はやきた駅
早来に着いた。
読み方は「はやきた」
とりあえず自転車を停めた建物にも「はやきた駅」と書いてある。
早来は田舎と言えば田舎だが、駅前はそれなりに栄えていてお店も普通にある。
駅も綺麗だ。
休憩がてら駅を覗くと、馬の写真が飾ってある。どうやら早来は、サラブレッドの産地らしい。
う~んここいいなぁ ここに泊まっちゃおうかなぁ
駅の中を散策していると(それほど広くない)簡単な喫茶店があった。
はやきた駅~喫茶店
僕は無類のコーヒー好き。
毎日コーヒーを淹れるし、先日1万円のコーヒーミルを購入した。他媒体でコーヒーの記事を書いていたこともある。
旅先で喫茶店を見つけるとつい入ってしまう(コーヒーを飲みたいのもあるが、最近は勉強の意味合いが強くなってしまった)
とは言っても疲労困憊の身体。ホッとしたい気持ちが強い。
時間はたしか5時ころ。
「まだいいですか」とカウンターのおばあちゃんの声をかける。
「いま機械洗ったとこだけど…旅の人?コーヒーだけならいいよ」
んじゃホットコーヒーを
「おいしい。おばちゃん、おいしいわ」
「ありがとう。この先にある何とかってコーヒー屋のコーヒーなの」
なんというコーヒースタンドかは分からないらしい。
「おばちゃん。コーヒーはブラックでいいんだけど、砂糖を1つちょうだい」
おばちゃんの怪訝な表情と共に出されたスティックシュガーを直飲みし。
「あれまぁ。疲れてるんだねぇ。せばこれもあげる」餞別の言葉を添えて、もう3本スティックシュガーをくれた。
はやきた駅~夕食
コーヒーで一息ついたら夕食だ。
地域の特産を食べる余裕はないし、こういうシチュエーションで食べる貧乏飯ほどうまい物はない。
駅を行き来する住民を他所に、駐車場の端っこでコッヘル(アウトドア用の鍋)とガソリンバーナーをセットする。
今日の晩御飯はスパゲッティ。パスタではなく意地でもスパゲッティ。
ソースはレトルトのハヤシライス。
年の始めにコロナに罹った際、支援物資が大量に自宅に届いた。
その時食べきれなかったものが自宅に余っていて、持って来た(家族5人分なので処理しきれなかった。北海道の偉い人にはこの場を借りてお礼を言いたい)
ちゃんとしたスパゲッティソースではないが、デミグラスソースなのでうまいはずだ。
薄暗くなってきたどことも分からない町の小さな駅。
その片隅の一人の旅人。
そんな光景に酔いながらもふと、寂しさがこみ上げる。
空を見上げた。グラデーションに浮かぶいくつかの星。
僕はこの先どうなるんだろう。
そんな青春真っ盛りみたいなことをアラフィフが考えたりする。
ねぇ、だいじょうぶだよ。おじさんでもこうやって不安になったり迷ったりするんだ。
一緒に迷って、一緒に考えて、歩いて行こ。
ここをキャンプ地とする!!
予想以上に美味しかったスパゲッティ(繰り返すがパスタではない!)を平らげ、片付けを終えると、辺りはすっかり暗くなっていた。
「いまから公園さがすのメンドイなぁ」
初日にして寝床探しに失敗した僕の頭に、北海道の伝説的ローカル番組「水曜どうでしょう」の名言が浮かぶ
「ここをキャンプ地とする!!」「ええ!ふざけんなよぉ」
と一人、藤村Dと若き日の大泉洋を演じたが、今回の大泉洋はニヤニヤしている。
改めて駅構内(と言っても15畳ほどの広さ)を見て回る。
汽車(北海道では電車を汽車と呼ぶ人が多い)は1時間に1本。しかも上り下り合わせてだ。
よし、この隙に歯磨きしちゃおう。
ついでに身体拭いちゃおう
ん?掃除用の排水台で頭洗えるんじゃね?
人が来ないのをいいことに最終的に全裸になって身体を拭いた。
意外と快適!ステーションビバーク
寝床は駅の少し奥まったところ。
ベンチの横に寝袋を広げた。
試しに寝転んでみる。
ん?なんだか寝やすいぞ?
凸凹のキャンプ場と違い、駅構内は平らで整備されている。
しかも田舎も場所によっては資金があるので、綺麗な設備の場合が多い。
はやきた駅がまさにそれで、下手なキャンプ場や公園で寝るより快適に寝られそうだ。
これはハマる…
ステーションビバークの夜は長い
食事も終わって、洗面も終わった。
けれど、さあ寝るぞ。とはいかないのが旅の不便さで楽しいところ。
ステーションビバークは、駅利用者がいなくなるまで寝ることができない。
明日走るルートを考えたり、SNSに今日の出来事をUPしたりする。もちろん家族に電話もする。
「たのしいかい」「たのしいよ。少し寂しいけど」
星空を見ながらタバコを吸う。
横を通る住民はこちらを見ない。
時々訝し気な目を向けられるが、人畜無害な笑顔を返すと何も言われない。
はあ、いい旅、いい夜だ
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