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【白く細長い花が魅力】日本古来の花ハマユウの植物図鑑!花言葉や名前の由来も紹介!

ハマユウ(学名Crinum asiaticum)は美しい花と匂いが魅力の植物です。原産地が日本のものもあり、江戸時代から栽培されてきた歴史を持ちます。この記事ではハマユウの名前の由来や開花時期を解説。ハマユウの生態にちなんだ魅力的な花言葉もご紹介します。
2021年5月28日
みもざ
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目次

日本古来の花「ハマユウ」とは

ハマユウ(浜木綿)はヒガンバナ科の植物です。日本でヒガンバナというと、赤い花を咲かせる印象が強いかもしれませんが、ハマユウの花は白色です。

ハマユウの種類のなかには日本が原産地のものもあります。歴史のある花なので、和風旅館などの部屋名に「はまゆう」とつけられているのを見た人もいるかもしれませんね。そんなハマユウの名前の由来や栽培の歴史をひも解きながら、生態に迫ってみましょう。

ハマユウの基本情報

学名 Crinum asiaticum
植物分類 ヒガンバナ科ハマオモト属
和名 浜木綿(読み方:ハマユウ)
別名 浜万年青(読み方:ハマオモト)

ハマユウの名前の由来

浜木綿と書いて「ハマユウ」という読み方はユニークに感じるかもしれません。名前の由来を知ると日本で愛されてきた植物の歴史を感じられるでしょう。

日本でもっとも古い歌集「万葉集」にもハマユウは登場し、その歴史の古さがわかりますね。なぜ「木綿」と書いて「ゆう」と読むのかなど気になる点を詳しく解説します。

ハマユウの由来は「木綿」

ハマユウの名前の由来は細長い白い紙で作られる神具「木綿(読み方:ゆふ・ゆう)」にちなみます。ハマユウの花びらは白く、細長い形をしています。この花の形が木綿に似ていることが名前の由来となりました。

ハマユウが神具に用いられるほど日本で古くから咲いていた歴史ある植物ということがうかがえる由来ですね。

木綿(ゆふ)とは

木綿は楮(読み方:こうぞ)などの樹皮を繊維に沿って縦に細長く割いたものです。神道ではこの木綿を神様に捧げる幣帛(読み方:へいはく)に使用したり、榊につけて由布垂(読み方:ゆうしで)にしたりとさまざまな形で利用します。

Question

木綿と書いて「もめん」と読まずに「ゆふ」と読むのはなぜ?

Answer

日本に木綿(もめん)が伝わるより前は、麻や楮を使って白い布や紙を作って木綿(ゆふ)と呼んでいました。後に伝来した木綿(もめん)も白い繊維だったため、漢字は同じで、読み方で区別したのかもしれません。

別名ハマオモトの由来は「オモト」

ハマユウの別名は「ハマオモト(学名:Rohdea japonica)」です。ハマユウの葉の形がオモト(万年青)と呼ばれるスズラン亜科の植物に似ていることからつけられました。

学名や植物分類からも分かるように、ハマユウとハマオモトはまったく異なる種です。しかし、ハマユウもオモトもどちらも江戸時代には栽培されていたようで、人気があり、見た目が似ていたため、このような別名がつけられたのかもしれません。

江戸時代にはオモト栽培ブーム到来

Photo by Ashley Basil

オランダでチューリップの変異した種類を競って栽培したように、江戸時代には「オモトブーム」が巻き起こりました。

斑入りや矮性種など、珍しい種類を競って栽培したという記載も歴史書に残されているほか、徳川家康へ献上されたという事実も残されています。

オモトの栽培方法について気になる方はこちらもチェック

江戸時代から縁起がいい植物として栽培されてきたオモト。明治時代にはオモト1鉢に1億円(現在の貨幣価値に換算して)の値がつけられたこともあるほどです。現在でもオモト愛好家は多くいます。そんなオモトの育て方を解説した記事はこちらから。

ハマユウの植物図鑑


日本の歴史をひも解きながらハマユウの学名や植物分類、名前の由来についてご紹介しました。神道と日本の歴史を感じさせる由来でしたが、植物の特徴としてはどんなものがあるのでしょうか。植物図鑑のようにハマユウの魅力と特徴についてご紹介します。

ハマユウの植物図鑑①学名・植物分類

ハマユウの学名はCrinum asiaticumで、ヒガンバナ科の仲間です。厚みのある細長い葉が茂り、その中央からまっすぐと茎が立ち上がり、その先端に次々に花を咲かせる様子を見ても、ヒガンバナに近い種類であることがよくわかります。

Question

ハマユウはユリにそっくりだけどユリ科じゃない?

Answer

現在の植物分類体系はAPG体系です。以前、採用されていたクロンキスト体系では、ヒガンバナ科とユリ科は1つに分類されていました。つまり植物図鑑によって分類が異なるのは分類体系の違いということになります。

ハマユウは海浜植物

ハマユウはユリやヒガンバナに近い種類ですが、生育分布地は山間部などではなく、海辺です。おもに日本南部の温暖な海辺に分布し、海浜植物に分類されます。ハマユウやハマオモトの「ハマ」が「浜」であるのはハマユウが海浜植物であることが理由です。

ヒガンバナについて気になる方はこちらもチェック

真っ赤で繊細な花を咲かせるヒガンバナは映画やドラマ、漫画にもよく登場する花の1つ。毒性を持つことは図鑑などにも記載されており有名ですがほかにも面白い生態があります。

ヒガンバナの開花時期や原産地などについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

ハマユウの植物図鑑②種類

植物図鑑を眺めると、ハマユウには種類がいくつか目にします。ユリのようなインドハマユウ(学名:Crinum zeylanicum)や蜘蛛のようなスパイダーリリー(学名:Hymenocallis speciosa Salisb.)がハマユウと同じヒガンバナ科の種類。

いずれも原産地が日本のハマユウとよく似た見た目ですが、インドハマユウ、スパイダーリリーの原産地はインドです。

日本原産の種類は亜種

日本に古くから自生していたといわれるハマユウは、亜種で学名はC. a. var. japonicumです。学名に「日本」を意味するjaponicumとついていることからも日本が原産地であることがよくわかります。

ハマユウの植物図鑑③花の特徴と開花時期

ハマユウの花はヒガンバナのように白く細長い花びら(厳密には花被)が特徴。この白く細長い花びらは先端部が下へ向かって反り返るようにして咲きます。開花とともに強い花の匂いが立ち込めるのも魅力です。

開花時期は夏。夏の日差しが降り注ぐ白い浜辺にいい匂いをそよがせるハマユウは美しく、開花期を迎えた群生地は観光地としても人気です。

ハマユウの植物図鑑④アルカロイド系毒を持つ

存在感ある美しい花を咲かせ、甘い匂いを漂わせるハマユウですが、ヒガンバナと同じ種類に分類されるだけあって有毒植物です。ヒガンバナに非常に近い種類のため、毒性もヒガンバナ同様アルカロイド系の毒があり、食べると嘔吐や下痢を引き起こします。

ペットや小さなお子さんが口にする事故は想像以上に多く発生しているので、安全な場所に管理し、決して口にしないように注意しましょう。

日本の有毒植物について気になる方はこちらもチェック

日本にはヒガンバナのほかにも有毒植物があります。気になる毒性や原産地、開花時期など図鑑形式でご紹介したものは以下からチェック!


ハマユウの生態

学名など植物図鑑に記載されるような基本的な情報を見た後は、ハマユウの興味深い生態について解説します。ハマユウの花言葉は「どこか遠くへ」「けがれのない」がつけられていますが、生態を知るとよりその花言葉の由来や意味を強く感じられるかもしれません。

ハマユウの生態①強い匂いで蛾を誘う

ハマユウは開花とともに強い匂いを漂わせます。とくにハマユウの匂いが強くなる時間帯は日没前後。これは夜に活動量が増す大型の蛾「スズメガ」を匂いで効率よく誘うためです。

開花後、虫に花粉を媒介させ、受粉が成立すると花びらの根本部分(子房)が膨らみ、果実ができ、熟した果実から丸い大きな種子が落下します。

ハマユウ特有の害虫「ハマオモトヨトウ」

匂いで蛾を誘い、受粉を成立させるハマユウですが害虫となる蛾もいます。害虫の名前は「ハマユウヨトウ」と呼ばれるもので、この幼虫がハマユウにつくと植物内部に潜入され、葉の外側以外を残してすべて食べつくされてしまいます。

ハマユウヨトウは食欲旺盛で、あっという間にハマユウを枯らしてしまう注意すべき害虫です。

ヨトウ対策について気になる方はこちらもチェック

ハマユウヨトウ以外にもヨトウは多く存在し、どれも植物を枯らす害虫です。適切に薬剤を使いながら早めに対策することで被害を減らせます。

ヨトウの特徴や対策方法について詳しくまとめた記事はこちらからご覧ください。

ハマユウの生態②種子は強く海をも漂う

ハマユウヨトウなどの害虫にはあっという間にやられてしまうハマユウですが、種子は非常に強く、なんと海を漂いながら世界中を旅します。

また、水が無くても発芽するのが興味深い点です。机の上に種子を置いておけばやがて発芽します。海を漂い、漂着した砂浜で根を下ろす海浜植物ならではの特性といえるでしょう。

ハマユウの花言葉

前述したように、ハマユウの花言葉は「どこか遠くへ」「けがれのない」など。どれも強く儚さを感じさせる花言葉ですね。

硬いコルクに包まれながら、海をぷかぷかと漂い、たどり着いた砂浜で力強く根を下ろす姿が花言葉の由来になったのでしょう。白く匂いの強い花はまさに「けがれのない」姿といえるかもしれませんね。

ユリの花言葉が気になる方はこちらもチェック

古くはハマユウの仲間とされていたユリも歴史を持った世界で愛される花ですね。ユリの花言葉は花の色や種類によってさまざまで、怖い花言葉を持つものも。ユリの花言葉について詳しく知りたい方はこちらもチェックしてみてくださいね。

ハマユウの生態③世界分布

Photo byYuri_B

原産地がインドや日本であることからもわかるように、ハマユウの分布地、原産地は東アジアから南アジアの温暖な地域です。

日本では、房総半島、伊豆半島、九州沿岸などが主な分布地で、これは黒潮が訪れる沿岸部に相当します。浜辺で結実し、転がって波にさらわれた種子は黒潮に乗ってさまざまな土地へ旅しているのでしょう。

分布境界線「ハマオモト線」


海流に乗って世界を旅するハマユウ(別名ハマオモト)の種子ですが、その分布には限界があります。ハマユウは温暖な地域でしか育たない種類のため、年平均気温が15℃を下回る土地では育ちません。

この年平均気温15℃がハマユウ分布の北限で、ハマオモト線と名付けられました。当然、原産地もこの北限を超えません。

ハマユウが見られる場所

黒潮に乗って、温暖な土地を目指して旅するハマユウは日本南部に多く自生しています。原産地である日本には群生地もあり、海風にそよぎながら浜辺に広がる様はまさに圧巻。夏の暑さを忘れさせてくれる景色で、毎年開花時期は観光客でにぎわいます。

ハマユウが見られる場所①夏井ヶ浜はまゆう公園

福岡県にある夏井ヶ浜はまゆう公園は海を見下ろす立地にある公園です。ハマユウは福岡県指定の天然記念物。展望台も整備されており、ハマユウの開花時期には海をバックにその景色やたちこめる花の匂いを楽しめます。

ハマユウが見られる場所②角島夢崎ハマユウ群生地

角島夢崎ハマユウ群生地は山口県で人気の観光地、角島(つのしま)の先にあります。開花時期は7~8月頃。角島灯台を背景に、海に向かって広がるハマユウの群生は見ごたえ十分。

角島灯台は日本に2基しか現存しない無塗装灯台の1つで、灯台そのものの美しさも見事なもの。また、角島へ1本続く海の上を走る道(角島大橋)は海の中を切り開いていくような爽快感があり、晴れた日のドライブにもおすすめです。

ハマユウが見られる場所②孔島(久嶋)・鈴島植物群落

黒潮が近くを通る和歌山県もハマユウの自生地として有名です。孔島(久嶋)・鈴島植物群落は南紀熊野ジオパークの認定地域の1つ。動植物の保護と育成に力を注いでいます。開花時期は例年7月。海を眺めるドライブをしながら訪れてみましょう。

海風にそよぐ艶やかな「ハマユウ」

原産地を日本に持つハマユウ。江戸時代から多くの人々に栽培されていた歴史を持ち、日本人に愛されてきた花の1つです。白く繊細な花を咲かせ、ユリのような甘くエキゾチックな匂いが広がる群生地はまさに一見の価値あり。潮風になびくハマユウを見に海辺へドライブに出かけませんか。

歴史あるハマユウについて気になる方はこちらもチェック

海沿いに自生するハマユウですが、温かな場所であれば自宅でも栽培できます。ハマユウの種から芽が出る様子をじっくりそばで観察するのも楽しいですよ。そんなハマユウの育て方や特徴についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。