トライアスロンとは?
トライアスロンは過酷な競技・レース展開に注目
トライアスロンはオリンピックにも採用されていて、1人の選手がスイム(水泳)バイク(自転車)ラン(長距離走)の3種目を連続して行いその総合タイムを競う競技です。その過酷さから「鉄人レース」とも呼ばれています。
また総合タイムで競うため、スイムが得意でトップに立ってもバイクやランが苦手では勝てません。レースの種類が変わるごとにトップの選手が入れ替わる、レース展開が非常に面白く興味深いスポーツです。
トライアスロンの種類と距離ルール
トライアスロンには主に6つの種類があり、構成や距離ルールもさまざまです。現在オリンピックで採用されている距離と種目構成を「ショートディスタンス(オリンピックディスタンス)」と言います。
オリンピックディスタンスの距離はスイム1.5km、バイク40km、ラン10km(計51.5km)でトライアスロンの中では短い方です。ほかのトライアスロンの種類や距離ルールを紹介します。
①ミドルディスタンス
ショートディスタンスの約2倍の距離ルールがミドルディスタンスです。スイム2kmバイク90kmラン20kmが一般的で大会によってはバイクが100kmを超える場合もあります。
オリンピックディスタンスでも過酷なスポーツなのに、さらに上があるのにびっくりです。オリンピックは多競技多種目で出場選手も多い国際大会なので、単独開催とは違い運営上の制約等が関係しているのではないでしょうか。
②ロングディスタンス
ミドルディスタンスの約2倍の距離ルールを設定しているのがロングディスタンスで「えっ!さらに上があるの」とびっくりです。
スイム3km〜4km、バイク150km、ラン42.195km(フルマラソン)が一般的ですが、大会によっては180kmを超えるバイクもあります。これは自然環境を利用するトライアスロンという競技の特性を考慮し、距離ルールも柔軟に対応しているからです。
③スプリント
オリンピックディスタンスの半分の距離になっているのがスプリントです。トライアスロン普及のために選手だけでなく一般の人も参加できるように、スイム750mバイク20kmラン5kmの距離ルールになっています。
難易度が低いのでトライアスロン初心者の入門レースとして、健康スポーツやダイエット目的に、タイムや過酷さに挑戦するより楽しむために出場する人が増えているのがスプリントです。
④リレー・トライアスロン
3種目の競技を3人または2人が役割分担するルールのトライアスロンです。スイム・バイク・ランの中の得意種目を3人で分担できるので、1人の負担が軽くなり非常に参加しやすいので人気があります。
チームで競い合うことが好きな日本人向きのトライアスロンです。大会によりルールもまちまちで、男子女子別々の場合や男女混合もあり距離も違うので事前に大会ルールを調べましょう。
⑤駅伝スタイル
駅伝は箱根駅伝などで有名なように日本発祥のスタイルで、3人1組でチームを作り、それぞれが3種目を完走してタスキをつなぐのが駅伝トライアスロンです。短めのコースで行うのが一般的になります。
東京2020オリンピックでは、男女混合団体リレー(駅伝スタイル)が採用され、女子→男子→女子→男子の順でスイム300mバイク7.5kmラン2km(O.D.の約1/5)の距離をこなす新ルールです。
⑥ディアスロンとアクアスロン
ディアスロンはスイム(水泳)を除きランとバイクで競う競技で、第1ラン、バイク、第2ランの順で走破するルールでトライアスロンの変形です。アクアスロンはバイク(自転車)が入らないスイム→ランまたは第1ラン→スイム→第2ランの順で行います。
このほか冬の雪上で行われるウインター・トライアスロンもあり、トライアスロンは距離だけでなく3種類の競技の組み合わせやルールも多彩なスポーツです。
トライアスロンの歴史
トライアスロンは1974年に米国カリフォルニア州・サンディエゴで開催された大会が発祥で、オリンピックデビューしたのは2000年のシドニー大会からです。トライアスロンは20数年あまりの歴史が浅い発展途上のスポーツなので、今後新ルールが生まれる期待と可能性があります。
トライアスロンの名前の由来
トライアスロンはラテン語で、トライは数字の「3」でアスロンは「競技」を意味しています。スイム・バイク・ランの3種類の競技をこなすスポーツなのでラテン語の「3」と「競技」組み合わせて「トライアスロン」と名付けたのが由来です。
トライアスロンの記録
オリンピック競技には世界記録や日本記録がありますが、トライアスロンは海や湖、平地や山岳地帯、街中で行われ自然環境や条件が違うので世界記録や日本記録はありません。
ただ参考記録として1996年英国の「Simon Lessing」選手が出した1時間39分50秒というタイムがトライアスロン・オリンピックディスタンスで最も速い記録と伝えられています。
日本のトライアスロン
日本で最初に開催されたトライアスロンは1981年の鳥取県の皆生温泉大会で、以後宮古島、琵琶湖、天草大会と次第に広がり、現在は全国で毎年50大会以上が開催されています。
日本がトライアスロンでオリンピックに初めて出場したのは2000年のシドニー大会で、それから毎回参加していますが最高順位は15位で未だメダルには届いていません。東京2020は自国開催なので期待されています。
トライアスロンのルール
1989年に国際トライアスロン連盟(ITU)が設立されルールも定められました。5年後の1994年に日本トライアスロン連合(JTU)も設立されルールもITUに準じています。それではトライアスロンのルールを種目別に詳しく解説しましょう。
全体ルール
トライアスロンは大会の開催地域により環境や条件が違うので、必要に応じ「ローカルルール」を定めることができます。このローカルルールがあるので、各大会ごとに距離や種目構成をルール変更できるのです。
例えば山岳地域で開催する場合にはマウンテンバイクの使用を認めるルールや、冬山開催ではクロスカントリースキーを使用するウインター・トライアスロンが可能になります。
計測時間に含まれるタイム
トライアスロンは3種目の合計時間で計測されますが、種目変更に設けられているトランジションエリアのタイムも計測時間に含まれるルールになっています。
スイムウェアからバイクスーツへの着替え、ヘルメットの装着やシューズの履き替えなどのタイム縮小がポイントです。また危険回避や体調不良、用具の整備などで一時競技を停止していた時間も計測時間に含まれます。
スイム(水泳)のルール
スイムの泳法は、状況に応じた最良の泳法を選択できるルールなので多くの選手はクロールを選びます。ただし海や湖ではブイの周りを回るコースが多く、水面に顔をつけるクロールは方向を見失う恐れがあるので水面の上に顔を出すヘッドアップクロールが一般的です。
またスイムでは支給されたスイミングキャップ着用がルールで義務づられていてます。足ヒレやパドル、シュノーケルやガラス製品は禁止です。
ウェットスーツ
ウェットスーツは安全のため着用が推奨されていますが、水温が低い場合は着用が義務付けられたり、逆に水温が高い場合にはウェットスーツ禁止になるルールがあります。基準となる水温ルールは、ディスタンス(距離)により違うので大会運営情報を確認しましょう。
救助の求め方
トライアスロンのスイムは、海や湖の深い場所で行われるので、足がつったり体調不良で泳ぐことが困難な場合は、溺れる危険があるので救助を求めることができます。競技を止め、頭の上で片手を振り声を出して助けをめるのが救助ルールです。
また疲労が激しく危険回避のためフロート類や停止中のボートに捕まる小休止はルールで許されますが、これを使って推進することは禁止です。
バイク(自転車)のルール
トライアスロンのバイクに使用する自転車は、マウンテンバイク・トライアスロンを除き、ロードレーサーを使用するのが基本ルールです。また全長2m以内、幅は60cm以内がバイクの構造に関する国際ルールになっています。
競技方法ルール
トライアスロンのバイク競技は、乗車してコースを走るのが基本ルールですが、路面状況や急坂、チェーン外れやパンクなどのトラブルでレースを続けることが困難な場合は降車して一時止まることが許されています。
しかしホイールを伴わないバイクフィニッシュはルールで禁止されているので、トラブルで乗車が困難でもバイクを押すなり担ぐなどしてフィニッシュしなければなりません。
ヘルメットの着用義務と着脱ルール
トライアスロンのバイクルールではヘルメットの着用が義務付けられています。またトランジションエリアでバイクラックからバイクを外す前にヘルメットを着用しストラップも締めてなければなりません。
フィニッシュ後は、バイクラックにバイクをかけるまでヘルメットとストラップを外してはいけないルールになっています。これは選手の安全を守るルールなので順守しましょう。
バイクの禁止行為
正当な理由がない限りコースの逆走は禁止です。誤ってコースを離脱した場合や、落とし物をしたときは降車してバイクを押して戻るのがルールになります。装備ルールではスペアタイヤや空気入れ、補給食やドリンクなど最小限の装備以外、トライアスロン競技に必要のない前照灯、ベル、泥除け、スタンドなどは禁止です。
ラン(長距離走)のルール
ランは長距離を選手自身の力で走る競技なので、脱水症や熱中症の危険が伴います。走ることが基本ですが危険を回避するために、立ち止まったり歩くことがルールで許されています。
ルールでは胴体の一部がフィニッシュラインを通過したときがフィニッシュで、頭や首、肩や腕、足などは胴体とはみなされないので、フィニッシュで頭や顔を突き出すより胸を突き出す方が有効です。
トランジションのルール
トランジションは種目変更する2ヶ所に設定されているエリアです。トランジションはトライアスロンの第4の種目とも言われる重要なエリアになります。このエリア内のタイムが勝敗を分けるといっても過言ではありません。ちょうどF1レースのピットのようなもので各選手はルール限界の工夫をするのがトランジションエリアです。
着替えルールと禁止行為
トライアスロンでは3種類の競技をこなすスポーツなので、ウェアの着替えやシューズの履き替えなどが必ず必要です。着替えは更衣テントなど場所を指定するルールや、時間短縮のためバイクシューズをペダルに付けるのはルールではOKですが、大会によっては禁止もあります。
またエリア内でバイクに乗ることは禁止されていて、ペダルに片足をかけても乗車とみなされるルールになっているので注意が必要です。
トライアスロンの種目別注目ポイント
トライアスロンは3種類の種目を連続してこなす競技なので、注目ポイントは3競技+トランジションエリアの4ヶ所で、選手同士の駆け引きや攻防が見られる非常に見どころが多いスポーツです。それでは各種目別の注目ポイントを紹介します。
スイム(水泳)の注目ポイント
トライアスロンの最初の種目はスイム(水泳)です。トライアスロンのスイムは競泳のようにコースロープがあるプールではなく海や湖、川などの自然の中で行われます。
トライアスロンのスイムのスタートはプールと違い限られた人数ではなく、何十人(百人を超える場合もザラ)という大勢の選手が一斉にスタートします。スタートするときの水しぶきの迫力はプール競泳の比ではない見どころポイントです。
スイムでアドバンテージを取る
スイムが得意な選手ができるだけスイムでアドバンテージを取るのは、プレッシャーを相手に与えバイクやランで追いかける意欲を削ごうという作戦です。
一方バイクやランが得意な選手はスイムで無理をせず、そこそこの順位をキープし体力を温存し得意種目で追い抜こうとします。この先行逃げ切り型と後半追い上げ型とのせめぎ合いが、スイムで見られるトライアスロンの見どころです。
バイクの注目ポイント
バイクで最も注目するポイントはドラフティングと呼ばれる戦術です。バイクでは時速40km〜60kmで疾走し、その空気抵抗は想像をはるかに越えます。風速10m〜20mの風を常に受けながら走るようなものです。
先行する選手のすぐ後ろを走り風の抵抗を減らす技術をドラフティングと呼びます。バイクの先頭集団で先頭の選手がくるくる変わり、飛び出すタイミングをうかがう駆け引きが見どころです。
トランジションの注目ポイント
トランジションは種目変更をする2ヶ所に設置されるエリアで、トライアスロンの第4種目とも言われています。このエリヤのタイムロスをいかに減らすかが勝負の鍵になるので各選手の攻防が見ものです。
素早く着替えをする姿や走りながらシューズを履くシーンなど各選手の工夫が見られ、他のスポーツにはないトライアスロン独特の注目エリアになります。
ランの注目ポイント
ランはトライアスロン最後の種目で、ランのフィニッシュ順位が、すなわちトライアスロンの順位になります。長距離を走る中で自分の体力の残り具合を探り、最後のスプリント勝負にかけるか、タイミングをはかり途中でスパートして独走ぶっちぎりを試みるか最後の最後まで目が離せないのがランの見どころです。
トライアスロンにトライして楽しもう!
まとめ
トライアスロンは過酷なスポーツと言われていますが、現在ではスプリントやリレーなどアスリートだけでなく一般人も楽しんで参加できる大会がたくさん開催されています。ここまで紹介したトライアスロンのルールを参考にして、ぜひトライして楽しんでください。
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出典:unsplash.com