美味しいじゅんさいは下ごしらえが肝心
じゅんさいは初夏の食べ物で人気です。独特のぬめりのある食感と酢醤油との相性は抜群で夏を楽しみにしている人も多いでしょう。スイレンの仲間であるじゅんさいは世界中に広く分布しますが、調理して食べているのは日本と中国くらいといわれています。
日本では酢の物や天ぷらなどの食べ方が一般的ですが、中国では漢方や薬膳としての食べ方も多くスープなどにされるのが定番です。
じゅんさいとは
日本の食文化では定番のじゅんさいですが、あらためて見つめなおしてみると不思議な姿をしていますね。じゅんさいはスイレン目ハゴロモモ属、ジュンサイ科の植物です。酢の物などの食べ方をされているぬめりで包まれた部分は一体どの部分なのでしょうか。ぬめりは何によって生まれているのかも気になりますね。特徴を見ていきましょう。
特徴①水草の一種
じゅんさいはスイレンの仲間だけあって水草の一種です。じゅんさいが採れるのはじゅんさい池と呼ばれる池で、若い芽をつんだものが食材の「じゅんさい」として扱われます。小さい芽ほど価値があるとされ高級です。
じゅんさいの特徴であるぬめりある食感は、若い芽の周りにだけあるゼリー質によるもの。収穫は骨の折れる作業で、池に船を浮かべ水の中に手を入れて水中に潜む若い芽を手で探り当てて収穫します。
特徴②一大産地は秋田県
世界広しといえどもじゅんさいを食べ物として扱うのは日本と中国のみ。さらに酢の物や天ぷらなどさまざまな食べ方を楽しむのは日本だけの文化だといわれています。
そんなじゅんさいの生産量日本一は秋田県三種町。秋田県ではじゅんさいの栽培もおこなれていますが、実は日本のほとんどの都道府県で絶滅危惧種に登録されています。東京都や埼玉県などでは絶滅種、秋田県近隣の岩手県でも純絶滅危惧種に登録されるほどです。
土地開発がじゅんさい池を破壊する一因に
じゅんさいが育つのは前述したように清らかな水が静かに流れ込む池です。池の底には落ち葉などの有機物が堆積し、生活排水などに多く含まれるリンが少ない水を好みます。そのため、生活排水が流れ込むような池では育ちません。蛍やトンボを育むような環境がじゅんさいにも必要です。
また、池自体が土地開発によって埋め立てられることも珍しくないでしょう。このような背景をうけ、あちこちで姿を消しつつあります。
特徴③旬は初夏
じゅんさいは池の底に根を張めぐらせ、地下茎によって増える植物です。水温が上昇しだす初夏にこの地下茎から一斉に若芽を水上に向かって伸ばし始めるため、じゅんさいの収穫は夏にはじまります。
その年の初めに収穫された「はしり」のものを「一番芽」などとも呼びます。季節の変化を好む日本人ならではの呼び名かもしれませんね。とくに味がのって美味しくなる旬は6月といわれています。
特徴④ぬめりのある食感が人気
じゅんさいは独特のぬめりある食感が人気ですね。若い芽だけがぬめりのもととなるゼリー質に覆われています。このゼリー質の主成分はガラクトマンナンと呼ばれる多糖類の一種です。
100gあたり、カロリーはわずか3.6kclaと非常にヘルシーで生産量日本一の秋田県ではさまざまな食べ方が郷土料理として根付いています。
簡単な下ごしらえ【生】
収穫したての「生のじゅんさい」は池から収穫したものを袋詰めしたもので加熱調理などされていないため保存期間は短くなります。
しかし、収穫したての生のじゅんさいはまさに旬の味。手に入る時期はぜひこちらを選んでほしいところです。生のじゅんさいにはいくつか簡単な下ごしらえが必要となります。
簡単な下ごしらえ①たっぷりの水で洗う
生のじゅんさいが手に入ったらなるべく早く、新鮮なうちに下ごしらえを始めましょう。じゅんさいに対して10倍量のたっぷりの水をボウルに用意し、そこへ浸します。
強い水流などに当たるとじゅんさいのぬめりが採れてしまうのでそっと優しく洗うのが下ごしらえで重要なポイントです。ボウルにザルを重ねておくと次の下ごしらえの工程がスムーズに進みます。
簡単な下ごしらえ②水気を切る
優しく洗った生のじゅんさいの水を切ります。このときも乱暴に扱うとぬめりまで流れて行ってしまうので注意が必要です。ザルで水を切っている間に次の下ごしらえの工程で必要な湯を沸かし始めましょう。
茹でるお湯の量もたっぷり用意します。じゅんさいはたっぷりのお湯でさっとゆで上げるのが美味しく仕上がるコツです。
簡単な下ごしらえ③たっぷりの湯でゆでる
たっぷりの湯へ洗ったじゅんさいを投入します。やや黒っぽい芽がいっきに明るいグリーンに変化するのは下ごしらえの見どころであり、茹で時間を三期分けるポイントです。数分茹でると全体が色鮮やかな緑に変わるので、そのときにさっと鍋から再びザルにあげます。
茹ですぎるとじゅんさいを噛んだ時に感じるシャキシャキした食感が失われるので注意しましょう。
簡単な下ごしらえ④急冷する
茹で上がったじゅんさいの下ごしらえで大切なのがすぐに冷やすことです。鍋の横には十分に冷やした水をたっぷり用意しておき、すぐに冷やせるように準備しておきましょう。
急冷すると鮮やかな茹でたての緑色が失われにくくなるほかに、シャキシャキした歯ごたえある食感も残ります。このあとは酢の物など好きな食べ方に調理していきます。
簡単な下ごしらえ【水煮・酢漬け】
旬の時期以外に出回るじゅんさいは水煮や酢漬けといって保存加工がされたものになります。生のものに比べるとぬめりやシャキシャキした食感、風味は劣るものの下ごしらえをきちんとすれば美味しく食べられるでしょう。
また、生のじゅんさいの下ごしらえに比べるとより簡単に済みます。
簡単な下ごしらえ①水にさらす
まず最初に水にさらして酢を洗い流しましょう。このときもたっぷりの水をボウルに用意し、ザルをその上に合わせてそこへじゅんさいをあけます。水にさらす時間は短くて30分ほどです。
酢醤油など酢の物の食べ方を考えているのであれば30分ほどつけてある程度酢が抜ければそのあとの調理で匂いが気にならないでしょう。鍋物などにするなら一晩じっくりと水にさらして酢のにおいを抜きます。
簡単な下ごしらえ②水気を切る
たっぷりの水にさらして酢を抜いた後、しっかりと水気を切りましょう。水気をしっかり切らず、残っているとそのあとの調理で必要以上に調味料が必要になったり味がボケてしまいます。
ぬめりを生み出すゼリー質が取れないように気を付けつつもしっかり水気を切るのがポイントです。水気を切れば下ごしらえは完了。好きな食べ方に合わせて調理を進めましょう。
人気のじゅんさいの食べ方
じゅんさいの下ごしらえは工程自体は簡単で難しくありません。大切なのはたっぷりの水、たっぷりのお湯を用意することでしょう。下ごしらえが済んだ後はお好みの食べ方に合わせて調理するだけです。ここからは人気の食べ方をご紹介します。
人気の食べ方①じゅんさいと生姜の酢の物
材料
生を茹でたじゅんさい:100g
白だし:小2
酢:小1
みりん:小1/2
酢の物はじゅんさいの食べ方でもっともポピュラーなものでしょう。キリリと冷やした酢醤油とじゅんさいの相性は抜群。夏の暑さを忘れさせてくれる食べ方です。細かく千切りにした生姜やすりおろし生姜と合わせた食べ方を楽しみましょう。
くわしいレシピ・調理法はクックパッドで
じゅんさいの酢の物は官能的な食感と酢醤油の組み合わせがなんとも心地よい食べ方です。薬味は生姜のほかに、みょうがや穂紫蘇などもおすすめ。じゅんさいと同じく夏に旬を迎えるものをうまく取り入れて、季節の訪れを感じさせる食べ方を楽しみましょう。
酢醤油以外の味付けではポン酢などが手軽で簡単です。
人気の食べ方②じゅんさい蕎麦
材料
じゅんさい:1袋
そば:2人分
きざみねぎ:少々
水:600cc
だし顆粒:5g
濃い口醤油:大さじ2
みりん:大さじ1
塩:小さじ1
キリキリに冷やした酢の物も美味しい食べ方ですが、もう少しボリュームある食べ方をしたいのであればじゅんさい蕎麦がおすすめです。温かい蕎麦の上にのせても、冷たいかけそばの上にのせるのもおいしい食べ方になります。
夏バテした人もじゅんさいの食感が優しく、つるつると食べられるでしょう。
くわしいレシピ・調理法はクックパッドで
じゅんさい蕎麦には夏野菜のトマトやオクラをトッピングするの食べ方もおすすめ。見た目が鮮やかになるだけではなく栄養バランスも整って1皿で満足な食べ方ができるでしょう。とろろなどをたっぷりかければよりじゅんさいのぬめりある食感が引き立っておすすめです。
人気の食べ方③じゅんさいのお吸い物
材料
鶏もも肉:100~150g
こんにゃく:1/2枚 80g~
じゅんさい:今回はお玉2杯
生姜(チューブも可):1/2かけ
水:500cc
白だし(orほんだし):30cc
塩:小さじ1/4
醤油:小さじ1/4
じゅんさいのお吸い物は秋田の郷土料理の食べ方で人気です。生姜のすりおろしをいれるのが食べ方のポイントとされており、生姜のほかに鶏肉をいれて出汁を出すのが特徴でしょう。透明感ある見た目に仕上げたいときは濃い口醤油ではなく薄口醤油で仕上げるのがいいかもしれません。
優しい味わいの中にも力強さが感じられる食べ方です。生姜が苦手な人がいる場合は、後からすりおろし生姜を個別にのせる食べ方でも構いませんよ。
くわしいレシピ・調理法はクックパッドで
じゅんさいのお吸い物は素材が引き立つので、ぜひ水煮のじゅんさいではなく生のじゅんさいで試して欲しい食べ方です。お椀のなかに浮かぶプルプルしたじゅんさいの姿は見た目も涼やかで食欲をそそる食べ方といえるでしょう。
生姜は体を温めるイメージが強いですが、生の生姜は発汗を促し体を冷やす効能も。得たい効能によって食べ方を変えるといいといわれています。夏はすりおろした生の生姜を添える食べ方がいいでしょう。
生姜の効能について気になった方はこちらもチェック
生姜は体を温める食材でもあり、冷やす食材でもあります。体調に合わせて食べ方を変えると健康にも役立つでしょう。生姜の効能やおすすめの食べ方、成分などについて気になった方は以下の記事もご参考ください。

生姜の効能は?気になる成分や副作用を解説!食べ過ぎもよくない?
漢方にも用いられるなど健康食品として知られる生姜。でも、冷え性対策のはずが逆効果になってしまう使い方があるなど生姜について知られていない効果...

ショウガ(生姜)の効果・効能って?身体に与える健康作用と注意点を解説!
ショウガの効果・効能をどれくらい知っていますか?冷え性改善や風邪を引いた時に効果があるとイメージする人も多いのではないでしょうか?ここではシ...
人気の食べ方④じゅんさい鍋
材料
鶏もも肉:500g
生じゅんさい:300g
セリ(水菜か三つ葉でも):1束
ささがきゴボウ:150g
まいたけ:100g
醤油:40cc
だし醤油(麺つゆでも可):40cc
塩:小さじ1
しょっつる(あれば):大さじ1
みりん:20cc
酒:20cc
じゅんさい鍋はたっぷりと収穫できる秋田ならではの食べ方です。きりたんぽ鍋に使われるセリや比内地鶏が合わせられることが多く、秋田の魅力をふんだんに感じられる食べ方として人気があります。
じゅんさいはしゃぶしゃぶするようにさっと鍋に通して食べると食感が残っていて美味しいですよ。
くわしいレシピ・調理法はクックパッドで
じゅんさい鍋に使われる調味料「しょっつる」は秋田県発祥の調味料。いわゆる魚醬の1つで塩魚汁とも表記されます。ハタハタと塩を熟成して作られるしょっつるはうまみが強く醤油のようにさまざまな食べ方に使われる調味料です。
じゅんさい鍋を作るなら隠し味にぜひ取り入れてみてくださいね。
じゅんさい鍋に入れたいセリについて詳しく知りたい方はこちら
じゅんさいと同じくセリも日本が色濃く反映されている食材でさまざまな食べ方で楽しまれています。秋田の郷土料理じゅんさい鍋やきりたんぽ鍋に多用される野菜でもあり、独特な香りと食感が魅力。セリの特徴やおすすめの食べ方などについて解説した記事はこちらです。

深みのある独特な香りが人気!和物が美味しい、セリの食べ方とおすすめレシピを紹介!
セリ(芹)は日本固有のセリ科の野菜です。独特の香りが魅力でさまざまな食材との相性がよく食べ方も無限大。おひたしや和え物はもちろん、パスタや炒...
人気の食べ方⑤じゅんさいの茶わん蒸し
材料
卵:1個
だし汁:150cc
醤油:小さじ1/2
塩:一つまみ
海老:1尾
あさりむき身:3~5粒
じゅんさい:適宜
雲丹:適量
じゅんさいの茶わん蒸しは冷やした茶わん蒸しの上にじゅんさいを餡としてかけて楽しむ食べ方です。やわらかな茶わん蒸しとじゅんさいのプルプルした食感が合わさった人気の食べ方で、ウニやエビなど高級食材を合わせればまるで料亭の高級料理のようでしょう。
くわしいレシピ・調理法はクックパッドで
じゅんさいの茶わん蒸しは冷やす食べ方がおすすめ。茶わん蒸しに閉じ込められた素材の出汁をじゅんさいのぬめりが優しく包み込んで至福の食べ方ですよ。お年寄りからお子さんまでおいしく食べられる食べ方でしょう。
美味しい食べ方でじゅんさいを味わおう
夏の訪れを感じさせるじゅんさいは酢の物はもちろん、鍋物や椀物などさまざまな食べ方が楽しめる季節の食材です。下ごしらえといってもたっぷりの水で洗い、お湯でさっとゆでてすぐに冷やすだけでとても簡単にできます。
生のじゅんさいを見かけたらぜひ手に取っていろいろな食べ方を楽しんでくださいね。近くで生のじゅんさいが手に入らない場合はお取り寄せがおすすめです。
じゅんさいについて気になった方はこちらもチェック
じゅんさいはスイレンの仲間です。スイレン(睡蓮)は仏教とも関係のある植物で花が開くさまは神秘的ともいえるでしょう。スイレンは自宅で育てることも可能です。スイレンの育て方や花言葉などについて詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

睡蓮の育て方は?植え替えの仕方や増やし方、越冬のコツまで解説!
睡蓮の育て方をご存知でしょうか?睡蓮はとても美しい花を持っている水生植物ですので、なんとなく育てるのが難しそうな思われがちですが、実はポイン...

「純粋」「信仰」などの意味を持つ、睡蓮の花言葉をご紹介!色別の違いや由来も解説!
水に浮かぶように咲く気品のある花姿で、見ているだけでどこか神秘的な気持ちになる睡蓮の花。清浄な魂を秘めた聖なる花として古代から神聖視されてき...