19回目の世界水泳が開催される予定です。
日本の「競泳」の歴史
日本の競泳の歴史①:生きるために泳いでいた時代
日本は島国なので昔から泳ぐという行為になじみが深く、川や水に親しんだ記録は大変古い時代からあります。
縄文時代以前から日本に住み着いた人たちが、魚介類採取のため水に入っていたのは貝塚などの遺跡から推察できますし、奈良時代や平安時代の万葉集の中には、海女が潜ってアワビを獲ったことを詠った和歌も残されています。ですが、この時代はあくまで生きるために泳いでいたのです。
日本の競泳の歴史②:日本泳法の発達
戦国時代になると、泳ぐことが戦場で必要とされることがあり、泳ぐ技術も武術の一種とみなされていました。
当時は現代の水泳と異なる泳ぎ方で、「水術」「水練」「游泳術」「泅水術(しゅうすいじゅつ)」など呼ばれ、日本各地で発達し現在も古式泳法13流派が残っています。
古式泳法は戦闘を目的としていることから、横泳ぎや立ち泳ぎなどが主な泳ぎ方で、泳ぎながら刀を振り回したり、火縄銃を撃ったりすることもできたのです。
日本の競泳の歴史③:大正時代に競泳がスタート
明治時代になり、欧米からスポーツとして水泳が入ってきて、徐々に競技水泳が国内へ広まっていきました。
日本初の全国大会は大正3年(1914年)に現在の大田区の大森海岸で開催されています。また、現在の日本水泳連盟の起源となる組織が大正13年(1924年)に発足し、水泳大国日本のスタートを切りました。
古式泳法は現在まで受け継がれている
隊列を組んで遠泳を行ったり海や川での遊泳を主体にして、泳速を競うことに重きを置かない古式泳法は残念ながら競泳では採用されませんでした。
それでも、古式泳法は武道、鍛錬の面を残し、各流派で範士、教士、練士、游士、如水、和水、修水の資格を認定し現在まで受け継がれています。
日本の競泳の歴史④:1920年にオリンピックに初参加
日本が初めてオリンピックの水泳競技に参加したのは1920年の第7回アントワープ大会です。内田正練選手と斎藤兼吉選手が出場しましたが2名ともに予選落ちでした。
しかし、1928年の第9回アムステルダム大会になると男子200m平泳ぎで鶴田義行選手が優勝し、日本人の競泳選手として歴史残る初の金メダルを獲得しました。その後のオリンピックでも、日本人選手の目覚ましい活躍を続けていきます。
日本の競泳の歴史⑤:金メダル24個の実績
日本は1930年代~1970年代初めまではオリンピックでメダルを獲得しています。しかし、世界各国に水泳が普及し競争は厳しくなっていきました。それでも、日本人選手のたゆまぬ努力で現在もメダルを獲得し続けているのです。
これまでに水泳はオリンピックで、金24個、銀27、銅32個の合計83個を獲得しています。以下はこれまでのオリンピックのゴールドメダリストの一覧です。
日本の競泳の金メダリスト一覧
年 | 場所 | 選手 | 種目 |
1928 | アムステルダム | 鶴田義行選手 | 男子200m平泳ぎ |
1932 | ロサンゼルス | 宮崎康二選手 北村久寿雄選手 清川正二選手 鶴田義行選手 豊田、宮崎、遊佐、横山選手 |
男子100m自由形 男子1500m自由形 男子100m背泳ぎ 男子200m平泳ぎ 男子4×200m自由形リレー |
1936 | ベルリン | 寺田登選手 葉室鉄夫選手 前畑秀子選手 新井、杉浦、田口、遊佐選手 |
男子1500m自由形 男子200m平泳ぎ 女子200m平泳ぎ 男子4×200m自由形リレー |
1956 | メルボルン | 古川勝選手 | 男子200m平泳ぎ |
1972 | ミュンヘン | 田口信教選手 青木まゆみ選手 |
男子100m平泳ぎ 女子100mバタフライ |
1988 | ソウル | 鈴木大地選手 | 男子100m背泳ぎ |
1992 | バルセロナ | 岩崎恭子選手 | 女子200m平泳ぎ |
2004 | アテネ | 北島康介選手 北島康介選手 柴田亜衣選手 |
男子100m平泳ぎ 男子200m平泳ぎ 女子800m自由形 |
2008 | 北京 | 北島康介選手 北島康介選手 |
男子100m平泳ぎ 男子200m平泳ぎ |
2016 | リオデジャネイロ | 萩野公介選手 金藤理絵選手 |
男子400m個人メドレー 女子200m平泳ぎ |
2020 2021 |
東京 | 大橋悠依選手 大橋悠依選手 |
女子200m個人メドレー 女子400m個人メドレー |
オリンピック競泳4泳法の歴史と特徴
一番歴史が古い平泳ぎ
平泳ぎはもっとも古くから泳がれている歴史ある泳ぎ方とされています。比較的手足の動きが容易で、ゆっくりと長い距離を泳ぐ場合にも適していて馴染みやすい泳法でしょう。
競泳用の平泳ぎの泳ぎ方のひとつに「ウェーブ泳法」があります。平泳ぎの一かきごと、息継ぎのたびに水中から頭を出す泳法です。ウェーブ泳法で手のかきと足の蹴りが一段と強さを増し、より速く泳げます。歴史的に日本が得意とする種目で、平泳ぎで12個の金メダルを獲得しているのです。
背泳ぎは平泳ぎから生まれた
背泳ぎ、背泳(はいえい)ともいいますが、背泳ぎの歴史も古く、昔から上向きで浮かぶように泳いでいたようです。オリンピックでは第2回のパリ大会から採用されています。
かつての背泳ぎは、同時に両手を動かして水をかいていましたが、その後交互に手をかくクロールの有効性が知られるようになって、現在の背泳ぎのように交互に手を回すように変化しました。
一番早いクロール
現在の自由形の主流となっているクロールの歴史は、1873年にイギリスのアーサー・トラジオンが考案した「トラジオン・ストローク」が起源となっています。
トラジオン・ストロークは、左右交互に腕を回して、息継ぎを行い、力強く前進していく泳法で初期のクロールです。それまでの平泳ぎのストロークに比べ、より速いスピードで泳ぐことが可能になっていきました。現在では4種類の泳ぎ方の中で一番速い泳ぎ方です。
一番歴史が新しいバタフライ
バタフライが初めてオリンピックに登場したのは、1928年のアムステルダムオリンピックで、当時は平泳ぎとして泳いでいました。
その後、平泳ぎ種目ながら大部分の選手がバタフライで泳ぐようになり、1956年のメルボルンオリンピックからバタフライは平泳ぎから独立して単独種目になりました。バタフライは4種目の中で一番歴史が浅い泳法です。
科学的な練習も重要
オリンピック種目の競泳は用具を使用することなく、身体運動のみによって泳ぎ速さを競う競技です。スタートやターンやタッチの技術力などもトップスイマーには重要になります。競泳は力任せでもうまくいかず、スタミナ配分も重要で、科学的な練習も重要なのです。
競泳用ウエアの歴史
競泳は指の長さの差で順位が決まることもあり、水の抵抗を抑えるために競泳用の水着は大変重要になり、年々進化しています。
基本的に公式レースで装用する競泳用の水着は、水泳連盟の公認を受けた水着でなければ大会に出場することができません。それほど、競泳で重要となる水着の歴史を紹介します。
ウエアの歴史①:絹のウエアからスタート
競泳水着の素材は化学繊維が採用されるまでは、長く絹がウエア素材として使用されていました。その後、1960年代になるとナイロン素材を取り入れた水着が登場し使用されるようになり、身体にぴったりとフィットする水着が主流になってきたのです。
ウエアの歴史②:レーサーバックスタイルの出現
1970年代に入るとナイロンにポリウレタンを混合させた水着が出現し、縦横へよく伸び、伸縮性が備わった水着が人気になりました。
競泳で重要になる肩や腕の動きがスムーズになるようにデザインされた、肩甲骨部分が大きくカットされた「レーサーバックスタイル」が登場しています。
ウエアの歴史③:超極細繊維の水着が誕生
1980年代に入ると、東レとミズノが超極細繊維の新素材「アクアピオン」を開発し水着に使用されました。生地の凹凸がそれまでの1/2になり、表面がいっそうなめらかになり、従来の水着に比べ水の抵抗が約10%軽減されたのです。
1990年代にさらに進化
1990年代に入るとそれまでの水着の表面に、ストライプ状にフッ素系撥水剤をプリント加工し、水の摩擦抵抗をいっそう減らした「アクアブレード 」が誕生します。条件にもよりますが水の抵抗がさらに約15%軽減されたのです。
ウエアの歴史④:高速水着で好記録続出
画期的な水着といわれたのが、2008年にイギリスのスピード社が開発した「レーザーレーサー」。高速水着ともいわれ、生地を縫合をせずに特殊な超音波で接着して縫い目をなくし、水の抵抗が大きく軽減されました。
2010年から高速水着は禁止になる
極限まで身体にフィットさせ可能な限りフラットな体形とし、好記録が続出したのです。ただし、着用するときは1人で着ることができず、他人の手を借り時間がかかりました。現在は繊維製の水着しか認められず、このタイプの高速水着は使用禁止になっています。
ウエアの歴史⑤:最新水着を継続開発中
現在の水着は素材や身体を覆う面積の規定があり、水着により競技成績が大きく左右するような状況は減っています。しかし、競泳選手のパフォーマンスを最大減引き出せるように各メーカーが創意工夫し、最新のウエアを開発する歴史は続くのです。
競泳の歴史を知って楽しく観戦しよう!
競泳について、世界の競泳の歴史と日本の競泳の歴史を紹介しました。人類は生きるために古代から水に親しんできたのです。泳ぎを戦闘のための武術として鍛えてきた歴史も残っています。
そんな水泳は年齢を問わないスポーツで、親子で競泳を楽しむこともできます。年々、競泳はスポーツとして洗練され、高額の賞金レースも開催されつようになりました。競泳を趣味として楽しみ、トップスイマーの競泳を楽しく観戦しましょう!
競泳の歴史が気になる方はこちらをチェック!
水泳競技の競泳について歴史を中心に取り上げました。競泳は第1回のオリンピックから採用されている歴史を誇る競技です。競技人口も多く、水泳は健康増進効果も高く、老若男女が手軽に楽しめます。
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