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カタクリの花とは?開花までに7年かかる山の妖精の魅力に迫る!

まだ他の草花が眠っている早春に、里山を彩るカタクリの花は「春の妖精」と呼ばれ登山愛好者に親しまれています。一年のほとんどを地中で過ごす様はどこか神秘的ですよね。 そんなカタクリの花の特徴と、見ることのできるスポット、育て方を紹介します。
2020年8月27日
m.miura
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カタクリの花はどんな植物?基本情報を知ろう

早春のまだ寒さの残る季節に、ピンク色の可憐な花が下向きに咲く花、カタクリ。 地上に姿を現したかと思ったら、ひと月と待たずに枯れ果ててしまいまい、次の春まで地中で眠って過ごします。その様子から「春のプリマは眠り姫」と形容されたことも。 「春の妖精」としてファンも多い、カタクリの花の育て方や特徴を紹介します。

カタクリの花 基本情報

・属名:ユリ科カタクリ属 ・学名:Erythronium japonicum ・原産国:日本、朝鮮半島、サハリン ・古語:堅香子(かたかご) 日本原産のものは薄い紫色をした1種類しかありませんが、世界には白や黄色など20種類の品種があります。 北海道と本州に多く分布していますが九州にも群生地があります。

開花までに7年掛かるカタクリの生活史

カタクリの花はほとんどの季節を土の中で過ごします。 種子が発芽して、開花までに7年もの月日をひっそり土の中で耐える姿はひたむきな乙女のようだ、とファンも多いのです。 カタクリを形容した歌も花言葉も、そんな乙女の様子を表しています。 開花までのカタクリの生活史を辿ってみましょう。

発芽一年目

発芽し一年目の春、カタクリは細い、松葉のような葉を伸ばします。長さは5cmから10cm満たないくらいです。 一年目は頼りない葉で光合成を行います。

7~8年は地中で養分を蓄える

発芽して2年目以降は楕円形の葉一枚だけで過ごします。 カタクリは早春のわずが2ヶ月くらいしか地上に姿を現しません。この一枚の葉も2ヶ月のわずかな間に懸命に光合成を行います。 そうして少しずつ球根に養分を蓄えて、開花の時を待ちます。

3月下旬に葉を伸ばし、開花する

カタクリの花は3月下旬、雪が消える季節を待って二枚目の葉を伸ばします。葉を落とした木々の間から光を独占し、葉を大きく広げるのです。 やがて10cmほどの花茎を伸ばし、薄紫からピンク色の花をひとつ咲かせます。 種子から開花まで7、8年かかりました。ここからは株の大きさにもよりますが、毎年花を咲かせることができます。

カタクリの花が「春の妖精」と言われるわけは?

カタクリは早春の里山をにぎやかに彩ってくれる花です。しかし本格的な春の訪れには葉も黄色く枯れ果てて、6月には地上から姿を消してしまいます。 このように早春の短い期間だけ姿を現す草花を「春の妖精」と言います。 春の妖精(スプリング・エフェメラル)とは春に花を咲かせた後、あとは地下で過ごす草花のことをいいます。

その他の「春の妖精」たち

里山や落葉広葉樹林にはカタクリの花と同じように、早春にのみ姿を現す春の妖精がいくつか存在します。 せっかくなので紹介しましょう。 ・ニチリンソウ ・フクジュソウ ・ショウジョウバカマ どれも小柄な草花ですが、大きくて華やかな花を咲かせます。 ぜひ春の妖精たちに会いに里山へ出かけてみましょう。


カタクリの花は虫媒花

「春の妖精」と呼ばれる植物は、虫の助けを借りて受粉を行う虫媒花(ちゅうばいか)です。虫の気を引くために花が大きく華やかで、香りが強いものが多いのです。 実際にカタクリも花が大きく目立っていますね。

アリによって種が運ばれる

カタクリの花の種子はアリが好むエライオソームという脂肪酸や炭水化物を多く含んだ物質が付いています。 アリはこの物質に誘引され、種子を巣まで運び、周囲にある好物を取り除きます。 残った種子は巣の外にちゃんと排出します。こうして種子が散布されていくのです。

カタクリの花の見頃は、群生地はどこ?

雪解けの里山で、昔はよく見られたというカタクリの花。カタクリの花はブナ林などの落葉樹林の根元を好んで生息しています。 しかし乱獲や土地開発、里山の荒廃により生息地を奪われ、カタクリの花は減少しています。 今では絶滅危惧種となりレッドリストに載っています。各地で自然保護区として植生地を整備し、守られています。

奥多摩の御前山

東京都の奥多摩三山では数カ所でカタクリの花を見ることができますが、最も人気があるのが御前山です。 カタクリの花が見頃を迎えるのは4月下旬から5月上旬にかけてで、登山愛好者からは一年で最も御前山が美しい季節、とも言われています。この季節は新緑の時期とも重なり気持ちよく歩けるでしょう。 御前山は中級者向けのそこそこハードな山ですので、しっかりと準備をして行きましょう。

岐阜県 鳩吹山

岐阜県可児市にある鳩吹山(はとぶきやま)には遊歩道が整備され、シーズンになるとカタクリ目当てに観光客で賑わいます。 見頃は3月下旬から4月上旬まで。この時期には「カタクリ祭り」も開催されています。

カタクリの花はレッドリストに載っている

カタクリの花は乱獲や開発などで少なくなっています。今では大切に保護しなければ絶滅の怖れがある植物になってしまいました。 ひたむきに咲くカタクリの花に間近で触れられる場所もありますが、優しく見守ってあげたいですね。 ・絶滅危惧IA-高知県 ・絶滅危惧IB-神奈川県 ・絶滅危惧Ⅱ-東京都,奈良県,愛媛件,熊本県・・・他

カタクリの花言葉

カタクリの花はうつむき加減に咲く姿が印象的ですよね。ずっと土の中で過ごすひたむきさや、けなげさにファンも多いです。 そんなカタクリにつけられた花言葉も切なくなるようなものばかりです。ぜひカタクリの花言葉が持つ詩の世界に触れてみてください。

花言葉①「初恋」

花言葉は「初恋」。うつむいて咲く姿は自分の気持ちをうまく伝えられない乙女のようです。恥じらう気持ちと初恋の切なさを表しています。 7、8年かかってやっと見た春の陽光に恋心を抱いたのかもしれませんね。

花言葉②「寂しさに耐える」


まだ早春の、他の草花が咲かない季節に咲く、カタクリの花。その様子を表した花言葉が「寂しさに耐える」です。 長い間土の中で過ごすことも、「耐える」に様子にピッタリだったのかもしれません。

カタクリの花の育て方

カタクリの花の栽培は難しい植物です。毎年咲かせるには葉を出している3月頃にしっかりと生育し、球根を十分に太らせる必要があります。 一般的に種は市販されておらず、手に入っても咲かせるのに7、8年掛かります。 そのため球根での栽培をオススメします。 ここではカタクリの育て方を紹介します。

育て方①植え付け時期は

カタクリの花の植え付けは、休眠期に当たる7月から9月頃に行います。 球根が乾燥すると根はりが悪くなり、開花もしづらいので、遅くなりすぎないようにしましょう。 球根が傷つくとカビが発生するおそれがあるため、前の年の球根が残っていてもそのまま植え付けます。 鉢で育てる場合はなるべく深い鉢を選びます。球根は年を重ねる毎に深く深く潜っていく性質があるためです。

育て方②日当たりは

土の温度が上がりすぎないように管理する必要があります。 落葉樹の下に自生していることが多いので、日光が当たるような場所よりも木陰になっている環境が良いでしょう。 地植えで育てる場合、最初に植える場所の日当たりが最も大切です。 できるだけカタクリが自生している環境に近くなるように地温の上がりにくい場所が好ましいです。 落葉樹の下が理想的ですが、なければ木陰に植え寒くなる前にワラなどでマルチングしてあげると良いでしょう。

育て方③土作りと肥料

カタクリは生育期間が短く根もやや少ない植物ですので普段の育成では多くの肥料を必要とはしません。 腐葉土2:軽石4:赤玉土4の割合で混ぜた土に、緩効性の根を傷めない化成肥料を合わせます。 11月から12月に根が生長するので緩効性肥料を与えます。液肥なら2週間に一回、緩効性肥料なら2ヶ月に一回くらいが適当でしょう。

育て方④水やりは小まめに

カタクリの花は湿り気味の土を好み、乾燥に非常に弱いです。 特に鉢植えの場合、土がすぐに乾いてしまうので注意が必要です。土がひどく乾燥しますと弱ってしまいます。特に3月頃から光合成を盛んに行う季節です。土は常に湿り気を保つようにしましょう。

カタクリの花の病害 ナメクジとさび病

大切に育てているカタクリには大敵が主にふたつあります。 ナメクジとさび病です。 どれも致命的になる可能性が高いため、適切な殺虫剤、殺菌剤を使用して対策をしましょう。

ナメクジの食害に注意

カタクリを育てていて、最も注意したいのがナメクジの食害です。 カタクリは開花する時期を除いてたった一枚の葉で懸命に光合成を行います。この一枚の葉を食い尽くされてしまうと、球根の成熟がままならず、最悪枯れてしまうことも・・・。 ナメクジ専用の殺虫剤をあらかじめ周囲に散布するなど対策をし、見付けたら駆除するようにしましょう。

さび病になることも

カタクリはさび病にしばしば感染することがあります。 さび病になりやすい原因は肥料切れ・肥料のやり過ぎや加湿、日光不足などが挙げられます。 時期は2月、3月頃の葉が伸び始める時期です。さび病になってしまった葉は残念ですが処分します。こうすることで確実に防除できます。

カタクリの花 育てやすい品種


日本原産のカタクリの花は、暑さに耐性が低く、急な環境の変化で株が弱るなど、栽培が難しい分類に入ります。 そこで海外原産のカタクリの花を育ててみるのはいかがでしょうか? 赤紫だけでなく、黄色や白といったバリエーションも楽しいですよ。

エリスロニウム”パゴダ”

暖かい地方でも育てやすい強健な品種です。球根も入手しやすく、増えやすいため最も初心者向きといわれています。 「キバナカタクリ」「セイヨウカタクリ」の名称で販売されていることもあります。 原産地は北アメリカ。

エリスロニウム・デンスカニス

ヨーロッパが原産の西洋カタクリのひとつ。赤みが強く、葉に白や褐色の紋が入ります。 園芸品種が多く、白い花のスノーフレーク、ピンクの花のピンク・パーフェクションなど多彩です。

【コラム】片栗粉はもともとカタクリの花から作られていた

カタクリはその名の通り、片栗粉が取れる植物として重宝されていました。球根に良質のデンプンを含んでいます。

幕府の献上品にもなっていた高級品

片栗粉はカタクリの球根を精製して作られます。明治時代までは本物のカタクリから片栗粉が作られていました。 小さな球根から取れる量はわずかであるため、江戸時代には献上品として幕府に納められていた高級品です。

滋養用として販売されている

粒子がジャガイモの片栗粉よりも細かいため消化が良く、滋養用として病後に飲んでいたと言われています。 また解毒作用があり嘔吐や胃腸炎にも薬としても使用されていた歴史があります。 今でも薬局に行くと滋養用として販売されています。

早春の妖精カタクリを楽しもう

カタクリは他の植物に先駆けて里山を彩る可憐な花です。うつむきがちな花姿は乙女のようで、花言葉や様々な歌で例えられてきました。 ぜひ春の季節を告げる妖精に会いに行ってみてください。