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生活の道具からレジャー・スポーツまで!人々に愛されるカヌーの歴史をご紹介!

現在、カヌーといえばカナディアンカヌーのことを指しますが、その歴史は6千年前以上の各地で発生した小舟に遡れます。カヌーの本来の目的は、水上移動の手段や狩猟などの生活道具だったのです。今ではレジャーやスポーツに利用されているカヌーの歴史などについてご紹介します。
2021年11月9日
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カヌーは人類の生活に不可欠な道具だった

Photo byRGP

一般的にカヌーは、かつてインディアンと呼ばれていたアメリカの先住民族が使用していたカナディアンカヌーのことを指します。しかしカヌーのような小舟は、世界各地で人々の生活道具として利用されていました。海や湖がある地域では、移動や運搬手段としてこういった小舟が誕生したのは必然だったといえます。

カヌーの定義は難しいとされ、歴史上カヌーの原型や発展の定義は曖昧なようです。カヌーとされる小舟の歴史、スポーツ競技としての歴史に焦点を当ててみました。

カヌーとカヤックの構造的な違いと定義

Photo byjennyzhh2008

カヌーとカヤックは、覆いがない点や前と後ろの先端が尖っている点などの類似点がありますが、よく観ると甲板の構造やパドルの形などの細かな相違点があるのが特徴です。

ICF (International Canoe Federation)の定義を基に、構造の違いやパドルの違いなどについてご紹介します。レジャーを始めたり、観戦したりするときのご参考にしてください。

カヌーの構造と定義

Photo by y_katsuuu

一般的にカヌーは、屋根などの覆いのない開放された甲板に設置された座席に脚を投げ出すようにして座り、シングルブレード(片方の先端に"パドル=水かき"がついたもの)で進むものとなっています。オープンデッキのため、大きな荷物も運搬できるのが最大の特長です。

1人~2人乗りのタイプが多く、2人乗りは前後の座席に一人ずつ座り、後方に座った人が水流を読みながら前方の人に指示を出しながら、それぞれシングルブレードで操作します。

カヤックの構造と定義

Photo byPexels

一般的にカヤックは、屋根のような覆いがなくて閉じられた甲板に腰を入れて座りダブルブレード(両方の先端に"パドル=水かき"がついたもの)で進むものです。クローズドデッキのため、波をかぶっても船内に浸水しにくいという特長があげられます。

主に2系統あり、グリーンランドからアラスカ東岸に居住するイヌイット族と、アラスカ西岸からアリューシャン列島周辺に居住するアリュート族によって発展したと伝えられています。

カヌーの歴史は6千年前までさかのぼれる

シュメール人の王墓に存在

Photo bycotrim

歴史上最古とされるカヌーは、ユーフラテス川河畔で発見された約6000年前のシュメール人の王墓に残されているそうです。しかし同時期、極東アジアの北極圏から北米イヌイットの生活圏を経由し、南米までのモンゴロイド系の人々が使っていたという研究もあります。

南北アメリカの先住民族の小舟を始め、ポリネシアのアウトリガーカヌー、ヨーロッパにおける太古のカヌー、日本の先史時代の丸木舟などから、カヌーの歴史=地域文化の歴史といえそうです。

カヌーの語源は「カノア」

大航海時代の探検家でアメリカ大陸を発見した歴史的な人物、クリストファー・コロンブスが、西インド諸島の人々が乗っていた丸木舟を「カノア」と記録しています。コロンブスが記録した「Canoa(カノア)」と表記し、「先のとがった」という意味です。

カノアは現在使用されている言葉「カヌー」の語源とされています。世界各地で生活道具として記録されてきた歴史上の小舟が、大航海時代以降にカヌーとして認識されたといえそうです。

世界各地で発展したカヌーの歴史


Photo byPICNIC-Foto-Soest

カヌーの歴史で興味深い点は、世界各地でさまざまな小舟(カヌー)が考え出されて発展していったことにあります。遅いか早いかの時代の違いこそあれども、インディアンと呼ばれた米国先住民族のように必要に駆られて地域の樹木を使い、さまざまな形態のカヌーが誕生したのです。

世界各地で生まれた小舟(カヌー)の歴史を調べると、地域独自の歴史や文化的背景も垣間見えてきます。主だった小舟(カヌー)の歴史をぜひチェックしてください。

北アメリカのカヌーの歴史

Photo byTomaszProszek

かつてインディアンと呼ばれたアメリカの先住民族には、幹をくり抜いた丸木舟を用いていたという歴史があります。樹高が60メートルにもなるベイスギやベイマツを用い、トーテムポールや板葺きの建物と同時にサケやマス漁のため、数十人が乗船できるカヌーも造ったのです。

またカリフォルニアの先住民族は、動物の腱や樹木の枝などで木材をつなぐ縫合舟を造っていました。ポリネシアの建造技術が伝わったものとの歴史的研究もあるそうです。

本来のカナディアンカヌーの構造

カヌーの歴史で見逃せないのがカナディアンカヌーです。現在のレジャーシーンで世界中で最も使用されているカナディアンカヌーは、木材で骨組みを造ってから樹皮を張る構造だったそうです。

このように各地域に伝わる小舟の形態=カヌーの歴史はさまざまといえ、一概にカヌーとは何か?という定義づけが難しい理由がここにあります。

カナディアンカヌーの語源

カナディアンカヌーは、本来は先住民族が樺の木から造ったことから「インディアンが利用したカヌー」が転訛して「カナディアンカヌー」になったという説もあります。

ミクロネシアのカヌーの歴史

Photo byjeffbalbalosa

ミクロネシアのカヌーは北アメリカのカヌーとは異なり、動物の腱や樹木の枝で木材をつなぎ合わせた"縫合舟"でした。さらにカヌーの安定性を増すため、カヌーの両側または片側が、アウトリガー(浮き子)が張り出した形をしています。

歴史上の記録では、ラグーン(潟湖)用の小さなものを始め、外洋航行のための10名ほどが乗れるものも利用されたそうです。このカヌーによって周辺の島々やパラオなどと交易が行われていました。

メラネシアのカヌーの歴史

Photo byfleglsebastian7

メラネシアのカヌーの歴史を観ると、ミクロネシアと同じように小舟と外洋航行の2種類が造られていたそうです。メラネシアの小舟はラグーンというよりも、池や湖、川などの内水面で用いられることが多かったといわれています。

外洋航行の歴史で観ると、シングル・アウトリガーとダブル・アウトリガーの2つがあり、経済的な歴史でも交易のための重要な道具だったのです。

ポリネシアのカヌーの歴史

Photo byJustasurferdude

ポリネシアにおけるカヌーの歴史を観ると、アウトリガーのないカヌーの他に、シングル・アウトリガーカヌー、ダブル・アウトリガーカヌーの3タイプがあります。ニュージーランドの先住民族であるマオリ族のカヌーの歴史は、多くがアウトリガーのないカヌーです。

航海用のカヌーの多くはダブル・アウトリガーカヌーですが、一部地域ではシングル・アウトリガーカヌーも存在しています。

東南アジアのカヌーの歴史


東南アジアのカヌーの歴史では、片側だけのシングル・アウトリガーカヌ以外に、両側のダブル・アウトリガーカヌーも利用されています。

しかし東南アジアでカヌーといえる代表的な小舟は、中国の広東省や福建省で見られる水上生活者の家舟があげられるようです。蛋民と呼ばれる人々が暮らしながら漁労も行うカヌーとなり、本来は帆走するタイプでしたが現在はエンジン動力によるものとなっています。

北東アジアのカヌーの歴史

Photo by Noah Chiao

北東アジアでは、日本においては北海道、そして樺太や千島列島周辺にカヌーの歴史が明確に残されています。これらの地域の歴史を観ると、北海道のアイヌ民族、オホーツクやサハリン周辺に住む人々独自のカヌーが造られてきたのです。

アイヌの人々の歴史をひも解くと、大木のカツラやヤチダモをくり抜いた湖や川など内水面用の「チプ」を主に使っていたそうです。沿岸航海用のカヌーもあり、大陸と交易をしていたことも歴史では明らかになっています。

小笠原諸島のカヌー

南国では小笠原諸島のカヌーがあげられ、有史以前にシングル・アウトリガーカヌーが入植したハワイ人の人々によって導入されたそうです。

日本は単一民族といった考え方をする人もいますが、このようにカヌーの歴史をひも解くと、単一民族とは決して言いきれない人類移動の痕跡が垣間見えてきます。

マダガスカル島のカヌーの歴史

Photo byaga2rk

アフリカ南東部沖にあるマダガスカル島の先住民は、インドネシアやフィリピンなどの東南アジアの島々から航海用のカヌーで渡ってきた人々とされています。

そのためマダガスカル島では現在でも、シングル・アウトリガーカヌーを漁労などに用いられているようです。

カヤックの歴史と語源

Photo byWikiImages

カヤックの歴史は、カヌーと同じように約6000年前まで遡れるそうです。ルーツは北アメリカのイヌイットにあり、木材で造った枠組みに防水のために動物の皮を船に張った「クアヤ(quaja)」といわれています。カヤック(kayak)の語源はここから来ているようです。

動物の皮はアザラシやトナカイのものを利用し、パドルの両側にオールが付いており、手を持ち替えることなくオールを操作できるのが特徴です。

スポーツカヌーの歴史は1850年頃が始まり

スポーツの始まりはイギリスのテムズ川

Photo byPexels

カヌーのスポーツとしての歴史の始まりは、19世紀半ばのイギリスのテムズ川にあります。近代カヌーの祖と呼ばれる、スコットランド出身の法廷弁護士かつ冒険家のジョン・マクレガーによって、カヌーの魅力がヨーロッパへ広められたのが始まりです。

1865年にマクレガーは自作のカヤック「ロブロイ号」で、イギリスを始めヨーロッパの河川を巡りました。著書を発表したところベストセラーになり、スポーツ競技の発展につながったそうです。

オリンピックの登場は1936年

Photo by iyoupapa

カヌーがオリンピックの正式種目になったのは、1936年の第11回ベルリン大会です。その12年前にはデンマークのコペンハーゲンで競技カヌーの国際カヌー連盟が設立され、1930年に第1回世界選手権大会が開催されました。

日本でのスポーツ競技としての始まりは、ベルリン大会に参加した選手団役員が組み立て式カヤックを持ち帰ったことにあります。1960年代にグラスファイバー製のカヌーも登場し、一気にスポーツとして普及したのです。


オリンピック競技①カヌー・スラローム

オリンピック競技の「スラローム」は、カナディアンカヌーとカヤックが設定されています。激流コースに吊るされたゲートを通過しながら一定距離間のタイムを競う種目です。コースは全長250~400メートル、ゲートは18~25個あり、そのうち6~7個のゲートは下流から上流に向かうアップストリートゲートになっています。

非常に見ごたえのある競技となっており、2021年の東京オリンピックでは、羽根田卓也が10位と健闘しました。

オリンピック競技②スプリント

カヌーのもう一つのオリンピック競技である「スプリント」は、流れのない直線コースを一斉スタートし、到着順を競う種目です。

波などの自然条件が刻一刻と変化するスラロームとは違い、静かな水面が舞台という点です。しかし舞台が静かな分、選手たちのダイナミックな動きから目が離せません。スラローム同様に自然を感じながらの、パワーあふれるスタートダッシュの迫力が大きな見所になっています。

オリンピック競技③

カヌーのオリンピック競技は、他にも以下のものがあります。「ワイルドウォーター」「フリースタイル」「カヌー・ポロ」「セーリングカヌー」「セーリングカヤック」「ドラゴンカヌー」などとなり、「スラローム」と「スプリント」を入れて合計で16種類もあります。

いずれも常に変化する水が相手の競技のため、自然の醍醐味を満喫できるのも魅力です。次回のオリンピックではぜひ、歴史のあるカヌー競技に注目してみてください。

レジャーとしての普及は1960年代

Photo byPexels

オリンピックの正式種目になったこともあり、1960年代に広く知られるようになったカヌーですが、レジャーシーンでの発展は1980年代のポリエチレン製のカヌーの登場によります。重量は10~20キログラム台で、持ち運びのしやすさも特徴です。

湖沼や穏やかな河川では、カヌーで自然に親しむレジャーが人気になりました。各地域ではカヌーによるさまざまなアクティビティが開発されているので、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

歴史のあるカヌーで自然に親しもう!

Photo byBenediktGeyer

カヌーの語源は、世界の歴史でも有名なコロンブスが西インド諸島の人々の丸木舟を、"先のとがった"という意味の「カノア」と記録したことにあるようです。現在カヌーとして認識されている小舟の歴史は6千年前以上と古く、世界各地で同時的に発展してきたものなのです。

スポーツとしての歴史はイギリスのテムズ川から始まり、オリンピック競技にまで上り詰めました。このように非常に古い歴史のあるカヌーで、豊かな日本の自然も満喫しましょう!

カヌースポットが気になる人はこちらをチェック!

日本でカヌーやカヤックが体験できる場所は、北海道から沖縄まで数多くあります。個人で体験するのではなく、体験ツアーに参加するのがおすすめです。本体やパドル、救命具などの道具もレンタルできるので、ガイドさんの案内のもと、それぞれの地域の自然を思い切り満喫してください。