そもそも方言とは?
方言のある理由
日本語には地域ごとに、文法や音韻、イントネーションなどに亜種、訛りがあり、これを方言と呼んでいます。日本は、狭い島国ですが、地形は険しい山々や、激流の河川に阻まれており、交通が発達していなかった昔は、地域ごとの行き来ができませんでした。
その為、地域ごとに話し言葉が発達し、特徴的で面白い語尾や、かわいいイントネーションといった方言を形成していったと言われています。
方言の種類
日本の方言は細かく分類すると16種類といわれています。都道府県毎にわかれている地域もありますが、山脈や河川といった自然のものでわかれている箇所も少なくないので、ここからが「○○弁」といった分かれ目の判断は難しいです。あまりの数と難しさに、方言の辞典などがあるくらいです。
本土方言と琉球方言
大きなくくりでは、2つの方言があり、鹿児島の奄美大島を境に九州、本州、北海道側の「本土方言」と、奄美大島、沖縄本島、与那国島などの琉球列島の「琉球方言」になります。本土方言をさらに分類することができ、「東部方言」「西部方言」「九州方言」の3つにわかれます。
九州方言
九州地方の「九州方言」は九州弁ともいわれ、さらに3つに分類されます。3つの九州方言は、それぞれ異なる特徴があります。まずは、その特徴について解説していきます。
「豊日方言」
福岡東部、大分、宮崎の一部といった、九州でもやや本州よりで使用されているのが「豊日方言」といわれ、接続詞の「ばってん」などが有名です。他の九州方言に比べて、本州、四国に近い訛りの言葉使いです。
肥筑方言
2つめは、福岡西部、佐賀、長崎、熊本、大分の日田などの東シナ海川に多く見られる「肥筑方言」です。しゃべりの末尾に「~たい」をつける話し方が特徴です。博多弁もこの肥筑方言にあたります。
薩摩方言
九州方言最後の薩摩方言は、鹿児島弁として普及しており、宮崎の一部と奄美群島を除く鹿児島全土で使わています。他の方言に比べても、薩摩方言は、訛りが強く、イントネーションが独特です。
日常で使われる、挨拶の言葉なども独特の言い回しが多数あります。そんな特徴的な方言の鹿児島弁の中から、おもしろくて、びっくりする方言を厳選して紹介します。
鹿児島の面白い方言-あいさつ編-
鹿児島弁のあいさつ辞典
まずはコミュニケーションの要である、あいさつの鹿児島弁です。
■お疲れ様...おやっとさあ
■ありがとうございました...ありがとさげもした
■行ってきます...いたっきもんで
■いらっしゃいませ...おじゃったもんせ
あいさつの鹿児島弁の特徴
鹿児島弁あいさつの言葉は、どれも特徴的で面白い方言です。いらっしゃいませのあいさつ「おじゃったもんせ」は、おもてなしの言葉として、鹿児島の玄関口の空港や、桜島へ渡るフェリー乗り場など観光の拠点でよく見かけますので、ぜひチェックしてみてください。
鹿児島の面白い方言-あいさつ言葉イントネーション編-
鹿児島弁の難解なイントネーション解説
日常使われる、おはよう、こんにちはなどのあいさつは、標準語と同じでもちろんそのまま使いますが、イントネーションに特徴があります。面白くてかわいい、特徴的なイントネーションについて解説します。
語尾から2、3番目にアクセントのあいさつ
■おはよう...お→は→よ↑う→
■おやすみ...お→や→す↑み→
■いただきます...い→た→だ→き↑ます→
■行ってきます...行っ→て→き↑ます→同じあいさつでも、アクセントをどこに持ってくるかで方言の訛りがでます。鹿児島弁はあいさつなどの単語は語尾近くにアクセントをもってくるイントネーションが多いです。4文字から5文字の言葉にこのイントネーションが多くみられます。
語尾にアクセントのあいさつ
■こんにちは…こ→ん→に→ち→は↑
■さようなら…さ→よ→う→な→ら↑
■またね…ま→た→ね↑
今は、方言はあまり使わなくなってきていますので、標準語のあいさつでイントネーションに訛りがあるあいさつの言葉使いが主流です。ただ、難解なイントネーションなので、まるで外国語のようです。聞くと思わず辞典を引きたくなるほど、違う言葉に聞こえるでしょう。
鹿児島の面白い方言-動詞編-
鹿児島弁の動詞辞典
数ある動詞中から、特徴のあるかわいい方言をまとめました。動詞の方言が理解できれば、ある程度の会話は成立するのでご紹介します。
「行く→いっど」や「する→すっど」は○○どに変換されます。また、「しまった→しもた」「疲れた→だれた」といった、自分の状態を表す場合は、○○たが多いです。その他にも、「がんばれ→きばれ」「教える→いっかす」「寄りかかる→なんかかる」「おどろく→ひったまがる」といったバラエティ豊かで面白い方言の動詞があります。
鹿児島弁の宴会を指す言葉
動詞の方言も聞きなれない言葉もありますが、どれも薩摩特融の言葉で面白いです。鹿児島人は宴会を「だれやめ」というのですが、これは「だれる(疲れる)」の動詞と「やめ(やめる)」の動詞を組み合わせた言葉です。お酒を飲むことによって疲れるのをやめるという意味からきた言葉です。
鹿児島の面白い方言-動詞語尾編‐
自分が行動する場合の鹿児島弁語尾
鹿児島弁の動詞は、語尾に共通の特徴があるものが多いです。里帰りをしてこの語尾を聞くと、薩摩に帰ってきたんだなと感じさせてくれる、鹿児島弁の特徴でもあります
自分が行動する場合
自分が行動する場合は、「~ど」が語尾になります。
・明日は早く仕事へ行っど。(明日は早く仕事へ行く)
・これからサッカーすっど。(これからサッカーをする)
・荷物をあちらへやっど。(荷物をあちらへやる)
他の人を誘う場合の鹿児島弁の語尾
他の人を誘う場合
他の人を誘う場合は「~が」が語尾になります。
・明日は早く仕事へ行くが。(明日は早く仕事へ行こう)
・これからサッカーすっが。(これからサッカーしよう)
・荷物をあちらへやっが。(荷物をあちらへやろう)
「~ど」、「~が」は鹿児島訛りの代表的な特徴です。ぜひ覚えておいてください。薩摩言葉で女の子に「一緒にいくが~」なんて誘われたら、かわいいのでどこでもついて行きたくなりませんか?
鹿児島の面白い方言-形容詞編-
鹿児島弁の形容詞辞典
言葉を装飾する形容詞にも鹿児島弁ならではの方言が多数あります。薩摩言葉を彩る、面白い形容詞辞典です。
「沢山→ずんばい」は動詞のあると組み合わせると「ずんばいあっど」で沢山あるという意味です。「だらしない→ずんだれ」「役立たず→がんたれ」のように○○たれ(だれ)は人となりを表す形容詞の語尾によく登場します。
「あん子はきかんたれじゃ」は「あの子は言うことをきかない子」という意味になります。それ以外にも、「熱い→ぬっか」「どうにかこうにか→いけんこげん」など鹿児島弁ならではの訛りがずんばいあります。
鹿児島弁のかっこいいとかわいい
鹿児島弁で「かっこいい」と「かわいい」を指す方言があります。かっこいいは「よかにせ」で「よか(よい)」と「にせ(お兄さん)」を組み合わせた言葉です。ニュアンス的には、イケメンが近いかもしれません。
「かわいい」はそのままですと、「もぜ」になりますが、よかにせを女性に置き換えると「よか(よい)」「おごじょ(女性)」になります。
鹿児島の面白い方言-感動詞編-
鹿児島弁の感動詞辞典
薩摩言葉の感動詞はふとした拍子にでる、鹿児島弁でも根強い方言です。「そうですね」は「じゃっど」、「まさか~」は「いけんこて」になります。
今でも現役で活躍する鹿児島弁の代表で、「すごく→わっぜ」「そうだね→だからよ」「しまった→あいた」があります。この3つの感動詞は現代も鹿児島になくてはならない言葉として活用されています。
わっぜの使い方
感動したときに女の子の口からでる「わっぜ」はかわいいので必聴です。鹿児島の女の子は、「超」や「めっちゃ」のニュアンスで使うので、「わっぜかわいい」になります。また「だよね」を意味する「だからよ~」も薩摩言葉ならではで、面白いです。
鹿児島の面白い方言-名詞編-
鹿児島弁の名詞辞典
名詞も辞典片手にでもないかぎり、なかなか意味の通じない言葉ばかりを集めてみました。「俺」は「おい」です。「おいどんは~」といったフレーズを聞いたことあるかたもいるかもしれません。男性の言葉です。
また、お土産にも人気の桜島大根は「桜島でこん」で、でこん=大根です。同じく桜島つながりで、火山灰を「へ」といいますし、昆虫の蠅も「へ」になります。さらに難解な薩摩言葉で、「頑固者→ぼっけもん」「台風→うかぜ」となります。
鹿児島の黒板消し
鹿児島の学校では普通に使われている「そこのラーフルとって」が、転入生に伝わらないことがありました。「ラーフル」は鹿児島弁で「黒板消し」のことです。このかわいい名称は、鹿児島訛りでは当然のように使われています。
そんな、特徴的なものから、訛りのあるものなど方言ならではの鹿児島弁の名詞は他にもありますので、ぜひ調べてみてください。
鹿児島の方言‐名詞につける敬称編‐
○○どんの使い方
大河ドラマのタイトルでもあった、鹿児島の方言で使用する敬称で一番有名なものは「~どん」です。ドラマの中では、「~さあ」の敬称が多く使われていましたが、鹿児島弁の敬称には使い分けがあるのをご存知ですか?「どん」は殿が訛った敬称になります。おもに、目上の人が年下に対して、親しみを込めて呼ぶときに使われます。
〇〇さあの使い方
大河ドラマでも頻繁に出てきた「~さあ」は、様が訛った鹿児島弁です。「さあ」は、目下の人が年上に対して使う敬称です。現代の私たちが西郷どんを呼ぶときは、正しくは西郷さあになります。鹿児島出身の方でもなかなかこの違いは知らない方が多いので鹿児島弁の豆知識です。
鹿児島の面白い方言-郷土歌編-
ちゃわんむしの歌
鹿児島人は全員歌える「ちゃわんむしの歌」他県の人に聴かせても「……。」なのですが、最近ではNHKなどでも取り上げられているのでご紹介します。歌詞の内容は、「茶碗蒸し」と「茶碗の虫」を勘違いしている面白い内容です。
茶碗はちゃんと洗ったのかと聞いてきた店主に、「日に3回は洗ってるよ」と問答する歌になっています。興味のある方は、ぜひ一度聴いてみてください。聴いても鹿児島弁が分からないと確実に「?」になります。
泣こかい、飛ぼかい、泣こよか、ひっ飛べ
この歌は、鹿児島人の気性をうまく表現しています。歌詞の内容は、高いところから飛び降りるか、どうしようか悩んでいる子供に、「どうしようか悩んで泣くくらいなら、さっさと飛べ」という薩摩隼人ならではの励ましです。短いフレーズの曲に鹿児島弁を詰め込んだ歌なので、ぜひ一度聴いてみてください。
鹿児島弁の訛りはかわいい!
鹿児島生まれ、鹿児島育ちの鹿児島人が解説する、面白くてかわいい鹿児島弁を紹介しましたが、いかがでしたか?特徴的なイントネーションや、訛りはもちろんのこと、鹿児島弁ならではの歌など鹿児島弁を語るうえで外せないので、ぜひ鹿児島に旅行にいくときや、鹿児島人の同僚に話しかけるときの参考にしてみてください。
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