テコンドーとは?
「テコンドー」は、柔道や空手と同じ格闘技の一つであり、英語では’Taekwondo’、漢字で「跆拳道(たいけんどう)」と書きます。
これまで半世紀以上の歴史があり、その人気は創設の国・韓国では国技になっているほど。華麗でしなやかな足技から「足技のボクシング」とも呼ばれています。
テコンドーは世界的にも人気のスポーツ!
2000年に開催されたシドニーオリンピック大会から正式な競技種目となった歴史があり、2016年開催のリオデジャネイロ五輪では最も多くの国の選手がメダルを獲得した種目となりました。今やテコンドーは世界の200国以上に普及しており、競技人口も子供からシニアまで7000万人を超えるとされる歴史的に見ても人気の武術となっています。
今回は、そんな世界的にも人気のテコンドーの歴史や競技種目、試合のルールなどについてご紹介していきます。
テコンドーの歴史
テコンドーの歴史は、1945年当時韓国軍の陸軍少尉であった崔 泓熙(チェ・ホンヒ)氏が、軍隊の鍛錬のために日本留学中に学び、自身も二段であった「松濤館(しょうとうかん)空手」を元にオリジナルの技術を組み込んだ蒼軒流・空手を教えていたことにその歴史が始まります。
その後、崔氏が指揮をしていた軍隊の師団が当時の李 承晩大統領の前でこの武術の演舞を行うという歴史的な機会が訪れました。
軍隊から一般にも発展した歴史がある!
崔氏は大統領に、朝鮮に昔から伝わる古武術の「テッキョン」をベースに自分が創設した武道であると紹介し、演舞が無事に終了した後に大統領はこの武術を軍隊全体に普及すべしと絶賛したとされています。
この演舞の後、崔氏はこの武術を朝鮮に伝わる「テッキョン」と言う古武術と空手などの武道を反映して「テコンドー」と名付けました。その後「大韓テコンドー協会」が創設され、テコンドーは軍隊以外に一般にも広まっていったという歴史があります。
テコンドーの流派
テコンドーはその発展の歴史の中で大きく2つの流派に分かれて現在に至っています。一つはWTF(世界テコンドー連盟)系の団体発展の歴史で、もう一つはITF(国際テコンドー連盟)系の団体発展の歴史です。この2つの流派にはそれぞれ独自の歴史的背景や発展の経緯があり、また試合のルールや技術的にも違いがあります。
オリンピックはWTF系という歴史の流れ!
WTF系はオリンピックの正式種目に採用された歴史があり、頭部や胴部を保護する電子防具を着用し、フェンシング競技のように電子式によるポイント制を採用し、主に足技を重視したスポーツの要素を取り入れた流派です。
ITF系は手足のみの防具を着用し、「マッソギ」という組手を行う際には、コントロールした打撃を当てるライトコンタクト(振り抜いてはいけない)が認められており空手に近く、攻撃の有効部は腰から上で腰から下や背面への攻撃は禁止されています。
テコンドーの競技種目
テコンドーのWTF系の試合形式には、大別するとテコンドー発展の歴史の流れを汲む「キョルギ(組手)」と「プムセ(型)」の二つがあり、キョルギは相手がいる試合形式のことであり、プムセは型の美しさを競い合います。
オリンピックの歴史や世界中の多くの大会の歴史の中で行われているのは、キョルギ・組手の試合です。また柔道や空手のように有級者や有段者の階級制度があり、階級や段位でそれぞれ帯の色が異なります。
小が大を制す!
ITF系の競技種目は「組手」(マッソギ)や「型」(トゥル)、試割(ためしわり)の「威力」(ウィリョ)、スペシャルテクニックの「特技」(トゥッキ)などがあり、ワールドカップ大会では2人組手演舞形式の「プレ・アレンジドスパーリング」などの試合が多岐に亘って行われています。
テコンドーの試合では、回転系足技の蹴りのポイントが高くなっており、小柄な人でも回転回し蹴りで勝機をつかむことができ、小が大を制するところがテコンドーの魅力にもなっています。
WTFテコンドー競技【ルール編】
オリンピックの正式種目になった歴史の中でWTFテコンドーの組手試合は、1辺が3.3mで対角線が8メートルの八角形の競技エリアで行われ、スポーツ性の高い競技となっています。
1試合は2分で3ラウンドを行い、各ラウンドの間に1分の休憩タイムが設けられており、試合は必ずボクシングと同じようにセコンドと一緒に出場する独自のルールがあります。
華麗な足技が見どころ!
試合には、防具として公認のグローブと電子ソックス、マウスピースの他に、電子センサーが内蔵されたヘッドギアとボディプロテクターの着用が義務付けされていて、得点は電光掲示板に表示され、試合前にセンサーのチェックが行われます。
打撃は防具の上からしっかりと足技で蹴り込むフルコンタクトで行い、攻撃の有効部位は腰から上で、下段への攻撃は禁止されています。
オリンピックは体重4階級制!
オリンピックのテコンドー競技はトーナメント戦で行われ、男女共に体重別に4階級制に分かれ、男子は58kg、68kg、80kg以下、80kg超級で、女子は49kg、57kg、67kg以下、67kg超級です。
2012年ロンドン大会までは、発祥国として歴史的に強豪の韓国のメダル独占を避けるため、1国で男女2階級、最大4階級までという出場制限がありましたが、2016年リオ大会からランキングポイント制により出場権を持つ選手は出場可能となりました。
テコンドー競技はポイント制!
オリンピックのテコンドーのルールはポイント制となっており、胴へのパンチが「1ポイント」、胴へのキックは「2ポイント」、胴へ回転キックが決まれば「3ポイント」、頭部へのキックが「4ポイント」、頭部への回転キックが決まるとボーナス加算で「5ポイント」となります。
試合中に足技などがクリーンヒットして選手が倒れることもあり、この場合は審判が10カウントを数え、選手はその間に立ち上がり、ファイティングポーズを取らなければKO負けとなります。
WTFテコンドー競技【反則編】
WTFテコンドーの試合における反則には歴史的に「警告(キョンゴ)」と「減点(カムチョン)」の二つの独自ルールが設定されています。
審判が判断して「警告」に該当する行為には−0.5点、「減点」に該当する行為の場合−1点が引かれ、減点数が-4点に達した時点で反則負けとなるルールです。
警告(キョンゴ)に該当する行為
八角形の競技エリアから両足を出してしまう(ただ相手が行った反則より境界線から出された時には該当しません)。また相手の攻撃を避ける際や距離を取るために背中を向けてしまう行為も該当します。
相手の蹴りを避けるためや自分の蹴りを放った後のカウンター防止のためわざと床に倒れる行為。逃げ続ける消極的な態度。相手に故意に抱きついて動きを止めたりする行為。腰から下への攻撃。怪我などダメージをよそおう行為や頭突き、膝蹴りも警告-0.5点となります。
減点(カムチョン)に該当する行為
倒れた相手への追撃や相手の蹴り足を手で絡めて押し返したり、バランスを崩す行為は減点となります。また相手の顔へパンチや手刀でわざと攻撃する行為。さらに審判の「離れ!」に従わない行為や相手や審判、運営局への暴言なども減点-1の対象となります。
ITFテコンドー競技【ルール/反則編】
ITFの試合では、スポンジ製の手足のグローブ、マウスピース着用が義務付けられていますが、胴体を守るボディプロテクターは女子選手のみが任意に装着でき、また黒帯・初段者以上の場合はヘッドギア、ボディプロテクターの着用は禁止する歴史的な独自のルールがあります。
さらに顔面へのパンチが認められており、間合いを取った緊張感のある試合になることが多く、一気に間合いを詰めて攻撃ができる横蹴りの技が非常に発達しているのが特徴で、より武道性が強い流派です。
試合のポイントと反則行為
ITFの試合では歴史的に独自に発展してきたポイント基準が設置されており、顔面または胴体へのパンチが「1ポイント」、胴体に蹴りが決まると「2ポイント」、顔面に蹴りが決まると「3ポイント」となります。
また禁止行為に対する反則は主審が判断して減点1となり、10減点で失格となります。禁止行為としては、相手をつかんで投げたり、突き飛ばす行為。審判の「止め!」の後に相手への攻撃。顔面への故意の攻撃や相手選手やコーチなどへの不品行な言動などが対象です。
テコンドー「組手」のメジャー大会の歴史
WTF世界テコンドー選手権大会の歴史
WTFの主催による世界大会で、2年に1度夏季開催の世界最高峰のテコンドー大会です。1973年にWTFが設立された時期にソウルで第一回大会が行われた歴史があり、その後、アメリカや中米、ヨーロッパ、アフリカなどの各国で開催された歴史の長い大会となっています。
この大会では男女選手が技を競い合い、メダル獲得数は歴史の長い発祥国・韓国が多くなっていますが、最近ではそれ以外の多くの国々がメダルを獲得し、テコンドーの世界的な人気がうかがえます。
オリンピック大会の歴史
長い歴史のあるオリンピックでは、1988年開催のソウル大会や1992年のバルセロナ大会で、テコンドーのオリンピック正式競技入りをアピールする公開競技が行われた歴史があります。その後2000年シドニー大会において正式競技となり、それ以降のオリンピックでも金銀銅メダルの熾烈な獲得戦の歴史が続いているのが現状です。
2020年の東京オリンピックでは、男女各体重別4階級の競技が行われロシアを始め欧米選手が活躍し多くのメダルを獲得しています。
テコンドー「型」のメジャー大会の歴史
WTF世界プムセ選手権の歴史
相手と組みあって行う試合ではなく、空手の「形」の競技会のようにテコンドーの「型・プムセ」を競い合うのが「プムセ世界選手権」大会です。2006年に第一回大会がソウルで開催され、歴史はまだ長くはありませんが「型」の大きな大会となっています。
当初は毎年開催されていた歴史がありますが、現在は2年に1回の開催です。2020年東京オリンピック大会で空手の形が正式種目となったこともあり、「プムセ」もオリンピックでの正式種目入りを目指しています。
WTFテコンドーの型
WTFテコンドーの型としては、韓国の地名や歴史に根付くものが多く、物語の筋にもなっている「太極」や、国の地名に因んだ「高麗」、「金剛」などがあり、国技院による統一教本として型の技術も標準化もされています。
また級位や段位によりそれぞれ型の技術も分れており、8級から1級までは「太極」の一章から八章の「八卦の型」、初段からは「高麗」や「金剛」、「太白」、「平原」などがあります。
ITFテコンドーの型
ITFテコンドーの型としては全部で24あり、それぞれ朝鮮半島の歴史や神話に基づく型が多く、特にサインウェーブと呼ばれる移動する際に上下に波打つような独特の動作が特徴です。
またWTFテコンドーと同じように級位や段位によりそれぞれ型の技術が分れており、9級から1級までは「天地」や「檀君」、「島山」などの技術の型、初段からは「忠壮」、「乙支」、「文武」、「西山」、「階伯」などのテコンドーの型が行われます。
アジアのテコンドーメジャー大会の歴史
上記のテコンドー大会に加えて、「アジア競技大会」でのテコンドー種目や「アジア・テコンドー選手権」など、創設国として歴史のある韓国を中心にテコンドーの国際大会が開催されています。
またパラリンピックのテコンドー種目と同じように、障害のある方々による「パラテコンドー世界大会」なども開催されたくさんの選手が活躍しています。このように世界各地でテコンドーの国際大会が多数行われ、世界的スポーツとしてテコンドーが発展しいる最近までの歴史の流れです。
テコンドーを楽しもう!
「韓国の人気スポーツ!テコンドーの歴史やルールを紹介!」の記事はいかがでしたでしょうか?韓国で創設された歴史のあるテコンドーは、オリンピックに正式種目にもなっている人気のスポーツですね。
また世界の各国で道場が開かれ、今やオリンピックでは、創設国として歴史のある韓国以外にも多くの国がメダルを獲得しています。今後テコンドーのルールなどを理解されてさらにテコンドーの華麗な技を楽しんでください。
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