竹細工とは
古くから日本人の生活に根付いていた竹細工ですが、その理由として、日本が竹の産地として適した温暖な環境だったことにあります。加工しやすく丈夫な竹は竹かごをはじめとした生活用品として重宝されてきました。遺跡などの資料から、縄文時代にはすでに竹籠かごが使用されていたと言われています。
竹細工の材料
代表的な素材として真竹・鈴竹・根曲竹の3種が挙げられます。真竹は国内の多くの地域で自生していて最も一般的な素材と言えます。山野に生える鈴竹は細く弾力がある種類、根曲竹は北部に分布し、雪の重みで根が曲がってしまうことから名付けられたといいます。
竹細工の商品
竹細工の竹かご
昔ながらの竹かごはあたたかみがあり大小さまざまな製品が販売されているので用途別に使用しやすく、昔から重宝されています。一重に竹かごといっても、地域によって使用する竹の種類や編み方も違うので、デザインに違いがあり、同じ竹かごでも全く違う雰囲気のものに仕上がります。
竹細工のかばん
全て竹で編まれているので、通気性がよく丈夫なかごバック。昭和のお母さんが食材の買い物に持っていくような昔ながらのレトロなかごバックから、革や布をあしらうなど現代風にアレンジしたモダンな製品まで販売されています。
竹細工のアクセサリー
竹細工のアクセサリーは涼しげで洗礼された美しさがあり、コーディネートのアクセントとして身に着けたい一品。バングルやピアス、髪留め、指輪まで、繊細なデザインを楽しめます。
竹細工の照明
竹細工の照明は、編んだ竹から漏れてくるあたたかい灯りが特徴です。編み方によって変わる光のデザインや明るさを楽しみ、主に間接照明として空間を彩ります。寝室にひとつおいておくと、柔らかな雰囲気になり寝る前にほっと一息、癒しの時間を過ごせそうです。
日本各地竹細工の有名な工芸品は?
ここでは国が指定した竹細工の伝統工芸品をご紹介します。
①東京都の工芸品「江戸和竿」
江戸和竿は、何本かのパーツをつなぎ合わせて1本の竿となる釣り具で、釣り文化が盛んだった江戸時代に誕生しました。竿師と呼ばれる江戸和竿職人が技術を継承しています。
②静岡県の工芸品「駿河竹千筋細工」
丸くて細い竹ひごを、一本一本組んで作品を完成させる駿河竹千筋細工。繊細で美しいデザインはインテリアとしても非常に優秀で、西欧諸国にも人気というのはうなずけます。菓子器や虫かご、茶托が有名です。
③大阪府の工芸品「大阪金剛簾」
日よけや風の調整など、夏を涼しく過ごす生活用品として使用される簾ですが、平安時代には貴族が簾らしきものを使用していたとされる歌が「万葉集」に登場しています。大阪の金剛山などに自生する真竹を使用し、富田林市や河内長野市、大阪市で生産されています。
④奈良県の工芸品「高山茶筌」
茶道でお茶を点てる時に使われる茶筅ですが、奈良の茶筅は約500年もの歴史があり、国内でもトップクラスのシェアを誇っています。流派や濃茶用、野点用などの用途別に使用できるように120種類もの茶筅があり、それぞれに穂の数が違っています。
⑤岡山県の工芸品「勝山竹細工」
岡山県真庭市の周辺に生えている真竹を使用して作られている勝山竹細工は、青竹を加工せずそのまま使用して作られます。そのため使い込んでいくうちに飴色に変化する様子も楽しめます。お米などを洗った後に水を切るための「そうけ」や「めしぞうけ」と呼ばれる道具が有名です。
⑥大分県の工芸品「別府竹細工」
真竹の生産量が全国1位の大分県では、昔から竹工芸が盛んにおこなわれていて、日用品をはじめかばんや照明など現代風にアレンジされたさまざまな商品が作られています。四つ目編みや六つ目編みといった技法で竹ひごを編み、アレンジが効くことから芸術性に富んだ作品が生まれます。
⑦宮崎県の工芸品「都城大弓」
都城大弓は都城市周辺で作られている竹工品で、真竹と櫨(はぜ)で作られた2メートルを超える大きさの弓です。200以上もの工程を職人一人で手掛け、すべて手作業で仕上げています。現在は弓道の道具として使用され、竹弓ならではの強いしなり、反発力などが命中率を高めます。
竹細工製品が買えるおすすめのお店は?
暮らしの竹かご屋市川商店(東京都)
明治40年に創業された大変歴史のあるお店です。品ぞろえも東北から九州、海外の商品まで揃っていて、店舗だけではなくネットでも注文可能です。公式サイトには商品の手入れについても記載されていて、竹細工に対する深い愛を感じます。
いしかわ竹の店(京都府)
昭和10年に創業されたいしかわ竹の店は、嵐山店が本店です。2階建ての店内には所狭しと竹細工が並べられ、まるで宝の山のようです。伝統的な商品はもちろん、普段から使えるアクセサリーもあります。また、嵐山昇龍苑店では竹編みの実演を行う匠コーナーも催されています。
小林ミドリ竹籠店(新潟県)
阿賀野市(旧笹神村)には竹籠が約300年にわたり継承されています。村の名前に笹と入っていることから、良質な竹の産地であったことが伺えます。竹細工作家の小林ミドリさんが手掛ける伝統的でいて新しいデザインの数々はモダンで洗礼されています。
有馬籠 本店(兵庫県)
有馬籠の製造を行う会社「竹芸有馬籠くつわ」が有馬温泉で有名な神戸市北区の有馬町に直営のお店や工房を構えています。有馬籠と呼ばれる花入は、茶道と縁の深い有馬で受け継がれました。今では伝統的工芸品として指定されています。直接運営するネットショップはないので、ネットで購入したい場合は、日常品などさまざまな製品を取りそろえる「竹乃道具店」のネット販売などで取り扱っています。
竹虎本店(高知県)
竹材メーカーとして明治27年に創業された「竹虎」の唯一の実店舗です。こちらでは虎皮状の模様が表面にあることから「虎斑竹(とらふだけ)」と呼ばれている竹を扱っています。メインはネット販売ですが、お店では一つ一つ手づくりされた製品を手に取ってじっくり選ぶことが出来ます。イギリスのBBCテレビにも取り上げられるなど、海外からも注目を集めています。
別府竹細工cotake(大分県)
cotakeでは、若手作家の作品を中心にかばんやインテリアなどの竹製品などを展示、販売しています。お店にはカフェや、なんと予約制の貸し切り風呂もあり、別府を体験してもらいたいというオーナーさんの思いがあふれています。
竹細工の地域別おすすめ体験教室(東北・北関東)
鳥越もみじ交遊舎(岩手県)
岩手県には岩手鳥越竹細工が古くから伝えられています。普段は地元の人たちが竹細工作りで使用していますが、水曜、木曜、金曜、日曜に製作体験ができます。鳥越竹細工の歴史は約1000年ともいわれていて、山に自生する細くて丈夫なすず竹を使用して作られている市場かごや弁当かご、ざるなどの製品が人気です。
医王寺(福島県)
医王寺の檀家さんらが中心となり活動している「竹灯籠の会」が体験を行っています。竹灯籠作りを体験でき、好きな絵柄を竹に貼り、電気ドリルで穴を開けてデザインを施します。所要時間2時間ほどで完成し、体験後は会場となる医王寺を自由に散策できます。
竹の里おおたわら(栃木県)
竹林が多い大田原市は、上野動物園のパンダの餌として笹を提供していました。また、人間国宝の勝城蒼鳳さんなども大田原市を拠点に竹工芸の制作活動を行っています。体験教室では、小学生から楽しめる簡単な四つ目編みから本格的な花籠まで制作できます。
竹細工の地域別おすすめ体験教室(中部・近畿)
越前竹人形の里(福井県)
製作体験では、竹とんぼや雪ん子、ペン立て、干支、雛人形から選べます。雪国のため、厳しい冬を超えた良質の竹に恵まれました。真竹で作られる越前人形はなんといっても人形の髪が特徴です。竹を太さ0.2ミリ以下にまで割き、本物の黒髪の質感を見事に表現しています。同工房には特産物や地酒なども販売されています。
体験工房駿府匠宿(静岡県)
こちらは国の伝統工芸品にも指定されている駿河竹千筋細工を体験できる工房です。虫かご、花器、小物入れの中から選べます。難易度は異なりますが、どれも30分から40分で完成します。お土産処も併設されているので、商品の購入もできます。また、さまざまな静岡の工芸品を展示するギャラリーもあるので、合わせて楽しめます。
NPO法人グリーンウッドワーク協会(岐阜県)
こちらの協会では、2~3時間で完成する鍋敷きから、2日~3日かけて完成させる鵜籠作りやそば笊作りなど、かなり本格的な竹細工作りを体験できるのが特徴です。伝統的な長良川鵜飼が有名なこの地域には捕った鵜を入れておく鵜籠という竹細工が有名です。花活けなどにも使用されるなど、さまざまに使用されています。
京町屋体験工房和楽(京都府)
築100年以上の京町家で行われます。京かんざし、耳かき、お箸の体験ができ、和雑貨の販売や展示品も見学できます。着物が好きな方におすすめの体験です。
竹細工の地域別おすすめ体験教室(四国)
阿波踊り竹人形の里時代屋(徳島県)
孟宗竹が中国から伝わったとされる阿南市は「竹の里」として知られるようになり、阿波踊りを踊っている姿の人形を竹で作った竹人形が有名です。阿波踊り竹人形作り体験ができる「阿波踊り竹人形の里時代屋」では、商品の竹人形の販売や展示も行っています。
うちわ工房竹(香川県)
こちらではうちわづくり体験を実施。丸亀城内にあるため、約1時間ほどかかる製作体験の合間に場内散策をしたりできます。観光案内所として運営しているため、その後の予定なども相談できたり、おいしいうどん屋さんを紹介してもらったりと、スタッフの方が親切に対応してくださるそうです。
竹細工の地域別おすすめ体験教室(中国)
竹の駅(広島県)
竹の駅は、竹でデザインされているほか、竹炭や竹筆、竹塩焼きといったさまざまな竹を使用した商品が販売されています。ここでは竹筆作り体験ができ、竹をたたいてつぶし、筆先にする工程を体験できます。独特の書き味が特徴です。
竹灯籠職人ともさんの体験教室(鳥取)
鳥取県の倉吉市は竹細工の材料となる鳳尾竹がたくさん採れたことから、「煤竹細工」が盛んです。今では材料となる煤竹の入手が難しく、煤竹細工の商品は高級品になっています。ここでは、竹灯籠作りが体験できます。電気ドリルで穴を開けても模様を作り、竹の中にろうそくや電球などを入れると柔らかな光が穴から漏れ、いつもの部屋が幻想的な空間に変わります。デザインの見本も用意されているので初心者でも安心して参加できます。
竹細工の地域別おすすめ体験教室(九州)
竹細工伝統産業会館(大分県)
竹細工の歴史は長く、室町時代からすでに籠が販売されていました。ここでは竹鈴の制作体験と、小物入れや花籠として使用される四海波作りが体験できます。そのほかにも、ここでは有名な名匠の作品からインテリアなどの展示や、竹細工の作業をするために欠かせない道具が展示されています。
阿蘇ものづくり学校(熊本県)
豊富な竹の産地である熊本県でも、竹細工は発展していて、主に農具や漁具など、日々の生活に欠かせない道具を多く生産してきました。阿蘇ものづくり学校では、竹笛の製作体験が行われています。竹を切ったり削ったりして自分だけの音色を奏でる完成させます。ウグイス笛やインディアンフルートなど、さまざまな種類が作れます。
竹細工のおすすめの学校
国内には竹細工を学べる学校も存在します。卒業生は竹細工職人や、デザイナーといった仕事に就くことができ、伝統を後世に継承する一人として活躍できます。
①大分県立竹工芸訓練センター
別府竹細工の後継者育成を目的に大分県が設置した学校です。職業訓練校として、面接や筆記試験などをパスした生徒たちが2年間通います。竹細工の基礎知識はもちろん、2年生になると、将来お店を持つ際に役立つ企業の仕方やマーケティングなど、かなり実践的な内容を学べます。
②京都伝統工芸大学校
竹工芸専攻ができるほか、陶芸や木彫などさまざまな伝統工芸が学べます。卒業後には竹工芸作家をはじめ、雑貨デザイナーや照明デザイナーなど目指すことができます。また、フランス、イタリア、ブータンとの交換留学を行うなど、国際交流が盛んです。
まとめ
全国各地にそれぞれの竹工芸文化があり、何年も紡いできた歴史がさらに魅力を引き立てます。各地には初心者でも参加できる体験教室から、職人を目指せる学校まで存在します。是非この機会に日本の伝統に触れる旅に出かけてはいかがでしょうか。
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