はじめに
日本の玄関口・成田空港は大手航空会社からLCCまで多くの飛行機が離発着しています。そんな成田空港の滑走路の中に「一軒家」があるのです。「警備の人の休憩所かな?」とんでもない、そこは日本で最も飛行機に近いペンション、木の根ペンションなのです。
宿泊費は激安!そして野外フェスが開かれ、まさに空港のど真ん中の異空間です。ただし場所が場所なだけに、予約や行く方法は確認が必要です。(※この記事の情報は2019年1月16日現在の物です。)
木の根ペンションとは?
このペンションは飛行機が離発着しているその真っ只中に建っているので、飛行機が往来しています。そしてペンションなので、宿泊することができるのです。
気になる宿泊費用はなんと1泊1000円!成田空港に隣接しているカプセルホテルでも4000円程度ですが、その半分以下の破格の安さ!そして部屋の窓から飛行機を間近に見ることができる宿泊施設は他にはありません。
成田空港まで徒歩0分!驚きの立地
木の根ペンションが建っているのは「〒286-0105 千葉県成田市木の根」です。Googleアースで調べてみるとまさに空港のど真ん中。飛行機が離着陸する、その中にペンションがポツンっとあり、そして建物のすぐ横にある長方形は実はプールなのです。
なので滑走路の真ん中でプールに入りながら飛行機を眺められる、くっつくはずがないものがくっつく、それはここだけなのです。
木の根ペンションに行くのは難易度ウルトラC!?
さて、宿泊するために予約の連絡をしたとして、ペンションがあるのは飛行機が離発着している空港の中です。空港の敷地内は旅客機が往来するのでフラっと散歩に行って入れる場所ではないのは当然のことです。
ではそんな空港内にあるペンションに行くのはどうかというと、もちろんすごい監視体制です。ふらっと立ち寄れる場所ではありませんし、場合によっては捕まってしまいます。
常に監視の目が光っている!?
木の根ペンションは正確には滑走路ではなくエプロンと呼ばれる「誘導路」のすぐ脇にあります。また、そこを横切ることはできないため、エプロンの下を通るトンネルでいくしかありません。
そのため、周りには多数の監視カメラと有刺鉄線、そして警備隊の車による巡視があります。保安のことを考えたら当たり前のことです。そしてそのトンネルを抜けると物々しく関係者以外立ち入り禁止の看板が。そのまま道なりに行くと到着です。
木の根ペンションはいつ・誰が作ったのか?
成田空港のミステリースポットであり、厳重な警備で監視されながら、フェスまでやってしまう。そんなある意味挑戦的な「空港の真ん中の激安ペンション」、それは日本で探してもここだけです。では、このペンションが「できたのはいつ」で、そして「誰が使っている」のでしょうか。
木の根ペンションはいつできたのか?
木の根ペンションは1989年に今の2階建ての宿泊施設に「改築」されました。改築なので、もともとは別な建物でした。実は、その元の姿は「成田空港の建設の中止を求める団体の会合場所」だったのです。
それを踏まえて今までのペンションの周りの厳重な警備を思い返してみると、その物々しさも納得がいくはずです。つまり、空港に対する不穏分子がその空港の真ん中にあれば警戒するのは当然ということです。
木の根ペンションは誰が使っているの?
では、今現在、誰がこの宿泊施設を使っているのでしょうか。まずここの独特な環境と歩んできた歴史から、ゼミの合宿や研修などで使われます。
また、成田空港周辺のホテル相場に比べると破格の激安さのため、旅行客やバックパッカーが利用しています。さらに夏頃はフェスを目的に来る観光客などが宿泊しています。そして予約を入れる人はそのユニークさに引かれているようです。
木の根ペンションに宿泊しよう!
ものすごく行きづらいけども、宿泊費は激安、そして空港の中とは思えない異空間があり、非日常の体験が満載です。
夜にはペンションからバーベキューの香ばしい匂い、プールではしゃぐ声、音楽、そして往来する飛行機、普通ではコラボなんてしないものばかりです。見たことない組み合わせのこのペンション、では、どうやって予約することができるのでしょうか。
木の根ペンションは野菜が美味しい!?
このペンションが立っている場所は元々は農村でした。なので、ここでは栽培方法にもこだわった地元の新鮮な野菜を食べることができます。また、ペンションは専属の農家と提携しているので、バーベキューでは新鮮な地元野菜を一泊1000円の激安の宿泊費で存分に堪能することができます。
木の根ペンションへのアクセスと予約方法
実際に行った人の話を聞くと、「行ったけど誰もいなかった」「予約のための電話も通じない」など、「もしかしたらもうやってないのでは?」と思ってしまいます。ですが、実は段階を踏むことが大事なのです。
まずFacebookでペンションの宿主とコンタクトとります。これが予約です。そして最寄りの「芝山千代田駅」から徒歩で線路沿いをひたすら歩きます。あとは以下の動画の通りの道順で到着です。
木の根ペンションに渦巻く「大人の事情」とは
木の根ペンションのもつ歴史や環境的なユニークさは他では見ることはできません。ただし、現在の日本有数のユニークな激安ペンションになるまでは、「木の根」の土地をめぐる壮絶な過去があったのです。
それはペンションを取り囲む監視カメラ、警備、有刺鉄線そしてエプロンがペンションを避けるようにぐにゃりと曲がっていることが物語っています。
木の根ペンションは誰が作ったのか?
1989年に木の根ペンションとして改築される前は、新しい国際空港の建設に反対する農民たちや周辺住民たちの会合場所であり、建設資材や重機の搬入への妨害行動の拠点として機能していました。
そしてその集団に当時の政権を打倒しようとする勢力が加わり、規模が拡大しました。なので、戦後日本の急激な成長変化と国民との間の衝突した、そのエネルギーが姿をかえて今のペンションになっているのです。
もともとは小さな農村だった
ペンションの名前にも入っている「木の根」とはもともとのこの地方の地名のことです。その地名の由来は「木の根がびっしり張っていた土地」から来ています。
木の根は大変硬く、その土地を開墾することはかなりな重労働でした。そして開墾された土地は集落や後に国有地「下総御料牧場」になりました。開墾当時からその土地に住んでいる農民からしたら土地への思い入れは相当なものでした。
成田空港建設闘争
成田空港の建設が国会で決まったのは1966年、高度経済成長期の日本は先進国の仲間入りをするために大規模な国際空港の建設を急いでいました。そこで、建設計画地として選ばれたのが下総御料牧場でした。
これに対して近隣の三里塚地域の住民たちによる成田空港建設をめぐる抗議運動が巻き起こったのです。そして運動は次第に過激になり、空港の完成は遅れ、1978年のオープン時には滑走路は一本だけだったのです。
木の根ペンションで音楽フェス!?
木の根ペンションの成り立ちはエネルギッシュそのものでしたが、今もなおエネルギッシュさは形を変えて残り続けています。その一つが音楽フェスです。
何がスゴいかというと、しっかりアーティストも呼んだり、送迎用のシャトルバスを出したりフェスとして成立しているのです。そしてフェスが開かれるのは成田空港内、そして滑走路脇。この開催場所を名乗れるのはこのペンションだけです。
成田空港ど真ん中でフェス
アーティストの生演奏を聴きながら、そして移動する飛行機の明かりをネオンがわりにお酒を朝まで呑み明かせる。こんな体験は他の空港に行ったってできません。しかも宿泊費は激安。まさに「普段はくっつかないものがくっついてしまう」木の根ペンションだけで体験できる非日常なのです。
タイガー&ドラゴン2017
2017年、「タイガー&ドラゴン2017」という野外フェスが開催されました。空港ど真ん中の野外フェスです。総勢14組のアーティストを招き、最寄り駅の芝山千代田駅まで送迎シャトルバスまで運行させる徹底ぶり。
そして2018年は、盆踊りをしつつお酒を飲みつつ、飛行機を眺める納涼祭が開催されました。2019年は果たして何が行われるのか、期待が高まります。
木の根ペンションの関連施設:横堀鉄塔
成田空港には木の根ペンションだけでなく、他にもかつての闘争の痕跡を見ることができるスポットがあります。それが画像の高くそびえる鉄筋の塊、「横堀鉄塔」です。
離発着場の中で一際強い存在感を放っているこの鉄塔の周りを見ると、滑走路が避けるように曲がっています。つまり、離着陸場の完成よりも前からこの横堀鉄塔はあるのです。また、そのため監視の目は木の根ペンション以上に厳しいと言われています。
横堀鉄塔とは?どうやっていくの?
かつて住民たちは団結小屋を拠点にしており、空港の動きや工事の進捗を監視するための見張り台でした。しかし、今では団結小屋も鉄筋の見張り台も使われることはなく、かつての闘争の名残を残すシンボルになっています。
また、横堀鉄塔への道のりは空港の敷地内にあるだけあって、空港を大きく迂回し地下トンネルをくぐらなければなりません。以下動画で紹介してます。
横堀鉄塔の“抗議する農民”の像
横堀鉄塔のやぐらの中にとある像があります。像の名は「抵抗する農民」。まさに木の根の土地に根を下ろし、土地を耕し、生活していた農民たちの戦いと苦労を表現している像です。
作者は沖縄県の金城実氏です。沖縄は住民の戦後処理を巡って抵抗運動がありました。横堀鉄塔は当時の農民や住民たちのエネルギーを感じることができる場所なのです。
木の根ペンション関連施設:東峰神社
この画像は決して合成ではありません。本当に神社の真上を飛行機が通り抜けていくのです。これほどまでに神社と飛行機が近くなる場所、それが東峰神社です。
この神社は元々は「航空神社」として信仰されており、近隣の東峰地区の住民の信仰の対象でした。そして近隣の地区同様に空港の開発を巡って住民と空港側とが衝突し、闘争のシンボルとして見られるようになりました。
厳戒態勢に囲まれた東峰神社
東峰神社は高確率で職質を受ける神社と言われています。それはこの機内からの画像を見てわかるように、境内を囲むように周りは飛行場だからです。
そして監視カメラや人感センサー、警備隊など、決して行ってはいけない神社ではありませんが、ピリピリした緊迫感たるや凄まじいものがあります。行き方は以下の動画が参考になりますが、行けばかなりな確率で職質を受けます。そんな、スリリングなスポットです。
まとめ
木の根ペンションは日本でトップクラスの非日常空間です。これは農民たちの闘争、そしてそれを受け継いで今なおペンションを支えている人たちの思い、そしてそんな彼らとせめぎ合う成田空港、このどれが欠けても成立しないシチュエーションなのです。今までにない非日常を経験したい方、ぜひ一歩踏み出して予約してみてください。
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