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マラソンのタイムアップに期待大!閾値走の効果とトレーニング方法を徹底解説!

閾値走はマラソンなどの長距離走ランナーが心肺機能を高めることに大きな効果があるトレーニング方法です。他の方法と異なるポイントは、メニューを作る目安として、ある一定範囲の心拍数で走ることが大きな要素になることです。閾値走の取り入れ方を実例を示しながら解説します。
2021年2月4日
角谷剛
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目次

閾値走とは何か

Photo byFree-Photos

閾値走(いきちそう)は耳慣れない言葉かもしれません。英語の「lactate threshold」からの訳語ですので、その頭文字からLT走と略すこともありますし、より正確な意味を求める人には乳酸性閾値走とも呼ばれることもあります。

運動の強度を上げると血液中の乳酸濃度が増加していきますが、その増加ペースが急激に上がる一定のラインがあります。いわゆる「乳酸が溜まる」状態になる直前です。閾値走とはその少し手前の段階で走るトレーニング方法のことです。

閾値走の目安となるペースの感覚

マラソンを走る人にとって、閾値走のペースとはマラソンのペースよりは速く、5キロ走のペースよりはやや遅くなります。ランニング理論の大家で米国オリンピックチームのコーチでもあったジャック・ダニエル氏は閾値走とは「50分~60分を走ることができる最速のペース」と表現しました。

閾値走のペースをさらに感覚的に表現するならば、ジョグのようにニコニコと会話できるペースほど遅くはなく、ダッシュのように会話ができないほど速くもない。話をしようと思えばできるけど、かなり苦しいくらいのペースだと言えるでしょう。
 

閾値走の目安となる心拍数の求め方

Photo bygeralt

閾値走のペースを感覚ではなく数値で把握するには心拍数が目安になります。前述のジャック・ダニエル氏によれば、閾値走とは最大心拍数の82~88%の範囲で走るペースになります。この最大心拍数との比率を他のトレーニング方法と比較すると、ゆっくりとしたジョグが60~70%、限界まで追い込むインターバル走が95~100%です。

さらにもう少し詳しく、最大心拍数と安静時心拍数を用いて、閾値走ペースの心拍数を求める公式が次のものです。(最大心拍数 - 安静時心拍数) × 0.75+安静時の心拍数

最大心拍数の予測値

上に出てきた最大心拍数は有酸素運動の負荷を測る上でとても便利な指標なのですが、その正確な値を知ることは非常に困難です。従って、便宜的に年齢を使って予測値を出す方法が一般的です。あくまで予測値であって、個人ごとの正確な数値ではありませんが、一定の目安にはなります。

もっともよく使われるのが、最大心拍数=220 - 年齢という公式。少しだけ複雑にしたものに、最大心拍数=208‐0.7×年齢という公式もあります。

自分の年齢を当てはめて計算してみると、微妙に数値が違うことが分かります。

閾値走ペースをマラソンの目標タイムから逆算して設定する方法

Photo bymaxmann

どれくらいのタイムでゴールをしたいのか、目標に応じて閾値走のペースを設定する方法です。例えば、次のマラソンレースの目標タイムが4時間だとしましょう。42.195キロを4時間以内で完走するには、1キロを5分40秒以下のペースで走らなくてはいけません。そのペースで5キロを走ると約28分20秒になります。

それぐらいのレベルのランナーなら、5キロ走は25分を切れると仮定します。つまり1キロ5分00秒ペースです。そうなると、閾値走ペースの設定はマラソンペース(1キロ5分40秒)と5キロ走ペース(1キロ5分00秒)に間になります。

閾値走ペースを測定する他の方法


Photo bypearlsband

上で紹介した閾値走のペースはあくまで目安に過ぎません。実際にはランニングのトレーニングをよく積んだ人は閾値走のペースも速くなりますし、それがトレーニングの目的でもあります。厳密な閾値走ペースに数値を測定できるランニング専門施設もありますが、一般のランナーはそこまでこだわる必要はないかもしれません。

最近のランニングウォッチには心拍数計測機能がついているうえ、予測値の閾値走ペースを表示してくれるものもありますので、それらを上手く利用してもランニングの計画に利用すると良いでしょう。

閾値走で目指すべき目的

閾値走は上に挙げたいくつかの方法で設定したペースをある一定以上の距離、または時間を走り続けるトレーニング方法です。その目的とは血液中の乳酸を除去する能力を高めることです。血液中の乳酸濃度が急増するポイントの手前が主観的にも疲労度が高まるタイミングでもあります。そうなる直前のペースを維持して走り続けると、乳酸除去能力が高まり、より長く強度の高い運動を続けるための心肺機能を高める効果があるのです。

尚、乳酸はかつては疲労の原因になる物質だと誤解されていましたが、現在ではエネルギー源になることが分かっています。

閾値走を行うべきランナー

Photo bysuperdirk

閾値走はかなり負荷が大きいトレーニングです。この記事のタイトルにあるように、マラソンを完走するためではなく、マラソンのタイムアップを目標とするランナー向けであるとも言えるでしょう。次こそはサブ4、あるいはサブ3を狙ってやろうと心に秘めているランナーには閾値走はおススメです。

それほどタイムにこだわりがなく、それより楽しく走りたいというランナーには、閾値走は不要のトレーニングです。なぜなら閾値走とはマラソンペースより速く走るもの。完走するだけなら練習しておく必要がないレベルの負荷だからです。

閾値走がダイエットには向かないわけ

ダイエットが目的でランニングをしている人にも閾値走は向いていません。閾値走のペースとは、身体が有酸素エネルギーを多く使う段階から無酸素エネルギーを多く使う段階へ移る運動強度のことでもあるからです。つまり、脂肪燃焼効率が高い有酸素運動ではなく、限りなく無酸素運動に近くなります。

前述しましたように、閾値走の目安は最大心拍数の82~88%です。一方で、脂肪燃焼効果が最も高い心拍数ゾーンは大体60~75%と言われています。ランニングをするなら、ゆっくりしたジョグ程度のスピードで回数と頻度を多くする方がダイエットにはむしろ効果的なのです。
 

閾値走のプログラミング

Photo by Angel Lite Photography

閾値走を行う時期

閾値走は体にかなりの負荷がかかるトレーニングです。大きな効果が望めると同時に、故障のリスクも高くなりますので、年間を通してできるものではありません。本番とするレースの時期と目標からトレーニング計画を逆算していくことになります。

マラソンに向けての段階的なアプローチには指導者によって様々な理論がありますが、基本的には距離を積む基礎段階が終わった後、本番レースの1~2か月ほど前に、スピードを上げていく段階で、インターバル走などに加えて閾値走を週1,2回ぐらいの頻度でメニューに組み込むのが一般的です。


閾値走のメニュー設定レベル

一言で閾値走と言っても、ランナーのレベルによって、そのかけるべき負荷は大きく異なります。基準となるペースが異なるのですから当然です。

共通していることは、閾値走そのものの練習時間は20分から30分程度であること(ウォームアップやクールダウンの時間は含みません)、それを行う頻度は週に1,2回程度にすることです。

物足りないように感じるかもしれません。その程度の頻度と強度で本当に効果があるのか、と疑う人もいるでしょう。しかし、閾値走とは典型的な「量より質」のトレーニングです。短時間で高い効果、がポイントです。

閾値走を行う場所の選び方

フリー写真素材ぱくたそ

閾値走では一定の距離または時間を設定されたペースで走り続けることが必須の条件です。従って、信号待ちなどで立ち止まるわけにはいきません。またアップダウンがあったり、路面の状況が変わったりすることも、ペースを乱す外的要因になりますので、閾値走のコースとしては望ましくありません。

陸上競技トラックは上記の条件をすべて満たしています。もし陸上競技トラックを使用することができたら、閾値走を行う場所としてベストです。河川敷などの長い直線コースでも良いでしょう。あるいは屋内でトレッドミルを使用することも選択肢のひとつになります。

閾値走ペースの設定を変えるタイミング

負荷を徐々に上げていくのはトレーニングで効果を出すための原則ですが、閾値走はその負荷設定を上げるタイミングの見極めがもっとも難しいもののひとつです。例えば、ある距離を以前より速く走れるようになったとしても、その時の心拍数が設定した閾値走ペースより高くなってしまってはならないからです。とは言っても、ずっと同じペースで同じ距離を走り続けていては成長もありません。同じコースを設定した心拍数の範囲内で走り終えたとき、自然にタイムが上がっていることが理想です。

閾値走のバリエーション

Photo by Peter Mooney

閾値走と同じ意味、あるいはそのバリエーションとして解釈されるトレーニング方法がいくつかあります。下のペース走、テンポ走、あるいはクルーズインターバルなどがその代表的な例です。それぞれにメニューを設定するための目安となる距離や時間、1回で走り切る形式か、インターバル形式か、頻度と回数は、と様々な違いがあります。厳密な定義があるわけではなく、極端に言えば、指導者1人1人によって解釈も異なります。下はあくまでその中の一例です。

閾値走①ペース走

ペース走はジョギングと同じか、やや速いくらいのペースで、時間は20分~30分ぐらいを目安に走ります。感覚的には5キロ走よりは遅く、10キロ走よりは速いペースです。

ペース走は下の2つと比較するとやや長い距離を走ることを指すことが多いようです。上の説明と矛盾してしまいますが、20キロペース走、のようなメニューを設定する指導者もいます。重要なポイントはその間のペースを一定に保つことです。それより速くても遅くても、目的とする効果は望めません。

閾値走②テンポ走

テンポ走をオレオ・クッキー例えることがあります。つまり、トレーニングの最初と最後はゆっくりとしたジョグで、中央に閾値走ペースのランニングをメインに行うのがテンポ走です。

テンポ走の最初と最後のパートは距離にして1~2キロ、時間にして10分ぐらいです。ウォームアップとクールダウンと考えても良いでしょう。メインの閾値走ペースは距離にして6~8キロ、時間にして20分~30分を目安にして、ランナーのレベルに応じて設定するのがポイントです。


閾値走③クルーズインターバル

自動車のスピードを一定にする機能を「クルージング」と呼びますが、クルーズインターバルは閾値走ペースのランニングを5~10分ぐらいを1セットとして、間に数分の休息を挟んで、何セットかを行うトレーニング方法です。

クルーズインターバルは閾値走ペースで連続して走る時間が短いので、比較的取り組みやすいと感じる人も多いかもしれません。インターバルの距離や回数はランナーのレベルによって調節します。ここでも重要なポイントは設定した閾値走ペースを守ること、閾値走ペースで走る合計時間を20分~30分の範囲に収めることです。

閾値走の段階的導入アプローチ

ランナーのレベルによって、上のバリエーションを段階的に導入していく方法があります。例えば、初心者はペース走を10~15分のみ行い、中級者は10分間のクルーズインターバルを2セット、上級者以上はテンポ走を30分行う、という具合に負荷設定を高めていきます。

同じ考え方を使って、トレーニングの長期計画の中で、閾値走のメニューを段階的に変えていくこともできます。どちらにしても、徐々に負荷を上げていくことがポイントです。

閾値走まとめ

Photo byijmaki

閾値走はかなり強度の高いトレーニング方法です。身体にかかる負荷も大きくなります。閾値走を取り入れようと思うランナーは真剣にマラソンのタイムを追求しているランナーでしょう。そのようなランナーが陥りやすい落とし穴が2つあります。ひとつは閾値走を行う頻度を多くし過ぎること、もうひとつは設定をハードにし過ぎることです。いくら効果が高いトレーニングでも、オーバーワークになってしまっては逆効果です。自分の身体と相談して、慎重に取り組んでください。

閾値走が気になる方はこちらもチェック!

閾値走は適切なペースを設定し、また走っているときのペースを把握することが重要です。専門のランナーならペース指示を出してくれる指導者がいるかもしれませんが、一般ランナーはそうもいきません。また安静時や走っているときの心拍数も重要な要素です。その意味で、ランニングウォッチやウェアラブル端末は一般ランナーの強い味方です。閾値走に興味が湧いた人は下の記事を参考にして、ご自分にニーズに合ったグッズを探してみてはいかがでしょうか。