北アルプスの烏帽子岳の登山コースをご紹介
烏帽子岳は長野県大町市と富山県富山市に及ぶ標高2628mの山です。飛騨山脈の中央部に位置し、日本二百名山に数えられています。烏帽子岳といえば、日本三大急登に数えられるブナ立尾根で有名です。
また、このコースは裏銀座縦走コースのスタート地点でもあり、槍ヶ岳へと通じています。烏帽子岳へ最短で行けるコースと合わせて実にさまざまなコース設定が可能です。
烏帽子岳の登山コースは無限に広がる
さらに、高瀬ダムを高瀬川に沿って北上していくと七倉ダムにたどり着きますが、この七倉ダムから七倉岳や船窪岳などを経由して烏帽子岳へと至るコースもあります。
このエリアから蓮華岳を終点とする後立山連峰縦走コースに挑戦するなど、登山計画は無限です。今回は烏帽子岳から広がるいくつかのコースをご紹介します。なお、本稿は2021年7月5日現在の情報を元に作成しております。
烏帽子岳とは山頂部の岩峰が象徴的な二百名山
烏帽子岳の山頂には、縦に長い柱のような形の岩があります。この山頂の岩の形状が烏帽子に似ていることから、烏帽子岳の名が付いたとされる由来です。
烏帽子岳の名がついた山は、国内に何坐もあります。たとえば、同じく長野県の南アルプスに鎮座する赤石山脈系の烏帽子岳は標高2726mで、北アルプスの烏帽子岳よりも標高が高いです。しかし、日本二百名山に名を連ねるのは北アルプスの烏帽子岳のみとなっています。
山頂の大パノラマの景色が魅力
烏帽子岳の山頂は烏帽子のように尖がった岩の上です。烏帽子岳の山姿は凛として美しく、山頂に向かうまでの道中、その姿に向かって行きます。烏帽子岳の山頂の岩場をよじ登るようにして上へ進んでいくと最高地点です。
山頂からは北には立山の展望、南東には表銀座縦走路コースの景色が広がり、美しい大パノラマの景色を独り占めできるのも魅力です。山頂には「烏帽子岳」の道標があります。ぜひ記念撮影をしたいです。
烏帽子岳コース①【ブナ立尾根最短コース】
烏帽子岳のトレッキングコースの中でも、最短コースがこちらです。登山口は長野県大町市にある高瀬ダム高瀬ダム近くにあります。健脚の方であれば日帰りできそうなコースですが、甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根や谷川岳の西黒尾根と並ぶ三大急登でもあるため、初心者の方は無理せずに山小屋に宿泊していくのがおすすめです。
登りが厳しいコースではありますが、整備されていて難所はありません。稜線からは北アルプスのすばらしい景色が楽しめます。
トレッキングコース概要やコースタイム
ブナ立尾根の急登はスタートからはじまります。権太落し、槍見台などのポイントを通り、コースタイム4時間で三角点に到着です。穏やかな道や急な道、急斜面のトラバースなどもありますが、コースタイム1時間半ほどで烏帽子小屋となります。
小屋から烏帽子岳山頂に進むと、展望が開けてきます。途中、ニセ烏帽子岳が前方に。最後に幅の細い岩棚をトラバースし、岩場を登ると烏帽子岳山頂で。小屋から山頂まではコースタイム1時間弱となっています。
登山口までのアクセス方法
ブナ立尾根登山口へはJR信濃大町駅からアクセスします。高瀬ダムまでタクシーで45分ほどです。ブナ立尾根登山口へ車でアクセスする際、長野道の安曇野ICから七倉山荘の近くの無料駐車場へと向かいます。ここから高瀬ダムまでのコースタイムは2時間ほどです。
高瀬ダムから不動沢トンネルを進み、吊橋を歩き、丸太の橋を渡るなど、登山のスタートから楽しいコースです。高瀬ダムから登山口までのコースタイムは40分ほどとなっています。
山小屋情報
烏帽子岳へと通じるブナ立尾根に佇む烏帽子小屋。1924年に建てられて以来、100年近い歴史を持つ山小屋です。高瀬ダムからブナ立尾根を登った先に位置し、烏帽子岳登山の足掛かりとなる重要な小屋となっています。
山小屋の宿泊のほか、キャンプが可能です。現在、烏帽子岳は、完全予約となっています。スタッフと電話で直接連絡する以外の方法はありません。山小屋を利用する前に、利用できることなどを確認しておきましょう。
烏帽子小屋
- 住所長野県烏帽子岳三ツ岳鞍部
- 電話番号090-3149-1198(8j30~19h)
- 公式サイトURLhttp://home.384.jp/eboshi2628vera/
- アクセス高瀬ダムより徒歩6時間ほど
烏帽子岳コース②【七倉ダム~高瀬ダム】
この烏帽子岳のコースは、七倉ダムそばにある七倉登山口からスタートし、七倉岳、船窪岳、不動岳、南沢岳、そして烏帽子岳を経由し、烏帽子小屋から高瀬ダムに至る難易度の高いコースです。
初心者の方にはいささかハードで、日帰りトレッキングは難しいため、途中の小屋で宿泊します。はしごや鎖場があり、急登も続くコースです。初心者の方は登山の経験を踏んでから挑戦しましょう。
トレッキングコース概要やコースタイム
このコースは七倉山荘そばの登山口からスタートします。船窪小屋までのコースタイムは6時間です。唐沢ノゾキ、急登の鼻突八丁、高瀬ダムの景色が美しい天狗ノ庭を経て船窪小屋へ。ここから20分ほどで七倉岳となります。
七倉岳から船窪岳までは1時間ほど、さらに不動岳まで3時間半ほど、南沢岳まで1時間半、四十八池を経て烏帽子岳まで1時間と各山の山頂を目指します。最後は烏帽子小屋からブナ立尾根コースの復路を経て高瀬ダムが終点です。
登山口までのアクセス方法
七倉登山口まで公共交通機関でアクセスする場合、JR信濃大町駅からタクシーを利用します。およそ45分で七倉山荘に到着します。東京電力のゲートを通り、トンネル手前から船窪新道登山口へと向かいます。
七倉山荘の近くには七倉駐車場があります。50台ほど駐車できて無料です。ただし、登山シーズンには混雑しますので出発の時間を調整する必要があります。
山小屋情報
七倉山荘【七倉登山口ちかくで日帰り温泉も可能】
七倉登山口のすぐ近くの小屋で、烏帽子岳登山に限らず、裏銀座縦走コースなどの拠点としても便利です。初心者の方は無理に日帰りせず、こちらの山小屋に前泊して登山を楽しむことができます。
また、日帰り温泉の利用も可能です。登山の後、疲れを癒してから帰路につくのにちょうどいい温泉となっています。カフェで食事もできるので、利用の仕方はいろいろです。
七倉山荘
- 住所〒398-0001
長野県大町市平高瀬入2118-37 - 電話番号090-6007-0208(予約)
0261-22-4006 - 公式サイトURLhttp://www.webmarunaka.com/nanakura/index.html/
- アクセスJR大糸線信濃大町駅からタクシーで45分ほど長野県大町市街より車で20分、長野道安曇野ICから約50㎞
船窪小屋【アットホームで人気の山小屋】
七倉岳の山頂から七倉ダムへと下った稜線に位置する山小屋、船窪小屋。アットホームな小屋としてリピーターや支持者の多い山小屋として有名です。
電気が通っていないため、明かりやランプで灯し、暖房は囲炉裏で取っているという山小屋で、厳しい悪路を歩いてきた登山者を温かくもてなしてくれます。テント場は小屋から30分ほどにあり。
船窪小屋
- 住所〒398-0001
長野県大町市平高瀬入国有林 七倉岳山頂付近 - 電話番号080-7893-7518
- 公式サイトURLhttps://funakubogoya.net/
- アクセス七倉登山口から6時間ほど
烏帽子岳コース③【裏銀座縦走コース】
裏銀座縦走コースは、高瀬ダムからスタートし、ブナ立尾根から烏帽子小屋を経由して、水晶岳、鷲羽岳、双六岳、千丈乗越、槍ヶ岳、そして上高地へと到るおよそ50kmのコースです。
難易度は非情に高く、相当の体力や経験が必要となります。健脚の方は3泊ほどで踏破できるコースです。天候などを考慮して4泊か5泊程度の日程を想定しておきましょう。
トレッキングコース概要やコースタイム【1日目】
裏銀座縦走コースの1日目は、高瀬ダムから烏帽子岳です。烏帽子岳のコース①でもあるブナ立尾根コースを使います。急登がある難易度の高いコースとなりますが、烏帽子小屋で宿泊し、足をならしてペースをつかみましょう。
トレッキングコース概要やコースタイム【2日目】
2日目は、烏帽子小屋から水晶小屋へと向かいます。アップダウンのある道を1時間半ほどで三ツ岳北峰となり、三ツ岳を西側に巻きながら進みます。3時間ほどで野口五郎小屋で、巨岩を過ぎると野口五郎岳山頂です。
ここから水晶小屋までは歩きやすく、景色も美しいため楽しくトレッキングできます。水晶小屋から水晶岳までは往復1時間強で、山頂からの槍ヶ岳などの展望が自慢です。
トレッキングコース概要やコースタイム【3日目】
3日目は水晶岳から双六岳へと進みます。水晶小屋から1時間ほどでワリモ北分岐です。ワリモ岳を経て、稜線を鷲羽岳へと進みます。鷲羽岳の山頂から見る槍ヶ岳は見事です。ここから1時間ほど下れば三俣山荘となります。
三俣山荘から三俣蓮華岳へは石がゴロゴロしています。ここから稜線コースで1時間半、景色が楽しめるポイントを経て、双六岳です。双六岳は槍ヶ岳の景色が美しく、フォトスポットが点在します。双六岳から1時間弱で双六小屋です。
トレッキングコース概要やコースタイム【4日目】
4日目、双六小屋から槍ヶ岳へ、見所の多い西鎌尾根を進みます。途中、縦沢岳、縦沢東峰、硫黄乗越、硫黄ノ頭、左俣岳などを経て、4時間半ほどで千丈乗越です。
ここから2時間で槍ヶ岳に到着します。テント泊もできる槍ヶ岳小屋が手前にあり、槍ヶ岳までのピストンはおよそ1時間ほどです。鎖場やハシゴがある岩場登りですので注意が必要。
トレッキングコース概要やコースタイム【5日目】
5日目は、槍ヶ岳から天狗原へと下りて行き、水俣乗越分岐、ババ平、槍沢を経て横尾となります。横尾からは徳沢、明神、河童橋へと3時間ほど下っていくと、上高地バスターミナルです。ここで長い登山コースが終わります。
登山口までのアクセス方法
上高地バスターミナルからは、東京方面、長野方面、松本方面、名古屋方面と、各方面行のバスが発着します。バスの時刻などは事前に確認しておいたほうがいいでしょう。
また、バスターミナル近くにはホテルも点在します。日帰り温泉などを楽しめるホテルもありますので、疲れを癒してから帰路につきたいです。
山小屋情報
野口五郎小屋【北アルプスで人気の山小屋】
手作りアイス、ごろりんアイスで人気のアットホームな山小屋が野口五郎小屋です。北アルプス屈指の強風地帯に佇み、登山者の安全を守るべく作られたのだとか。ランチをいただけるなど登山者にうれしいサービスもあります(2021年は食事サービスが制限されています)。事前に必ず予約を。
野口五郎小屋
- 住所〒398-0000
長野県大町市平 - 電話番号090-3149-1197
0261-22-5758(営業期間) - 公式サイトURLhttps://www.gorougoya.com/
- アクセス高瀬ダム登山口から約8時間50分水晶岳山頂から約3時間20分
水晶小屋【小さいながら人気のある山小屋】
悪天候で二度も全壊する被害を受けた水晶小屋。再築されたのは2007年、自然のエネルギーを理容している山小屋です。宿泊の他、食事などの提供もあります。宿泊を希望される方は必ず予約をしましょう。
水晶小屋
- 住所〒399-8301
長野県安曇野市穂高町有明5718-116 - 電話番号0263-83-5735
- 公式サイトURLhttps://kumonodaira.net/suisho/
- アクセス七倉温泉から野口五郎岳経由12時間50分水晶岳から下り30分
三俣山荘【豊かな水で淹れたコーヒーで一息】
三俣山荘は、三俣蓮華岳と鷲羽岳のコルに佇む山荘です。黒部川の源流が近くにあり、そのおいしい水で淹れた自慢のコーヒーを飲みながら、穂高連峰などの美しい峰々を眺めながらひと息つくことができます。
宿泊、テント泊のほか、弁当や食事の準備も可能です。三俣山荘は完全予約制ですので、利用する登山者は忘れずに予約しましょう。
三俣山荘
- 住所〒930-1458
富山県富山市黒部利割 - 電話番号090-4672-8108
- 公式サイトURLhttps://kumonodaira.net/mitsumata/
- アクセス新穂高温泉下から徒歩約10時間
双六小屋【お花に囲まれた北アルプスの山小屋】
双六小屋は、水が豊かでお花に囲まれた山小屋です。北アルプスの楽園との異名を持ち、双六岳と縦沢岳のコルに佇みます。小屋から水晶岳や鷲羽岳などの景色を眺めることが可能です。宿泊のほか、テント泊も可能です。利用の際は電話で予約をしましょう。
双六小屋
- 住所〒506-1308
岐阜県高山市上宝町金木戸 - 電話番号0577-34-6268(予約)
090-3480-0434 - 公式サイトURLhttp://www.sugorokugoya.com/sugoroku/shokai/sugoroku_shokai.html
- アクセス新穂高温泉から小池新道経由7時間40分双六岳から下り45分
槍ヶ岳山荘【北アルプスを代表する歴史ある山小屋】
槍ヶ岳山荘は1926年に建てられた山小屋です。槍ヶ岳山頂の近くに佇み、360度のパノラマも眺望を楽しむことができます。収容人数も多く、登山コースもいろいろです。こちらの山荘では、登山シーズンになると毎朝、焼き立てのパンが販売されることがあります。
槍ヶ岳山荘
- 住所岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂槍ヶ岳
- 電話番号090-2641-1911
- 公式サイトURLhttps://www.yarigatake.co.jp/yarigatake/
- アクセス上高地から10時間20分槍ヶ岳から30分
烏帽子岳トレッキングで必要なもの
烏帽子岳への登山道は急登が多く、初心者には難易度の高い登山となります。このため、烏帽子岳登山で必要なものとは登山経験といえます。具体的には、地図が読める力や、はしごや鎖場が通れる身体能力です。
とりあえず行けるところまで行ってみるというのもひとつですが、この場合、無理だと思ったら引き返す判断力が必要となります。やはり、近場の山で経験を積むことが大切です。
装備は季節に合わせた登山具で
登山で必要とされる経験や能力以外では、特別な装備の必要はありません。季節に合わせた登山装備で、必要に応じてトレッキングポールなどを持参しましょう。まずは烏帽子岳までのピストンに出かけようという方は、烏帽子岳で宿泊する場合は小屋の予約も必要となりますので忘れずに。
難易度の高い烏帽子岳を目指そう
烏帽子岳は日本三大急登のひとつで知られる北アルプスの山です。烏帽子岳の周囲には美しい山があり、登山者のレベルに応じてさまざまなコースがあります。
まずは烏帽子岳までのピストンからはじめ、少しずつ足を伸ばしていきたいです。難易度の高い北アルプス登山の足掛かりにもなるため、烏帽子岳への登山で多くの経験が得られます。ぜひ目指したい北アルプスの美峰です。
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