ヤブランとはどんな植物?
日当たりのあまりよくない庭、いわゆるシェードガーデンで大活躍する植物、ヤブラン。半日陰のような場所でもよく育ち、管理にあまり手間がかかりません。美しい葉に加え、開花期には花も楽しめますから、日当たりの悪い庭に何を植えたらよいか悩んでいる、という方にはぜひおすすめしたい植物です。
この記事では、気になる植物ヤブランについて、その特徴や種類、花言葉などまとめてご紹介します!
特徴①庭の名わき役
ヤブランは庭や花壇の主役になるような、派手な種類の植物ではありません。草丈は20㎝~50㎝ほど。すらりとした直線的な葉は硬めで光沢があり、株元から放射線状に茂ります。その姿は控えめで上品、どちらかと言うと他の植物を引き立てるわき役的存在です。
しかし、こうしたわき役あってこそ庭全体、植栽全体の調和が生まれます。逞しく美しいヤブランは、まさに庭造りにおける名わき役と言えるでしょう。
特徴②日陰でも育つ、常緑の植物
ヤブランは、日照条件があまりよくない場所でも育ちます。陰になりがちな樹木の足元や壁際などでも大丈夫。常緑の植物なので、ほぼ一年中美しい緑の葉を茂らせてくれます。
また、多年草なので、一度根付いてしまえば、数年はそのまま楽しめます。毎年植え替える必要がなく、あまり手をかけたくない場所に植えるのにぴったりの植物ですね。
特徴③花も美しい
手間いらずのヤブランですが、美しい花を咲かせます。花が咲くのはは8月~10月頃。開花時期になると花茎が立ち上がり、写真のような小さな花が花穂状に沢山つきます。放射状に伸びる葉の姿と相まって、とても美しく、魅力的な開花姿です。
花色は主に紫色になりますが、白色やピンク色の花が咲く種類もあります。紫色の落ち着いた雰囲気もいいですが、明るく清楚な白やピンクも軽やかで魅力的ですね。
特徴④実がなる姿も面白い
開花期が終わった後、ヤブランは黒っぽく艶やかな実をつけます。庭に実の成った植物の姿があると、ぐっと季節感が増しますね。
ちなみに、ヤブランとよく似た植物にジャノヒゲがありますが、ジャノヒゲの実の色は鮮やかな青色。どちらか分かりにくい場合は、実の色を見ればヤブランかジャノヒゲか、違いがはっきりと分かります。
特徴⑤和風にも洋風にも合う!
ヤブランは和風の庭作りで用いられることの多い植物ですが、洋風のガーデンに取り入れても案外すんなりと馴染みます。とりわけガーデナー達に人気があるのは写真のような斑入りの種類のヤブランです。白~クリーム色の斑が入ったは葉は明るさをもたらし、軽やかな雰囲気。洋風の植栽にもよく似合います。
ヤブラン豆知識!
①原産地はどこ?
ヤブランの原産地は、日本、中国をはじめとする東アジアになります。植物は、その原産地と気候や環境条件が近ければより育てやすいものです。古くから日本の風土に馴染み、野山に自然に育つほどのヤブランですから、栽培しやすいのも納得ですね。
②名前に関して:別名と名前の由来
別名
ヤブランは別名「リリオペ」「サマームスカリ」ともいいます。「リリオペ」という名前はヤブランの学名「Liriope muscari」に由来してつけられたものです。また、「サマームスカリ」(Summer muscari)は同じキジカクシ科のムスカリが春に花咲くのに対し、ヤブランが夏~秋に開花することからつけられたのでしょう。
名前の由来
名前の由来は漢字で書くと分かります。「藪蘭(やぶらん)」、すなわち漢字が表すまま、「藪(やぶ)のような暗く条件のあまりよくない場所でも美しく咲く植物」という意味です。ちなみに、「蘭(らん)」の字は必ずしもラン科の植物を指すものではありません。細長い葉や花が連なって咲く様からつけられたと言われています。
③主な種類
代表的なヤブランの種類についてご紹介しましょう。よく知られているのは、緑色の葉の基本種のヤブラン、葉に斑が入るフイリヤブラン、基本の種よりも小型のコヤブラン、ヤブランよりさらに草丈の低いヒメヤブランです。
また、先に述べたように、花の色が紫ではなく白やピンクのヤブランもあるので、苗を購入する際はお好みのものを探して選びましょう。
④漢方薬の材料にもなる!
見て楽しまれるだけでなく、実はヤブランは漢方薬の材料としても利用されています。使われるのは根の肥大した部分。これが「大葉麦門冬(だいようばくもんとう)」という名前の生薬になり、滋養強壮や咳を鎮める効果が期待されています。
ヤブランの花言葉・花言葉の由来を知ろう!
どんな花言葉がつけられている?
贈り物にする時や日々可愛がる庭の植物として取り入れる際に気になるのが花言葉ですね。ヤブランの場合、花の色別の花言葉はありませんが、全体につけられた花言葉があります。
よく知られている主な花言葉は、①「忍耐」、②「隠された心」、③「謙虚」。なぜこのような花言葉がつけられたのか、ひとつひとつ見ていきましょう。
花言葉①「忍耐」
一つ目のヤブランの花言葉は「忍耐」です。「忍耐」は日照条件のよくない場所でも健気に育つ姿からつけられたものでしょう。日本の暑い夏、寒い冬の温度変化にも耐え、変わらない姿を保ってくれるヤブラン。励ましのメッセージにぴったりの花言葉になっています。
花言葉②「隠された心」
二つ目に紹介する代表的な花言葉は「隠された心」。これは、花の咲く姿に起因する花言葉でしょう。ヤブランは密に茂った葉と葉の間から長い花茎をすっと伸ばして咲きます。葉の茂みから立ち上がって開花する姿は、まるで秘密にしていた本心を露わにするかのようですね。
花言葉③「謙虚」
三つめにご紹介する花言葉は「謙虚」です。「謙虚」も控えめな草姿からつけられた花言葉でしょう。小花が沢山つくものの、ヤブランの花にバラやチューリップのような華やかさ・派手さはありません。紫色の小さな花が連なって生み出すしっとりとしたたたずまい、クールな雰囲気にふさわしい花言葉です。
誕生花
誕生花とは、生まれた月、そして日付けごとに決められた花のことです。ヤブランが誕生花となっている日付は9月20日、10月6日、10月26日です。開花シーズンの秋が中心となっていますね。それぞれお誕生日の人が身近にいれば、そっと教えてあげましょう。
キジカクシ科の花と花言葉
ヤブランはキジカクシ科の植物です。かつてはユリ科とされていたこともありますが、分類法が変わり、現在はキジカクシ科として分類されています。
同じキジカクシ科の仲間には他にどんな植物があるのでしょうか。その一例を花の写真・花言葉とともにご紹介します。よく見ると意外な共通点が見つかり、面白いですよ。
スズランの花と花言葉
鈴のような可愛らしい花をつけるスズランも旧ユリ科、現在キジカクシ科に分類される植物です。スズランの花言葉は、「純粋」「再び幸せが訪れる」「謙虚」「純潔」など。可憐な花の様子をよく表した花言葉になっていますね。開花時期は4月~5月頃で、一度根付けば数年は楽しめる多年草です。スズランは5月1日・5月2日・5月28日の誕生花となっています。
ヒヤシンスの花と花言葉
春の訪れを告げるヒヤシンス(ヒアシンス)全体の花言葉は「スポーツ」「ゲーム」などです。可憐なヒヤシンスに「スポーツ」という花言葉は少し意外な感じがしますね。ヒヤシンスの花言葉はギリシア神話、美少年ヒュアキントスが太陽神アポロンと円盤投げを楽しんでいたときに起きた悲劇に由来します。興味のある方は以下の記事を参照してください。花色別の花言葉も詳しく紹介してありますよ。

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ムスカリの花と花言葉
ぶどうの房のように小さな花を密集して咲かせるムスカリ。一度植えると毎年芽を出してくれる、秋植え球根植物です。ムスカリの花言葉には「失望」「失意」「明るい未来」があります。可愛らしいムスカリの花にネガティブな花言葉がついているのは青色が悲しみの色とされていることに由来します。ムスカリは1月30日、2月26日の誕生花になっています。

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ギボウシ(ホスタ)の花と花言葉
ヤブランと同じく、耐陰性が強く、葉の美しさが重宝されるギボウシ(ホスタ)。7月~8月頃になると花茎を伸ばし、淡い紫色や白色の花を咲かせます。そんなギボウシの花言葉は「沈静」「落ち着き」「沈黙」「静かな人」です。ギボウシの控えめな花姿が表現された花言葉になっていますね。
シラーの花と花言葉
ムスカリなどと同じく秋植えの球根植物で、一度植えれば植えっぱなしでも数年は楽しめるシラー。星形やベル形の可愛らしい花を咲かせます。そんなシラーの花言葉には「寂しさ」「哀れ」「変わらない愛」などがあります。花言葉では青(紫)色が悲しみのシンボルになることが多く、ネガティブな花言葉はこれに由来するものです。シラーは2月27日、5月31日の誕生花とされています。
ドラセナの花と花言葉
観葉植物として人気があるドラセナも、実はキジカクシ科の植物です。葉や樹形がバリエーション豊富なドラセナの花言葉は「幸福」。贈り物やインテリアとしてふさわしい花言葉がつけられていますね。花言葉がついてはいるものの、ドラセナの観賞は主に葉がメイン。花は地味で、成熟した株にしか咲きません。
ジャノヒゲ(リュウノヒゲ)の花と花言葉
ジャノヒゲ(リュウノヒゲ)はヤブランと同じく常緑の多年草で、グランドカバーや下草としてよく用いられます。丈夫で主に葉が観賞の対象になりますが、花が咲くことも。花言葉の「変わらぬ想い」「不変の心」は年間通じて変わらぬ姿を保つジャノヒゲの強さを表したものになっています。
オーニソガラム(オオアマナ)の花と花言葉
オーニソガラム(オオアマナ)は4月~5月に白い花を咲かせる球根植物です。別名「ベツレヘムの星」とも呼ばれ、美しく清楚な花の姿がキリストの誕生を知らせた星に例えられます。花言葉は「純粋」「才能」で、贈り物にぴったりのポジティブな花言葉です。
ヤブランの育て方は?
ここからは、ヤブランの育て方についてご紹介していきます。ヤブランは自然の野山に自生するほどですから、育てやすく、初心者にとっても栽培はあまり難しくありません。目立った病害虫もあまりなく、一度根付けば長い間楽しめますので、興味がある方はぜひお庭に植えてみましょう。
ヤブランの育て方①栽培に適した環境
日当たり
ヤブランは日なたから日陰まで、あまり植える場所を選びませんが、全く日が当たらない場所だと葉や花の付きが悪くなりますし、また、逆に日が当たり過ぎる場所だと葉焼けすることがあります。樹木の下のような、半日陰程度の場所がヤブランにとってはベストな環境と言えるでしょう。
寒さ・暑さ
ヤブランは耐寒性・耐暑性ともに優れているのが特徴です。関東より西の地域であれば、冬の間も屋外で、特に対策しなくて大丈夫です。夏越しの対策も特に必要ありませんが、強い直射日光に当たり過ぎると葉が焼けてしまうので、最初に植える場所をよく考えましょう。
土
水はけがよく、有機質に富んだ肥沃な土が望ましいですが、あまり土質を選びません。植え付けの際によく耕して腐葉土をすき込むなどしておけば、理想的です。やや湿った土を好みますが、乾燥にも比較的強い性質をもっているので、頼もしい限りです。
鉢植えの場合は市販の培養土を使えば問題ありません。
ヤブランの育て方②植えてみよう
ヤブランはグランドカバーや造園用のプランツとして、春と秋を中心に年中苗が出回っています。真夏と真冬を避けて、植え付け作業を行いましょう。
苗を買ってきたら、まず植えつける場所をよく耕します。腐葉土と元肥をすき込み、丁寧に植えつけましょう。植え付け直後は、根付くまでしばらく水やりを行います。鉢植えの場合は、苗よりも一回り大きめの植木鉢に培養土を入れ、植えつけた後たっぷりと水やりしてください。
ヤブランの育て方③日々のお世話
水やり
地植えの場合、根付いてしまえば、日常的な水やりは特に必要ありません。自然に降る雨だけで大丈夫です。
鉢植えの場合は、鉢の表面が乾いたら、水やりを行いましょう。特に新芽が出る春は水やりを忘れないように気を付けます。
肥料
地植えの場合は、特に追肥する必要はありません。最初の植え付けの際に、堆肥などの元肥をしっかり施しておきましょう。
鉢植えの場合、春と秋に株元に緩効性化成肥料を与えてやると、美しい姿を保てます。あまり栄養が足りないと葉色が悪くなったり、花が咲かなくなったりするので注意します。
植え替え
鉢植の場合、鉢の中で根が生長し、どうしても根詰まりを起こしてしまうので、2~3年に1回のペースで植え替えするのが望ましいでしょう。植え替えの際は一回り大きめの鉢を用意し、新しい土に植えてやります。
地植えの場合、特に植え替えの必要はありませんが、生長が著しいようなら、数年に1回は株分けを兼ねて植え替えを行うとよいでしょう。
剪定
ヤブランは春になると新芽が出てきます。古い葉を残したままだと見苦しいので、早春新芽が出てくる前に、古い葉を刈り取ってしまえば美しい姿を保てます。その他は特に手入れしなくても自然に葉が茂り、形が整います。
まとめ
以上、シェードガーデンで役立つヤブランの特徴、花言葉・花言葉の由来、育て方などについてご紹介してきました。ヤブランは育てるのにあまり手もかからず、年間通じて美しいリーフを楽しめます。ローメンテナンスで美しい庭を作りたい方は、ぜひヤブランを取り入れてみてはいかがでしょうか。
日陰でも育つ!丈夫な植物が気になる方はこちらをチェック!
ヤブランの他にも、日陰で育てられる植物は沢山あります。以下の記事では多少日当たりが悪くても育つ、丈夫な植物をピックアップしてご紹介しています。庭づくりの参考になりますので、興味がある方はぜひ参照してみてください!

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