クチナシと花言葉:クチナシの花について
梅雨の時期に白色の六弁花を咲かせるクチナシの花は、「洗練」や「優雅」といった、清々しい意味合いの花言葉をもちます。
そしてまた、春の沈丁花(ジンチョウゲ)、夏の梔子(クチナシ)、秋の金木犀(キンモクセイ)と、とても良い香りのする三大香木のひとつにも数えられている花です。
この記事では、優雅に咲く花クチナシとその花言葉について由来や英語での別名を紹介解説していきます。
序文、日本文化に愛された甘い香りの白色の花クチナシ
クチナシの花は、東アジアから中国台湾インドシナ半島にかけて広く分布する品種の花です。日本では東海地方以西から四国や九州南西諸島までの森林に自生します。実が熟しても口が開かないためにクチナシと呼ばれるのが名前の由来です。
花言葉はヨーロッパで盛んになった文化ですが、古来から言葉合わせを好む文化のある日本では、歌に詠まれたり言い伝えとして残ったりするなどして、市井の人々に愛されてきた花でもあります。
クチナシの花の季節と時期、一重咲きと八重咲きの種類について
クチナシは6~7月あたりの時期に花を咲かせて強い香りを漂わせて、秋には黄紅色の果実をつけます。
とはいえ実を結ぶ品種は一重咲きの種類に限られていて、庭木でよく栽培されるような八重咲きの品種については観賞用に品種改良された種類のため、花は立派なのですが果実をつけることはありません。
一重咲きと八重咲きで花言葉に違いはなく、同じ花言葉がついています。
クチナシの染め色、黄色と青紫色
現在、食品添加物として日本で認められているクチナシの色素は赤青黄の3種類ありますが、クチナシの果実は古代から黄色の染料として使われてきました。その歴史は古く、奈良平安時代に編纂された日本書紀や延喜式にはすでに記述がみられます。
身近なところ使われるのは、栗きんとんや、たくあん漬けの色付けです。また皮膚にクチナシの果汁が付くと青紫色に変色することから、刺青の色素に使われることもありました。
古墳から出土するクチナシの染め物
奈良時代にはもう文献に名前を残しているクチナシですが、もっと古い時代から染め物として使われていました。
奈良県天理市成願寺町の下池山古墳は4世紀前半の遺跡ですが、出土した繊維からクチナシ色素が検出されたことで、クチナシが衣服の染め物として利用されてきた歴史は少なくとも古墳時代前期にまでさかのぼることがわかっています。
クチナシと花言葉:海外の説話について
日本ではクチナシは歴史や文化に根差した身近な花ですが、海外ではどうでしょうか。クチナシの花がヨーロッパに知られるようになったのは18世紀のことですが、中国では紀元1~2世紀の頃にはすでにクチナシについて記された薬学書がありました。
そもそも花言葉は、花に思いを託して贈るという習慣が起源と言われています。
花言葉の起源
花個別の花言葉は神話や伝説など様々なところからついたものです。
花に意味を込めて誰かに伝えるという花言葉の風習は、アラビア地方のセラム(selam)という風習に起源していて、セラムでは贈られた相手はまた花で返事をします。この花言葉の風習がヨーロッパに伝わったのは18世紀のことです。
中国最古の薬学書(神農本草経)にも書かれている山梔子の名前
クチナシの果実を乾燥させたものが山梔子(さんしし)という漢方の生薬です。小粒で丸く内部が赤黄色のものが良品で、消炎、利尿、止血の効果があるとされています。(注、単独で用いられることはありません)
これは、古代中国の神様、神農の名を冠した中国最古の薬学書、神農本草経に記されています。薬効には詳しい本書ですが残念ながら花言葉に関しての知識は得られません。
英語名(Gardenia)、学名(Gardenia jasminoides)の由来の話
クチナシの花がはじめてヨーロッパに持ち込まれた18世紀、その分類をめぐって、ジャスミンの類とする派とそうではない派で争われました。
結果、ガーデンという学者の名にジャスミンを添えたものに落ち着いたという説もあれば、植物画家が勝手にジャスミンの仲間と思い込んで描いてしまったという説もあります。
ラテン語風の学名なので由来もさぞかし立派と思うかもしれませんが、そのあたりは諸説ふわふわとしているようです。
クチナシと花言葉:ちょっと怖い言い伝え
怖いというと語弊があるかもしれませんし花言葉ともまた別の話ですが、日本人は古くから言葉合わせが大好きな民族でした。花の名前とかけて何々と解きます、みたいなあれもそうです。
実際のところ場の空気感やセンスの問われるところの問題なのですが、そういったことを知的だとして重んじてきた文化でした。クチナシは言葉だけでみれば物々しい意味にもなるため、怖いような話になることもあります。
花言葉より語呂合わせ
クチナシは日本の文化にとても馴染んでいる存在なので、花言葉よりも先に名前の方がイメージされます。言い回しや言い伝えを探してみても、花言葉を連想するような「幸せ」や「優雅」なものは不思議なことにあまり見つかりません。
死人に口なし
死人に口なしとは、死んだ人間に無実の罪を着せても反論できないという意味のことわざです。一般的にクチナシの花にも花言葉にもそのような不吉な意味合いはありません。
語呂合わせに過ぎないのですが、こういう与太話からフィクションとノンフィクションの境界の曖昧な都市伝説を作ってしまうとしたらそれは怖い話ではあります。
嫁のくちなし
嫁のくちなしとは、嫁としての貰い手がないという意味の言葉です。クチナシの花も花言葉も当然関係ありません。
そのためクチナシや花言葉に関連付けて話をするのがそもそもナンセンスなのですが、どんな脈絡で言うにせよ、近年のワールドワイドな言論上のコンプライアンスを考えるとなかなか怖い言葉です。
山吹の 花色衣 主や誰 問へど答へず くちなしにして
これは古今和歌集に詠まれた歌です。意味はというと、「山吹の花の色の衣に、おまえの主は誰かと聞いても答えない。クチナシ(で染めたもの)だから」ということが歌われています。
万葉集と並べられることの多い古今和歌集ですが、集められているのはどちらかというとこのようなたおやかな美しさをもつ歌です。
これを幽玄と感じるかオチがないと感じるかは、感性や時代の趣向の判断するところではあります。
口出し無用の碁盤
碁盤や将棋盤の脚の部分はクチナシの果実をかたどっていて、第三者は口出し無用の「口無し」意味があるとされている、とここまでは怖い話ではないのですが、足付き碁盤の裏側の中央には「へそ」と呼ばれるへこみがあります。
石や駒を打ったときの音の響きを良くするなどの用途のものなのですが、これは「血溜まり」と呼ばれることもあり、横から勝負に口をはさむ者の首をはねて、そのへこみに据えたというのが俗説です。
クチナシと花言葉がはこぶ喜びと幸せ
クチナシの花言葉や、花にまつわる説話と意味などについて述べてきました。そのユニークな名前から日本では言葉遊びのような使われかたもするクチナシの花ですが、海外では英語名ガーデニアと呼ばれて、その花言葉には「とても幸せ」や「喜びを運ぶ」といった意味合いもあります。
恋と幸せの贈り物、ガーデニアの花束
クチナシの花(英語名ガーデニア)は、海外では、プロポーズの際の贈り物やウェディング・ブーケの花束に使われることもあります。ガーデニアは、その花言葉の示すとおり恋と幸せをはこぶメッセージの役目を果たしているのです。
まとめ
幸せは概念なので、どこを探せばあるというものでもありません。モーリス・メーテルリンク著作の童話「青い鳥」でチルチルとミチルの兄妹がそれをさがして数多くの場所を旅しましたが見つかりませんでした。
しかし季節の移ろいのうちに初夏が過ぎて梅雨の気配を感じる時期になると、クチナシが甘い香りに包まれて咲く様子を見て人はそれを幸せに感じます。
優雅な花言葉がついていることにもきっと実感して納得できることでしょう。
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