クフ王のピラミッドで謎の空間発見
2017年11月に名古屋大学などの研究グループが「Nature」に論文を発表し、世界中で話題になったニュースがあります。それは「エジプトにあるクフ王のピラミッドで謎の巨大空洞を発見した」というものです。
一部の専門家らによると、今までの調査でピラミッドの内部にはたくさんの空間が発見されているため、今回の巨大空間は新発見ではないと言われていますが、世界中が騒めいたことは間違いありません。
論文が発表された「Nature」とは
論文が発表された「Nature」というものは、毎週木曜日に発行される、世界で権威のある学術雑誌の一つで、研究者や専門家を対象としています。雑誌の内容の大半が論文で構成されており、その他に解説記事やニュース、コラム、インタビューなどが掲載されています。
空洞が発見されたクフ王のピラミッドとは
そもそも空洞が発見されたクフ王のピラミッドとは、どういうものなのでしょうか。クフ王のピラミッドは、第4王朝2代目のファラオ(クフ王)が建てたもので、エジプトで一番大きいピラミッドとして有名です。
その大きさは、高さ146m(現在は138m)、基底部230m、後輩51.5度に及びます。
このピラミッドは紀元前2560年~2580年頃にかけて焼く20年の歳月を費やして建てられました。そして長い時を経て、1839年にイギリス軍人のハワード・ヴァイスによって発見されましたが、現在もなお未知の部分が多く調査が進められています。
観光地としても有名
クフ王のピラミッドは、エジプトのギザの三大ピラミッドとしても有名で、観光地となっています。日本からもツアーが組まれており、直行便の飛行機でエジプトのカイロへ向かい、そこからバスや地下鉄などの交通手段で観光することが可能です。
特にエジプトは冬季の11月から2月にかけては気温も過ごしやすく、砂嵐もないため世界中から観光客がクフ王のピラミッドを見に来ています。タイミングが合えば、ピラミッドの内部に入れるツアーも開催されています。
新しくピラミッドで発見した空洞の大きさは
今回、最新技術により発見された、ピラミッドの内部にある謎の巨大空洞。巨大と付くほどですが、その大きさは長さ30m以上に及ぶと言われており、全長47m、高さ8.5mもある大回廊に匹敵すると言われています。これは、航空機の胴体くらいの大きさで、現状、構造や内部詳細などはまだ未知のままです。
ピラミッドの空洞は科学的透視で発見された
今回発見されたピラミッドの謎の空洞は、最新技術である「ミューオングラフィック」という、宇宙から降り注ぐ素粒子であるミューオンを測定することにより発見しました。この技術は、レントゲン写真のようにピラミッドの内部を透視することが可能となります。
ミューオングラフィックにより謎の空間が発見された後、KEK(高エネルギー加速器研究機構)とCEA(フランス原子力・代替エネルギー庁)がそれぞれ独自に観測を行い、追加で確認が行われ、その調査結果がNatureなどで発表されました。
ピラミッドで発見された謎の空洞の正体とは
今回発表された、エジプトにあるクフ王のピラミッドで発見された謎の空洞の正体は、まだ明確に解明されておらず内部構造などは未知のままです。
何人もの専門家や研究者たちが仮設を立てや最新機器を導入しての調査を行っていますが、どれもまた明確な根拠が証明されておりません。ただ、これほどまでに大きな空洞であるなら、何かしらの重要な役割があったのではないかと言われております。
発見されたピラミッドの空洞は重量拡散のため?
今回見つかったピラミッドの謎の空洞は、大回路のすぐ側のため、玄室(棺を納める部屋)の可能性はゼロに等しいです。
その理由は、最新技術であるミューオングラフィックを用いて内部構造を確認したところ、石の密度が低くなっていることがわかり、重たいものを入れると床が抜ける可能性が非常に高いと発表されたからです。
そこで「重量拡散」のために、この謎の空洞が存在しているのではないかという仮説が立てられています。これも、明確な根拠はありませんが、エジプトで一番大きなピラミッドだからこその予想なのではないでしょうか。
重量拡散とは
重量拡散は、その名の通り重さを一か所に集中させないことを指しますので、ピラミッドいう重量拡散は、ピラミッドが重さで崩れないようにするための構造です。日本の建築でいう、耐震用構造や耐震補強を行ったようなものとイメージしていただいて問題ありません。
ピラミッドから発見された空洞の仮説
クフ王のピラミッドから発見された謎の空間は、重量拡散以外にもいろいろな仮説が立てられています。その中でも、多くの専門家が考える5つの仮設をご紹介します。
本物の王の間説
今回発見された謎の空洞は「本物の王の間」なのではないかという仮説です。
なぜ、真の王の間があるのではないかと言われたのかというと、古代エジプトのパピルス(紙の代わりになるもの)に「クフ王は知恵の神トト神の聖なる秘密の部屋を探し求めた。自らのピラミッドに同じものを作るために」という文字が残されていたからです。
これにより、すでに発見されている王の間とは別に、隠された場所に本物の王の間があるのではないかと言われています。
別の埋葬部屋説
次に言われている仮説は「別の埋葬部屋」なのではないかという説です。
これは、クフ王の親族ではないかと言われていましたが、先にも紹介した通り、構造が単純かつ石の密度が低くなっているため、重たいものを入れると床が抜ける可能性が非常に高いため、人ではなく、猫や鳥などのペットの埋葬部屋ではないかと考えられています。
第2の大回路
全長47m、高さ8.5mもある大回廊に匹敵する大きさということで、この謎の空洞は「第2の大回廊」ではないかともいわれています。この謎の空洞をスキャンされた写真で見てみると、実は大回廊にほぼ並行する形で斜めになっていることも第2の大回廊と言われるようになった理由です。
ただし、その場合は同じ内部構造になっているはずなので、壁に大回廊にあるような歴代の王の彫刻やレリーフが見つかるか否かによって、第2の大回廊説が正しかったのかどうかがわかります。
充填材置き場説
その他に「充填材置き場」だったのではないかという仮説もあります。クフ王のピラミッドを建設する際の、充填材や資材を一時的に保管する場所だったのではないのかという声も上がっています。
そのため、ピラミッドが完成してしまえば不要になり、ただの巨大な空間となって残ってしまった可能性もあります。
設計計画に関する仮説
そしてもう1つ言われている仮説が、「設計計画に関する」説です。ピラミッドを設計する際に、設計やに無駄があり、構造で余分な空間が出来上がってしまったのではないかという声も上がっています。
その理由は、巨大空洞が見つかった割に、関係がありそうなその他のものが一切見つかっていないため、本当にただの何もない空間だったのではという落胆の声も漏れていることは確かです。
空洞が発見されたピラミッドにある4つの部屋
クフ王のピラミッドで発見された謎の空洞以外に、現在発見されている空間があります。その空間は、それぞれ「地下の間」「重量軽減の間」「女王の間」「王の間」と呼ばれています。
地下の間
地下の間(SubterraneanChamber)と呼ばれる空間は、その名の通り、ピラミッドの地下部分で発見されています。この地下の間は、未完成のまま放置された状態で発見されており、現在もなお何のために存在している空間なのかは未知のままです。
重量軽減の間
この重量軽減の間は、王の間の上部に位置します。そのため、王の間の天井にかかる重みを拡散し、軽減するために存在する空間ではないかと言われています。
また、この重量軽減の間の最上部の壁には「クフ王の名前」と「統治17年目」という赤い文字が発見されており、この文字のおかげで今までクフ王の建造物であろうと推測されていたピラミッドが、クフ王の建造物であると明確になりました。
女王の間
今回、ミューオングラフィックを設置した場所でもある女王の間(王妃の間)は、大回路と上昇通路と呼ばれる道が交差する場所から平行に伸びる通路の先にある空間です。
この空間は縦に長く階段のような凹みがあるのが特徴です。女王の間と呼ばれていますが、女王のミイラが見つかった部屋ではなく、王の墓でなるなら王妃も埋葬されているはずだという安直な理由から、女王の間と呼ばれています。実際の用途はまだ未知のままです。
王の間
王の間は、ピラミッド内部の中央部分にある空間です。高さ5.8m、幅5.2m、奥行き10.5mほどの大きさの空間で、壁や天井には装飾が一切ない殺風景な空間です。
当初、空の棺が見つかったため、王のミイラが古代の盗賊に盗まれたか何かで紛失し、棺だけが残されているのではないかと言われています。
ただし、天井にはピラミッド建設時にできたと思わしきヒビがあり、下手に力を加えれば崩れる恐れが懸念されています。
そのため構造からしても王のミイラを安置する場所ではないという意見も出ており、現在も未知なるものの解明が進められています。
名古屋大学のチームが空洞解明に参加
今回、エジプトにあるクフ王のピラミッドで新しく謎の空洞を発見したとNatureに発表した国際研究チームにも参画する名古屋大学が、今後もクフ王のピラミッド調査に参加します。
もちろん、日本から参加するのは名古屋大学だけではありません。KEK(茨城県つくば市)も引き続き参加します。
今後のピラミッドの空洞調査は科学者で行う
今後のエジプトにあるクフ王のピラミッドにある謎の巨大空洞の調査は、今回発見した際に使用していたミューオングラフィック含めて、最新技術を導入して調査を進めるにあたり、科学者のみで行う予定と発表しています。
このミューオングラフィック技術は、世界の中でも日本はリードしているため、先にも紹介した名古屋大学と高エネルギー加速器研究機構、そしてフランスのCEAが主体となって最新技術で未知の解明を行います。
ピラミッドの巨大空洞の調査結果に今後も注目
クフ王のピラミッドで発見された謎の巨大空洞についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。今回発見された謎の空洞含め、エジプトのピラミッドはまだまだ未知の領域です。
今後、ミューオングラフィック以外の最新技術の導入も検討されているおり、科学の進化によりピラミッドの内部構造について発表されることを期待して待ちましょう。