水族館にホオジロザメがいない理由とは?
人喰いサメで知られているホオジロザメは映画「ジョーズ」のモデルになったサメです。世界では「ジョーズ」同様に実際に人が犠牲となった事故もあります。そんな凶暴なホオジロザメを一目見たいと思っても展示している水族館はありません。
そんなサメをなぜ水族館で飼育しないのか不思議に思いませんか。この記事ではホオジロザメをなぜ水族館で展示しないのか、その理由などを解説します。
ホオジロザメってどんなサメ?
狂暴で海の食物連鎖の頂点に君臨し、古代に生息していた、最大のサメであるメガロドンを絶滅させたホオジロザメですが、具体的にはどんなサメなのでしょう。そんなホオジロザメの特徴などを解説します。
ホオジロザメの特徴
ホオジロザメの特徴の一つに側頭部が白いことが挙げられます。これは頬が白いという意味である和名の由来でもあります。また、背中側が濃い灰色、腹側が白色をしており、綺麗に色が分かれています。
歯は他のサメと同様にのこぎり状の鋭い歯を持っており、抜けてもすぐに生え変わります。体長は個体によって異なりますが、4mから5mほど、体重は最大で2tもの重さを持つ個体もいます。
人を襲うことは稀!?
人喰いサメとして知られるホオジロザメですが、基本的にエサとなるのはアザラシやウミガメなどの海洋生物です。そのため、人を襲うのは稀です。しかし、日本や海外で多くのホオジロザメによる被害があります。
これは、海面付近の人をエサであるアシカやウミガメと見誤ってしまうからだと思われます。
シャチに捕食されることも
狂暴な性格で敵なしと思われがちなホオジロザメですが、実はシャチに食べられます。これまで実際にシャチに食べられたと思われるホオジロザメの死骸も見つかっています。しかし、シャチもホオジロザメを好き好んで食べる、というわけではなく、シャチにとってもホオジロザメを襲うことは稀です。
絶滅の危機に瀕している
ホオジロザメは実は絶滅危惧種です。ホオジロザメは共食いをする種類のサメです。大きい個体は小さい個体を食べるため、全体的な数はどんどん減少しています。また、ホオジロザメの成長は非常に遅く、なかなか大きくなりません。そんな理由から、ホオジロザメは絶滅の危機にあるのです。
ホオジロザメが関係した事故
ホオジロザメによる被害は日本を含めた世界中で起こっています。つまり、正真正銘の人喰いサメなのです。人が死亡するような事故は少数ですが大けがは免れません。ここからはそんなホオジロザメが原因だと思われる人喰い事故について紹介します。
海外で発生したホオジロザメによる事故
ニュージャージーサメ襲撃事件
ホオジロザメによる事故の中でも有名な事故の一つにアメリカのニュージャージー州で発生した事故があります。これは、映画「ジョーズ」の題材にもなった事故です。当時はサメは人を襲わないと認識されていたため、対応が遅れ4人が死亡し1人が重症を負いました。
オーストラリア ワイリー湾
オーストラリアでもホオジロザメによる事故が起こっています。その中でも特に被害が多い湾の一つにワイリー湾があります。ワイリー湾はサーファーたちに人気の湾なため、人喰いサメの格好の餌場なのです。2014年には男性が襲われ、左腕と右手を食いちぎられる事故がありました。
日本で発生したホオジロザメによる被害
愛媛県松山市沖
日本でも人喰いサメの被害があります。その事故の一つが、愛媛県松山市沖での事故です。1992年松山市沖にてタイラギ貝漁をしていた潜水夫がホオジロザメの被害に遭い、行方不明となる事故が起きました。
実際にサメを見かけたという報告はありませんが、引き上げられた潜水服やヘルメットに残された傷跡からホオジロザメによる事故とされました。
愛知県伊良湖沖
こちらの事故も人喰いサメによる凄惨な事故の一つです。1995年に愛知県伊良湖の沖約100mのところでミル貝漁をしていた潜水夫がホオジロザメに襲われました。
近くの仲間が急いで引き上げようとしますが、体長6mのサメがかみついており、そのまま右手を食いちぎられてられてしまいました。被害にあった男性は即死でした。
ホオジロザメが水族館にいない理由.1
ホオジロザメは捕獲が難しい
ホオジロザメは捕獲が難しい、ということが水族館で展示しない理由の一つです。ホオジロザメは狂暴で手に負えない、というイメージがありますが、実は非常に繊細な生き物なのです。そのため、捕獲の際に暴れて、そのまま死亡したり、傷ついてしまったりして捕獲に失敗するのです。
過去には何度も捕獲されているが
ホオジロザメは、日本を含めた世界中で捕らえられています。しかし、その多くが水族館で飼育するためではなく、海で漁をしていた漁師たちにより、偶然捕まったことの方が多いのです。そのため、サメがすでに死亡しているか、瀕死の状態で発見されることがほとんどなのです。
ホオジロザメが水族館にいない理由.2
飼育が非常に難しい
捕獲が難しい上に、飼育の難しさもホオジロザメが水族館にいない理由の一つです。ホオジロザメは外洋の海を非常に素早いスピードで泳ぎ続けながら生活します。そのため、飼育するにはホオジロザメが十分泳げるだけのスペースがある大きな水槽を用意する必要があります。そんな水槽でなければ死亡するのです。
常に泳いでいないと死亡する
ホオジロザメはマグロと同様に泳ぐことでエラ呼吸を行っています。そのため、ホオジロザメを飼育するためには、ホオジロザメが十分泳ぎ回れるだけの大きさを持つ水槽がなければなりません。
また、ホオジロザメが誤って水槽に激突してしまい、傷つく可能性もあります。そんな理由もあり、水族館では飼育されていません。
ホオジロザメが水族館にいない理由.3
ホオジロザメのエサ
ホオジロザメが水族館にいない理由の一つにホオジロザメのエサの確保があります。小さいホオジロザメは他の魚を食べますが、大きくなるにつれて、オットセイやアシカなどを捕食するようになります。
そのため、エサの確保が非常に難しく、費用も掛かるため、展示していないのです。
エサの食べ方も豪快
小さい個体は泳いでいる魚を食べますが、大きい個体になると水面付近で泳いでいるオットセイなどを深い位置から一気にエサまで泳ぎ、大きな口で獲物にかぶりつきます。その勢いはすさまじく、海面からオットセイを咥えたサメが飛び出すほどです。そんな豪快な狩りは水族館の水槽ではできません。
海外では水族館で飼育しようとしたことも
飼育が困難なホオジロザメですが、これまで世界中の多くの水族館がホオジロザメの展示を行おうとしてきました。ここからはそんなホオジロザメを飼育しようとした水族館とその結果について紹介します。
試みた水族館のほとんどが失敗
現在まで多くの水族館がホオジロザメを展示しようとしてきましたが、その結果はほとんどが失敗でした。その理由も前記で紹介したような捕獲や飼育の難しさやストレスなどです。水槽に入れたとしても、長くて、16日後には死亡してしまいました。
アメリカの水族館が唯一飼育に成功した!
アメリカのカリフォルニア州にあるモントレーベイ水族館は世界で唯一ホオジロザメの飼育に成功しています。他の水族館では水槽に入れてから数日ほどしか生存できなかったにもかかわらず、アメリカのモントレーベイ水族館では6か月もの展示に成功したのです。
アメリカの水族館で飼育に成功した理由とは
アメリカのモントレーベイ水族館が世界で唯一展示に成功したのでしょう。そこには他の水族館にはないような様々な工夫があったのです。ここからはなぜアメリカのモントレーベイ水族館が飼育に成功したのか紹介します。
まず水槽の製造から着手
最初にアメリカのモントレーベイ水族館が着手したのはホオジロザメが泳げるほどの十分な広さを持つ水槽の製造でした。高さが約10メートルもするような巨大な水槽により、ホオジロザメを含めた外洋にいるマグロなどの飼育も可能なったのです。
捕獲するサメの大きさ
捕獲する個体の大きさにも配慮しました。ホオジロザメは大きくなればなるほど捕獲も飼育も難しくなります。そのため、大きさを1.6m以下の個体に限定したのです。小さい個体に限定することで、エサの確保も容易になる上、泳ぐスペースも広くなるのです。
6か月後に海に放された
捕獲と飼育に成功しましたが、その6か月後には海に放されました。その理由は他のサメを傷つけたから、といわれています。
その後もホオジロザメの飼育を続け、多くのホオジロザメの展示を行ってきましたが、2011年以降ホオジロザメの飼育、捕獲を行うことは無くなりました。それから現在までホオジロザメを展示している水族館はありません。
日本では美ら海水族館が飼育を試みた
日本の沖縄県にある美ら海水族館をご存知でしょうか。美ら海水族館は沖縄県の中で最も大きな水族館で、観光客からはもちろん、地元民からも高い人気を誇る水族館です。そんな美ら海水族館ではかつてホオジロザメの飼育を行ったことがあります。ここからはそんな美ら海水族館がホオジロザメを飼育した結果などについて紹介します。
失敗に終わる
沖縄県の読谷村の定置網に偶然かかっていたホオジロザメを、美ら海水族館で展示し始めました。しかし、当時はホオジロザメの生態がほとんど分かっておらず、飼育記録もほとんどないことから、展示からわずか3日で死亡してしまいました。この残念な結果から当時は日本中が悲しみましたが、海外の反応は冷たいものでした。
絶滅危惧種をリスクに晒すなという海外の反応
ホオジロザメは絶滅危惧種です。そのため、海外からそんな絶滅の危機にある貴重な生態を金儲けのために殺すな、との批判の声が非常に多かったのです。世界中での飼育事例のほとんどが失敗だったので、日本の美ら海水族館での飼育が上手くいくはずがない、と思われるのも仕方がないことかもしれません。
ホオジロザメが見たいならツアーへ参加しよう
ホオジロザメは絶滅危惧種である上、飼育が非常に難しい生き物です。過去には日本の美ら海水族館をはじめ、海外の水族館で展示を試みてきましたが、そのほとんどが失敗しています。
そのため、今後水族館でホオジロザメが見られることはほとんどありません。本物のホオジロザメを見たいのであれば海外のツアーに参加してみましょう。運が良ければ見られるかもしれません。
他のサメについても興味がある人はこちらもチェック
人喰いザメで有名なホオジロザメですが、サメの種類は非常に多く人を襲うサメはホオジロザメだけではありません。そんな他のサメについて興味がある人はこちらの記事もチェックしてみてください。ホオジロザメ以外のサメの情報についてが具体的に掲載されています。是非参考にしてください。
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