検索アイコン
エックス
Facebook
LINE

【沢登り事故防止ガイド】事前にリスクを理解した上で、安心安全に楽しもう!

沢登りは一般登山では味わえない魅力の詰まったアクティビティです。しかし事故も増すためなかなかチャレンジすることができないという方も多いのではないでしょうか?沢登りを事故なく楽しむためにはどのようなリスク管理を行えばいいのかを現役登山ガイドがご紹介します。
更新: 2022年7月4日
tebasaki
※商品PRを含む記事です。当メディアはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトを始めとした各種アフィリエイトプログラムに参加しています。当サービスの記事で紹介している商品を購入すると、売上の一部が弊社に還元されます。

危険を理解して憧れの沢登りにチャレンジ!

世界では類を見ない日本独特の登山スタイル

沢登りって実は日本独自のスタイルって知っていました?

まだまだあまり知られてはいませんが、この登山スタイルは昔から日本で楽しまれていた登山スタイルで、水しぶきを浴びながらの爽快な達成感と、普段目にしない神秘的な景色の広がる沢の中でのアドベンチャー感が魅力的な夏にピッタリの登山スタイルです。

通常の登山とは違うリスク管理で事故を回避

日本の山が持つ独特の地形だからこそできる沢登りは通常の登山よりも危険が多く潜む登山スタイルです。

しかし事故に合わないためのしっかりとした知識を身につけて危険を回避すれば、通常の登山では味わえない沢登りの魅力を安全に楽しむことができるので、沢登り中に起こりやすい事故をしっかりと把握しておきましょう。

沢登り中に気を付けたい事故①遭難、道迷い

ルート外を歩くことが多い沢登り

Photo byRepublica

登山事故の中でも最も多い要因が遭難、道迷いです。さらに沢登りとなるとほとんどが登山道から外れた沢沿いを歩くこととなるため、一般の登山よりも遭難のリスクは高くなることは容易に想像できます。

沢に沿って歩くから道に迷うことなんてないのでは?なんてことはありません。ルート外なので道標もなく、また通れない箇所を回避するために沢から離れたところを歩く場合もあります。そういった場所ではトレースもないことが多く道なき道を進まないといけないこともあります。

遭難、道迷いのためのリスク管理

現在地を確認

Photo by Keith Double

まずは周りの地形を常に観察し地図やGPSで現在地を確認することが大事です。読図のスキルもしっかりと身に付けておきましょう。また、進む先にどのような地形があるか、後戻りすることができるかを確認して進むことも重要となります。

スタック状態は危険

助けを呼ぶことができない場所で前にも後ろにも進むことができずその場で立ち往生してしまった場合、死亡事故にもつながってしまい遭難事故となってしまいます。進むことだけではなく、後戻りすることができるかどうかを考えることも忘れずに。

沢登り中に気を付けたい事故②滑落、転倒

濡れた岩、滝や切り立った崖を登ることも

沢での足場は濡れた岩だったり苔の生えた岩だったりと滑落や転倒する危険が必ずつきまといます。また登るだけではなく壁にしがみついて壁つたいに移動するといったことが必要となってきます。

滑落、転倒のためのリスク管理

必要のないときは岩の上を歩かない

沢の中ではついつい岩の上を歩きたくなってしまいますが、これが滑落や転倒の原因となってしまいます。危ない岩の上を歩くよりは足場が安定した場所を選び滑落、転倒しないよう常に心がけてください。

川床にも安定した足場があるので水の中もしっかり確認することが大事です。


三点支持で登る

崖を登る場合は、大丈夫と思う場所でもしっかりと上半身や腕も使い、三点支持で登ることが滑落や転落の回避に繋がります。

また岩や石を掴んだり足を置く場合はその岩や石が動かないかを体重を掛ける前にしっかりと確認してください。いきなり体を預けてしまうと岩や石が崩れて滑落してしまうこともあります。

滑りやすいところはブラシが便利

どうしても滑りやすい所を通らないといけない場合は小さなブラシを携行していると苔やヌメリを落とすことができて滑落や転倒の防止となります。

沢登り中に気を付けたい事故③増水、溺水

水に関する危険を理解する

Photo by Mikey Bean

当然ですが沢は山から流れてくる水が集まる場所です。現在地で雨が降っていなくても上流付近で雨が降っている場合には沢の水が増えてくる場合があります。

また、沢の流れは常に一定ではありません。滝つぼでは複雑な流れとなっていたり、岩と岩との間の流れに飲み込まれ身動きが取れなくなったりと、山だけの知識だけでは危ない箇所を判断することはできません。水の流れについての知識も必要となってきます。

増水、溺水のためのリスク管理

山域全体の天気を確認

現地の天気だけではなく、山域全体の天気をしっかりと確認し、前日の天気も確認しておくことが望ましいです。濁った水が流れてきたり水かさが増してきたと感じたときはすぐにプランの変更を行いエスケープルートを確認してください。

増水時のルートを確保

増水してしまうと通れなくなる箇所なども出てくるので、引き返すことができないという場合が起こるかもしれません。撤退の判断はできるだけ早めに行い、安全なルートを確保しましょう。

複雑な流れに注意

滝つぼや水深の深い場所では水の中も複雑な流れになっていることもあるので、慎重な判断が必要となります。

滝つぼ以外でも初心者が危ない沢の流れを判断するのは難しいので、経験者から危ない流れとはどういうものかをしっかりと教えてもらい、確認なしで滝つぼに飛び込むなんてことは最も危ない行為の一つです。絶対に止めましょう。

溺れるだけではなく滝つぼの複雑な流れに乗ってしまった場合は川岸にたどり着けないこともあります。また滝つぼに引きずり込まれてしまうことも珍しくありません。

沢登り中に気を付けたい事故④低体温症

真夏でも冷たい沢の水

沢登りのシーズンといえば真夏ですが、外気温が高くても沢の水は想像以上にとても冷たいです。

またほとんどの沢は周りが樹木や崖に覆われ日差しが差し込むことも少ない場所がほとんどなので一度濡れた体は常に濡れたままとなってしまうことがほとんどです。

プールや海などの水辺のアクティビティと同じ感覚で沢登りに挑んでしまうと体が冷え切ってしまい低体温症になってしまいます。沢登りは常に低体温症のリスクを考えておかなければいけません。

低体温症の症状

低体温症は大きく4っの段階に分かれます。

軽度低体温症


まずよく見る体の震えは軽度低体温症の段階です。この段階では思考能力が低下していき無気力状態のような呼びかけに対しても反応しない症状が現れます。座り込んで動かなくなる、ろれつが回らない、足元がふらつくなどの症状も現れてきます。

軽度低体温症の症状が現れたらなるべく早くこれ以上体の熱が奪われないように保温および加温し、体が熱を生成できるようカロリー補給を行ってください。

また体温の低下によって利用作用が働き脱水状態になることもあります。温かいものでなくても構わないので水分補給も忘れず行ってください。

中度低体温症

軽度低体温症からさらに体温が低下をすると中度低体温症の段階になります。この段階では震えが止まり意識も更に低下してしまいます。

自力での回復も見込めない状態となるため、なるべく安静にしできるだけ早く救助要請を行いましょう。

高度低体温症、重度低体温症

さらに悪化すると高度低体温症および重度低体温症へと移行していきます。この段階では意識はなくなり呼吸もさらに弱くなっていきます。重度低体温症は死亡しているのかさえ分からない程身体機能がなくなります。

低体温症のためのリスク管理

まず低体温症を防ぐには適切なウェアリングを心がけることが重要となります。

沢登りのインナーウェア

アンダーウェアやインナーウェアには、濡れた体が少しでも早く乾くよう化学繊維の速乾性の生地を選びます。

沢登りのミッドウェア

そしてその上にミッドレイヤーとして少しでも体温を逃さないよう厚手で保温性のある素材のシャツを着ます。厚手のラッシュガードのようなものが沢登では定番のウェアです。

沢登りのアウターウェア

さらに気温の低いときや長時間水の中にいる必要のあるときにはアウターとしてレインウェアを着込み、直接体が水流で冷えないように対策をします。また滝つぼ周辺では冷たいミスト状の水しぶきが飛んでいることもあります。
 

防寒用のウェアも追加

さらに、夏でも常に防寒用のウェアとしてフリースやソフトシェルのジャケットも用意してください。

下山時に一般登山道を使ってスタート地点まで戻る場合でも濡れたウェアが体温を奪って寒くなったり、休憩中などの動いていないときにはどんどんと体が冷えていってしまいます。

特に滝つぼ周辺は景色もよく休憩したくなりますが、周りよりも気温が低くなっていることが多いです。

もしものための保険もチェック!

通常の登山保険ではカバーされてないことも

Photo byblende12

すでに登山を楽しんでる方はもしもの時のために山岳保険やアウトドア保険などに加入されている方も多いとは思いますが、自分の入っている保険が沢登りという登山スタイルをカバーされている保険かどうかをしっかりと確認しておく必要があります。

OneDay保険はしっかり確認を

特に最近ではコンビニやスマホから簡単に入れるOne Day保険が人気ですが、遭難事故の際の救助費用やケガの場合の入院費がカバーされていて安心と一見思いがちです。

しかしほとんどの保険ではカバーされる活動の範囲が、一般登山かまたは山岳登攀(登はん)かの2つに分類され山岳登攀は保証範囲外となるものが多くあるので注意が必要です。

沢登りは山岳登攀に分類される

Photo byUserBot

山岳登攀と分類されるものは、ロープやピッケル、アイゼンなどの登山用具を使う登山スタイルやロッククライミング等を指すものとなり、沢登りはロープを使用する山岳登攀と分類されます。

そのためご自身の保険が沢登りという登山スタイルにあったものかどうかを再度しっかりと確認しておく必要があります。

過去の事故報告も確認を

沢によって特徴はさまざま

沢と一言に言っても沢によって特色はさまざまです。増水するスピードが早かったり遅かったり、両脇が壁のような崖に挟まれる沢だったり、または岩がもろくて落石の多い沢だったりと沢によって特に注意しないといけないことが異なってきます。

登山地図だけではそのような特色は判断できないため、事前に入渓する沢の情報をしっかりと下調べすることが何よりもリスク管理の第一歩となります。

事故報告から原因を把握

過去の事故報告のある沢ではその報告された事故の原因をしっかりと把握しその対策をすることが重要です。

沢登りのコースに関しては一般登山に比べ報告される情報が少なくまた登山道よりも台風や増水、倒木などによりコース状況が変わり、今までになかった危ない箇所が増えることも多いためできるだけ最新の情報を入手することを心がけましょう。

沢にもグレードがある

また沢登りのコースには登攀グレードが示されているものもあります。何も知らずに入った沢がグレードの高い沢だったりするとただ危ないというだけではなく死亡事故につながる危険性もおおいにあります。

自分の力量にあった沢かどうか、途中に難易度の高い箇所が出てくるかどうか、コースが示されている場合にはいきなりグレードの高い沢からチャレンジするのではなく、しっかりとスキルに合ったコースを選択するようにしてください。

下山時のコースもしっかり確認

Photo by Michael R Perry

コースの選択時には下山時のコースもしっかりと確認することが重要です。沢を下ってスタート地点まで帰るのか、または一般登山道に出てスタート地点まで戻るのかを確認することを忘れないようにしましょう。

下山までの体力、時間をしっかりと計算して安全に帰り着くまでの行程を計画してください。「登れるところまでがんばって登る」はとても危険です。「安全に帰れるところまで登る」ということを念頭に登山計画を作ってみてください。

未知の魅惑が沢で待っています!

出典:ライター撮影

危ないから止めておこうと今まで躊躇していた沢登りも、一つ一つそして少しずつ慣れていきながら沢登りの魅力を味わってみてください。

通常の登山では得られない爽快感やハラハラどきどきのアドベンチャー感は一度ハマると抜け出せないほどの魅力が詰まっています!

沢登りに関するおすすめ記事をチェック!