控えめな花言葉が魅力のフジバカマとは
和名 | フジバカマ(藤袴) |
学名 | Eupatorium japonicum |
別名 | ランソウ(蘭草)、ヒヨドリバナ |
植物分類 | キク科 / ヒヨドリバナ属 |
花色 | 白、紫、ピンク |
開花時期 | 9月~11月 |
フジバカマは日本の秋を代表する草花です。夏の終わりの9月ごろから11月の秋の終わりまで花を咲かせる秋の七草でもあり、まさに季節の花でもあります。
フジバカマは控えめな花色に反して香りが強いのが特徴でしょう。奈良時代には「フジバカマ」の名前は登場しており、花言葉とともに日本で古くから愛されてきた草花といえます。
名前の由来
名前の由来は花の姿にあります。藤袴と漢字であらわすように、着物の袴の形にたとえられました。紫色の小さな藤のような花色と袴のような形が合わさり、「フジバカマ(藤袴)」という名前が名付けられたといわれています。
今は絶滅危惧種
フジバカマは季節の移ろいを感じさせる「秋の七草」に数えられるほど、古き日本ではありふれた親しみある草花でした。日本の野原には一面にフジバカマが群生していることも珍しくなかったといいます。
しかし、日本の環境の変化をうけ今ではフジバカマは絶滅危惧種に登録されるほど数が減少しました。現在、「フジバカマ」として販売されているものは園芸種で、サワフジバカマ(フジバカマとサワヒヨドリの交雑種)です。
フジバカマの特徴
日本の野原に群生し、人々に季節の移り変わりを告げていたフジバカマ。今では絶滅危惧種にも登録されているほどなので野生のフジバカマを目にすることはあまりありません。
花言葉の由来にもなったフジバカマの特徴を知りながら、その姿に思いをはせてみましょう。
特徴①原産地
フジバカマの原産地は中国および朝鮮半島、そして九州や四国といった日本の南部といわれています。もともとの原産地は中国で、それが奈良時代に日本に伝わりそこに根付き、日本の野草となったようです。
やや湿気のある土地を好み、条件が合えば地下茎であたり一帯に広がる強さも持ち合わせています。
最近の研究では日本が原産地という説も
フジバカマは中国から帰化した植物という説が一般的でしたが、中国と日本のフジバカマを比べると花色や草丈に違いがあり、日本と中国のものは別のものではないかという説も出てくるようになりました。
日本に古くから自生していたフジバカマは日本が原産地の可能性も十分にあり得ます。
かつては、古い時代に中国から渡来し、日本に帰化したものだと考えられていましたが、最近の調査では、中国大陸のものと、日本在来のものとは少し異なることがわかり、日本自生説が有力になっています。(一部抜粋)
特徴②開花時期
秋の七草にもなっていることからわかるように、開花時期は秋です。9月~11月にかけてつぎつぎに開花します。まっすぐ上に伸びた茎の先端が枝分かれし、そこにつぼみを付けて秋の訪れとともに開花。「袴」にたとえられる筒状の花びらの中から2本の花柱を伸ばし、受粉後はそこに実をつけます。
特徴③花色
花色は白、紫、ピンクなどです。前述したように、本来原産地と考えられていた中国のフジバカマは花色が濃い傾向にありピンクや紫が主流。日本古来のフジバカマは白色が強い傾向にあります。日本で園芸種として固定されているものは中国の系統も持つため花色が濃いようです。
特徴④花の香り
フジバカマの大きな魅力の1つが独特な花の香りです。フジバカマの香りは「桜餅」にしばしばたとえられます。ただし、生花からは香りはほとんどせず、乾燥させることが必要です。これはクマリンと呼ばれる物質によるもので、非常によい香りといわれています。
そのため、中国ではフジバカマを乾燥させて入浴剤や香水のようにも使用していました。その香りのよさは、フジバカマを「蘭」または「蘭草」と呼ぶほどです。
フジバカマを詠んだ句が「令和」の由来?
新年号「令和」の典拠(由来)は「初春令月、気淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香」という万葉集の一句だといわれています。さらに続く説に「蘭」の文字があり、これが「フジバカマ」を表しているという解釈もあることをご存じでしょうか。
フジバカマの香りのよさ、そして日本が古くから愛してきたことがうかがえる句であり、それが「令和」という年号に受け継がれているのは大変興味深いですね。
特徴⑤多年草
フジバカマは地下茎であたり一面に広がる多年草です。多年草なので場所を遷移しながら毎年芽吹きます。環境さえあえばどんどんと広がり、一面フジバカマが広がることでしょう。草丈は高くて1mほど。風にそよぐフジバカマの群生は見ごたえ十分です。
フジバカマの花言葉
日本らしい由来を持ち、香りのよさから「蘭」とまでうたわれたフジバカマには奥ゆかしい花言葉がつけられています。花色や開花の姿などあらゆるものからインスピレーションを受けたのであろうフジバカマの花言葉についてみていきましょう。
フジバカマの花言葉①あの日を思い出す
「あの日を思い出す」の花言葉は、フジバカマの香りの現れ方に由来します。フジバカマの香りは非常にいいですが乾燥しないと感じられません。
中国はもちろん、日本でも匂い袋のような形でフジバカマを携帯していました。ふとした瞬間に匂い袋から立ち上がるフジバカマの香りを感じた時、それに付随する思い出が掻き立てられたことがこの花言葉の由来といえるでしょう。
いつも一緒にいる人にこそ贈りたい花言葉
「あの日を思い出す」という花言葉はメッセージ性が強い花言葉といえます。「思い出」という花言葉を持つ花は多くあれどこんなノスタルジーを感じさせるロマンチックな花言葉はフジバカマならではかもしれません。
長い年月を寄り添って、多くの思い出を持つ人にこそ贈りたい花言葉といえるでしょう。久しぶりに再会したお世話になった人にプレゼントするのもおすすめですよ。
フジバカマの花言葉②遅れ
2つ目のフジバカマの花言葉は「遅れ」です。この花言葉はフジバカマの開花時期が9月~11月と長く、少しずつ順番に花を咲かせる様子からつけられたといわれています。夏の終わりから秋の終わりまでゆっくりと花を咲かせるフジバカマの姿が花言葉の由来となったのでしょう。
遅れを挽回したいときに贈る花言葉
「遅れ」という花言葉も特徴的な花言葉で、フジバカマならではものです。花がゆっくり咲くというフジバカマの特徴のほかに、乾燥して遅れて香るという特徴を表した花言葉ともいえます。
「遅れる」はどうしてもイメージが悪いかもしれませんが、フジバカマの花の香りのように遅れてやってくるからこそ存在を強く感じるものもあるでしょう。「遅れ」の花言葉をどう使うかで相手の印象を大きく変え、挽回できるかもしれませんね。
フジバカマの花言葉③ためらい・躊躇
最後のフジバカマの花言葉は「ためらい」「躊躇」です。こちらの花言葉もゆっくりと長い時期にわたって花を咲かせる姿が花言葉の由来といわれています。
フジバカマの開花時期は9月~11月まで。秋の訪れとその終わりを惜しみ、これから訪れる厳しい冬の季節への戸惑いのようなものを感じていたのかもしれませんね。
花言葉の由来に漂う源氏物語の世界観
フジバカマは源氏物語にも登場します。夕霧が従姉である玉鬘へ「同じ野の露にやつるる藤袴あはれはかけよかことばかりも」と告白し、玉鬘が「尋ぬるにはるけき野辺の露ならば薄紫やかことならまし」と返しました。
従姉弟関係であった2人が「あの日」を振り返りながら駆け引きをします。当然「躊躇」したことでしょう。そしてこの恋は実らず、もしかしたら「もう遅い(遅れ)」という花言葉へつながったのかもしれません。
夕霧から玉鬘へ差し出された「藤袴」
夕霧が、どうか自分の恋心にも目を向けてほしいと秘めてきた思いを告白する「藤袴」ではまさにフジバカマが主役です。御簾越しに歌のやり取りをする2人。夕霧は御簾から「藤袴」の花を差し出したといいます。
そしてそれを受取ろうとした玉鬘の腕を夕霧が御簾越しに引き寄せたという緊迫した表記もあるほどです。しかし、複雑な立場に立たされた玉鬘は藤袴の花色「薄紫」という言葉を使って夕霧の思いを受け取りませんでした。
フジバカマはいつの誕生花?
フジバカマは9月~11月が開花時期ということもあり、9月28日と11月6日の誕生花です。
切ない花言葉が多いフジバカマですがその上品な香りや繊細で素朴な花の姿などは大変魅力的でもあります。「あの日を思い出す」という花言葉を込めて、これまで親しくしてきた人に誕生花をプレゼントし思い出を語り合うのも素敵ではないでしょうか。
誕生花は花言葉に並ぶ特別なギフト
誕生花は365日すべてにつけられており、由来はギリシア・ローマ時代にまでさかのぼります。植物に込められた神秘的な力が宿るよう、暦や季節に応じた花を誕生花としてつけられました。花言葉と並んで「知ると楽しい」知識かもしれませんね。
プレゼント選びに悩んだ人は誕生花やそれにつけられた花言葉を調べてみましょう。贈られた人にも自分に似合う花言葉や誕生花を選んでくれたと知れば特別な思い出になるかもしれませんよ。
9月・11月の誕生花や花言葉について知りたい方はこちら
フジバカマは9月28日・11月6日が誕生花ですが、365日すべてに誕生花がつけられています。当然9月と11月すべてにほかの誕生花が存在し、プレゼントと一緒に誕生花を贈るのもおすすめです。それぞれの誕生花や花言葉が気になった方は以下からご覧ください。

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フジバカマを見たいなら京都へ
絶滅危惧種にも登録されているフジバカマ。園芸種は広く出回っていますが、日本を原産地とする原種は珍しく日常で目にはできません。
そんな日本古来のフジバカマの群衆地を見たいのであれば、京都の「大原野フジバカマ園」へ行ってみましょう。咲き誇る姿を見れば花言葉とはまた違った印象を感じられるかもしれませんよ。源氏物語の舞台ともなった京都で繰り広げられたフジバカマ復活のストーリーをご紹介します。
野生種のフジバカマを1997年京都で発見
源氏物語でも重要な役割を果たすほど人々に親しまれていたフジバカマでしたが、河川工事が進み、区画工事が行われたことでその群生地は姿を消し、絶滅危惧種にも登録ほどでした。
そんななか、京都の大原野(おおはらの)で野生のフジバカマが発見されます。このフジバマカから少しずつ数を増やし、もとの群生地にまで復活させたのが「大原野フジバカマ園」です。
大原野フジバカマ園
- 住所〒610-1133
京都府京都市西京区大原野小塩町
大原野フジバカマ園から京都全域へ広がるフジバカマ
KBS京都が主体となり「守ろう藤袴プロジェクト」が発足。2010年までにフジバカマはなんと7000株も増え、京都全域に配布されました。
毎年、開花時期である9月~11月には開花を楽しむお祭りやイベントが開催されていましたが2021年現在は新型コロナウイルスの流行を受けそれ以降はイベントは開催されていません。しかし、9月~11月の開花の季節には一面に広がるフジバカマ原種の花を見られます。
フジバカマの香りに訪れる珍蝶アサギマダラ
アサギマダラは世界を旅する蝶として有名です。暑さを避けて海を渡り、夜は海面で眠るといわれています。記録に残る最高移動距離はなんと2500km。まさに世界を旅します。そんなアサギマダラが日本にやってくる時期はちょうど9月~11月。フジバカマの季節です。
フジバカマが発する特殊な香りを持つ蜜はアサギマダラの交尾に必須といわれており、フジバカマの季節はアサギマダラの群れも観察できます。
控えめな花言葉が魅力「フジバカマ」
世界最古の歌集「万葉集」、世界最古の長編物「源氏物語」にもフジバカマの名は残されています。花色や香りに人々は多くの思いを投影してきたのでしょう。どの花言葉かも素敵なものでしたね。
控えめな花言葉を持つフジバカマですが、その花言葉に込められた思いはこれからも多くの人に愛されることでしょう。誕生花の贈り物にもおすすめです。
フジバカマの花言葉について気になった方はこちらもチェック
魅力的な花言葉を多く持つフジバカマ。なかにはさみしげなものやノスタルジーでロマンチックな花言葉もあり、プレゼントにもぴったりの花です。9月、11月に誕生日を迎える人にも伝えたい花言葉といえます。さらにフジバカマの花言葉を詳しく知りたい方は以下も記事もご覧ください。

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