苫小牧は都会
苫小牧市に着いた。
北海道の地名は難読漢字が多いので一応記すが読み方は「とまこまい」
古ではなく占。
苫小牧は製紙工場やコンビナート、隣の千歳市には大きな空港があるので、ここら辺では栄えた街だ。
その証拠に見上げるほどのビルやホテルが立ち並ぶ。
錆びれた田舎町に住む僕は、苫小牧に来るたびに「はぁ~」と声を上げてしまう。
けれど、それが北海道らしい景色かと言われれば明らかにNOだ。
海と山に挟まれた何もない道こそ tha 北海道だと思う。
どこかでお祭り?
苫小牧駅に行ってみることにした。
苫小牧にはよく来るが、国道から中に入った駅には来たことがない(苫小牧にはイオンモールがあり、モンベルが入っているので数ヶ月に一度は来る)
少し通り過ぎて「やっぱり行く!」と自転車ならではの小回りで引き返し、駅を目指す。
はじめ「まあいいや」と思ったが、なぞの貧乏性が顔を出しせっかくなので行ってみることにした。
「どっちだ?」とか言いながら、車だと守らなければいけない一方通行をガン無視してフラフラ駅を目指す。
駅について写真を撮る。
やはりジロジロ見られる。
しかし今回は僕も視線を返してしまった。
浴衣姿の人が多いのだ。
友だち同士、カップル、手を引かれる小さな子ども。
どこかでお祭りでもやっているのかな?
途中見られたら見ていこう。
こうやって思いつくままに予定を変えられるのも自転車、一人旅の醍醐味だ。
妻に電話したら
駅でトイレを借りて、一息つく。
そうだ、ここらで妻に電話しよう。
一人になりたいと旅に出るが、出たら出たで寂しいのだ。
話し中。
「なんだよ」と思ってたら、すぐに折り返しの電話が鳴る
「どこにかけてたのさ」とお互いに第一声。
どうやら同時にかけていたらしい。
はやいね~今日はどこまでいくの?
矢継ぎ早の質問と、心配、寝床や安い食堂の検索結果を告げてくる。
「かなり疲れたけど、もう少し進むわ。最低でもフェリーターミナルには行きたい」
「無理しないでね」
「また連絡する」
疲れたぞ
駅を抜け、再び国道36号線。
どんどん交通量が増える。
人も増えるが安全が第一。歩道を走る。
相変わらず浴衣の人を見るが、お祭りの気配はない。まあいいや。
体力は底を突きかけている。距離は80㎞くらい。
北海道縦断の時は、平均120~140㎞走っていたから、ギャップにため息が出る。
まだ日は高いので休憩を多く取りながら、とにかく苫小牧を抜けることを考えていた。
公園で寝ることも考えたが、都会でそれをやるのは怖い。
野宿で怖いのは動物や幽霊ではない。興味本位で近づいてくる輩が一番怖いのだ。
首痛て~~
予想以上の疲労。
それは運動不足や年齢からくる衰えだけではなかった。
僕は自転車に乗るときにヘルメットを被る。
ピチピチのパンツを履いて通り過ぎる自転車がかぶっているあれだ。
疲労の原因はそこにもあった。
久しぶりにかぶるヘルメットは予想以上に首に負担をかけていた。
スタートしてすぐに「首痛て~」と思っていたが、そのうち順応するだろうと思っていた。
しかし、ここまで疲労困憊になった状態で自らの順応性に期待する余裕はない。
どのみち歩道を走るなら、ヘルメットはなくてもいいだろう。
そう判断し、ヘルメットを脱ぐことにした。
ここからは本当に知らない道
苫小牧を抜けた。
ヘルメットを脱いだお陰で随分と楽になった。
快調に進んでいるといつの間にか大きな国道から外れ、道は4車線が1車線に。
ここからは本当に知らない道だ。
不安と興奮が同時にこみ上げてくる。
これが旅だ。冒険だ。
知らないこと、初めてのことはいつだって不安だ。
けれどその不安に打ち勝った先に見える景色を想像すると、興奮せずにいられない。
さあ、進もう。
イヤ、熊出るって
道は山の中を通る一本道。
両サイドは深い森だ。
熊出そう…
イヤ、まじで熊出そうなのだ。
現に苫小牧駅で妻に電話をしたときに、さっきまでいた白老(しらおい)で熊が車にぶつかったと言っていた。
こんなところで熊が出たらどうしようもない。
車も通らないので助けも呼べない。
なぞに「なんまんだ~ナンマンダ~」とつぶやきながらペダルを回すしかなかった。
ホントは安平まで
そろそろ日が陰ってきた。
寝床を決めてテントを張って、食事をすることを考えるとここら辺りが限界だ。
本当は安平(あびら)まで行こうと思っていたがまあいい。
もっと言うと出発前の計画では追分(おいわけ)まで行く予定だったが、予定は未定。
旅人よ 計画通りにいかない事が たくさんある とブルーハーツも歌っていたではないか。
もう10㎞も行くと早来(はやきた)がある。
とりあえずそこまで行って考えよう。
早来駅
早来の駅に着いた。
早来はこじんまりとした、静かな町だ。
駅の前には大きな雪だるまのモニュメントがある。
それだけ雪が多いということなのだろう。
どこかに公園はないかと思い、駅に入ってみると…
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