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オリンピック競技、「馬術」のルールを種類別に解説!基本を押さえて楽しく観戦!

オリンピック競技で唯一、男女が同一条件で競う馬術では、女性が金メダルを取ることもしばしばあります。馬を操りルールも特殊で、それだけに興味深い競技になっています。身近で接することが少ない馬術競技の歴史やルールやオリンピック競技の馬術について紹介します。
2021年7月25日
ユリノフ
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「馬術」は男女同一に勝負できる競技

なかなか身近で触れる機会が少ないオリンピック種目の一つが馬術です。しかし、人と動物が一緒に出場できる唯一のオリンピック競技で、男女が一緒にメダルを競います。当然、2020東京オリンピックの競技種目です。

また、馬術は経験が必要になる競技で年齢が高い選手が出場できるのも特徴です。2012年ロンドンオリンピックでは、前回の東京オリンピックに出場した法華津(ほけつ)寛選手が古稀を過ぎた71歳で出場しました。

古代オリンピックでも行われた馬術競技

紀元前に行われていた古代オリンピックにも馬は人間とともに出場していました。馬を使った競技の記録が残っています。近代オリンピックになって、馬術競技は第2回のパリオリンピックで採用されました。

しかし、1904年のセントルイスオリンピックと1908年のロンドンオリンピックでは実施されていません。その後、1912年の第5回ストックホルムオリンピックから再び採用され現在まで続いています。

馬術を英語で言うと「equestrian」

参考までに、馬術を英語で言うと「equestrian」または、北米では「horseback riding」が使われます。馬場馬術は「dressage」、総合馬術を「eventing」、障害馬術は「jumping」です。

「馬術競技」の基本ルール

まさに人馬一体となれるような騎乗技術を競う馬術競技は、定められたコースをルールに則って、正しく美しく騎乗し、しかも制限時間内に走り切る技術が求められます。競技の前提は馬と一緒になって競技を行うことです。そのためのルールについて紹介します。

基本ルール①:五輪馬術は個人戦と団体戦

馬術競技には、決められた運動課目の演技を競う「馬場馬術」、定められた障害を飛越する「障害馬術」、この2種目に耐久種目を加えた「総合馬術」がオリンピックの馬術競技です。

オリンピックでは、馬場馬術、総合馬術、障害馬術の順番で競技が実施され、総合馬術だけは3日間にわたって競技が行われ、3種目ともに個人と団体があります。

基本ルール②:採点は減点

馬術はヨーロッパ貴族が発展させた経緯があり、その伝統が活きていて優雅さや美しさを求められる競技の一面も持ち合わせています。判定は採点方式で、基本ルールでは減点方式です。そんな馬術競技のルールを競技種目ごとに紹介します。

「馬場馬術」のルール

馬場馬術は、20m×60mの長方形の競技アリーナ内で、馬と選手が一体となり、決められた40もの演技を、正確にそして美しく演じる種目です。騎手が馬を完璧に調教し、巧みに操る技術を競います。

入場の敬礼からスタートします。前進、停止、後退、直線、斜め、円形など、細かいルールに従い、馬を操り課題の演技課目を行うのです。すべての演技が終わったら敬礼して馬場から退場します。

馬場馬術のルール①:規定演技と自由演技

馬場馬術では演技内容が決められている「規定演技」と、音楽に合わせて行う「自由演技」があります。左右の肢を交差させる「ハーフパス」や、前進するときに一歩ごとに肢を高く上げる「パッサージュ」などがよく知られ、パッサージュは馬術紹介の写真に使われることがしばしばです。

馬場馬術のルール②:服装

馬術競技特有ですが、競技するときの服装についても細部までルール化され、スポーツですが気品ある優雅な服装が求められるのです。

「馬場馬術」の服装は、ルールで黒または濃紺のハットに、黒または濃紺の燕尾服上衣を着用し、白いシャツを着ます。アスコットタイ、ネクタイは白。キュロットは白かオフベージュでグローブも白を使い、革製の長靴を履き、靴には拍車を付けます。

馬場馬術のルール③:10段階評価で減点方式


馬場馬術は、複数の審判員が馬場馬術の各運動ごとに0~10点の点数をつけ、さらに、演技全体の印象について評価した点数も合計します。自由演技は芸術的評価が加わるのです。

最終的には、それぞれの得点を満点で割ってパーセンテージで採点します。そして、数字が大きい人馬が上位になり、ランクが決まるのです。
 
採点の基準は、0(不実施)~5点(やや不十分)~6点(基本的な要求を満たしている演技)~10点(優秀)とアップする10段階評価になります。

「障害馬術」のルール

障害馬術は障害飛越ともいわれ、馬術の華といえる種目で、人馬が幅が2mもある障害を飛越します。人馬が障害を飛び越える姿はダイナミックで迫力満点です。

1.6mほどある障害を飛越するので、馬にまたがる選手の目線は3mほどにもなり、そこにスピードが加わり恐怖を感じることもあります。

障害馬術のルール①:基本ルール

障害馬術は、競技アリーナに設置された10個以上のさまざまな種類の障害物をルールで決められた順番どおりに、規定時間内に走りながら飛越します。

障害物の大きさは、国際大会などのトップレベルの大会では、高さは160cm、幅は200cmを超えるものものが設置されるのです。

採点は減点法で、減点0が最高点。なお、最高点が複数いる場合は、ジャンプオフ(決勝競技)が行われます。

障害馬術のルール②:服装

障害馬術の服装のルールでは、まず、ヘルメットを着用します。ヘルメットは3点固定式のチンストラップ付きタイプの着用が義務付けられ、カラーは黒か紺が主流です。

着用するライディングジャケット(上らん)の色は黒か紺ですが、赤のジャケットの着用も認められています。

白い襟のシャツであればカラーシャツも着用可能です。また、ネクタイとキュロットは白。革製のブーツを履き、長さが75cm以内の短い鞭を使用します。

障害馬術のルール③:タイムを競う競技もある

障害馬術には他に「スピードアンドハンディネス競技」があります。この競技は障害を飛越して全コースを走り抜く走行タイムを競うルールです。

飛越を失敗すると秒数に換算されて、コー スを完走したタイムに加算されます。その時間が最も短かった人馬が勝者になるのです。

障害馬術のルール④:減点種類(落下・拒止・不従順・反抗)

まず、障害物の落下は減点4になります。「落下」はバーが1本落ちても、バーすべてを落としても、また、ブロックやレンガが全部倒れたケースでも減点4です。

障害物の前で馬が止まる「拒止」や、障害物を飛ばずに逃げてしまう「逃避」や、選手の指示に逆らう「不従順・反抗」や、走行中に小円状に走る「巻き乗り」も反抗となります。1回目で減点4、2回行うと失権です。

走行中に継続して静止したままの状態や、立ち上がったりを45秒間継続した場合は失権になります。

障害馬術のルール⑤:タイムによる減点

障害馬術は障害を飛越するだけでなく、決められた時間内で競技を終えるルールもあります。スタートからゴールまでのコース全長で、走りながら飛越し、さらに規定タイムがあり、タイム内で終わるようスピードも必要です。そのタイムを4秒超過するごとに1点の減点になります。

設定された規定タイムの2倍の秒数が制限タイムと設定され、その制限タイムを超過すると失権になります。

障害馬術のルール⑥:失権(落馬・馬の転倒・経路違反)

競技中に選手が落馬すると失権になります。同じように、試技中に選手といっしょに馬も転ぶと失権です。

障害馬術は決められた経路で障害飛越を行う競技なので、決められた飛越の順番を間違えて飛越した場合は「経路違反」となり、失権になるルールになっています。

「総合馬術」のルール

「総合馬術」は、馬場馬術と障害馬術にクロスカントリーが加えられた3種目の馬術種目で競われるルールです。3種目ともに持ち点があり、減点合計が最も少ない選手が勝利します。

オリンピックでは馬場馬術、クロスカントリー、障害馬術の競技順でおこなわれます。人馬ともに総合的な能力や騎乗技術やスタミナが求められ、3日間の競技日程で体力だけでなく精神力も必要になります。また、馬のコンディションを最良の状態に保つよう日々のケアが重要です。

総合馬術のルール①:クロスカントリーに水濠障害

総合馬術の特徴の一つがコース内に造られた水濠です。「水濠障害」は競技場内の馬場アリーナでは用意できないだけに、クロスカントリーの目玉になる障害といえます。

丸太を飛び越えた着地点に水たまりがあり、陸上競技の3,000メートル障害の水濠の馬術版で、クロスカントリーに水濠は必須障害です。

クロスカントリーは迫力満点

総合馬術にだけある「クロスカントリー」は、で水濠だけでなく、竹柵、生垣、など40以上の障害物が自然のコース内に設置されます。全長約6kmのタフなルートを10分ほどで走るのです。

コースの選び方や馬のスタミナも考え、走る速度の調整など頭脳戦の面もあり迫力にスピードに戦力など見どころ満載になっています。

総合馬術のルール②:服装


総合馬術の服装はクロスカントリーでは3点固定式のチンストラップ付きのヘルメットを着用し、落馬した時の事故を防ぐためツバのないヘルメットに、ツバの付いたカバーを付けます。また、安全確保からバックガード(ボディプロテクター)の着用が重要なポイントです。

キュロットには色の制限はなく、革製の長靴を履き、鞭は75cm以内のものを使用するルールになっています。

総合馬術のルール③:障害馬術は減点方式

総合馬術での障害馬術は、コース内の障害物の落下が減点4、拒止、逃避、巻き乗りなどの反抗は1回目が減点4、2回目で失権。落馬や人馬転倒は失権となり、規定時間の超過については毎秒0.4が減点されるルールです。

総合馬術のルール④:クロスカントリーの減点

クロスカントリー競技における減点と、主なペナルティには次のようなものがあります。障害前で拒止、障害を飛ばずに逃避、コース途中で巻き乗りは20点の減点です。

また、同じ障害で2回目の拒止や逃避に巻き乗りを繰り返すと減点が40点になり、3回目の拒止、逃避、巻き乗りになると失権になります。

総合馬術のルール⑤:タイムオーバー・落馬・転倒

クロスカントリーではコースを走破する規定タイムが設定され、規定タイムを1秒超過すると減点0.4、2秒の超過で減点0.8と、1秒ごとに0.4秒が課されるルールがあります。

落馬や人馬が転倒すると失権となり、設定されている制限時間の2倍を超えると失権になるルールです。

「馬術」ならではのルール

馬術は馬と一緒の競技だけに、馬術ならではのユニークと思えるルールもあります。知ると納得できるルールがほとんどで、そのルールを知って馬術競技を観戦すると面白さが大幅にアップするのです。そんな馬術ならではの少しユニークなルールを紹介します。

馬術独特のルール①:男女が一緒に競う

馬術はオリンピック種目の中で唯一男女が同じフィールドで戦います。そこには、人と馬の信頼関係を築くことが最重要で、馬を引っ張たりする力はほとんど必要なく、あくまで馬を優しく扱って気持ちよく走らせる能力が求められ、女性の優しさが活きているようです。

パワーだけではない

また、馬術競技のルールには体重制限がありません。そうなると、相対的に軽量となる女性の方が有利な面もあります。

オリンピックの馬場馬術の個人戦をみると、2000年のシドニーオリンピックから2016年リオオリンピックまで、表彰台に上がったのは女性でした。団体戦でも女性が活躍しています。

馬術独特のルール②:馬に年齢制限

馬術競技は馬がいなければ始まりません。また、種目の特性から同じ馬を使うことは少ないようです。出場する種目に適した馬に育て上げる技術も選手に要求されます。

オリンピックの馬術競技に出られるレベルの馬に育て上げるのはそうとう時間がかかるのです。そんなこともあり、オリンピックで使用する馬は、障害馬術:9歳以上、馬場馬術:8歳以上、総合馬術8歳以上という馬の年齢の下限がルール化されています。

馬体検査のルール

ホースインスペクションとも呼ばれる馬体検査は、馬術競技特有のルールで、競技開始前あるいは競技期間中に、獣医師と審判員が馬の状態をチェックする行為です。

その馬が競技に参加できる状態にあるかどうかを確認するもので、馬体に傷がないか、疲労状態にあるかなどのチェックや、馬の歩様検査まで実施され、馬体検査に合格しなければ出場できません。

「馬術」の簡単な歴史

人間が馬を家畜として飼育するようになったのは、紀元前4000年ころのユーラシアの草原地帯で始まったと推定されています。

その頃は牽引(けんいん)や荷役などで馬が使用されていたようです。そんな馬の馬力や機動力は戦闘場面で重要視され、そのような強力な軍馬を持つ一団が一大帝国を築き、その後さらに強力な騎馬民族が台頭して、覇権を争っていきました。

馬術は貴族のたしなみだった

初期の馬術は騎馬戦における戦闘能力として発達し、馬具の銜(はみ)、鞍、鐙(あぶみ)なども発明され、馬術技術も進化していき、紀元前1400年ころに馬術書が記されたくらいです。

馬を使う騎馬戦の時代が長く続きましたが、火器の誕生で武器が代わり、戦場で馬で戦うことがなくなり、馬術は洗練され、貴族のたしなみなっていきました。

16世紀以降、ヨーロッパ各地で馬術学校が開設され、名馬術家が誕生し、現代のヨーロッパの馬術競技に引き継がれています。


「馬術」の歴史日本編

現代の日本にも神社などで披露される、昔の武将を模した馬上で矢を射る「流鏑馬(やぶさめ)」という神事があります。このように馬を使った伝統的な馬術が日本にもあります。

歴史上、室町時代末期頃までは騎馬戦が盛んで、騎上で矢を引いていたようです。しかし、鉄砲の伝来で戦闘形式が変化し、馬術は徐々に廃れていきました。

明治以降軍馬として活躍

明治維新後は、軍馬として発展した歴史が残っています。上級軍人が乗馬に使用し、他にも兵器を運ぶばん馬や食料などを運ぶ駄馬もいました。このような馬との関りがありました。

1921年(大正10年)に創設された国際馬術連盟に日本はアメリカ、フランス、イタリアなどとともに創設メンバーとして参加しています。1922年(大正11年)になると「日本乗馬協会」設立されました。

オリンピックには1928年第9回から参加

日本がオリンピックの馬術競技に参加したのは、1928年第9回アムステルダムオリンピックからです。2回目の参加となる第10回ロサンゼルスオリンピックでは、西竹一選手が障害馬術個人で金メダルを獲得しました。

1946年(昭和21年)には当時の(社)全国馬術連盟が認可され、国際馬術連盟への復帰は1951年(昭和26年)で、1952年の第15回ヘルシンキオリンピックに参加しました。

バロン西と愛馬ウラヌス

日本の馬術競技といえば、西中尉こと西竹一選手です。日本人で唯一人、馬術競技のオリンピック金メダリスト。

1932年(昭和7年)のロサンゼルスオリンピックで、西竹一選手は愛馬・ウラヌスで大障害飛越競技で優勝し、見事、金メダルを獲得したのです。

男爵家の三男

西竹一選手は男爵家の三男で、陸軍幼年学校時代から乗馬に慣れ親しみ、陸軍騎兵学校で乗馬の基礎技術を習得し、名馬ウラヌスと出会いオリンピックの舞台で大活躍しました。英語も堪能だった西竹一選手でしたが、軍人だけに第二次世界大戦末期の1945年(昭和20年)、硫黄島で戦死しています。

「馬術」のルールを知って楽しく観戦!

なかなか接することがない馬術競技について、歴史やルールについて紹介しました。人と馬が一体となり気持ちを通わせて競う競技だけに特殊なルールもあります。また、男女が同じ土俵で戦える、最も時代に合ったオリンピック競技とも言えるのです。馬術競技のルールを知って楽しく観戦しましょう!

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