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ランニング法のビルドアップ走とは?その効果や正しい走り方のコツをご紹介!

ビルドアップ走とはゆっくりとしたペースで走り始めて、徐々にペースを上げていくランニング練習方法の1つです。ビルドアップ走はスタミナとスピードを同時に鍛えることができますので、マラソンを完走したことがあり、次は記録更新を狙う中級以上のランナーには特にお勧めです。
2021年1月7日
角谷剛
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ビルドアップ走の本来の意味とは

Photo bymohamed_hassan

筆者は自分でもマラソンを走りますが、米国の高校で陸上長距離走部の監督を務める指導者でもあります。その筆者が知り限りにおいては、米国では「ビルドアップ走」と言う言葉はあまり耳にしません。ゆっくりとしたペースで走り始めて、その後段階ごとにペースを上げていく練習自体はよく行いますが、通常そうした練習方法のことは「Progression Run」と呼びます。英和辞書でProgressionの意味を調べると、「(段階的な)前進」とか「漸進」などとありますので、こちらの方が「ビルドアップ走」より正確に意味を表しているように思えます。

「ビルドアップ」の使われ方は

どうやら「ビルドアップ走」とは和製英語か違う意味での取り違えのようです。「ビルドアップ」(Build Up)という言葉自体(練習方法を指すのではなく)は米国のランニングの世界でよく耳にしますが、こちらは例えば長い日数をかけて走行距離を増やしていく、あるいは筋肉を作り上げていくようなことを指す場合が多いようです。ここでは語学上の定義にこだわらず、よく日本で使われている「ビルドアップ走」で用語を統一します。

ビルドアップ走の効果と目的

Photo byijmaki

マラソンなど長距離走で必要とされる主な身体能力は脚の筋力と心肺能力の2つです。すべてのランナーたちの練習方法はそのどちらか、あるいは両方を鍛えることを目的としています。例えば、筋トレは筋力を向上させることが目的ですし、インターバル走は心肺能力の向上を目的としています。ビルドアップ走とはいわば一石二鳥を狙ったトレーニングです。一定以上の長距離を走ることによって脚の筋力を鍛え、さらに中距離か短距離のようなペースに上げることによって心肺能力も鍛える効果が期待できるからです。

ビルドアップ走とそれ以外のランニング練習方法

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筋トレに筋持久力向上を目的とした低重量高回数と瞬発力向上を目的とした高重量低回数のやり方があるように、ランニングの練習方法は大別すると、ペースは遅めで距離や時間が長いものとその逆にペースは速めですが距離や時間が短いものがあります。前者は主にスタミナを、後者は主にスピードを向上させることがその主な目的になります。ビルドアップ走はちょうどそれらの中間に位置します。下は代表的なランニング練習方法の種類と目的、そして走り方を主目的別にまとめたものです。

 

スタミナ向上を主目的とした練習方法

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ランニング練習の基本となるのはジョグです。ジョグでは距離にして8~12キロを無理なく走れるペースを目安にします。このジョグよりさらに長い距離を走るのがロング走です。ロング走では特に設定タイムを設けずに、20~35キロを目安に、ジョグより遅いペースで走ります。きつい練習をした翌日などに走りながら脚を休めるために行うのがリカバリー走です。5~8キロを目安に、ペースや設定タイムを気にせずにゆっくり走ります。


スタミナとスピードの両方を主目的とした練習方法

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スタミナとスピードを両立させる練習方法がこの記事の本題であるビルドアップ走です。8~12キロを目安に、 前半4~6キロをジョグペース、後半から数段階に分けてペースを上げて走ります。ビルドアップ走ではあらかじめ決めておいた距離と設定タイムをきちんと守ることが重要です。ファートレック走では同じく8~12キロを目安にしますが、こちらでは速いペースと遅いペースをランダムに入れ替えて走ります。コーチにペースを変えるタイミングを指示してもらえたら、それがベストです。

スピードを主目的にした練習方法

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インターバル走では短距離(100m~400m)か中距離(400m~1000m)を速いペースで走り、セット間に100~200mの遅いペースを挟みます。3~10セットが目安です。速いペース部分の設定タイムは全速力の80~90%程度にします。リピート走では、同じく短距離(100m~400m)か中距離(400m~1000m)を走りますが、こちらでは100%の全速力スピードで走り、セット間は完全に呼吸が回復するまで休息してから、次のセットを行うのがコツです。こちらも3~10セットが目安です。
 

ビルドアップ走をするべきかどうかの目安

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先にビルドアップ走は中級以上のランナーにお勧めですと書きました。ビルドアップ走とは距離にして10km、時間にして60分ぐらいを分割するトレーニング方法ですので、まずはその目安の距離もしくは時間を一定のジョグペースで走ることができないとあまり効果が期待できないからです。10km、60分のジョグペースとは、すなわちフルマラソンを4時間ぐらいを目安に完走するレベルです。このレベルに達していないランナーは、まずはロング走などの練習方法で基礎体力作りに専念した方がよいでしょう。

 

故障を避けるコツ

ランニングの初心者にはビルドアップ走をお勧めしないもう一つの理由は故障リスクです。ランニングとは意外に故障が多いエクササイズです。一歩走るたびに体重の何倍もの負荷が膝周辺にかかると言われていて、その度合いはスピードが増すほど増えます。また筋肉が疲労した状態でペースを無理に上げようとするときには肉離れなどの筋肉系の故障が発生しやすくなります。ビルドアップ走はまさに疲れた状態でスピードを上げる練習方法ですので、トレーニング効果の反面、故障のリスクがないとは言えません。

ビルドアップ走が市民ランナーに向いているわけ

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ビルドアップ走は脚の筋力と心肺スタミナを同時に鍛える効果があることに加え、あまりランニングに時間が取れない忙しい市民ランナーにとっては大変便利なトレーニング方法です。それはビルドアップ走ではウォーミングアップが不要になるからです。距離、ペース、走り方、そして設定タイムなどは後述の方法で様々にプログラミングするとして、ジョグ以下のゆっくりしたペースで走り始めることは共通しています。つまり、その最初の部分がウォーミングアップの代わりにもなるのです。

効率を意識した時短トレーニング


本格的な陸上長距離選手の多くは1日2回トレーニングします。朝はジョグなどの有酸素運動、午後はインターバル走などのスピードやパワーを高めるメニューや筋トレを組み込むなどして、前述したランニングに要求される能力、脚の筋力と心肺スタミナを鍛えるわけですが、それだけの時間をトレーニングの目的に応じて別々に取れる市民ランナーは少ないでしょう。限られた時間内で可能な限り異なった走り方を練習する方法を選ぶことが市民ランナーに向いたメニュー作りのコツとなります。

ビルドアップ走の例

フリー写真素材ぱくたそ

ビルドアップ走を取り入れる場合は、やみくもにペースを上げるのではなく、走り始める前にあらかじめ段階ごとのペースとそれを切り換えるタイミングを決めておきます。そして、その設定をできるかぎり守って走ることがき原則です。ただし、毎回同じパターンを繰り返していては、成長効果は望めませんので、設定は適宜変えていきます。下にいくつかビルドアップ走のパターン例を紹介します。この通りにやる必要はありませんが、メニュー作りに参考にしてください。

ビルドアップ走の例その1:3分割

1回のランを3つのパートに分けるやり方です。例として10㎞のランをするとして、最初の5kmをジョグペース以下で走ります。次の3kmはペースを上げて、10㎞走レースを走るくらいのペースです。そして最後の2kmはさらにペースを上げます。このように走行距離(5km,3km,2km)を基準にする方法と、設定タイム別に分割する方法があります。例えばトータルが60分なら、30分、20分、10分という風に分割します。大切なことは、ゆっくりしたジョグを最初の段階にして、2段階目、3段階目とペースを上げることです。

ビルドアップ走の例その2:小刻み

小刻みにペースを上げていくやり方です。例えば10kmの距離を、最初の6kmをキロ6分ペースで走り、そこから1kmごとに15秒ずつペースを上げていきます。陸上競技トラックを周回しながら、コーチにペースを教えてもらうのがもっとも便利ですが、1人で練習する場合はランニングウォッチなどでペースと走行距離を確認するのがよいでしょう。最後に自分の最速ペースになるようにするのがコツです。走行距離で分割する方法と設定タイムで分割する方法(例:40分をゆっくり、その後5分ごとにペースを上げる)があります。

 

ビルドアップ走の例その3:ラスト全力

最後の部分を全速力で終わらせるやり方です。同じく10kmを例として、最初の8~9キロを一定ペースで走り、最後の1~2キロをとにかく全力で走り終わります。最後の力を振り絞り、トップスピードまで上げた走り方の習得と脚と心肺への負荷を最大にします。こちらも走行距離を基準にして分割する方法と、設定タイムを基準にして分割する方法(例:50分ゆっくり、最後の10分を速く)があります。最後のパートは全速力を出さないと効果がありませんので、距離や設定タイムを短めに設定するのがコツです。

ビルドアップ走を導入するコツ

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ビルドアップ走に効果があるとは言え、すべてのランニングをビルドアップ走にしてしまってはいけません。あくまでビルドアップ走はバランスの取れたトレーニングメニューの1要素であるべきものです。ジョグとは異なり、ビルドアップ走は体に大きな負担がかかります。大体の目安としては週に1,2回程度が適切です。どのトレーニング方法にも言えることですが、ビルドアップ走に初めて取り組む場合は、ペースや設定タイムを控えめにして、コンセプトだけはしっかり守ったやり方で始めてください。

ビルドアップ走の限界

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そしてビルドアップ走の効果にももちろん限界があります。ビルドアップ走には脚の筋力を鍛える効果はありますが、筋トレのようにそれに特化したトレーニングにはかないません。心肺能力を高める効果も、同じくインターバル走と同等というわけにはいきません。何よりも、ビルドアップ走は1回やってしまえば、同じ日にそれ以上繰り返すことはできませんので、筋トレやインターバル走のようにセット数を増やすわけにはいきません。

ビルドアップ走にダイエット効果はある?

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主観的に言えば、ビルドアップ走はジョグや筋トレよりはるかにきつい運動です。ならば、ダイエット効果も高いのではと期待する人もいるかもしれません。結論から申し上げますと、必ずしもそうではありません。同じ10kmを走るのなら、ペースを途中から上げるよりも、一定のジョグペースで走り続けた方が、消費カロリーは後者の方が大きい、つまりダイエット効果は高いということもあるからです。同じように60分間と設定タイムを区切るより、より長い時間をゆっくりと走り続ける方がダイエット効果は高くなります。

ダイエットに向いた走り方とは

スタミナを高めるレーニングと筋力を高めるトレーニングにはそれぞれに適した方法があるように、ダイエットを目的とした運動をランニングに求めている人は、それに適した走り方を選択するべきでしょう。カロリーを多く消費するには、なるべくなら長時間の有酸素運動をすることがコツです。負荷を求める必要はありません。その意味では上に挙げた練習方法の中ではロング走がもっともダイエットには効果があります。

まとめ

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次のマラソンなどの目標レースに向けてトレーニング計画を立てるときには、ビルドアップ走をどこかの段階に取り入れてみてください。トレーニングのバラエティを増やすことは、効果が上がるだけではなく、より楽しく、モチベーションを上げる方法でもあるからです。長いトレーニング期間を同じ走り方を繰り返すより、常に違った刺激を身体に与えることがメリハリをつけるコツです。ビルドアップ走を組み込むことで、スタミナを増やし、スピードを高め、ランナーとしてのレベルアップを図ることができるでしょう。

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ビルドアップ走では走っている間にペースを意識することが重要になります。体感に任せるより正確にペースを把握するにはランニングウォッチが便利です。どのランニングウォッチがいいの?と思われる方はこちらの記事も参考にして下さい。