庭木に人気!ミツマタとは
ミツマタ(三椏・三枝・三又)はジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉性低木の植物です。三又の漢字表記であらわされるように、枝は3本に分かれながら成長します。ほかの植木にはあまり見られない特徴的な形が人気で、日陰でも育つため庭木にもよく使用される植物です。
ミツマタの魅力
魅力①美しい樹形
ミツマタの樹形は規則正しく、繊細な美しさが大きな特徴です。常に枝の先端から3本の新しい枝を伸ばすので、自然とドーム状にまとまります。落葉性なので冬には葉を落とし枝だけになりますが、その姿も大変趣深く情緒的です。
低木なので樹高もコンパクト
ミツマタは落葉性低木の植物です。樹高は大きくなっても3mほどにとどまり、大抵は1~2mにまとまります。そのため高木の株元に植えたり、低い生垣のようにして使うことも可能です。樹高はそれほど大きくなりませんが横に広がります。成長速度は早めなので観賞用の庭木として育てる場合、スペースの確保は重要です。
魅力②特徴的な花
ミツマタは花が美しく観賞価値が高いため庭木や植木として人気を集めるようになりました。花の色はオレンジ、白、複色、赤色などです。
3本に分かれた枝の先端に小さなハチの巣のようなかたちのつぼみを冬に形成。穏やかな春の日差しが感じられるようになると、つぼみの外側から次第に花が開き始め、満開の時期を迎えると毬のような花を咲かせます。
開花時期は冬の終わりで春を告げる
ミツマタの開花時期は冬の終わりから春先です。多くの植物が落葉したり枯れたりして花がなくなる庭先に春の訪れを告げます。葉が芽吹きだすのは花が終わったあとのため、針金のような繊細な枝についた花は人の目をひくでしょう。
魅力③匂いも艶やか
チンチョウゲ科のミツマタは花に匂いがあります。三大香木で知られるチンチョウゲ(沈丁花)ほどではありませんが、甘く優しい匂いが特徴的です。日本にいくつか存在するミツマタの群生地を訪れるとその匂いのよさに驚くでしょう。
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魅力④樹皮は紙の原料に
ミツマタの原産地は中国・ヒマラヤです。日本に現存する最古の和歌集「万葉集」にもミツマタは頻繁に登場します。現在では観賞価値の高さから庭木の使用が主ですが、そもそも日本に導入されたのは樹皮を紙の原料に使用するためでした。
また、チンチョウゲ科の植物の樹皮は柔らかで加工しやすいものが多く、ミツマタ以外にガンピ(別名:カミノキ)の樹皮が紙の原料に使われていたといいます。
成長が速いことも紙の原料に使われた理由の1つ
紙の原料にミツマタが選ばれたのは成長の早さも理由の1つです。紙を作るには作りたい紙の重さの25倍の原料が必要で、大量の紙を作るには当然大量の樹皮が必要でした。
ミツマタは栽培もガンピなどに比べると簡単だったため重宝されたのかもしれません。紙の原料としてもっとも有名なコウゾ(楮)はミツマタよりも成長が早く毎年収穫できたため、やがてミツマタは観賞用の植物として広がっていきました。
魅力⑤病気に強い
繊細な見た目と開花時期にはいい匂いのするミツマタですが、かかりやすい病気や付きやすい害虫はほとんどありません。庭木を育てるうえでネックとなる病気や、害虫のリスクが少ないことも大きな魅力といえます。ただし、口述しますがカミキリムシの幼虫にいは注意が必要です。
ミツマタの育て方
古くは樹皮が紙の原料として使われ、樹形や花の美しさや匂いのよさから次第に庭木として栽培されるようになったミツマタ。かつては紙幣の原料に検討されたこともあり、成長は早めです。育て方について解説します。
育て方①用土
里山や雑木林に自生していることもあるミツマタは、有機物が多いリッチな土を好みます。また、水はけのよさも重要でいつまでも湿っているような土では根腐れして枯れることも珍しくありません。
地植えは掘り下げた土に腐葉土や完熟たい肥を混ぜ込んで用土とします。鉢植えに使用する土も同様に水はけがよく、養分にとんだ土を選びましょう。水はけをよくするため鉢底に軽石を引くことを忘れずにいれます。
育て方②植え付ける場所・時期
植え付ける場所は半日陰がおすすめです。とくに苗が若い間は直射日光が当たる場所は嫌います。鉢植えを置く場所も西日が当たらないように半日陰を選びましょう。
地植えする場合は高木の日陰になるところに植えると、適度に木漏れ日が当たりながら直射日光を避けられます。ただし、完全な日陰に植えると花付きが悪くなるので注意が必要です。
植え付けの時期は3~4月。根が動き出す前に完了させましょう。
ミツマタは植え替えを嫌う植物
ミツマタは根が傷つきやすいので頻繁な植え替えを嫌います。地植えで根が大きく成長した苗の場合はとくに、移植は難しいと思っておきましょう。根が傷つくと枯れることもあるため植え付けや植え替えといった根を扱う際には慎重におこないます。
鉢は大きめを用意
ミツマタの根は横に広く伸びるため小さな鉢だと根が伸びず枯れることもあります。鉢植えで育てる場合は苗の成長とともに植え替えが必要になります。新しい鉢に植え替える際は大きめの鉢を用意しましょう。
また、鉢そのものの素材も重要になります。水はけをよくするために、素焼き鉢などがおすすめです。
育て方③水やり
水やりは「土が乾いたら与える」の基本のやり方で構いません。地植えで苗が十分に大きく成長したらほとんど水やりの必要はなくなります。ただし、夏にカンカンに日が照り雨がほとんど降らないようなときはたっぷり水を与えましょう。
育て方④肥料
植え付ける際に元肥として有機肥料または緩効性化学肥料を土に混ぜ込んでおきます。さらに冬に寒肥として有機質肥料を株元の周辺に埋め込めば安心です。鉢植えの場合は、花が咲きだす3月に化成肥料を株元に追肥します。
育て方⑤剪定
ミツマタはほかの植物のようにどんどんと新しい枝を出すわけではなく、つねに先端を3本に分かれるようにして伸ばす性質を持ちます。そのため剪定の仕方を間違えると美しい樹形が損なわれたり、剪定の時期を間違えると花が咲かないことも。
ミツマタの剪定は頻繁にする必要はなく、株の中で込み入った枝を間引いて樹形をまとめる程度にしておけば十分です。これ以上大きくしたくないというときだけ刈り込みます。
剪定の仕方:切り方
剪定の仕方の基本は、「3本ある真ん中の1本を根元から切る」です。一般的な植物は枝の途中で切ってもそこからまた新しい枝がでてきます。しかし、ミツマタは枝の途中から新しいものを伸ばすことはありません。
中途半端に切られた枝がいつまでも残っているとせっかくのミツマタの美しさも魅力半減です。3本ある枝の真ん中の枝を根元から切り落とし、「ピース」の形になるようにしながら不要な枝を整理していきます。
剪定の仕方:時期
剪定の時期は基本的には開花直後です。春先に花を咲かせた後、夏~秋に翌年の花芽を形成します。ミツマタの花はかならず枝の先端に咲くため、夏以降に枝を切るとその枝には花がつきません。
そのため、花が終わってすぐの夏が訪れる前にするか、ある程度翌年の花が減ることを覚悟して夏に広がった枝を秋に間引きましょう。
育て方⑥病気・害虫対策
病気や害虫に強いと前述しましたが、カミキリムシの幼虫(テッポウムシ)にだけは注意が必要です。幼虫が幹に穴をあけ、なかに潜り込むと枯れる原因にもなります。カミキリムシの幼虫専用の農薬が販売されているので、幹に穴が開いているのを発見次第対策しましょう。
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ミツマタの増やし方
増やし方①種まき
開花時期を終えると花の後に果実ができます。初夏には果実が完熟し、中から種が採取可能です。この種の周りについた果肉をよく洗い落とし、乾燥しないように濡れたキッチンペーパーなどで包み冷暗所で保存します。
種まきの時期は翌年の3月~4月です。土にまいて乾燥に気を付けながら水やりを続けます。
増やし方②挿し木
ミツマタの種があまりとれなかったときは挿し木で増やすことも可能です。挿し木の適期は、開花前後。2月~3月ごろ、または5月~7月ごろに挑戦してみましょう。若い枝を切り取り、水揚げした後、挿し木用の土に挿し木して水やりしながら発根を待ちます。
ミツマタの種類
種類①アカバナミツマタ
通常はオレンジと白の混ざった花の色をしているミツマタですが、園芸品種用に改良されたアカバナミツマタは赤、または濃いオレンジの花の色が特徴です。アカバナミツマタも落葉性低木で基本的な性質はミツマタと変わりません。半日陰の水はけがよく、栄養分にとんだ環境で栽培しましょう。
種類②キバナミツマタ
キバナミツマタは定番の花の色が特徴です。冬の終わりに開花時期を迎えると黄色い花がつぎつぎと花開き、庭を彩ります。ミツマタがどんな植物か知りたいのであればまずはこちらの種類がおすすめです。この種類も病気や害虫に強く、半日陰でどんどん成長します。
趣あるミツマタの樹形や花を楽しもう
病気や害虫に強く、半日陰で大きく成長するミツマタは育てやすく庭木に重宝します。万葉集にも登場するほど歴史が古く、紙の原料として使われてきた過去も大変興味深いものでしたね。そんなミツマタの花や匂いや美しい樹形を楽しんでみませんか。
ミツマタについて気になった方はこちらもチェック
ほかには見られない樹形と花の付き方がミツマタの見どころでしょう。紙の原料としての歴史に触れるのも面白いですよ。ミツマタの特徴や栽培方法についてさらに詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
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