海苔とはどんな食品?
海苔は栄養豊富な自然食品
海苔は海で育つ海藻(かいそう)の仲間で、冬に旬を迎える非常に栄養価の高い自然食品です。海苔は紙のように薄っぺらで黒く、見た目は栄養などありそうにないのですが、実は良質なタンパク質や体内で合成できないビタミンを豊富に含みます。
もともとの天然海苔は磯の岩肌などで育つ非常に貴重な海藻でしたが、現在は養殖技術が進み庶民の味として広く販売されるようになりました。
海苔が食卓に上るまで【製法】
一昔前までの海苔は貴重な海藻でしたが、昭和になり養殖技術や機械化により安定して大量に生産できるようになりました。種付けした養殖網を漁場いっぱいに設置し、日中の太陽光を浴びアミノ酸を含んだ海苔が育つのです。
種付けから30日ほどで15cm〜20cmに成長し(11月〜12月頃)摘みあげた海苔は「一番摘み」「初摘み」と呼ばれ、柔らかく香りがよい最上級の海苔となります。
海苔の加工の工程
収穫された海苔を全形1枚分の量に分け、四角い「みす」に薄くのばし水分をとり乾燥させたものが乾海苔です。昔はそのまま販売されていて、各家庭で焼いてから食べていました。
現在販売されている海苔のほとんどは焼き加工をした焼海苔なので、そのまま食ベられて便利です。しかし焼きたての海苔は香ばしく美味しいので、焼加工されてない海苔を購入し食べる前に焼くこだわり派の人もいます。
海苔は何度も収穫される
海苔は「初摘み」から10日〜15日すると、再び収穫できる長さに成長します。これを「二番摘み」と言い、以降何度も収穫を繰り返しが可能です。しかし回数を重ねるごとに硬さが増し品質が落ちます。海苔の値段が1畳(10枚)で数百円〜数千円まで開きがあるのは、産地の違いと思いがちですが、実は収穫時期の品質の差なのです。
海苔は日本古来の食品
7世紀頃に書かれた「風土記」の中に、常陸(ひたち)の国で海苔を干していたと言う記述があります。また朝廷への貢(みつぎ)物や神社のお供え物の品目の中に海苔が入っているように、海苔は古来から日本の文化の中で大切に育てられ愛され続けてきた貴重な食品です。現在では養殖技術のおかげで、気軽に食卓にのぼるようになりました。
海苔に含まれる栄養素と働き
海苔はビタミンなどの栄養を豊富に含む、非常に優れた自然食品です。また手軽に食べられるので、朝食として登場する日本食の定番にもなっています。海苔に含まれる栄養素や成分の種類と働きを詳しく紹介して行きましょう。
①たんぱく質
たんぱく質は筋肉や臓器を作る栄養素で、まず肉や牛乳などをイメージしますが、実は海苔の栄養成分の40%はたんぱく質なのです。しかも9種の必須アミノ酸をすべて含んでいます。
必須アミノ酸は体内では合成されず、食品より摂取する必要がある大切な栄養素で、1つ欠けても筋肉や血液を作れず健康を維持できません。驚きなのは海苔のたんぱく質の含有率は、肉や魚、大豆よりも高いのです。
②食物繊維
海苔に含まれる食物繊維は100g中に36gも含まれています。食物繊維は整腸作用と生活習慣病の予防、ダイエットには欠かせない大切な栄養素です。
現代の食生活が脂質の多い欧米化したことで、食物繊維の摂取量が不足気味になり生活習慣病が増えています。海苔を食べることで食物繊維を補い、女性に多い便秘を防ぎ、ダイエットの強い味方になるのが海苔の栄養です。
近年注目されているポルフィラン
ポルフィランは水溶性の食物繊維で、海苔の糖質の約80%を占めています。ポルフィランは海苔特有の成分で、海苔の細胞を保護し保水力があります。その優れた保水力を利用し、お肌を守る保湿成分として女性の化粧品に使われています。
ポルフィランがなぜ海苔に含まれているかは定かではありません。海苔が海面で育つ過程で、強い日光の紫外線や乾燥から身を守るために備わったと考えられています。
③ビタミン類
ビタミンは微量でも三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)の代謝を助け、潤滑油のような働きをする必要不可欠な栄養素です。またほとんどのビタミンは、体内で合成されず食品より摂取する必要があります。体内で作れないビタミン類を多量に含み摂取できるのが海苔です。海苔に含まれる主なビタミンの種類と働きを紹介します。
ビタミンC
果物に多く含まれるビタミンCが「海苔にあるの?」と驚きますが、焼海苔100g中に含まれるビタミンCは210mgで、それはレモンの約2倍強になります。ビタミンCは熱に弱い栄養素ですが、海苔のビタミンCは熱でも分解されないのが特徴です。
ビタミンCはコラーゲンの生成に欠かせない栄養素で、女性に多い貧血やイライラ、メラニン色素の増加を抑え、美肌を作る働きがあります。
ビタミンB1・B2・B12
海苔はビタミンB1・B2・B12の栄養素も豊富に含んでいます。ビタミンB1は神経系の異常や脚気を防ぎ、B2は皮膚や毛髪の発育障害を防ぐ大切な栄養素です。
ビタミンB12は特に女性にとって大切なビタミンで、悪性貧血を防ぎ妊婦や授乳中のお母さんには欠かせない栄養素です。さらに神経系を正常に保ち情緒を安定させる働きがあります。このように海苔には女性に役立つ栄養素が豊富に含まれているのです。
④葉酸
葉酸はビタミンB12と同様に女性にとって最も大切な栄養素です。葉酸は赤血球の合成に大きく作用し貧血を予防するだけでなく、妊婦の方や胎児の成長や成長期の子供に最も必要とされる栄養素になります。
その葉酸の含有率が、すべての食品中トップなのがなんと焼海苔です。海苔は生活習慣病の原因になる脂質が少なく、逆に生活習慣病を予防する食物繊維や葉酸・ビタミンなどの栄養素を豊富に含む優れた健康食品と言えます。
⑤EPA(エイコサペンタエン酸)
EPAとは「エイコサペンタエン酸」の略称で、イワシやサバ・アジなどの青魚の脂質に多く含まれる「必須脂肪酸」の一種で、ビタミンと同様に体内で生成されにくい成分です。焼海苔はEPAを100g中に1.2g含んでおり、悪玉「中性脂肪(コレステロール)」を低下させ、血液をサラサラにして動脈硬化を防ぐ働きがあります。
EPAが発見されたきっかけ
地球の北限にあるグリーンランドの原住民「イヌイット」は、野菜をほとんど食べず(野菜が育たない環境のため)アザラシなどの肉を主食にしています。
それなのにヨーロッパ人に比べ心筋梗塞などの死亡率が非常に低いことに驚いた学者は、イヌイットの食生活と血液を調査しました。その結果イヌイットの血液に含まれるEPAの値が、異常に高いことが判明したのです。それはアザラシが主食とする青魚に由来していました。
⑥ミネラル(無機質)
ミネラルは人の体を構成する主要4元素「酸素・炭素・水素・窒素」以外の無機質と呼ばれる栄養素です。ミネラルはビタミンと同じように微量でも人体の調子に大きな影響を与える五大栄養素の一つになります。海苔に含まれる主なミネラルである「鉄分」と「カルシウム」について紹介しましょう。
鉄分
鉄は赤血球のヘモグロビンの主成分で、血液の生成には欠かせない栄養素です。海苔約5枚に含まれる鉄分は、牛レバー1切れ(約40g)分、ほうれん草1わ分に相当します。
かつて一世を風靡したアメリカの漫画に「ポパイ」があり、ほうれん草を食べると強力なパワーを出すという物語です。このポパイのパワーの源になっているのが鉄分で、海苔にも同じパワー(栄養)が含まれています。
カルシウム
カルシウムは、ご存知のように骨や歯を作る大切な栄養素です。海苔は100g中に約400mgのカルシウムを含んでいます。牛乳の含有量は110mgなので海苔は牛乳の約4倍あるのです。
大人1日の所要量は600mgなので、牛乳で必要量取るには約550g飲まなければなりません。牛乳が苦手な人は、海苔としらすなどカルシウムを多く含む食品と合わせれば楽に摂取することができます。
海苔の栄養と他の食品との比較
ここまで紹介した海苔の栄養成分は、焼海苔100g中に含まれる栄養素の量です。しかし海苔は1枚約3gなので1食で100g(33枚)を食べることはまず不可能になります。そこで焼海苔1枚の栄養素が、他の食品のどのくらいの量に匹敵するのかを、体内では生成できないビタミンとミネラルを主体に比較してみましょう。
①ビタミンA
焼海苔1枚(3g)に含まれるビタミンAは約420IUです。「IU」とはビタミンAやビタミンD・Eなど脂溶性のビタミンに使用される国際単位で、mgと同様に量の目安にしてください。
成人男子1日の所要量は2000IUなので、焼海苔5枚食べれば所要量を超えるビタミンAを摂取できるのです。焼海苔1枚のビタミンAは大きめの卵(66g)1個、牛乳350ccに匹敵します。
②ビタミンB1
焼海苔1枚にはビタミンB1は約0.03mg含まれています。ビタミンB1はほんの微量でも神経や筋肉、心臓の異常を防ぐ働きをする栄養素です。
焼海苔1枚・ビタミンB1の0.03mgという値は牛乳100cc、イワシ1尾(100g)に相当します。ビタミンB1の1日の所要量は1.2〜1.4mgなので、焼海苔3枚を食べれば必要量の10%を補うことになるのです。
③鉄分
焼海苔1枚に含まれる鉄分は0.4mgで、これは牛レバーの10g、茹でほうれん草20g(小株1わ)に相当します。鉄分は前にも紹介したように血液を作る成分で特に女性には必須の栄養素です。
1日の推奨量は成人男子は7.5mg、成人女性は10.5mg、妊娠中期や後期では16mgが必要と言われています。特に妊娠中の女性には鉄分が必須ですが、レバーや牛乳は受け付け難いけれど、海苔は苦にならない食品です。
④葉酸
葉酸は貧血を予防し動脈硬化などの生活習慣病を防止する大切な栄養素です。葉酸を多く含む食品は、ほうれん草やアスパラガスなど緑黄色野菜などですが、葉酸は茹でると水に溶けてしまい栄養価が半減してしまいます。ところが海苔は煮たり茹でたりせずに栄養が逃げる心配がないので、葉酸の含有率は全食品中トップになるのです。
海苔の食べ方と栄養
海苔は一昔前は黒い紙を食べていると評されるほど欧米では未知の食品でした。ところが近年では、脂質が少なく栄養価が高く健康的な日本食が見直され、特に寿司の普及により海苔の評価が大きく変わったのです。海苔の食べ方と栄養と旨味の関係を解説します。
海苔は焼くことで栄養と旨味が増す
食品は熱を加えたり茹でたりすることで、通常は栄養が半減します。ところが海苔は焼く(熱を加える)ことにより栄養と旨味が増す珍しい食品です。
また脂質が多い食品には脂溶性のビタミンが多く、食べ過ぎると体内に蓄積され健康障害を起こします。ところが海苔に含まれるビタミンB群やビタミンCは水溶性なので、過剰摂取しても体外に排泄され、食べ過ぎによる弊害の心配がまったくありません。
海苔の旨味の秘密
食品の旨味には昆布のグルタミン酸、かつお節のイノシン酸、椎茸のグアニル酸が三大旨味成分と言われています。また旨味成分が混ざることにより1+1=2ではなく相乗作用により3〜5にもなるのです。
海苔はこれらの旨味成分をすべて持っているだけでなく、焼くことによりさらにアップします。しかも栄養価が損なわれず食べやすい海苔は、健康食品の日本代表と言っても過言ではありません。
海苔はご飯文化が生んだ食品
海苔は、おにぎりや海苔巻き、お茶漬けなどほとんどご飯と一緒に食べます。この食べ方は糖質(炭水化物)に偏りがちなご飯を、ビタミン豊富な海苔で栄養のバランスをとっているのです。栄養学など知らない昔の人の生活の知恵と言えます。
また海藻の海苔を紙のように薄くすき乾燥させ、巻いて食べるという発想は、ご飯を主食とする日本人ならではのアイデアです。海苔はご飯文化が生んだ栄養豊富な優れた自然食品と言えます。
海苔の保存方法
海苔は湿気を含むと、栄養価も旨味も共に落ちてしまいます。海苔は良質のビタミンやミネラルを豊富に含んだ自然食品ですが、美味しく食べられなければせっかくの栄養がだいなしです。栄養を失わずいつも美味しい状態を保つ保存方法を紹介します。
密封容器で乾燥状態を保つ
蓋つきの缶やチャック付きのビニール袋に海苔と乾燥剤を入れ、しっかりと密封して温度があまり上がらない冷暗所で保存しましょう。特に夏場は気温も湿度も高いので要注意です。また海苔を取り出すときには、必要量を素早く取り、容器の中に湿気が入り込まないようにしましょう。
一度容器から出したのりは戻さない
容器から一度取り出した海苔を容器に戻すのは厳禁です。多く出しすぎたとしても戻してしまうと他の海苔全部を湿らせてしまいます。これを防ぐために海苔を小分けしておく方法があります。保存用と普段使い用と容器を2つ用意し、普段使い用から取り出して使う方法です。こうすることで海苔全部が湿るのを防ぐことができます。
長期保存は冷蔵庫や冷凍庫を利用
海苔を大量に購入や贈答品でいただいた場合は、使い切りそうな量を残しあとは冷蔵庫または冷凍庫に入れて保管すれば長期保存が可能です。ただし冷蔵・冷凍保存した海苔は、外気に馴染むまで待ってから開封します。馴染まないうちに慌てて開封すると、あっという間に空気中の水分を吸って海苔が湿ってしまうので注意しましょう。
栄養豊富な海苔で豊かな食生活を!
海苔は「海の野菜」と言われるほど、ビタミンやミネラルなどの栄養を豊富に含む健康食品です。しかも調理の手間がかからず手軽に食べることができます。ここまで海苔の栄養とその働き、食べ方や保存方法を紹介してきました。これらを参考にして豊かで健康的な食生活を楽しんでください。
海苔以外の食品の栄養が気になる方はこちらもチェック!
当サイトでは栄養食品に関する記事をたくさん掲載しております。海苔だけでなく栄養がある食品や食べ方、働きについて興味がある方はぜひ参考にしてください。

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出典:photo-ac.com