バスケットボールのはじまり
バスケットボールの誕生の理由
バスケットボールは今や最も有名な球技の一つですが、その始まりについてはあまり知られていません。多くのスポーツはその起源を調べると、自然発生的に生まれたものが多いのですが、バスケットボールは目的をもって考案されました。
その目的は、体力を持て余した我が儘な若者をなんとかスポーツに参加させること。目新しいスポーツを誕生させて、若者たちのイライラを発散させようとしたのです。
もう一つの目的は、新しい屋内球技を生み出すことです。バスケットボールが生まれる前の北米で人気だったのはサッカーやアメリカンフットボールなどの屋外スポーツで、雪の多い北米では冬の間に屋内でできるスポーツが求められていました。
バスケットボールが誕生した場所
1891年、バスケットボールの歴史はアメリカのマサチューセッツ州で始まりました。マサチューセッツ州の寒さは厳しく、冬は道路が凍ることも多い土地です。
そんな場所にある国際YMCA体育部の体育教官だったカナダ人、ネイスミスらはなんとか冬にできる屋内スポーツを作らなければならないと考えていました。そこででYMCAの冬季スポーツプログラムの目玉として誕生したのがバスケットボールなのです。
バスケットボール最初の試合
初めての試合に参加したのはネイスミスのレッスンを受講する学生18名。バスケットボール最初の試合は9人制で行われたのです。この中には、日系人と思われる”ゲンザブロウ・イシカワ”の名前が見られます。当時からYMCAはアジア人を含む留学生にも門戸を開いていたのです。
試合は30分間行われました。試合結果は1-0とシュートが一度入っただけでした。現在の試合とは違いアクロバティックなプレーはなく、レクレーションの様相でしたが、生徒たちからの評判は上々。すぐに噂は広まります。
バスケットボールの発展
世界に広まるバスケットボール
初試合の翌年には、早くも国際YMCAの広報誌で紹介されます。屋内でもできる新しい球技はすぐに評判となり、瞬く間に各州の国際YMCAに広まっていったのです。世界中へ広まった現在では200余りの国と地域で親しまれています。
ストリートバスケットから生まれたスポーツ
バスケットボールが国民的スポーツとなると、公園にはバスケットゴールが設置されていきました。そうなると、少人数で行うもの、省スペースで試合ができるものなど新しいバスケットボールスタイルが開発されるようになります。
これが、”ストリートバスケット”の始まりです。ストリートバスケットは、スポーツよりも”遊び”の要素が強いのでプレーはよりダイナミックに、ギャラリーを楽しませるプレーがどんどん生まれていきました。
ストリートバスケットの代表的なものは3on3やそこからさらに派生した3x3です。スピーディーな試合展開が魅力で、2020年の東京オリンピックからは正式種目として採用されました。
バスケットボールの語源
”バスケット”はフルーツのカゴのこと
現在のゴールはカゴではなくリングにネットが下げられたものですが、初期は果物を入れるカゴをゴールとしてボールを入れるスポーツでした。専用のゴールが考え出されるまでは、体育館のバルコニーに吊り下げられたカゴに向かってボールを投げ入れていました。
つまり、バスケット=カゴを使うから球技だからバスケットボールと名付けられたわけです。カゴにボールが入ったらいちいち取り出さなければならないなんて、今の試合風景からは考えられませんね。
当時のゴールになかったものとは?
ゴールに付いていなかったもの
当時のゴールには今ではお馴染みのあるものがありませんでした。それはゴールの後ろにある板、バックボードです。当初はカゴはバルコニーなどに吊り下げられただけで、バックボードがないため、まるで玉入れのようにボールを投げ入れていました。
このスタイルでは、バルコニーにいる相手チームの観客がゴールに手を伸ばしてシュートを妨害してしまいます。そこで、観客がシュートを邪魔しないようにバックボードが取り付けられるようになったのです。つまり、バックボードは、観客の妨害行為を防ぐための盾だったことになります。
バックボードが変えたもの
バックボードが取り付けられるようになってから、まず、バックボードに跳ね返らせてシュートするというプレーが始まりました。観客のマナー違反を防ぐ目的だったバックボードが、結果的に新しいプレースタイルを生み出したのです。
また、バルコニーに固定する必要がなくなったことから、コートの外側に位置していたゴールはコートの内側に移動します。こうして、現在ではおなじみのゴール下の競り合いやダンクシュートなどのプレーが生まれれたのです。
バックボードの移り変わり
バックボードが取り付けられたことで、観客の妨害がなくなり、プレーも多様化しましたが、新たな問題が生まれました。それは、バックボードが邪魔でせっかくのスーパープレーが良く見えないという問題です。そんな観客の不満を解消するために、バックボードは透明な素材も使われるようになりました。
バックボードは素材だけでなく、大きさや付属品も改良されてきました。大きく変わったのはシュートの目安となるインナースクエアが描かれるようになったことです。
利便性を考えて、カゴは金属製のリム(リング)とネットに変わりました。ネットに変わったことによって、いちいちボールを取り出す必要がなくなり、試合展開は随分とスピーディーになったのです。
バスケットボールルール改定の歴史
基本的なルールの確立
バスケットボールは、相手チームが防御するリングにシュートを入れると得点になるゲームです。今では多くの複雑なルールがありますが、誕生した当時のルールはたった13条にまとめられたものでした。驚くことに、幾度ものルール改定を経てもこの最初のルールは原則となっており、よく考えられたスポーツであることが分かります。
最初のルールから、ボールを持ったままでの歩くことは禁止され、ボールのパスやバウンドは足などは使わずに片手もしくは両手ですることが求められており、ファールのルール、シュートの定義などがもきちんと定められています。
13条のルールポイント
- 相手チームのカゴにボールを入れると得点になる
- ボールは手で扱い、ボールを持ったまま走ってはいけない
- 相手チームの選手を妨害したり、相手チームの選手に触れてはいけない
- ボールはサッカーボールを使用する
サッカーボールを使っていたことや、プレーヤーの人数が決められていないこと、ドリブルについての規定がないことなど、まだまだ不完全なルールです。バックボードがまだ存在しなかったため、バックボードについての規定もありません。
この13条のルールを守るために、プレー技術は進化していきます。まず生まれたのが、ルールの範囲内でなんとか相手チームからのディフェンスをかわす技術です。ボールを保持したまま移動する技術として、ドリブルやピボットなどのプレーが生まれました。
今では当たり前のこれらのプレーも、最初はボールを持ったまま歩いてはいけないというルールをかいくぐるために生まれた、苦肉の策ともいえるプレーでした。
ルールの移り変わりと現在のルール
バスケットボールの歴史はルール改定の歴史です。1930年頃からルールの改定が行われるようになり、都度ルールが変えられてきました。禁止事項が増えたり、禁止されていた行為が認められたりと目まぐるしく改定されています。
現在のルールは考案当時よりもかなり細かくなり、現在のルールはなんと数百にも上る。複雑なルールは競技の人気を低迷させることなく、より人気のあるスポーツに成長させました。
バスケットボールならではのルール
- 競技時間は10分間を4回行うクォーター制
- 選手交代を何回でも行うことが出来る
- スピーディーな試合展開を促すためのルールが多い
国際バスケットボール連盟(FIBA)の歴史
国際バスケットボール連盟の始まり
国際バスケットボール連盟(FIBA)は1932年、ジュネーブに誕生しました。発足当時の国際バスケットボール連盟には発祥国のアメリカは参加せず、参加国はわずか8ヵ国という寂しい始まりでした。1936年からはオリンピック競技となり、この年に日本も国際バスケットボール連盟に加入しています。
国際バスケットボール連盟の役割
- 国際ルールの取り決め
- 国際大会(ワールドカップ)の運営
- 国際大会の審判任命
国際バスケットボール連盟参加国
現在の参加国は、アメリカも含め200以上の国と地域です。参加国が増えたため、アフリカ・アメリカ・アジア・ヨーロッパ・オセアニアの5つの大陸にそれぞれ下部組織をおいて運営されています。
また、過去8年間の成績を元に各国のナショナルチームのランキングを発表しているのも国際バスケットボール連盟です。
FIBAアジアに参加する国や地域は現在44ヵ国。参加国は更に、東アジア、東南アジア、中央アジア、南アジア、西アジア、湾岸の6つのサブゾーンに分けられています。サブゾーンごとに予選が行われ、日本の所属は東アジアゾーンです。
NBAの歴史
NBAの始まり
NBA(National Basketball Association)はバスケットボールのプロリーグ。アメリカのチームを中心にカナダのチームも在籍しています。発足は1946年。オリンピックでの競技採用やNBAが人気を博したことでバスケットボールは国際的なスポーツへと発展していきました。現在では世界有数のプロリーグです。
バスケットボールは一気に人気のあるスポーツになりましたが、プロリーグの発足は意外にも時間がかかり、バスケットボールの誕生から実に半世紀後も経ってからです。NBAの前身であるBAAが1946年に始まり、その後NBLを吸収してNBAと改名しました。
バスケットボールシーズン
冬のスポーツとして発展しただけあって、夏はオフシーズンになります。NBAの試合は秋の終わりから春にかけて行われ、NABの試合のうち、10月から翌年4月までのレギュラーシーズンに行われるのは82試合です。
その後、レギュラーシーズンの成績によってポストシーズンが行われ、勝ち進んだチームがNBAファイナルを戦います。NBAファイナルの勝者がそのシーズンのチャンピオンとなるのです。
バスケットボールのもう一つの歴史
黒人差別的な制度
バスケットボールが生まれた時代は、まだまだ人種差別がまかり通っていました。幸い、バスケットボールが誕生した地域は北部の比較的人種差別意識の低い地域だったため、バスケットボールは人種に関わらず人気のスポーツとなりました。
しかし、バスケットボール人気が広がり、アメリカにプロリーグが誕生した時、そこには差別的な制度がありました。なんと、黒人選手は白人選手とは同じチームに所属できなかったのです。そして、黒人選手は非白人だけのリーグで試合を行いました。
その後、リーグは一つになりましたが、それでも黒人チームと白人チームは分かれていました。現在、NBAの選手の80%が非白人選手です。今では当たり前となった光景ですが、当時は白人のみのチームのほうが多かったのです。
圧倒的な戦績
時代が進み、白人チームと黒人チームの試合が行われるようになると、その身体能力の違いが明らかになっていきます。1940年に黒人チームであるハーレム・トロッターズが残した成績は158勝8敗という驚異的ものでした。
NBAの黒人選手
NBAは設立の翌年、1947年に非白人プレーヤーとして初めてプレーしたのはアジア人でした。黒人選手の誕生は更に3年後の1950年のことです。しかし、その後の黒人選手の登用は凄まじい勢いで進みました。
国内バスケットボールの始まりと歴史
日本バスケットボールの幕開け
日本にバスケットボールが伝わったのは、公式には1908(明治41)年のこととされています。アメリカのYMCAを卒業した大森兵蔵が東京で紹介したのが始まりです。アメリカでバスケットボールの初試合に参加したゲンザブロウ・イシカワがバスケットボールを日本に持ち帰ったという説もありますが定かではありません。
JABBA設立
日本でのバスケットボールの普及は迅速ではなく、JABBA(日本バスケットボール協会)の前身である大日本籠球協会設立までには20年あまりの時間がかかりました。更に10年かけて発足したのが日本国内初の社会人リーグ「バスケットボール日本リーグ」です。
国際資格停止処分を経て
2006年に行われた、国際バスケットボール連盟による世界選手権大会(ワールドカップ)は初の日本開催でした。しかし成功とは程遠く、JABBAはかなりの赤字を出して国際バスケットボール連盟から処分を受けます。国際バスケットボール連盟からの処分内容は親善試合を含むあらゆる国際試合への出場停止という重いものでした。
問題となったのは、国内にリーグが2つ存在していること、興行権がチームにないことなどで、勧告後もリーグの統合が進まず国際資格の停止となりました。その後JBBAはJBAに名称を変更。国内バスケットリーグの統合や組織変革を経て、ようやく国際バスケットボール連盟から復帰が認められたのは2015年のことです。
バスケットボールの歴史
いかがでしたか。バスケットボールの歴史にはアメリカの歴史的背景が深く関わってきます。これからバスケットボールの試合の見方が変わるかもしれませんね。
バスケットボールの歴史 ポイント
- 1891年に冬季の室内競技として考えられたスポーツ
- 考案時の基本ルールを元に何度もルール改定を経て発展
- 現在の国際バスケットボール連盟加入国は200を超える人気スポーツ
- 発祥国アメリカのプロリーグNBAがバスケットボール人気を牽引
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出典:pixabay