ヒラタクワガタとは?
野生で80mmを超える大型のクワガタ
ヒラタクワガタはアジアの熱帯地域が原産とされるクワガタで、多数の亜種が存在します。日本国内のイキヒラタクワガタで80mm以上、海外では100mmを超える野生個体が確認される最大級のクワガタで、オオクワガタやコクワガタに近い種族に分類されています。
日本では12亜種 地域によって異なる特徴も
ヒラタクワガタの特徴としては、熱帯地域原産ゆえの湿度を好む傾向が強いこと。生息地も河川敷などの水気のある場所を好みます。また生息地によって大きさや個体数が異なり、日本国内の離島も含めて様々な特徴を持ち合わせた個性あるヒラタクワガタが12亜種生息しています。
本州の本土ヒラタだけを見ても、暖かい西日本は個体数もサイズも大きいですが、東日本ほど小さくて個体数が少なくなる傾向があります。
ヒラタクワガタの特徴
特徴1:湿度の多いところが好き
ヒラタクワガタの特徴は湿度を好みます。河川敷付近を生息地に選ぶ事もあり、意外なところで採集できたりします。
野生のヒラタクワガタを採集に樹木の多さは重要ではありません。「水源が近くにある」と言うのが成虫を採集する上での一つのポイントではないでしょうか。
特徴2:闘争心が強い
クワガタのオスの立派な大アゴは戦うための武器になります。必然的に闘争心は持ち合わせているのですが、ヒラタクワガタは別格で、温厚なオオクワガタとは正反対です。
大型なので挟む力も非常に強く、他の昆虫を両断することもできます。時にはメスをも攻撃してしまうのが玉にキズです。
特徴3:警戒心が強い
野生のヒラタクワガタのオスはあまり飛び回ったりせず、餌場の近くの陰になる場所でひっそりと過ごしています。人間が近づくと急いで陰になる場所に隠れてしまいます。
採集に行った際に中々見つからないのはこういう場所に潜んでいることが多いからなんです。木を見上げるよりも穴を探すのがポイントです。
特徴4:成虫での越冬が可能で長寿命
飼育環境が整えられ餌も豊富であればクワガタは結構長生きします。野生の場合は秋になると餌となる樹液が減ることで衰弱してしまうことが多いのです。ノコギリクワガタやミヤマクワガタの寿命が短いと言われる餌不足などが原因で、飼育環境で温度管理もしっかりしてあげると翌年まで寿命が延びたりします。
そんな中でヒラタクワガタは野生でも活動した年に越冬が可能です。飼育環境下でも成虫で2-3年は生きると言われる長寿命タイプのクワガタで、そういった意味では飼育や繁殖させ易いのではないでしょうか。
ヒラタクワガタの見分け方
オスの見分け方
オスに関しては大きな個体なら見分け方は簡単と言えます。大アゴの形がしっかりしているのであれば、それが見分け方として一番分かり易いからです。
ヒラタクワガタは大きくなっても大きな内歯が根元にあるのが特徴です。
しかし小型になるにつれてだんだんコクワガタっぽくなってきます。この場合の見分け方のコツは大アゴの太くて平べったい感じです。あと全体的に光沢が増すのも見分ける要素の一つとなります。
ちなみに極小サイズのオオクワガタは羽の部分にスジが入り始めます。大アゴの湾曲具合で判断するのも見分け方の一つです。
メスの見分け方
クワガタの見分け方で難しいのはメスの方でしょう。野生個体だとキズや汚れで更に見分けが付き難いことがあります。
ヒラタクワガタのメスは若干光沢があり、前足に湾曲しながら太くなっているのが特徴です。
オオクワガタは更に光沢があり、羽の部分のスジがハッキリしているのが特徴です。前足は太いですが直線的です。
コクワガタは光沢がほとんど無く、前足も直線的。胸の部分のくびれに関しても、途中から角度が付くような形で大きくくびれた印象です。
どうしても見分けられないときは詳しい人に
見分け方が分かっていても、野生個体は汚れていたりします。ましてや暗がりの中で見分けるのは困難でしょう。また個体差という物があり、実際にそれらを含めた見分け方というのは数をこなす事でしか習得できません。
上記の見分け方では当てはまらない珍種?と思いきや、それは放虫されたり逃げだした外来種クワガタだったということも。分からないときは一度持ち帰ってじっくり観察しましょう。他の人にも確認してもらい判断を仰ぐというのも見分け方の一つです。
ヒラタクワガタの採集 生息地
どのような場所が生息地になりえるのか?
ヒラタクワガタの生息地は北海道を除く日本全国の広い範囲になります。更に生息地を絞るのであれば幼虫と成虫が食べる餌となる「朽木」「樹液」を提供してくれる広葉樹林が必要となります。
小さな場所でも採集できる
成虫の形で採集したいのであれば、山林の様な大規模な生息地と言うのは必要ありません。成虫なら餌のある場所まで飛翔して移動できるわけなので、産卵場所と行き来できる範囲内で、条件さえ揃えば樹木1本でも生息地になるわけです。
ヒラタクワガタの採集方法 樹液採集
餌である樹液が無ければ生息地にならない
成虫にとって樹液は餌。その樹液に集まると言うのは当然の事です。
クヌギ・ナラなどのドングリの木はもちろんですが、河川敷周辺に生えているヤナギの木などもヒラタクワガタの好物です。
実際には隠れていることが多い
樹液の出ている木にヒラタクワガタが集まるわけですが、ヒラタクワガタは狭い場所を好むという特徴があります。木の洞や狭い隙間を確認するのがポイントです。
「樹液があるけど、隠れる場所がない」そういう場合は木の根もとの落ち葉などに隠れている場合があります。特に根元付近から樹液が出ているならその可能性は大きいです。
ヒラタクワガタで必要なのは隠れ場所を探ると言うこと。ピンセットやかき出し棒のほうが虫アミよりもはるかに役に立つのです。
ヒラタクワガタの採集方法 バナナトラップ
樹液が見つからないときはバナナトラップ
餌となる樹液が毎年同じ場所で出るとは限りません。出ている場所が高い場所にあったり見つからなかったりという事もあるでしょう。
そんなときはバナナトラップを使います。用は人工的な餌で誘き寄せる方法です。
バナナトラップはあくまで代替品
この方法はあくまで樹液の変わりでしかありません。樹液が出ている場所を見つけたら素直に樹液を利用した方が良い結果がでます。
またバナナトラップを仕掛ける上でストッキングやボトルを使用する場合がありますが、これらはゴミになるので必ず回収します。そもそもバナナトラップは虫たちが綺麗に食べてくれますので、木に直接塗ってしまえば面倒な回収作業など不要なのです。
ヒラタクワガタの採集方法 外灯採集
月明かりがない日は外灯を目指して飛ぶ
夜の虫のは紫外線を含んだ月明かりを目印にして飛びます。それが新月や曇り空になると外灯から出る紫外線を月と勘違いして外灯へと集まってしまいます。この習性を利用したのが外灯採集というわけです。
この方法は飛び回ることが多い虫に対して有効です。ノコギリクワガタやコクワガタなら比較的簡単に採集できるでしょう。ヒラタクワガタの場合はメスや小型のオスが対象になります。
最近増えつつLED照明は紫外線が少ない
従来の水銀灯や蛍光灯では虫が集まってしまいます。虫が集まることによる害というのもあるので、最近では紫外線の量が少ないLED照明が増えつつあります。
私もかつてヒラタクワガタのメスを外灯採集したポイントがあったのですが、LED化によってほとんど虫が集まらなくなりました。
ヒラタクワガタの採集方法 ライトトラップ
自力で光を灯す
山林では外灯がある場所の方が少ないでしょう。その様な場所で外灯採集と同じ事をしたいのであれば、自分でライトを用意します。これがライトトラップです。
非常に大掛かりで派手。おそらくテレビなどでライトトラップをやっている映像を見た方は覆い採集方法だと思います。
ライトトラップのメリット
ライトトラップのメリットはどこでも採集ポイントに出来ることです。自分で機材を持ち込み点灯した場所がそのまま採集ポイントになるわけです。また広い山に採集ポイントが存在していたり、ピンポイントで絞込みが出来ていない場合でも広範囲を照らすことで採集が可能になります。
ライトトラップのデメリット
逆にライトトラップのデメリットは大掛かりであること。電源であるバッテリーや発電機、光源である水銀灯やHIDを用意するコストがかかるのです。
またライトトラップを実施する場所の近くに民家・田畑・養蜂・畜養・果樹などの施設が無いことを確認しなければなりません。ライトトラップは山全体から様々な虫を誘き出します。ライトトラップで集まる虫の中には害虫も含まれているのです。
ヒラタクワガタの飼育と繁殖 成虫飼育
ヒラタクワガタのオスは凶暴 個別管理が必要
ヒラタクワガタのオスの大アゴは非常に力が強いです。他のクワガタやカブトムシをバラバラにするなど簡単に出来ます。
時にはメスに対しても攻撃を仕掛けてしまうこともあります。ペアで飼育するときは個別管理すると言うのが飼育する上でのポイントです。
餌は昆虫ゼリー
樹液を容易できない飼育環境では餌を人間が与えねばなりません。かつては果物などを与えていましたが、最近は昆虫ゼリーが主流となりました。
昆虫ゼリーの選び方としては、ヒラタクワガタのオスが食べ易いワイドカップ仕様の物がオススメ。また繁殖させることを考えているのであれば産卵前後の栄養補給として高タンパク質のゼリーを選ぶのがポイントです。
寿命を延ばすポイント 夏の温度管理
ヒラタクワガタの生息地は湿度が高い場所です。出来る限り生息地に近い環境を用意してあげましょう。
夏の時期に見られるヒラタクワガタですが、実際には温暖でありながらも涼しい場所を生息地として選んでいます。夏の虫だからと言って30℃以上の場所では寿命が縮みます。夏はせめて28℃以下の涼しい場所で飼育するのが寿命を延ばすポイントです。
寿命を延ばすポイント 冬の温度管理
冬の温度管理も寿命を伸ばすのには必要です。外国産ヒラタクワガタの場合は活動を停止しての越冬という概念がないので、冬の温度管理がないと死んでしまいます。
雪が降る地方のヒラタクワガタの場合はそこまでシビアにならなくても良いです。ほんの少しダンボールや発泡スチロールの箱で保温してやれば、寿命に影響なく活動を止めて越冬してくれるでしょう。反対に冬でも20℃以上の温度で管理したりすると、活動するだけ寿命が短くなると言われています。
また寒暖差が激しいと言うのも寿命に関わらずショック死することがあるので注意が必要です。
ヒラタクワガタの飼育と繁殖 ペアリング
オスに攻撃させないためのアゴ縛り
交尾・産卵へとつながらなければ繁殖は出来ません。攻撃性の強いヒラタクワガタの繁殖ではこのペアリングが一つのハードルではないでしょうか。
「オスがメスを挟まなければ大丈夫」という考えから行われているのがアゴ縛りです。オスの大アゴを結束バンドで固定して開かないようにします。暴れますのでオスの体をマスキングテープなどで床に貼り付けて固定するなどの補助を使った方が良いかも知れませんね。もちろん挟まれる可能性もあるので結束バンドの締め付け時は注意が必要です。
ストレスがかかるので手短に やり直しも可能
当然オスへ与えるストレスは相当な物。同居は5日前後までにして、それ以上は一度中断して結束バンドを外します。
繁殖させる上では産卵するメスが重要ですが、交尾したから必ず産卵するというわけではありません。幸いなことにヒラタクワガタは寿命が長い方で、春と秋の年2回は産卵の機会があります。それまでに交尾を成功させれば十分繁殖させていくことが可能です。焦って繁殖させようとすると大事な親虫を失う事にもつながります。
ヒラタクワガタの飼育と繁殖 産卵
ヒラタクワガタはマットがメイン 産卵木はアクセントで
クワガタの産卵に用いられる産卵木ですが、ヒラタクワガタはどちらかと言うとマットをメインに産むタイプ。ヒラタクワガタの産卵に向いた2次発酵系のマットを選びましょう。
では産卵木は使わないのか?というと、実際には使っている方は大勢居ます。この場合は産卵木に菌糸材やバクテリア材を使うことでメスの産卵意欲を向上させる目的で使われているのです。もちろん産卵木に産卵することもありますので、産卵僕を使用した場合はこちらの割り出しも必要です。
ヒラタクワガタの飼育と繁殖 幼虫飼育
幼虫にも温度管理と個別飼育を
幼虫が確保できればひとまず繁殖成功。ヒラタクワガタには菌糸ビンを使うことが可能。大きくさせたいなら菌糸ビンを選びますが、サナギになる時期に菌糸を嫌がることがあります。それに対して発酵マットを使う場合は素直に育ってくれることが多いようです。
温度が極端に高いと菌糸や発酵マットが劣化したりすることがあります。これに伴うガスなどにより幼虫が死亡するケースもあります。また病気が蔓延すると言う事もありますので、幼虫の温度管理と個別飼育はしっかりしましょう。
ヒラタクワガタが増えすぎてしまったら?
他の人に譲る
飼い切れなくなった場合は他に飼育できる人に譲りましょう。飼い方が難しい種類の場合はネットなどを活用して里親を探します。
野生に返すのは犬や猫を捨てるのと同じ。同じ様に見えるヒラタクワガタでも地域によって個体差があります。つまり元々の生息地が違うヒラタクワガタは外来種であり、そのヒラタクワガタを野に放つのは生態系の破壊を意味しているのです。
殺処分も検討する
どうしても里親が見つからない場合は殺処分を検討します。
非常に辛い選択ではありますが、野生では成虫は天敵に捕食される事も多々あります。つまり野生に返したとしても生きていける方が稀なのです。
ヒラタクワガタを標本にする
寿命や殺処分となったのであれば標本に
どんな形であれ飼育しているヒラタクワガタは必ず死を迎えます。供養の仕方は色々ですが、昆虫に関しては標本にすると言う方法があります。
通常の標本は箱に収納されるわけですが、更にその標本をレジンなどの樹脂を使った樹脂標本と言うのがあります。樹脂標本はキーホルダーなどの形で活用できます。
コバエやダニに注意!
家族から理解を得るために
ペットを飼うとやはりニオイとかが気になったりするわけですが、クワガタの場合はコバエやダニが発生します。しかしクワガタも虫なので殺虫剤は使えません。そうならないようにケースに対してディフェンスシートを挟むのが効果的です。
一度発生してしまった場合は発生原因となった場合は発生源を止めてから駆除します。餌に発生する「ショウジョウバエ」と、マットに発生する「キノコバエ」があります。ショウジョウバエなら誘引剤タイプが有効ですし、キノコバエはトリモチタイプの物で駆除ができます。
カビやキノコが生える
クワガタと菌は切っても切れない関係
クワガタとキノコなどの菌は密接な関係があります。そもそも昆虫マットの原料はシイタケ栽培の廃材を粉砕した物で、そこにはシイタケ菌が居ます。菌糸ビンもヒラタケを培養した物で、そのキノコは食用だったりします。
キノコが育つ環境はカビが育つ環境でもあります。しかしクワガタは独自に有益菌を保有しているとされ、クワガタにとって有害なカビが生えない環境を作ることができるのではないかと言われています。極端にカビが生えるのは何かがおかしいというサインなのかもしれません。
ヒラタクワガタのお値段は?
大きさ以外にも血統や産地で変動
かつてはオオクワガタが数百万単位で取引された時代もありましたが、現在は低価格化が進んでいます。では、安値で買えるのか?と言われると、そうでもありません。
現在は大きさ以外にも血統や産地でによるブランド価値によるところで価格が変動したりします。例えば「ホワイトアイ」「極太」の様な身体的特徴を持つ血統や、普段は中々流通しないような珍しい場所で採集された物等に高値が付いたりします。
本土ヒラタクワガタの場合ですと、70mm以上は1万円を超える高値で取引される事もあります。一方で60mm台になると3000~5000円と比較的安価な値段で購入することも可能です。
まとめ
ヒラタクワガタを魅力を知るために
かつては探しても見つからない珍しいクワガタだったヒラタクワガタ。力強さの象徴たるあの大アゴは今でも子ども達の憧れの的。飼育方法が確立された今では入手し易くなりました。ショップに行けば簡単に買え、飼育方法も分かったことでしっかり長生きさせることもできます。
メスしか採集できなくてもガッカリすることはありません。オスの姿は確かに魅力的ですが、繁殖させる上ではメスが重要でして、野生個体は高い確立で交尾済みで産卵が可能。メスが採集できたなら是非とも繁殖にチャレンジしてみてください。