北鎌倉の明月院とは?
あじさい寺明月院は四季の花と紅葉のスポット
あじさい寺として全国的に有名な明月院は、6月の紫陽花に限らず四季折々の草花が楽しめ、特に秋の紅葉が素晴らしい名所です。明月院は北鎌倉駅より徒歩10分ほどの距離で、鎌倉五山で有名な円覚寺(えんがくじ)と建長寺に挟まれた位置にあります。
東京都心から約1時間とアクセスもよく、観光シーズンには拝観者の列が北鎌倉駅から延々と続くほどです。明月院の紅葉の魅力や見頃と見どころを詳しく紹介します。
明月院は臨済宗建長寺派の禅宗の寺
明月院は正式名称を「福源山明月院(ふくげんざんめいげついん)」といい、臨済宗建長寺派の禅宗の寺です。鎌倉には鎌倉五山と呼ばれる臨済宗禅寺が「建長寺」「円覚寺」「浄智寺」「寿福寺」「浄妙寺」の5寺院あり、明月院はその中の一つ建長寺派に属しています。
また五山のうち「建長寺」「円覚寺」「浄智寺」の3寺院が北鎌倉に集中しているのです。そんな中にある明月院は臨済宗禅寺の趣を色濃く残す寺院と言えます。
明月院の歴史
明月院は地域名の明月谷に由来
北鎌倉にある鎌倉五山の浄智寺(じょうちじ)の向かい側の地域は明月谷と呼ばれています。明月院はかつてその地にあり、現在は廃寺になっている禅興寺の塔頭(禅宗の寺の境内にある小寺院や別坊)として建立されたのが明月院の由来です。
しかし最初は明月庵という名で明月院に改名されたのは、もっと後の時代になります。それでは明月院の歴史を紐解いてみましょう。
明月院は歴史の流れに翻弄された寺
鎌倉幕府が創設される以前の1159年(平治元年)に、源氏と平家が対立した歴史の教科書等で有名な平治の乱で戦死した、山内首藤俊通(やまのうちすどうとしみち)を供養するために、息子の経俊(つねとし=母が源頼朝の乳母)が明月庵を建てたのが始まりです。
鎌倉幕府が設立された後1256年(康元元年)に第5代執権の北条時頼が出家するために最明寺を建立します。しかし北条時頼の没後に最明寺は廃絶してしまうのです。
明月院は禅興寺で唯一残った塔頭
北条時頼の息子で第8代執権の北条時宗が、最明寺の跡地に禅興寺を建立します。これが現在の明月院の原型になっているのです。その後、関東管領の命を受けた上杉憲方(うえすぎのりまさ)が寺院を拡大し塔頭も建立し、このときに明月庵を明月院に改めました。
禅興寺は、一時関東の十刹第1位の地位まで隆盛を誇ったのですが、明治初年に廃寺の命が下り、筆頭支院だった明月院だけがかろうじて残ったのです。
明月院の紅葉は歴史の変遷そのもの
明月院の紅葉は、自然の鮮やかな色合いや美しさの中に歴史に翻弄された明月院の変遷と感傷の想いが込められているのではないでしょうか。だからこそ見る人にただ美しいだけではなく、神秘的な感動を与えるのです。
紅葉の名所である明月院は、歴史の変遷そのものと言っても過言ではありません。鎌倉を訪れたなら明月院の絶景の紅葉と、寺院でなければ感じることができない歴史の無常と侘び寂びを味わってください。
明月院の紅葉の時期と見頃
明月院の紅葉の時期は意外に遅い
明月院の紅葉は11月中旬ごろより黄楓(かえで)や銀杏などの黄色系から色づき始め、次第に楓の朱色や赤が混じり11月下旬から12月初旬に見頃を迎え、12月中旬の時期まで楽しめます。
明月院がある鎌倉は、南は相模湾の海に面し三方は丘陵(比較的標高が低い山)と谷戸に囲まれた温暖な地域なので、紅葉の時期が意外に遅く長く続くのが特徴です。気候条件や場所によっては12月末から年明けまで紅葉が残ることがあります。
雪の明月院の紅葉に絶句
鎌倉は海に面した温暖な気候なので雪が積もることは滅多にありません。しかし数年に一度12月下旬から年始にかけた冷え込んだ日に、海からの湿った空気が鎌倉の山にあたり雪が降り積もることがあります。
明月院の境内に薄っすらと積もった純白の雪の上に、遅く色づいた紅葉の深紅の葉が落ちている景色は想像を絶する美しさです。それは戦乱の世を戦い抜き滅びて行った鎌倉の戦乱の歴史のメッセージ(血の色)なのかもしれません。
雪の紅葉は滅多にない貴重な体験
明月院の雪の紅葉に出会うことは、気候条件で紅葉が遅れることと、その時期に雪が降るという偶然が重なったときにしか起こり得ない貴重な瞬間です。もしも雪の紅葉を写真に収めることができたなら、忘れられない体験になるでしょう。
明月院の紅葉の見頃は11月下旬から12月上旬ですが、雪の中の紅葉という貴重なチャンスに出会うかもしれない、12月中旬以降に明月院を訪れるのも一興です。
明月院の紅葉の見どころスポット5選
紅葉はオレンジと黄色に赤少々といった具合で、これからまだ色付くのかもしれませんが、近くで見ると葉先の痛みが気になりました。
2匹のウサギの像が移動していてお地蔵さんの両側に配置されていました。
公開時しかお会い出来ない赤地蔵さま、青地蔵さまも拝見し満足です。
明月院は鎌倉の中でも紅葉の名所に数えられる寺院で、11月下旬に見頃を迎える紅葉は、境内のあちこちに思わず写真のシャッターを切りたくなる絶好の場所や、見逃せない絶景のスポットがたくさんあります。特に山門(総門)周辺や本堂後庭園の紅葉が見事で有名です。明月院境内の見どころ紅葉スポットを5選して紹介します。
①月の広場周辺の紅葉
明月院の総門をくぐり境内に入るとすぐに月の広場があり、この周辺も紅葉のスポットです。月の広場の左手には五代執権北条時頼の廟所(時頼が出家した最明寺跡に建てられた廟)があり、その前にある楓は見事な真紅に色づきます。
また月の広場には抹茶と和菓子がいただける「月笑軒」があり、入り口の屋根は紅葉の落ち葉がつもる風情がある茶処です。ここで一休みしながら明月院の紅葉が楽しめます。
②本堂手前の枯山水庭園
明月院本堂手間にある枯山水庭園から望む紅葉の景色は格別です。枯山水とは水を使わずに石や砂で水の流れを表現した庭園様式で、京都の石庭が有名なように寺院等でしか味わえない庭園です。
庭園の白の平面と背後に見える紅葉の色の対比は、神秘的な落ち着きと日本の美の伝統を感じさせます。明月院の枯山水から眺める紅葉は、赤が持つパッションと白い庭園の静寂が融合した不思議な空間の紅葉スポットです。
③本堂の方丈の間にある「悟りの窓」
方丈の間にある「悟りの窓」は大きな円窓で、その窓から見る紅葉は、丸く切り取られた一幅の絵画のようで明月院必見の景色です。シーズンには多くの人が写真撮影のために列を作ります。
写真は一瞬を切り取る絵画と似ているので、円窓から見える紅葉の美しさに、思わず写真に残しておきたいと思う方が多いのです。混み合うのが苦手な人には、12月中旬から下旬にかけてもまだ紅葉が見られ人が少なくなるのでおすすめします。
悟りの窓と呼ばれる理由
明月院は臨済宗禅宗の寺です。禅宗の修行といえば山籠りや滝に打たれる荒業をイメージされる方が多いのですが、禅宗の修行の最終到達点は、何もない大きな円のような無の境地になり、その円の中に永遠の宇宙を観ることと言われています。
つまりこの円窓は、禅の究極の境地を象徴しているから「悟りの窓」と呼ばれるのです。「悟りの窓」から見える紅葉は、まさに宇宙の広がり、多くの人が写真に収めたくなるのがわかります。
④開山堂周辺の紅葉
明月院境内にある開山堂周辺の紅葉は、黄色に赤と緑に加え開山堂の藁葺き屋根が織りなすグラデーションが見事なスポットです。開山堂は1380年頃に建てられた「宗猷堂」(そうゆうどう)が、のちに開山堂と呼ばれるようになりました。
堂内には明月院を開山した密室守厳(みっしつしゅごん)の木像が安置され、左手には上杉憲方の墓と伝えられる「明月院やぐら」やが、右手には鎌倉十井の一つ「瓶ノ井」があります。
⑤本堂後庭園の紅葉
本堂後庭園はハナショウブと紅葉の時期だけ特別公開され、先ほどの悟りの窓の先に広がる庭園で、明月院内で最も紅葉を満喫できる一押しのスポットです。
本堂脇の入り口より別料金の拝観料を払って入場するのですが、入った途端目の前に広がる見頃の紅葉の絶景に驚かされます。拝観料を払ってもお釣りがくるほどの美しさです。谷戸の奥まで広がる想像を超えた空間は、まさに円窓から見た宇宙に足を踏み入れた感覚を覚えます。
花菖蒲の池も見逃せないスポット
庭園の中心部には広い花菖蒲の池があり、花の時期に池いっぱいに咲き誇る花菖蒲の景色を彷彿とさせます。紅葉の時期には花はありませんが、その水面と紅葉のバランス、ときおり風で水面に落ちる楓の葉がなんとも言えない風情を感じさせる池です。また庭園内には滝庭や可愛らしい赤地蔵と青地蔵もあり、見どころ満載のスポットです。
明月院周辺の観光・紅葉スポット5選
明月院はJR横須賀線の北鎌倉駅から徒歩10分の距離にあり、東京都心からも約1時間で来れるアクセスがよい寺院です。また明月院周辺には多くの神社仏閣や観光・紅葉スポットがあり、明月院の紅葉と同時に紅葉スポット巡りができるのも魅力です。明月院周辺の観光・紅葉スポットを5選して紹介します。
①建長寺
半僧坊参道の黄葉、紅葉が見頃になっていましたが、それ以外にも境内のあちらこちらで真っ赤に色付いた木を見かけました。
方丈では、孟宗竹林図の特別展が開催されていました。
建長寺は明月院の南隣りにあり、臨済宗建長寺派の大本山で、鎌倉五山第一位の格式を誇る寺です。山の中腹まで一直線に並ぶ広大な伽藍の中に、国の重要文化財である三門や仏殿(巨大な5mの地蔵菩薩坐像が安置)、国宝に指定されている鐘楼(鎌倉名鐘楼の1つ)、重要文化財である法堂(天井の迫力ある雲龍図で有名)があります。
紅葉スポットも多く見どころ満載なので、明月院の紅葉と合わせてぜひ観ておきたい寺院です。
建長寺の紅葉
境内にある方丈庭園から見る紅葉、正統院や回春院などの塔頭の紅葉は、それぞれに趣の違う景色が楽しめます。また境内の奥から続く半蔵坊に向かう参道の紅葉も見逃せません。
この参道は鎌倉最高標高159mの太平山に登る天園ハイキングコースに繋がっています。天園ハイキングコースは明月院からも登山口があり、紅葉と眺望が素晴らしいので建長寺をパスして登ることもできます。
②円覚寺
北鎌倉からすぐという事もあって、紅葉が見頃になっている総門前の写真を撮る人が絶えませんでした。
境内の妙香池周辺も綺麗でした。
円覚寺(えんがくじ)は明月院の北隣にあり、鎌倉五山第二位臨済宗禅宗の歴史ある寺院で、北鎌倉駅を降りると1分で総門の前につける駅近の好アクセスです。
境内は建長寺同様に禅宗様式の七堂伽藍を中心に谷戸を利用した細長い広大な敷地で、舎利殿(しゃりでん)は鎌倉時代の中国様式を代表する、最も美しい建物として国宝に指定されています。境内にある妙香池(みょうこうち)の水面に映る紅葉の美しさも見逃せません。
③浄智寺
曇華殿の前の銀杏が散って黄色いカーペットが出来ていました。
お茶室周辺の紅葉が見頃です。
久しぶりに布袋さまのお腹も撫でて来ました。
浄智寺(じょうちじ)は県道を挟んで明月院の向かい側にあり、鎌倉五山第四位の格式ある禅寺で、かつては大伽藍の寺でしたが、現在は方丈を残すのみでこじんまりとしています。
しかし北鎌倉の隠れた名禅寺とも呼ばれ、素朴な中にも珍しい鐘楼門や三体の仏像が鎮座する曇華殿、七福神の布袋様など魅力が凝縮された寺です。特に紅葉は曇華殿前のイチョウや庫裡前のカエデが見事に染まり、明月院と合わせて紅葉が楽しめます。
④東慶寺
紅葉見物に訪れました。東慶寺は四季の花も美しく見応えがありますが、良く整備された墓所が何より素晴らしいです。とくに日本近代文学が好きな方には、文豪のお墓が見応えがあります。堀田善衛、高見順、小林秀雄、和辻哲郎、鈴木大拙など、それぞれ趣向を凝らした墓石にビックリさせられます。墓所の紅葉もとてもきれいでした。
東慶寺(とうけいじ)は浄智寺の北鎌倉寄りの隣りに位置し、かつては女人救済の「縁切り寺」と呼ばれ男子禁制の尼寺でしたが、現在は四季折々の草花が楽しめる花の寺として人気があります。
規模は大きくありませんが、鎌倉独特の谷戸の地形を利用し、墓苑まで続く石畳を中心に本堂、書院、茶室、宝物館が配置されています。秋には控えめながら鮮やかな紅葉が見られ、駆け込み寺に逃れた女性を癒したのではないでしょうか。
寺巡りや紅葉巡りができる
このように円覚寺、建長寺、浄智寺、東慶寺と北鎌倉周辺のそれぞれ趣の違う寺巡りや紅葉巡りができるのが明月院の魅力です。しかも駅からも近く、それぞれのスポットを歩いて回れます。もちろん1日で回ることもできますが、じっくり鑑賞したいなら近くに宿をとり2〜3日の計画で巡ることも可能です。
⑤天園ハイキングコースと獅子舞
足に自信がある方なら、鎌倉アルプスとも呼ばれる「天園ハイキングコースと獅子舞」の紅葉がおすすめです。このコースは明月院と建長寺からの登山ルートがあり、いくつかの分岐コースにより4km〜7kmの行程があります。
半蔵坊や十王岩(標高147m)から望む相模湾と鎌倉全景の眺望と天園の紅葉はもちろん絶景ですが、特に鎌倉の隠れた紅葉の名所と言われる「獅子舞」の紅葉は外せないおすすめの紅葉スポットです。
獅子舞の紅葉
明月院の寺院とは趣が違う獅子舞の紅葉は別格の美しさです。ハイキングコースの峠の茶屋を瑞泉寺方向に進むと「獅子舞を経て鎌倉宮」の道標があり、道標に沿いその先の森が開けた場所が鎌倉の秘境「獅子舞」エリアになります。木漏れ日がさし、明月院などの寺にはない、まるで別世界の紅葉が広がるのが獅子舞の魅力です。
明月院の紅葉で鎌倉の秋を満喫しよう!
まとめ
あじさい寺として有名な北鎌倉の明月院は、四季折々の草花が楽しめる禅宗の寺で、特に秋の紅葉の見事なことでも有名なスポットです。また立地やアクセスもよく、明月院の周囲には多くの観光や紅葉スポットがあります。これまでの記事を参考にして秋の北鎌倉の寺めぐりや紅葉めぐりを大いに楽しんでください。
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出典:photo-ac.com