はじめに
庭に木を植えたいけれど、落葉樹と常緑樹どちらを植えればいいのか迷うことも。さらに落葉樹は冬になると葉が無くなって、見た目が寂しいと感じることもあるのではないでしょうか。
その反面、落葉樹は芽吹きにはじまり、日々成長を見ながら生活する楽しみがあります。夏の強い日差しに落葉樹が緑陰をつくり、冬は枝の間から日光が当たるメリットもあります。
現代生活では、季節の移り変わりを実感する機会も減りました。落葉樹は葉姿の変化で自然を実感できる貴重な存在です。今回は庭木におすすめのおしゃれな落葉樹を7つお伝えします。
落葉樹とは?
落葉樹は生きるために葉を落とす
庭木の落葉樹は、紅葉や黄葉を観賞できるのが嬉しいですね。とはいえ、落葉樹の葉が1枚1枚葉が落ちるのを見るのは少々寂しいもの。しかし落葉や紅葉の仕組みは、落葉樹が生き残りをかけて省エネモードになるプロセスだといいます。
落葉樹は秋、気温が8℃程になるとクロロフィル(葉緑素)が分解されて枝に吸収され、落葉しはじめます。そして枝と葉の間を遮断する「離層」ができて、根からの水分や栄養分が葉に届かなくなり落葉します。
黄葉や紅葉は色素成分が関係する
落葉樹の葉はクロロフィルが減ると、もともとあった「カロチノイド」の黄や橙の色素が際立つのが「黄葉」。葉はさらに残っているクロロフィルで光合成を続け、グルコースが葉に蓄積します。
すると「アントシアニン」が落葉樹の葉の表面にでき、残存していたカロチノイドと合成され、葉が真紅や赤の紅葉になるのだとか。快晴の日が続き、気温が急降下し、ほどよい湿度がある。この3つがそろうと美しい紅葉が起きるということです。
落葉樹の葉っぱは薄くて広め
春~秋まで光合成で養分を蓄える落葉樹の葉は、平らで広めが有利。公園のプラタナスや和菓子を包むカシワはたしかに広めです。キリの若木は長さ50cmほどの葉になるといいます。落葉樹はせっかくの広い葉を、冬生き残るために落葉します。
常緑樹との違い
四季を通じて緑を楽しめる常緑樹
冬、落葉樹が葉を落とすのと逆に、常緑樹は松や杉のように1年中緑の葉を茂らせます。常緑樹は落葉樹と異なり、道路からの視線を遮ったり、庭の印象が変わらなかったりする点がメリット。
常緑樹には寒さに強い針葉樹や、庭木に向く広葉樹があり、世界中に広く分布。常緑樹の葉は太陽熱で葉の水分を失い過ぎないように、肉厚でつやがあるのが魅力。庭のデザインは常緑樹をベースに落葉樹を配置しましょう。
庭の常緑樹と落葉樹のバランス
庭木にどのような割合で落葉樹を取り入れるたらいいのでしょうか?落葉樹がくれる夏の緑陰と冬の暖かい日差しはとても魅力的。一般的には、常緑樹と落葉樹の比率は6:4あるいは7:3がいいそうです。
プライバシーをより重んじる場合は常緑樹を多めにします。冬の何ヶ月か、葉のない樹々を見る寂しさよりも、庭に彩りを求める方は落葉樹を少し多めにするなど、落葉樹と常緑樹を、ご自分の好みもプラスして組み合わせましょう。
おしゃれでシンボルツリーになる落葉樹7選
おすすめの落葉樹①アオダモ(青梻)
「アオダモ」はキンモクセイ科トネリコ属の温帯性広葉樹。日本中に自生する落葉樹で、ミヤマアオダモやマルバアオダモなどの種類があります。特に株立ちは、細めの枝が伸びる様子に野趣があり人気の庭木です。
春にはフンワリとした白い花を咲かせ、繊細でスリムな葉姿は、家屋のそばに配置すると、夏の室内に適度な陰影をつくるメリットがあります。花言葉は「幸福な日々」ですから新築祝いなどにも喜ばれそうな落葉樹ですね。
スラリとした姿の落葉樹
アオダモは山採りが多く、ダークグレイの美しい横縞模様で有名な人気の落葉樹。葉が上方に茂るおしゃれな感じが持ち味。足元に常緑低木のマホニアコンフューサなどを植えると引き立ちます。寒さに強いのと管理が容易な点がメリットです。
ゆっくりと成長する落葉樹
庭に植え付けるなら、幼木以外は日なた~半日蔭がよく、植え付け適期は5~11月。寒さに強い、ゆっくりと成長する落葉樹ですから、シンボルツリーとして大きく成長するまでの様子を楽しめます。乾季が続いたら水を与える程度の管理を行うだけです。

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おすすめの落葉樹②ハナミズキ(花水木)
「ハナミズキ」はミズキ科サンシュユ属の落葉高木。原産地はアメリカで、明治時代に渡来しヤマボウシに似ていたことから「アメリカヤマボウシ」とも呼ばれ、庭木や市街地の道路沿いに植えられる落葉樹。花に見えるのは「苞(ほう)」です。
4~5月に苞の中央部分の花が開花します。秋は、赤い実を鳥たちがついばむ姿を見かけるかもしれません。苞の色は白や、ベニバナハナミズキのようにピンク系統の種類もあります。花言葉は「華やかな恋」です。
観賞期間が長い定番落葉樹
立ち姿が美しい落葉樹、ハナミズキは観賞期間が長い点が魅力。春の訪れとともにハナミズキが目を覚まし、つぼみから開花するまでの毎日、見る人の目を楽しませます。秋の紅葉や頭状花序が赤い実となる季節は、庭に彩りが生まれます。
手がかからない落葉樹
庭に植え付けるなら12月~3月、日当たりがよく、乾き気味の場所を選びます。強い西日は苦手。冬の寒さには強い木で、グリーンシーズンには道路からの視線を遮る役目も。葉が茂り過ぎたら12~2月、分岐点で剪定しまょう。

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おすすめの落葉樹③モミジ
「モミジ」の原産地は日本を含む北半球。ムクロジ科カエデ属の落葉高木です。イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジなどの種類が庭木として選ばれています。葉の形でいえば、切り込みが深いものをモミジ、浅いものはカエデと呼ばれます。
春~夏は緑の葉が爽やかで、秋には赤い葉が庭を絶景にする落葉樹です。単幹のシンボルツリーもすてきですが、ヤマモミジなどの株立ちにも人気が高まっています。モミジの花言葉は「大切な思い出」「遠慮」。
観賞期間が長く樹形が魅力の落葉樹
モミジは、芽吹きから紅葉、落葉まで移り変わる季節とその葉姿を自宅の庭で観賞できるメリットがあります。最も有名な庭木の1つで、海外にもファンが多いそうです。自然樹形や枝垂れ(しだれ)など、樹形を選ぶのも楽しみの1つとなるでしょう。
1日数時間太陽があたる場所で
植え付けは、昼間と夜の温度差が大きい場所、1日のうちに数時間は太陽が当たる場所が向いています。時期は2~3月がよく、水はけのよい肥えた土壌に「水ぎめ」で植えるとよいそうです。形が乱れて強い剪定を行いたい場合は、12月を選びましょう。
【動画】庭木の植え方「水ぎめ」
小さい庭木は自分で植えてみたいと思うこともありますよね。この動画は水ぎめの方法もわかりやすく解説してくれますので、とても参考になります。

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おすすめの落葉樹④ナツツバキ(夏椿)
「ナツツバキ」はツバキ科ナツツバキ属の「シャラノキ」とも呼ばれる落葉樹。樹皮がグレーがかった褐色をしていて、幹が美しい庭木です。原産地は福島以西の日本や朝鮮半島南部、北米など何種類かが分布しています。
国内ではナツツバキ、ヒメシャラなどが、6~7月に時をずらしながらツバキによくにた白い花を咲かせます。幹立ちもすてきですが、最近では高さを抑えた株立ちにも人気が高まっています。花言葉は「愛らしさ」「哀愁」です。
冬の庭でも上品で優しい雰囲気
ナツツバキは芽吹きから初夏の白い花、秋の紅葉や落葉後の灰色の枝も上品な人気の落葉樹です。常緑低木のソヨゴなどと組み合わせると似合います。玄関ポーチに植えると、アクセントとなり素敵な空間を演出できます。
中庭に植えたい落葉樹
植え付け時期は3~4月。肥えた湿度のある用土が向いています。真夏の直射日光が当たらない場所、たとえばL字型住宅の中庭などが植え付け場所として好適。自然樹形で育てますが、徒長枝は7月、11~3月中旬に間引き剪定しましょう。
おすすめの落葉樹⑤ミツバツツジ(三葉躑躅)
「ミツバツツジ」はツツジ科ツツジ属の低木。原産地は日本で、本州中央部の山林や岩場に自生していました。春、筒の先が5つに裂けたような紅紫色の花を咲かせ、同時かそのあと枝先に3枚の葉を輪生する落葉樹です。
ミツバツツジの種類として、コバノミツバツツジ、シロバナトサノミツバツツジなどが有名で、一部常緑のものもありますが、多くは秋の紅葉を楽しめます。花言葉は「抑制のきいた生活」「平和」「自制心」「節制」。
花や紅葉そして冬も野趣を庭にプラスできる
ミツバツツジは樹高が2~3mの程よい高さ。庭の和風洋風を問わず、他の植栽と調和します。ナチュラル感あふれる葉姿は国内外で有名な落葉樹。開花から落葉まで、そして再び芽吹きするプロセスが楽しめる庭木です。
根は浅いから夏の乾燥に注意
植え付け時期は3~6月初旬。日向~半日蔭の腐植質のある用土に、植え付けます。根を浅く張りますから、深植えせず、夏は毎日水を与えましょう。自然樹形で育てますが、枝が徒長したら枝の基部を、5~6月に剪定します。
おすすめの落葉樹⑥カツラ(桂)
「カツラ(桂)」はカツラ科カツラ属の落葉高木。日本全国に分布し、シンメトリーの姿が美しく、公園や街路樹に配置されます。庭の植栽にもよく選ばれる有名な木で、丸いハート形の葉は新緑から黄葉まで長い期間見る人を楽しませます。
3~5月にピンクの花を咲かせます。黄葉後落葉すると、甘い香りが漂うため、別名「コウノキ(香の木)」とも呼ばれます。日本固有の種類ですから、日本の風土に合い、初心者にも管理が難しくないシンボルツリーとして有名。花言葉は「不変」や「不忠」です。
優しい空間を演出できる落葉樹
個人邸の玄関ポーチの、植栽スペースに2mほどのカツラを植えると、潤いと季節感あふれる空間となります。丸みを帯びた葉が醸し出す優しい雰囲気や、新緑~黄葉まで長く楽しめる点が人気の理由です。
暑さ寒さに強い初心者向け落葉樹
植え付け時期は12月と2月、肥沃で湿った土のある場所で、日向~半日蔭の場所に植え付けましょう。耐暑性・耐寒性のある落葉樹ですから初心者の方でも育てられます。自然樹形で育てますが、枝が込み合ったら落葉時期に間引き剪定しましょう。
おすすめの落葉樹⑦ジューンベリー
「ジューンベリー(Juneberry)」はバラ科ザイフリボク属の落葉小高木。原産地は北米で、葉が全部展開する前に、白くて美しい花を咲かせます。6月には食べられる果実が収穫できる落葉樹として有名です。
ジューンベリーの種類は、大きめの実がなる「バレリーナ」や「ハニーウッド」、矮小の「バレリーナ」「ピアソン2」に人気があります。足元に常緑低木を植えるとおしゃれな印象になるでしょう。花言葉は「穏やかな表情」です。
白い花や果実が楽しめる落葉樹
玄関ポーチの植栽スペースのように限られた空間には、株立ちのジューンベリーがおすすめです。1本でナチュラルな雰囲気を醸し出してくれるでしょう。春の白い花、6月の果実の収穫、黄色からだんだん赤に色づく葉に季節感を実感できます。
冬の植え付けを楽しめる落葉樹
植え付け時期は11~2月。保湿性と排水性を備えた土を好みます。花と果実を楽しむなら、日当たりのよい場所を選びます。ただし西日は避けます。自然樹形で育てますが、枝が徒長したり、混みあった場合は落葉後に枝の基部を剪定します。

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落葉樹まとめ
庭木におすすめで、シンボルツリーにもなる落葉樹を紹介しました。晩秋から冬は、葉を落としても、春の訪れとともに目を覚まし、庭に季節を運んでくる落葉樹の魅力をおわかりいただけたでしょうか。
庭なら地植えで、ベランダなら植木鉢で育つ落葉樹もあります。常緑樹と落葉樹をバランスよく組み合わせて、四季を楽しむ生活をエンジョイしてみてはいかがでしょうか。
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出典:筆者撮影