「ニポポ」ってなに?
「ニポポ」とは、樺太方面に居住していたアイヌの言葉で「木の小さな子供」という意味です。アイヌの人たちにとって、「小人」や「子供」とは尊い妖精のような、望みを叶えてくれる「守り神」なのです。そんな願いが込められ、木彫りの人形「ニポポ」が作られました。
木彫りの人形に願いを込めて
「ニポポ」に願いごとをすると必ず叶えてくれると伝えられていて、猟師が山に狩りに出る前に『獲物が獲れますように』、猟師が海に船を出す前に『豊漁、無事に港に帰ってこれますように』と祈願し、成就されれば感謝を込めて「ニポポ」に美しい飾りをかけていたそうです。
木彫りのこけしにも似ている?!
写真を見比べてみてください。なんか似てませんか?津軽の伝統工芸「こけし」と網走の「ニポポ」、全体の形といい、顔の表情といい、この二つの木彫り人形が似ているのは、果たして偶然でしょうか?
「ニポポ」誕生秘話。
網走刑務所に由来
「ニポポ」の誕生は、樺太研究家の高山長兵衛さんが『地域振興に何かいいものはないか』と模索中に木偶「セワポロロ」の存在を知りました。その頃、郷土博物館長の米村喜男衛さんが『受刑者のために何かないか』と高山さんに相談したところ、『網走に木彫りの土産物を作ってみては』という案に賛同し、「ニポポ」が生まれました。
「セワポロロ」は頭にツノのようなものがあって、木の削りかけを首から下げて巻いている木彫りです。これをモチーフにして、受刑者が作りやすい形を模索している中、「こけし」のような形態にしてはどうか?という案が出て、「ニポポ」の原形ができたと言われています。だから「ニポポ」と「こけし」は似ているのですね。
「ニポポ」人形はどこで作られてる?
昭和29年より網走刑務所の受刑者がノミなどで彫って「ニポポ」を一体ずつ手作りしています。 高山さんの指導の元、彫刻家谷口百馬さんが「ニポポ」の原形を制作し、網走刑務所の受刑者に指導して、「ニポポ」の制作が始まり、現在までに至っています。
昔、網走刑務所に懲役刑12年以上の重罪犯罪者が収監された、という一説があります。特に無期懲役や重罪人、政治犯とされた囚人達は極寒の地、北海道に移送されました。また、刑を終えた後は北海道に定住してほしいとのお上の目論見もあったそうです。
刑務所に収監された囚人は、北海道の開拓に駆り出されました。特に有名なのが、1,300人が従事し、北見峠から網走までの約160キロ以上の道路工事を強要されました。それが現在の国道333号です。わずか1年間の短期工事で、死者は200人以上にのぼったそうです。
全てが世界にオンリーワンの「ニポポ」
この「ニポポ」は、ドヤ顔のように見えます。「ニポポ」はそれぞれ顔立ちが微妙に違っています。ハンドメイドの良さが「ニポポ」の特徴であり、味わいが出てますよね。オンリーワンの「ニポポ」っていいですよね!
「ニポポ」は作っている受刑者の気持ちがそのまま現れているかのようです。日々罪を償いながら前向きに生きようと微笑んでいるような表情の「ニポポ」に見えたり、後悔し懺悔する気持ちそのままの泣いているような「ニポポ」に見える気がします。 「ニポポ」の表情を通して、受刑者の改心が伝わってくるようです。
「ニポポ」はどこで売っているの?
「ニポポ」は、市内の観光お土産屋さんや「博物館 網走監獄」内ミュージアムショップ、道の駅「道の駅流氷街道網走」で販売されています。網走市の「守り神」なので、すぐに見つけられると思います。お気に入りの「ニポポ」を見つけてみましょう!
網走は「ニポポ」だらけ?
さまざまな「ニポポ」に出会えます。駅前の街灯のデザインに「ニポポ」が採用されています。「ニポポ」公衆電話ボックスは刑務所前にあったのですが、時代の流れで撤去されてしまいました…橋のフェンスにも「ニポポ」が!それにしても、いろいろな「ニポポ」がありますね。まさに網走そのものといったところでしょうか。
微笑みを浮かべているように見える「ニポポ」像です。網走海鮮市場の敷地内にあります。世界最大のそびえ立つ「ニポポ」像は、なんと全長10m以上もあります。並んでいる人と比べても見上げる高さです!
写真右側はイナウ人形と言います。海鮮市場の巨大「ニポポ」像の横にイナウ人形像があります。アイヌ信仰の祭祀用具イナウを作る削り掛けという技法を使って作られる人形です。人形に祭祀用具の名前がそのまま使われているのですね。基本的には、男女一対の白木彫りのものが多いそうです。
こちらがイナウ人形像です。かなり年季が入っていますね。左側の男の像の足元は、劣化で足元が不安定になったのでしょう、セメントで補強されています。アイヌでは、神に祈りを捧げるのは男の役割だったそうです。
そもそもアイヌって?
アイヌの人たちは、動物、物、火、自然といった森羅万象すべてにカムイ(アイヌ語で神威)が宿っていると信じ、祈りを捧げてきました。また、自分たちの文化を「ユーカラ」という口承のみで受け継ぎ今に至っています。こういった文化を持つ民族は世界でも珍しいことなのです。
オホーツク流氷館側の天都山展望台にある「ニポポ」像です。像全体の木目は、茶色のラッカースプレーで描いているように見えます。世界で一番高いところにある「ニポポ」と言われています。網走にしかないので当たり前ですが…
網走川の河川敷にある「ニポポ」像です。人や車、街の安全を見守ってくれているのでしょうか。思わず手を合わせたくなります。やはり「ニポポ」には不思議な力があるのかもしれません。
網走刑務所の敷地内を渡るように網走川が流れています。川の流れに沿った堤防フェンスは木の支柱なのですが、この支柱が335箇所あって、全てが木彫りの「ニポポ」なのです!
こちらは網走監獄の「ニポポの女神」です。波のような木目は、手描きみたいです。木彫りですから木目は必須なのでしょう。胴体部がギュッとコンパクトなっていて、可愛いですよね。この「ニポポ」像は、2012年頃に補修されてキレイに蘇ったんですよ。
ホテルにも「ニポポ」?
網走セントラルホテルでは、宿泊客の道中の無事を願い、安心・安全に宿泊していただけるようにと、部屋の鍵に「ニポポ」キーホルダーがついています。観光で訪れて、こういうさりげないサービスがうれしいです。
お土産も「ニポポ」!
「ニポポ」キーホルダーなら気軽に持ち歩けますよね。財布やスマートフォンに付けてもいいです。思い立った時に「ニポポ」に願い事をお願いしたり、自分や大切な人の無事を「ニポポ」に願ったりするのもいいですよね。
全て金属でできた「ニポポ」キーホルダーです。裏面に彫られている「オホーツク・網走」の文字も渋いですよね。「ニポポ」ストラップも販売されています。この他に「ふうせんうお」ストラップ、「クリオネ」キーホルダーもあります。お土産屋さんでいろいろ見てみるのも楽しいですよ。
「ニポポ」のはし置きもあるんです。木彫りではない磁器製「ニポポ」がまたいいですよね。ほっこりとさせてくれます。色違い「ニポポ」が7個入りで販売されています。お土産に喜ばれますよ!
食べられる「ニポポ」?
こちらは「ニポポ」を形どったホタテのかまぼこ「あばしり蒲鉾 ほたてニポポ」とチーズ入りホタテ。パッケージの笑顔の「ニポポ」が可愛いです。お酒のおつまみにいいですよね〜止まらなくなりそうです。
写真は、本田菓子舗さん製「ニポポもなか」です。「網走銘菓」なんていい響きしょうか。食べずにはいられません。アンコ好きの方にオススメです。この他に「ニポポ人形焼」を製造販売しているお店もあります。
無印良品の「ニポポ」?
「ニポポ」は、無印良品の2018「福缶」にも採用されています。だるまや招き猫と同じく、日本の縁起物として日本中に伝わればいいですよね。
2018年は無印良品とコラボされたものの、網走だけの限定民芸品なので、通年は網走市内でしか販売されていません。ぜひ網走でゲットしましょう!
網走ご当地ゆるキャラ「ニポネ」
「ニポポ人形」と流氷の天使「クリオネ」が合体したご当地ゆるキャラです。網走をアピールすべく、忙しく全国各地をまわっています。写真の場所は、サンゴ草(アッケシソウ)で有名な能取湖です。4月中 〜 10月中旬は潮干狩りができるよう開放されています。
網走を観光してニポポを見つけてみよう!
「ニポポ」は網走市のカントリーサインにも登録されているんです。バックに流氷が描かれています。流氷とともに網走のシンボルになっているのですね。ここにも「ニポポ」と網走の強い絆が感じられます。網走を観光する時に、ドライブしながら街中の「ニポポ」を探して、旅行をするのもいい思い出になるのではないでしょうか。