山でのあいさつに心和む
山を登っているとき、登山道ですれ違う人と声を交わすことがある。
声を交わすといっても「こんにちは」「ご苦労様です」程度だが。
「こんにちは」は登っている時に、下っている時は登っている人に向けて「ご苦労様」の声をかける。
急登で息が切れているときは声にならないこともあるが、深呼吸も兼ねて「ゴンニジバ」と発する。
初心者の頃はなかなか自分から声を掛けにくいが、ベテランの装いの人から声をかけられるとうれしくなるはずだ。
そしていつしか自分から声をかけるタイミングを計っていることに気が付く。
山は心をやさしく、内向的な自分に積極性をくれる。
休憩中は積極的に話しかける
最近の僕は年齢のせいか休憩所があるとつい、長めに休憩をとってしまう。
タイミングにもよるがそこには大概先客がいる。
そのようなとき僕は、積極的に声を掛けるようにしている(女性には掛けない。変なおじさんになってしまうので)
はじめは「ん?」みたいな顔をされるが、その人の持っている道具について質問すると、快く説明してくれる。
もちろん、自分の欲しいアイテムなら生の声が聞ける絶好のチャンスだ。
道具だけではない。冬山の気を付けるポイントや膝のいたくならない歩き方、近場でおすすめの山など、それぞれが知識をシェアし合うのだ。
交流は談笑だけでなく安全登山のきっかけに
休憩所での交流は談笑だけではない。
既に下山してきていた人にはその先の情報を聞ける。
急登やぬかるみはあるのか、頂上までの距離感はどれくらいなのか。
寒さや風の強さも重要な情報になる。
なだらかで乾いた登山道、頂上までもうすぐで風も穏やかなら意気揚々と再出発できるかもしれない。
しかし、体力的にキツイ行程や、自然状況である情報を得た時は引き返す判断をしなければいけないこともある。
「だいじょうぶ」はその人にとっての大丈夫だ。初心者では判断が難しい場面もあるが、山は逃げない。慎重すぎる判断をしよう。
もちろん頑張った先にある達成感が登山の喜びでもあるので、そこは経験を積むしかない。
名前も知らないからこそ
休憩所でお話した人の名前は基本的には聞かない。
時々どこから来たかくらいは聞くこともあるが、それも稀だ。
聞くこともないし聞かれることもない。
逆にそれが心地よい。
どこの誰かも、名字すら知らない人と笑顔を交わし、道具を見せ合い情報を交換し、登山の無事を祈る。
ぎこちなかった挨拶から手探りに話題を振り、応える。
損得勘定のない関係だからこそ最大限に持てる情報と笑顔で。
そして別れ際には持てる限りの気持ちを込めて「お気を付けて」と。
その言葉は、ベンチに腰掛けて流れたふくらはぎの乳酸より早く僕を回復させる。
急登で挫けそうになっても、その言葉が頭の中でリフレインされ力が沸く。
名も知らない誰かの力になれるうれしさも登山での交流の魅力だろう。
いまはSNSの時代
来た場所も名前も聞かないとは言ったが、稀に予想以上に話が弾み仲良くなることがある。
名前を名乗るのもこの時代なんとなく気が引けるが、こんな時代だからこその交流手段がある。
SNSだ。
TwitterやインスタなどのSNSなら、ほとんどの場合本名は伏せている。
インスタで写真をシェアするのも楽しい。Twitterも写真をUPできるし、アウトドアに関する「コミュニティ」もある。アカウントを知っていればダイレクトメールもできるので連絡先を知らなくても密に連絡を取れる。
もう少し仲良くなったらFacebookもよいだろう。
Facebookは本名登録なので躊躇することもあるが、山に来る人に悪い人はいない。安心して交流しよう。
僕もこうやって知り合い何度か一緒に登山をした人がいる。
親密になると嫌な面も見えて来そうと、不安になるかもしれないが、そのようなときはそっと離れよう(容赦なくブロックしてもよい)本位でない付き合いをしなくてよいのがSNS時代の人間関係だ。
いざというときの手掛かりになる
知識が増える、気分転換になる。これらは辛い登山をするうえで、ほかの登山者と交流を深める大切な役割だ。
しかし言葉を交わすことには、それよりも大きな役割がある。
遭難した際の手掛かりだ。
当然、遭難は意図せず起きる。それはソロでもチームでも変わらない。
ソロの際自分の所在を知らせるのは入山届だけだ。
しかしそれも慣れた低山なら出さずに入ってしまうのが正直なところ。そして危険な目に遭うのは得てしてそんな時。
「注意一瞬 ケガ一生」である。
自分の為、山で知り合った名も知らない誰かの為、そしてその向こうで待つ家族のため。
山では積極的に話しかけよう。
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