水球は140年以上の歴史
「水球(すいきゅう)」に馴染みがある方はそんなに多くないはずです。水球は「Water Polo」といわれ、世界で人気が高い競技。2020東京オリンピックでは、日本は男女ともに出場しています。
水球の歴史は長く、オリンピックでは1900年の第2回パリ大会から継続して採用されているのです。水球は世界中で行われ、特にヨーロッパではプロリーグまである人気球技になっています。
水球はプールで行われる少しマイナーな球技
日本では、スイミングスクールに通った方は多く、また、小・中学校のプールの授業は楽しく学んだはずです。そんな水泳に比べ、水中で行う競技ながら水球に親しんだ方はかなり稀といわれています。そのように、少しだけマイナーな水球について歴史やルールについての紹介です。
水球の歴史はイギリスから始まった
水球は英語で「Water Polo」といわれるように英国発祥の競技です。ポロといわれながら馬に乗って球を打つポロとの関係は希薄なようで、水球の起源について有力な説が19世紀半ばのイギリスで発生した「フットボール イン ザ ウオーター」と呼ばれる「水中フットボール」といわれています。
サッカー発祥国イギリスでも、水中でボールを蹴ることは難しくラグビーのように手で運ぶようになったのが水中フットボール。その水中フットボールが水球のルーツといわれています。
水球の初期の歴史ではボールを決まった場所に運んだ
水中フットボールは、水の中で2チームが一つのボールを決められた場所まで運ぶことを競う競技でした。決められた場所までボールを運ぶルールながら、ボールを運ぶ選手をあらゆる手段で阻止することができ、極めて激しいボールの奪い合いが行われていた歴史が残っているのです。
水球は誕生した時から激しいぶつかり合いの歴史
1870年にロンドン水泳協会が当時の最初ルールを制定するにあたり、「ウオーター・ポロ」という名称が使われています。また、1873年にはロンドンのクリスタルパレスで水球の試合が行われた歴史が残っているのです。当時から激しい肉弾戦が展開されていました。
19世紀後半にシュート方式になる
水球が現在のスタイルとなったのは、1873年にイギリスのアーサー・トラジオンが考案したクロールの原型となるトラジオン泳法が、水球に採用されたことがきっかけとなった歴史が残っています。
この時期に、ボールを運ぶラグビースタイルから、シュートを打つサッカースタイルに変化し、スコットランドやイングランドなど地域にかかわらず、ルールーも一本化されていきました。
各国にイギリスから伝わった歴史が残る
1888年にイギリスで改めて統一されたルールが制定され、スポーツとして確立させ、イギリスは水球を海外へ普及させていきました。
ドイツにはイギリスで水球を学んだフリッツ・クニーゼが1894年に祖国ドイツに水球を伝えました。翌年になるとベルギーに水球が紹介されています。また、ベルギーの隣国フランスで水球が行われるようになった歴史が残っているのです。
強豪国ハンガリーの歴史は独自路線を採用
ハンガリーは、国内にいたフュゼーレッシィ・アールパードが水球のルールブックとボールを取り寄せ、ハンガリーに導入した独自の歴史があります。ハンガリーで1899年に初めて水球の試合が行われ、現在の強豪国ハンガリーがスタートしたのです。
アメリカの水球の歴史は独自ルールの愛着
アメリカに水球が伝わったのは、1888年にイングランドで水球をプレイしたジョン・ロビンソンがアメリカに紹介したという歴史が残っています。
このようにイギリスからアメリカに伝わった水球は、アメリカ含め各国の実情に合わせ微妙に変化していき、アメリカでは独自に柔らかいゴムボールを使用し、独自ルールの「Softball Water Polo」が発展していきました。
アメリカがオリンピックに選手を送らなかった歴史
アメリカでは自国ルールの水球が大人気になりますが、プレーが荒すぎて危険なため1908年以降、このタイプは禁止スポーツに指定されます。そんな歴史もあり、アメリカは1920年のアントワープオリンピックまで代表チームを派遣していません。
男子は歴史的にヨーロッパ勢が強い
現在、世界規模で見れば水球は人気の水泳競技の一種目で、世界水泳選手権水球競技、オリンピック、ワールドカップ、ワールドリーグの四大大会が開催されています。
昨今の強豪国は、歴史的にヨーロッパ勢が強く、現在の強豪国は男子がハンガリー、セルビア、ロシア、アメリカ合衆国、イタリアです。女子の強豪国といえばオランダ、アメリカ、オーストラリアになります。
日本の水球の長い歴史
水球が日本へ伝播した経緯については、何時、誰が、どのような内容で伝わってきたか正確な情報はありません。しかし、日本には古式泳法があり、水球の立ち泳ぎに通じる泳法があり、受け入れはスムーズにできたようです。
日本の水球の歴史では1907年に最初の試合
日本で最も古い水球の試合は、明治40年(1907年)8月5日の第二回関東連合游泳大会で、現在の筑波大学にあたる「東京高等師範学校」と、現在の東京大学にあたる「第一高等学校」が試合を行ったという記録が残っています。
また、水球の国際試合としては、大正4年(1915年)に慶應義塾水泳部内のチームと、当時の横浜の外国人クラブが葉山海岸の特設会場で試合をした記録が残っているのです。試合結果は9対0のワンサイドゲームで外国人クラブが勝利しています。
大正時代に全国大会を開催した輝かしい歴史
大正14年(1925年)になると、大日本水上競技連盟主催の「全日本選手権水上競技会」が開催され、ウォーター・ポロ競技が公式競技として実施されました。大会は慶應義塾、東京ウォーターポロ倶楽部(東海代表)、帝国水友会の3チームが出場し、玉川プールで解されています。
この大会は10月中旬の開催で水温が低く、厳しい環境での試合となり東京ウォーターポロ倶楽部が優勝しました。
日本が五輪に始めて参加した歴史的大会で4位入賞
日本の水球がオリンピックに参加した歴史は意外と古く、昭和7年(1932年)6月のロサンゼルスオリンピックです。ロサンゼルスオリンピックでは日本は3試合戦い、1勝もできませんでした。水球には5か国参加し、日本はブラジルが失格し初出場で4位になった歴史が残っています。
歴史を誇る水球ながら競技環境は厳しい
日本の水球の競技人口は全体で5000人~7000人と推定されます。女子選手は1000人ほど。高校生の選手は1000人ほどで、チームがある高校は100校もありません。
水球部がある高校は少ないことで、1~2回勝つと全国大会へ出場できる県もあります。また、水深2m以上のプールも少なく、指導者も多くないようです。そんな中、新潟県柏崎市は水球の街で優れた選手を輩出しています。
水球のオリンピックの歴史
水球がオリンピックに正式採用されたのは、1900年の第2回パリ大会からです。当時水球が盛んなベルギーに近い、フランスでも水球が盛んに行われるようになっていきました。
そして、1900年の第2回パリ大会が開催され、初めて採用された水球がセーヌ川の特設会場で実施され、イギリスが7対2でベルギーに勝利して初代のオリンピックチャンピオンになっています。
水球は第2回パリ大会から採用された輝かしい歴史
第2回の1904年のアメリカのセントルイス大会では、当時の米国式ルールが採用され、アメリカ以外のチームは不参加でした。
オリンピックながら、アメリカ内のクラブチームの戦いが行われ、現在でも正式なオリンピックゲームとは認められていません。
オリンピックにおける水球は、第1回と第3回を除いた近代オリンピック大会で実施された歴史ある競技です。また、2000年のシドニー大会からは女子の水球も正式種目として採用され、男女ともにオリンピックの正式種目なのです。
日本水球の歴史は1932年のロスアンゼルス大会から
日本がオリンピックの水球に参加した歴史は古く、昭和7年、1932年のロサンゼルス大会で4位に入賞しています。
その後も1936年のベルリンオリンピック、1960年のローマオリンピック、1964年の東京オリンピックはじめ、メキシコオリンピック、ミュンヘンオリンピックに、1984年のロサンゼルス大会と前回のリオデジャネイロと、今回の東京オリンピックで9大会出場しているのです。
男女ともに「ポセイドンジャパン」
現在の日本代表チームは海神にあやかり「ポセイドンジャパン」と呼ばれています。東京五輪の水球男子は予選最終戦の南アフリカ戦で、24-9で勝利し、五輪で37年ぶりとなる歴史的な勝利を挙げました。この勝利は1984年のロサンゼルスオリンピック大会以来の歴史的な勝利なのです。
東京オリンピックは水球女子が初参加した歴史に残る大会
初めて日本女性がオリンピックに出場したのは、2020東京オリンピックです。水球女子の日本代表の愛称も「ポセイドンジャパン」。女子選手もオリンピックで健闘しましたが、4戦全敗で予選リーグで敗退しています。
歴史が作った水球のルールと特徴
水球は1チーム7人×2チーム、計14人がコートの中でボールを奪い合い、ゴールにボールを入れると得点となり、獲得点数の多いチームが勝利します。
競技コートは男子は30×20m、女子25×20mで、水深2m以上の水域で戦います。試合時間は8分1ピリオド×4ピリオド制です。ゲーム中は常に泳ぎ続け、ゴールキーパー以外の選手は片手しか使えません。
攻撃権は30秒間
また、水球では「攻撃権」があり、攻撃開始から30秒以内にシュートを入れないと相手側に攻撃権が移ります。さらに、攻防中にボールをプールに沈めたり、誤って両手でボールに触れてもボールの権利が相手に移るのです。このように、水球ではスピーディーな攻撃が求められるハードな競技といえます。
水球は歴史的に見てもファールが多い
水球は水中で戦うことでファウルが多く、ファウルやペナルティについて厳しくジャッジされます。ファウルは「オーディナリーファウル」と「パーソナルファウル」の2種類です。
水球ではボールを持っていない選手に対してアタックすると「オーディナリーファール」になり、比較的軽度の反則で相手選手へフリースローが与えられます。
水球のファールの紹介
悪質な反則の場合は「パーソナルファウル」となり、パーソナルファウルを宣告された選手は、退水ゾーンと呼ばれるエリアで20秒間待機をしなければなりません。
また、同じ選手が1試合に3回パーソナルファウルを取られると永久退水となり、それ以降試合に出場することができなくななります。以下が水球の主なファールです。
反則の種類 | |
オーディナリーファール | ・30秒以内にシュートを打たないとき ・両手でボールを扱った場合 ・拳でボールを扱った場合 ・ボールを水中に沈めた場合 ・相手選手の上を泳いだ場合 ・ボールを持っていない選手に攻撃したとき ・オフサイド |
パーソナルファウル | (エクスクルージョンファウル) ・ボールを持っていない選手を沈めたり押し倒したり引っ張ったとき ・フリースロー、コーナースロー、ゴールスローを妨害したとき (ペナルティファウル) その反則が無ければゴールが決まっていただろうと判断される場合に適用 ・ペナルティライン内で相手シュートを反則して妨害したとき ・退水中の選手がコート内に入りプレーを妨害したとき |
水球の基本ルール
水球はルールが何度も改正され集約された歴史があります。現在の水球の基本的なルールを下記にまとめました。
ルール内容 | |
試合場(コート) | 水深2m以上、30m×20m(男子)、25m×20m(女子) |
ゴールサイズ | 高さ90cm、幅3m |
プレーヤー数 | 1チーム7人(内ゴールキーパー1名)、控え6人 |
試合時間 | 1ピリオド8分×4ピリオド |
攻撃権 | ボールを持ってから30秒以内にシュートを打つこと |
アタック | ボールを持った選手へのアタックOK |
選手交代 | 選手交代は自由 |
歴史も影響した水球ならではの特徴
水球の見どころは多く、スピーディーなパスワークと水中でありながら、抜群のチームワークで豪快なシュートが見られます。
また、ぜい肉を削ぎ鍛え挙げた逆三角形の「選手の肉体美」は、ギリシャ彫刻のような均整がとれた肉体です。また、女子の水球もパワフルでスピーディー。肉体もシャープな素晴らし曲線です。
また、水球は大柄な選手が多く、外国選手の中には身長が2mあるプレーヤがいて長い腕で時速90kmのシュートを投げます。
歴史的にファールが多い水球の水着は頑丈
水球は水中の競技だけに、試合中は審判から見えにくい水中で反則が行われることがあります。相手をつかんだり蹴り上げたり、水着を掴むなどまさに「水中のプロレス」のような面もあるのです。
そんな面も考慮され、水球用の水着は競泳用の水着よりかなり分厚く丈夫にできています。さらに、それを2枚履いている選書もいます。
水球用具は特殊
水球の道具も特殊で、選手がかぶっている水泳キャップはプラスチックの耳当てがついています。試合中の激しい激突で鼓膜が破れてしまうのを防ぐためにつけられているのです。
水球のボールも特殊で、選手は片手でボールを掴まなければならないためにボールの表面には小さな傷(スクラッチ)を刻み掴みやすくしてあります。また、ボールの素材には特殊配合のゴムを使用し、いっそうすべりにくいボールとなっているのです。
水球の歴史を知って楽しく観戦しよう
水球は140年以上の歴史を経て、現在のパワフルでダイナミックでスピーディーな球技として完成しています。日本でも明治時代から水球は行われた歴史が残っていますが、男女ともに国際舞台での活躍は今一歩なようです。
そんな水球を観戦すると、大変パワフルな競技で大型選手が多く、時速70kmや80kmのシュートは迫力満点です。水球の歴史を知って水球観戦を思いっきり楽しみましょう!
水球の歴史やルールなどが気になる方はこちらをチェック!
水球の歴史について取り上げ、日本の歴史にも触れました。歴史ある競技だけに、水球を知れば知るほど面白くなります。
そんな水球の歴史について気になった方は以下の記事がおすすめです。水球の歴史だけでなく、詳しいルールやゲームの重要ポイントなど、水球についてもっと知ることができます。
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