涸沢カールは氷河が円形に削った地形
涸沢カールとは文字どおり涸れた沢にある「カール(圏谷)」のことをいい、氷河地形の一部を指しています。約1万年前に、氷河によって岩盤が浸食された窪地状の地形です。
国内でカールは十数か所が確認されていますが、眼前に3,000メートル級の穂高連峰がそびえる涸沢カールは、日本屈指の圧巻の氷河地形といえるでしょう。
登山初心者は涸沢カールを目指そう!
穂高連峰の拠である涸沢カールは、体力がある初心者であれば到達できますが、切り立った稜線が続く穂高連峰は難易度が高いといわれています。初心者は決して無理をせず、涸沢カールで引き返すだけにしましょう。
技術が伴えば初心者もやがて上級者になり、涸沢カールだけではなく穂高連峰に登れる機会が訪れるはず。初心者は焦らず美しい景色を心に刻み、その日を待つのもよいものです。
涸沢カールは「上高地」から始まる
上高地は涸沢カールの登山口
涸沢カールが拠点の穂高連峰の登山口は、長野県松本市の標高1,500メートル地点の「上高地」となります。
上高地は北アルプス南部を流れる梓川の上流部の谷間に位置し、大正池から横尾に至る約10キロメートル・幅約1キロメートルの平野を指しています。火山の噴出物で梓川がせき止められて生まれた池に、土砂が堆積したといわれているスポットです。
観光名所にもなっている「河童橋」
標高の高い場所でこれだけの規模の平地があることは、日本ではとても珍しいといわれています。そのためもあり一帯は、中部山岳国立公園の一部かつ国の特別名勝・特別天然記念物にも指定されているのです。
代表的な観光スポットは、上高地バスターミナルから約5分で到着する梓川に架かる木製の「河童橋」です。多くの観光客も訪れる、穂高連峰の美しい姿が眺められるスポットとなります。
登山口「上高地」へのアクセス
マイカーでのアクセス方法
長野県と岐阜県からのマイカーでの方法は、いずれも途中の駐車場までとなります。上高地のマイカー利用は、″釜トンネル″から年間で通行規制が入っているため、各駐車場からシャトルバスかタクシーを利用して上高地へアクセスしてください。
長野県松本市方面の駐車場は「沢渡(さわんど)駐車場」となり、1日700円が掛かります。岐阜県高山市方面の駐車場は「平湯あかんだな駐車場」となり、1日600円です。
シャトルバスの乗車時間・運賃
長野県松本市方面の「沢渡駐車場」発のシャトルバスはアルピコ交通が30分間隔で運行しており、乗車時間は約30分、運賃は大人片道1,300円(往復割引運賃2,400円)です。
岐阜県高山方面の「平湯あかんだな駐車場」発のシャトルバスは濃飛バスが30分間隔で運行しており、乗車時間は約30分、運賃は大人片道1,180円(往復割引運賃2,090円)となります。しかし紅葉時期は混雑するため、早めの行動がおすすめです。
電車でのアクセス方法
電車でアクセスする方法は「東京・新宿発」「名古屋発」「大阪・京都発」があり、それぞれ電車またはバスが利用できます。
「大阪・京都発」以外は、松本駅か松本バスターミナルで下車します。路線バスまたは松本電鉄で上高地バスターミナルへアクセスできますが、乗り換えなしで行けるのは路線バスとなります。松本電鉄は「新島々駅」で路線バスに乗り換えて「上高地バスターミナル」到着です。いくつかの方法があるので注意してください。
直通バスでのアクセス方法
上高地までの一番楽な方法は直通バスですが、トップシーズンは混むため早めの予約がおすすめです。翌朝到着の夜行バスもあるため、時間の短縮になります。
関東方面からは「アルピコ高速バス」・「さわやか信州号」「毎日企画サービス」「毎日あるぺん号」が運行しており、新宿バスターミナル・東京八重洲南口・渋谷などからの乗車です。名古屋発と大阪・京都発も予約制の直通バスが運行しているので、チェックしておきましょう。
初心者もOKの涸沢カールの登山概略
涸沢カールのコース概略
涸沢カールの片道の歩行時間は約6時間掛かるため、初心者だけではなく中級者以上の場合でも涸沢ヒュッテに宿泊するかテント泊がベストです。もしくは中間の宿泊場所で山小屋泊りかテント泊する人がほとんどとなります。
コースの大まかな目安として、4つある中継地点「明神橋」「徳沢」「横尾」「本谷橋」をチェックしておきましょう。コースの歩きやすさは、横尾までは歩きやすい林道でそれ以降は岩場のある本格的な登山道となります。
涸沢カールの時間配分
涸沢カールまでの距離は約15キロメートル・片道歩行時間は約6時間(休憩なし)といわれています。初心者は4つの中継地点「明神橋」「徳沢」「横尾」「本谷橋」で休憩しながら涸沢カールを目指しましょう。
上高地バスターミナルから中間の横尾までは約3時間で、細かい時間配分は次のようになります。上高地バスターミナル(約1時間)→明神(約1時間)→徳沢(約1時間)→横尾(約1時間)→本谷橋(約2時間)→涸沢カール
初心者もOKの涸沢カールの登山コース
上高地バスターミナル~明神橋~徳沢
上高地バスターミナルから明神橋までは約1時間となり、梓川の左岸ルートと右岸ルートの2ルートあります。初心者のおすすめは距離が少しだけ短い左岸ルートですが、右岸ルートで明神池や岳沢湿原も観る人もいます。
明神橋から橋の右手にある食堂右横の登山口から入り、少し歩くと右手に徳本峠(とくごうとうげ)への登山口があります。登山口はやり過ごし、初心者には長く感じられる道を進むと1時間ほどで徳沢に到着です。
徳沢~横尾
山小屋とテント場がある徳沢から横尾までは、左側に時々見える美しい梓川も楽しみながら進み、初心者も約1時間で山荘のある横尾に到着できます。槍ヶ岳などへの登山コースでもあるため、登山のトップシーズンは混雑する道です。
行程の半分となる横尾までは約3時間ですが、歩きやすいため初心者ものんびり気分で北アルプスの山歩きを楽しんでください。
横尾~本谷橋
横尾からは、直進する槍ヶ岳への登山道へは進まずに、左手にある立派な横尾橋を渡ってください。渡りきると石の多い川原の道となり、しばらくは初心者も安心な平坦な道となります。
少し歩くと立ち枯れした林の急登になるので、特に初心者は焦らずに登ってください。ロッククライミングで有名な標高差1,000メートルの屏風岩が左手に現れ、しばらく進むと吊り橋の本谷橋です。
本谷橋~涸沢カール
本谷橋は吊り橋のため、横尾橋よりも揺れるため初心者は特にスリルを感じられることでしょう。紅葉の名所でもあり、時期が合えば紅葉も楽しみながら渡り切った川原の広い場所で一旦休憩をしてください。
急こう配になりますが、初心者は焦らずに休みながら登ってください。本谷橋から約2時間で涸沢カールに到着となります。左手に涸沢ヒュッテがあり右手に涸沢小屋があり、テント場は中間部分です。
初心者も安心な涸沢カールの宿泊場所
初心者におすすめの2軒の山小屋
初心者が涸沢カールで宿泊する場合は、ゴール地点にある完全予約制の「涸沢ヒュッテ」または「涸沢小屋」がおすすめです。いずれも食堂があり、穂高連峰を眺めながらのラーメンやコーヒーなどがお楽しみとなります。
しかしいずれも紅葉時期などの登山時期は混雑し、予約が取りにくいことも。避難小屋ではないため満室の場合は宿泊できないのでご注意ください。
涸沢ヒュッテの詳しい情報はこちらをチェック!
涸沢小屋の詳しい情報はこちらをチェック!
涸沢カール名物のテント場
紅葉時期の涸沢カールといえば、紅葉に負けないくらいにカラフルなテントで彩られる光景が有名です。初心者は涸沢ヒュッテに泊まるのがおすすめですが、テント泊をするツアーに参加するのもよいでしょう。
ツアーも早くに満席になることも多いため、涸沢カールの登山ツアーを主催会社をチェックしておき、早めにツアーに申し込むことをおすすめします。
万全の準備で初心者も涸沢カールに登ろう!
涸沢カールの全行程は休憩なしで片道約6時間ですが、中間の横尾までは約3時間の歩きやすい道のりとなります。そのため体力のある初心者であれば、日帰りではなく1泊が必然となりますが、涸沢カールにゴールするのも可能です。
しかし奥深い北アルプスの天候は変わりやすいこともあり、初心者はツアー参加をおすすめします。いろいろチェックして初心者向けのツアーを探してくださいね。
穂高連峰が気になる人はこちらをチェック!
穂高連峰は登山初心者には難易度の高い山ですが、経験を積んで技術を磨けば願いは叶うはず。そのときのために情報を収集しておいてはいかがでしょうか。初心者だけではなく、多くの登山愛好家が憧れる穂高連峰についてチェックしておきましょう。
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出典:photo-ac.com