意外と知らないアーチェリー
オリンピック競技にもなっているアーチェリーは、日本人選手がメダルの獲得や話題になることもあります。しかし日本の競技人口は1万2千人とあまり多いほうではありません。
弓道が17万人、馬術は7万人と他の競技と比較しても、競技人口の少なさがわかります。競技人口も関わる人も少ないアーチェリーですが、そのルールもあまり知られていません。そこで、オリンピック競技にもなっている、アーチェリー競技とルールについてのご紹介です。
アーチェリーとは
アーチェリーは弓を使って、矢を放ち標的を狙う射撃競技の一つです。日本でいうアーチェリーはリカーヴと呼ばれるボウ「弓」を使った洋弓になります。日本では古くからの和弓「弓道」もありアーチェリーとはルールも違う競技です。
アーチェリーにはフィールドアーチェリー・アウトドアターゲットアーチェリー・インドアアーチェリーの他に、冬はスキーを使ったアーチェリーがあります。それぞれレベルや形式、方式に応じて大会や試合があり、2020年にはオリンピックの選手選考の大会も開かれました。
アーチェリーの大会や試合
アーチェリーの大会や試合は、小中学校(ジュニア)と高校、大学、社会人他、真冬以外は一年を通して行われています。試合形式はインドアとアウトドアの二つの形式があり、春から秋にかけての大会はほとんどアウトドア形式です。
真冬に行われる小中学生大会などはインドア形式の大会になります。アウトドア、インドアと試合形式によって、それぞれ距離やルールが異なり、オリンピック競技は男女とも70m距離のアウトドア形式、1対1のトーナメント方式の試合です。
アウトドア形式
アウトドア形式では、女子が30m、50m、60m、70m、男子が30m、50m、70m、90mの試合があります。男子の長距離90mは、短距離で走る長さとほぼ同じ距離にある標的を矢で射るというルールです。
70mや90mの距離を時速200㎞の速さで矢が飛ぶのがアーチェリーという競技になります。アウトドア形式の試合会場は、矢が飛ぶことの危険性も考え、ルールによって雨天や暴風で中止や延期などになることもあるようです。
オリンピックのアーチェリー
多くの人が注目するオリンピックのアーチェリーはアウトドア形式です。オリンピック競技では、男女ともアウトドア形式の70m距離のルールを採用しています。
的は全円で直径122㎝を、0点から10点まで10等分したものです。10点を取るためには中心の12.2㎝の標的を狙って矢を放ちますが、オリンピック競技となると、70mの距離から選手のほとんどが中心を狙ってきます。
オリンピックメダリスト
日本は2016年のリオオリンピックではメダルを逃してしまいました。しかしロンドンオリンピックでは、女子団体が銅メダル、男子個人の古川氏が銀メダルを獲得しています。
オリンピック5回出場を果たしている山本氏は、大学時代のロサンゼルスオリンピックで銅メダル、教師時代のアテネオリンピックで銀メダルを獲得し話題になりました。勝敗は天候にも左右されますが、東京オリンピックはどうでしょう。
アーチェリーの試合形式
アーチェリーの勝敗は、中心の標的に矢をあてる競技です。中心に当たれば得点は10点、中心から遠くなるほど得点が下がり、標的からはずれる0点もあります。ルールは標的の中心にあてることが高い、得点をカウントし合計点で競う、とシンプルです。
しかし、試合方式や細かいルールがあり、競技をする順番や対戦相手の決め方といったものが、少し複雑になります。オリンピックのテレビ放映は、クライマックスで全ての試合を見られるわけではありません。大会会場では対戦相手を決める試合から見ることもできます。
アーチェリーの競技内容
オリンピックは男子団体と個人、女子団体と個人、男女ミックスの団体戦が行われます。しかしその前に対戦相手や順番を決めるため、ランキングラウンドという試合があるのをご存じでしょうか。
ランキングラウンドは一人が72射、合計720点満点でカウントするルールです。オリンピックはランキングラウンドによって個人64名、団体16チームの対戦相手が決まります。個人戦のルールでは1位と64位、2位と63位といったの1対1のトーナメント方式です。
アーチェリーの試合方式とルール
個人戦も団体戦も、対戦相手が決まると試合開始です。試合は1セット3射し、それを6セット行うルールになります。1セットは交互に射ち得点の高い選手が2セット、同点の場合は1セットずつ、そして6セット先取したほうが勝ちというルールです。
一人が1回射手できるのは20秒以内、その間集中力をあげて標的を狙います。中心の12.2㎝の的が10点、より中心に近いほうが得点は高くなり、命中した合計点をカウントします。個人戦のルールは1回の試合で3射を6セット、18射の得点で競うトーナメント方式です。
アーチェリーの標的と得点
アーチェリーの標的はルールで直径122㎝と決められた円です。標的は中心から黄、赤、青、黒、白と色が違い、円の大きさで10点から1点まで得点がカウントされます。
トップクラスの選手になると、30mの短距離では円の中心にあて百発百中のようです。10点の円は二重になっており、外側は直径12.2㎝の円ですが、内側に小さな4㎝の円があり、ここに命中することで勝敗が決まるルールもあります。
ショートオフのルール
トーナメント方式のアーチエリーでは、得点のカウント合計が同点になるとショートオフが行われます。個人戦で5セット、団体戦で4セット以上を超えるとショートオフです。
ショートオフのルールは両選手が1射し、得点の高さで勝敗を決めます。しかし両者が同じ得点の標的に当たり続けると、延々決着がつかないのは大変です。1射目が両者10点の場合は、2射目からは得点のカウントではなく、中心からの距離差で勝敗を決めます。
個人戦の試合方式とルール
個人戦はランキングラウンドによって対戦相手が決まります。1位の選手と64位の選手、2位の選手と63位の選手といったトーナメント方式の試合です。勝敗は得点をカウントした合計で決まり、決勝まで6回、準決勝と決勝は4セット12射勝負になります。
準決勝で敗れた選手は銅メダルをかけ、ルールで3位決定戦があります。アーチェリーは20秒以内に1回射撃するルールのため、集中力と運も勝敗のカギとなる競技です。
団体戦の試合方式とルール
オリンピックの団体戦は男子団体、女子団体、男女混合の3種です。1回戦はランキングラウンドの1位から4位はBYE、シードになり、5位から12位が個人戦と同じルールで対戦し勝敗が決まります。
団体戦は3名1チームで1人が1回ずつ矢を放つと交代するルールです。6人6射が終わったら1セット、2セット行って合計点をカウントし勝敗を決めます。1セットの持ち時間は120秒、最大4セットまで続け、さらに同点の場合ショートオフになります。
ミックスの試合方式とルール
男女ペアで行うのがミックスです。ランキングラウンドで大会出場国の中で1位となった男女がペアで出場します。試合形式は団体戦とほぼ同じで1ペア1人1射、80秒内で2射すると交代のルールです。
対戦は個人戦と同じ1位と16位、2位と15位というトーナメント方式です。勝敗は団体戦と同じ4セットで行い2人の得点の合計をカウントし勝敗が決まります。同点の場合は団体戦と同じルールで、2人が1射ずつ行うショートオフです。
アーチェリーのルールとマナー
アーチェリーを始める人は最初に安全と事故防止のルールを学びます。時速200㎞を超えて飛ぶアーチェリーの矢は、安全を守らないと大事故につながります。他の競技以上に、ルール違反の危険度が高いものです。
アーチェリーは大会や試合会場以外でも厳しく、道具の管理責任や練習の安全性、準備、使用前後の点検とルールが決められています。ルールに従って競技をすることが当然の競技です。
アーチェリーの観戦マナー
サッカーや野球、バスケットなどの応援は、歓声が上がったり、タオルや旗を振ったりメガホンを鳴らすなど、応援する人の一体感を感じ楽しいものです。しかし競技によっては、歓声をあげるタイミングや言葉にルールがある場合もあります。
コロナ禍でスポーツ観戦のルールも変わりましたが、アーチェリーの大会会場は、元からとても静かなものです。選手の集中力を邪魔しないように、観戦中は無言の応援になります。旗を振ったりメガホンをたたくなどもありません。
アーチェリー観戦はテレビがおすすめ
アーチェリーを試合場で見たことはありますか。テレビでは選手と標的がアップになり、明確に競技がわかるようになっています。しかし会場では選手に近い席では標的が、標的に近い席では選手がほとんど見えません。
集中力を必要とする競技のため、応援の声も禁止です。ひたすら、矢を放つシュッという音と、矢が的に当たるスパッという音がするだけの緊張したものになります。そこで、オリンピックの観戦はテレビがおすすめです。
アーチェリー競技を始める
アーチェリーを始めたいと思っても、簡単に始められる競技ではありません。安全性を考えたルールも厳しく、競技場が限られているため、学校でもアーチェリー部がある高校や大学は限られています。
指導者数も少なく、同じ矢を撃つ競技でも、練習場所は弓道場より少ないくらいです。しかし高校や大学の他に、小中学生や社会人チームの団体戦や個人戦もあり、日本はオリンピックでもメダル獲得もできる強豪国になります。
アーチェリーの道具
アーチェリーを始めるためには、専門の道具が必要になります。通販サイトでは初心者セットといった道具が数万円から販売していますが、高校や大学、クラブチームで競技する人は10万円以上の道具が必要です。
弓だけで5万円以上かかり、そのほかに矢やアクセサリー、ユニフォームや靴も必要になりますので、始めるためには20万円以上はかかると考えましょう。初心者には3万円くらいからの弓もありますが、矢は別売りになります。
ボウ
アーチェリーで使う弓を「ボウ」といいます。オリンピックで選手がよく見かけるのは「リカーブボウ」といい、弓本体はハンドルとリムを組み立てたものに、にサイトやスタビライザーといったものをセットし使います。
このほかにボウをたてかけるスタンドやケース、腕や指につけるガードなどがセットになっています。ボウに合わせて矢「アロー」もそろえます。
アロー
アーチェリーは標的の中心にあたった矢「アロー」の場所で得点がカウントされます。そのため、アローは大切な道具です。アローにはアルミニウムとカーボンがありますが、試合では精度が高いアルミニウムアローがよく使われています。
専門店ではアローの紛失事故を防止のために、1本ずつ持ち主の名前を刻印するサービスもあり安心です。アローの長さや太さは、選手の体型やルールに基づいて決められています。
子どもからアーチェリーを始める
オリンピック競技の中には、サッカーやスケートのように小さい頃から訓練を積み重ねることで、選手に選ばれる種目があります。しかし中には高校生くらいから始めても、オリンピック選手を目指すことができる競技もあります。
その1つがアーチェリーです。アーチェリーは得点のカウントやルールの基本はシンプルですが、扱う道具そのものが危険なため、アーチェリー部がある学校が限られています。アーチェリーを学べる場所が少なく、高校から始める人も大勢いるようです。
小・中学生の大会
アーチェリー部のある小学校や中学校はほとんどありません。そのため全国レベルの大会は、団体戦ではなく個人戦になります。しかし、競技する以上マナーやルールはきちんと決められています。
全日本小学生・中学生アーチェリー選手権大会は、トーナメント方式の個人戦です。勝敗は予選ラウンドも行われ得点がカウントされ、その結果オリンピックと同じようなトーナメントが組まれた本格的なものになります。
アーチェリー部のある学校
アーチェリーは集中力や危険性に対する責任感が必要になります。ルールこそシンプルですがマナーが厳しいため、どんな学校でも部活が成り立つわけではありません。
中学からアーチエリーがある学校は2021年現在首都圏では15校、ほとんどが私立の進学校です。アーチェリー競技を真剣にやりたいと思うなら、スポーツにも熱心な進学校、またはプロフェッショナルな指導者のいるクラブチームがおすすめです。
高校の大会
中学ほどではありませんが、高校のアーチェリー部もけして多いほうではありません。しかしインターハイや選抜では全国で予選もあり、45都道府県から選手が集まります。
大会は団体戦、個人戦、ミックスとルールも成人同様です。個人戦の代表選手の中には、学校の部活とクラブチームの選手も含まれ、トーナメント方式の試合になります。試合回数も6回とオリンピックと同じ形式です。
弓道とアーチェリーの違い
弓道は弓を前に押し出してさらに弦を引いて矢を放つのに対して、アーチェリーは矢を後ろに大きく引くことで矢を放ちます。
点数の数え方も違い、アーチェリーが中心は10点、9点と点数ですが、弓道は的中の他にも、いろいろな点数のつけかたがあり、ルールも複雑になります。一番の違いは、弓道は礼法や作法の決まりが厳しい武道ですが、アーチェリーはスポーツ競技です。
距離や的も違う
弓道は屋根のある室内道場から庭の反対側にある的に向かって矢を放ちますが、アーチェリーは競技者も屋外に立って矢を放ちます。使う弓の素材や矢の素材も違い、矢の放ち方、ルールも違うようです。
射撃距離も的の大きさも違い、アーチェリーは30m、50m、70m、90mに対して、弓道は近距離の28m、遠距離の60mと決まっています。標的の大きさはアーチェリーが直径122㎝に対して、弓道は直径36㎝です。
ルールを知ってアーチエリーを楽しもう
中心に当たれば勝ち、とシンプルなルールのアーチェリーですが、詳細なルールや方式は独特なものがあります。アーチェリーのルールを知ると、今までとは違った見方もできるのではないでしょうか。
オリンピックのアーチェリーはもちろんですが、夏は全国でアーチェリーの大会が開かれます。今まで知らなかった試合方式やルールにも興味を持って、新しい楽しみ方をみつけてください。
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