山のベストシーズンとは
山の特徴により変わる
山のベストシーズンは紅葉が美しい山なら秋、新緑と高山植物なら春〜夏、雪景色が素晴らしい山なら冬というように、その山の特徴と魅力により変わります。ですが、混雑を嫌い静かに登山を楽しみたい方にとってはオフシーズンが逆にベストシーズンなのかも知れません。
槍ヶ岳のベストシーズンは多彩
北アルプスの槍ヶ岳のベストシーズンは一般的には初夏から9月頃までと言われていますが、槍ヶ岳には岩壁や展望パノラマだけでなく多彩な姿があるので、ベストシーズンも多岐に渡ります。
今回は登山者が憧れる槍ヶ岳に焦点を絞って、槍ヶ岳の特徴と魅力やそのベストシーズンなどを詳しくガイドし、合わせて人気の登山・縦走ルートや初心者でもトライできるおすすめの日帰りルートと注意点などを紹介します。
槍ヶ岳の特徴・魅力とベストシーズン
①槍ヶ岳の形状の特徴
槍ヶ岳は北アルプス(日高山脈)の南に位置し、標高3180mを誇る日本で5番目に高い名峰です。まるで槍を天に向かって高々と突き上げているような、特徴的な頂上の形状から日本のマッターホルンとも呼ばれています。
槍ヶ岳の勇ましく荒々しい姿は優雅で美しい形状の富士山とは対照的ですが、この2座で日本の山の人気を2分しています。しかし槍ヶ岳の真の特徴と魅力は外見ではなく登ってみて初めてわかるのではないでしょうか。
②槍ヶ岳の魅力とベストシーズン
槍ヶ岳は山頂付近の荒々しい姿とそこから望める北アルプスの大パノラマや、高山植物が咲き乱れる稜線に秋の紅葉など、さまざまな魅力を持っています。そのため槍ヶ岳のベストシーズンは登山者の目的により多岐に渡ると言えるでしょう。高山植物が目的なら7月下旬から8月、槍沢付近のナナカマドの紅葉を見るなら9月〜10初旬が見頃なのでその時期がベストシーズンになります。
山頂岩壁のベストシーズン
槍ヶ岳山頂付近の岩壁はロッククライマーの憧れの場所とされています。登りやすいのは7〜8月かも知れませんが、ロッククライマーにはそれぞれ克服したい季節や状況があり、登りやすさより達成感を重視するのであればベストシーズンはクライマー次第と言えるでしょう。
槍ヶ岳で最もポピュラーな登山ルート
上高地発着・槍ヶ岳ピストン槍沢ルート2泊3日
ルート情報
- 合計歩行距離:42.1km
- 標高差(上り):1874m/累積標高(下り):1866m
- 行程日数:2泊3日/コースタイム(目安):約22時間
- 体力レベル:8(10段階)/技術難易度:8(10段階)
- 必要技術:岩場、雪渓を安定して通過できる/地図読みができる
上高地をスタートし槍ヶ岳山頂を極め、同じコースを下山して上高地に戻る2泊3日の最もポピュラーなルートです。難易度は中級者以上と高いので登山靴や服装・装備はしっかりしましょう。
【1日目】上高地→横尾→槍沢ロッジ(泊)
上高地から槍沢ロッジまでは、距離はありますが高低差が少ないのでハイキング気分で楽に登れます。2日目の本格的登山に備え、1日目はできるだけ体力を温存しましょう。
上高地から梓川沿いの整備された平坦なコースを上流に進み、横尾の分岐を右に取り少しづつ高度を上げます。一ノ俣の木道を渡り少し登ると1日目の宿泊地・槍沢ロッジに到着します。
【2日目】槍沢ロッジ→天狗原分岐→槍ヶ岳山頂→槍ヶ岳山荘(泊)
2日目は山頂まで1300m以上の標高差を登り岩場も多いので、靴や装備の点検・準備を怠らずに槍沢ロッジを出発しましょう。大曲の雪渓あたりより傾斜がきつくなり、天狗原分岐からつづら折りを登るとハイマツ地帯に入り槍ヶ岳山頂が眼前に迫ってきます。ガレ場を登りきると槍ヶ岳山荘に到着しますので、そこで休憩と宿泊予約を取りましょう。
槍ヶ岳山頂アタック
休憩後に再度靴などの点検をして、いよいよ山頂アタック開始です。荷物は山荘に預け必要な装備を身につけて出発しましょう。往復約1時間の行程ですがクサリやハシゴの難所が連続するので慎重に登ってください。山頂は槍のように鋭角で狭いですが360°の大パノラマは圧巻です。雲海と3180mの眺望を堪能し槍ヶ岳山荘に戻り宿泊します。
【3日目】槍ヶ岳山荘→下山→上高地
3日目は槍ヶ岳山荘から往路と同じルートで上高地に下山します。下山途中は気の緩みや蓄積した疲労などで滑落事故が多いので、山荘でしっかり疲れを癒し注意して下山してください。
登山者の憧れ北アルプス縦走ルート
表銀座縦走コース3泊4日
- ルート情報
- 合計歩行距離:41.64km
- 最低点標高:1455m/最高点標高:3088m
- 行程日数:3泊4日/コースタイム(目安)約26時間
- 体力レベル:10(10段階)/技術難易度:8(10段階)
- 必要技術:岩場、雪渓を安定して通過できる/地図読みができる
表銀座縦走コースは、中坊温泉〜燕岳〜大天井岳〜西岳〜槍ヶ岳まで2500m〜3000m級の尾根を縦走し北アルプスの大パノラマとスリルを堪能する登山者憧れのルートです。歩行距離も長く時間と体力が要る3泊4日の難易度が高いコースですが、それだけに達成感もひとしおです。
【1日目】中坊温泉→燕岳・燕山荘(泊)
中坊温泉から燕山荘までの登山道は、北アルプスの三大急登の一つで体力は要りますが危険度はさほどなく休憩を入れながら時間をかけて登れば大丈夫です。燕山荘でから片道約30分で標高2763mの燕岳(つばくろだけ)山頂に到達します。宿泊先の燕山荘に引き返し1日目の終了です。
【2日目】燕山荘→大天井ヒュッテ→西岳・西岳ヒュッテ
燕山荘を出発しハイマツの穏やかな稜線をしばらく進むと大天井岳(標高2922m)が見えてきます。この辺りからクサリとハシゴが必要な難所が現れ、大天井岳の中腹をトラバースして進むと大天井ヒュッテに着きます。
休憩後、稜線の左側の林を抜けビックリ平からなだらかな稜線を歩き赤岩岳(標高2769m)の山頂を回り込むように進むと宿泊地ヒュッテ西岳に到着です。
【3日目】西岳ヒュッテ→槍ヶ岳・槍ヶ岳山荘
ヒュッテ西岳を出発し水俣乗越までは急な下り坂になり、浮石や痩せた稜線に注意して進みましょう。再び登りに転じハシゴの連続を登り切るとヒュッテ大槍に到着します。ここから約40分岩場を登ると槍ヶ岳山荘です。ここで休憩と心身の準備を整え槍ヶ岳山頂にアタック、登頂後は槍ヶ岳山荘に戻り3日目の終了です。
【4日目】槍ヶ岳山荘→下山
4日目の下山ルートは槍沢コースでアクセスがよい上高地に抜けるか、飛騨沢コースで新穂高温泉方面に下山して温泉に浸かり疲れを癒してから帰路につくこともできます。
初心者向け槍ヶ岳日帰り登山ルート
日帰り飛騨沢コース
飛騨沢コースは危険箇所が少ないので、初心者でも日帰り登山が可能と言われています。しかし3000mを超える槍ヶ岳に挑戦するのなら、初心者といえども足や体力に自信があり、練習や準備を積んでからにするのが得策です。また、安全を考えるなら途中で1泊することをおすすめします。
コース情報
新穂高温泉を出発し、奥穂高岳登山口から登りやすい斜度の登山道を登ります。標高2000mを超える樽平からは見晴らしがよくなりますが斜度が増してきます。千丈沢乗越からガレ場をジグザグに登坂し、槍ヶ岳山荘で休憩の後に山頂をアタックして下山する日帰りコースです。
危険な箇所が少ないとはいえ距離は26.5kmあるので初心者でなくとも日帰りはヘトヘトになります。休憩を何度も挟みながら無理をせず登りましょう。
日帰り登山の注意点
高山トレーニングの練習経験が少ない初心者が最も注意しなければならないのは高山病です。日帰り登山は短時間で酸素が薄い標高3000mまで到達するので高山病のリスクが非常に高まります。
高山病は命の危険に関わるので、めまいや吐き気の症状が少しでも出たらすぐ登山を中止して下山してください。また日帰といって軽装や運動靴などでの登山は絶対やめましょう。
憧れの北アルプスを極めよう!
槍ヶ岳は独特の形状で登山者の心を虜にする北アルプス憧れの名峰です。ここまで槍ヶ岳のベストシーズンに特徴と魅力、人気の登山ルートや初心者でもトライできるコースなどをガイドしてきました。これらを参考にして憧れの北アルプス槍ヶ岳を極めてください。
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出典:photo-ac.com