果物と野菜の違いの明確な定義はない!
果物か野菜かどちらか意見がわかれる代表的なものといえば「スイカ」そして「トマト」ではないでしょうか。スイカもトマトも「果物」という説もあり、「野菜」という説もあります。この違いはなぜ生まれたのでしょうか。
結論からいうと、果物と野菜の違いに明確な定義や見分け方はありません。こんなお話をすると拍子抜けしてしまうことでしょう。しかし、明確な定義や見分け方がないからこそ、スイカやトマトが果物なのか野菜なのかという問いに対して、意見がわかれるのです。
果物と野菜の違いの定義は分野で変わる
逆に言うと、果物と野菜の違いについてはひとつの定義や見分け方で白黒がわかれるわけではなく、さまざまな定義や見分け方があるということです。一般的な考え方として果物や野菜の違いについての定義は「生産」「流通」「消費」のそれぞれの分野で異なってきます。
ここからはそのさまざまな定義についてひとつずつ解説していきましょう。
公的機関3つの果物と野菜の違いの定義をみていこう!
ここでは「生産」「流通」の分野の代表として「農林水産省」、「消費」の分野の代表として「総務省」と「文部科学省」のそれぞれの定義や判別方法についてみていきましょう。
いろいろな視点からみていくことで果物と野菜の理解を深めることができます。
農林水産省の果物と野菜の違いの定義は?
生産分野での定義の決め手は「植物の特徴」
最初に、「生産」「流通」分野を代表して、農林水産省の果物と野菜の違いの定義をおさえておきましょう。まず農林水産省では、果物は一般的に「果樹」と呼んでいます。果物という呼び名は一般的なもので、学術的には存在しません。そして「概ね2年以上栽培する草本(そうほん)植物及び木本(もくほん)植物であって、果実を食用とするもの」を果樹として定義しています。
一方で「野菜」の定義は「田畑で栽培され、副食物であること。加工を前提としてしないもの。草本性であるもの」とされています。ここでいう副食物とは「おかず」という意味です。また加工を前提としていないというのは、例えばコンニャクイモは野菜ですが、コンニャクは加工されているので野菜ではないといった意味になります。
草本植物と木本植物の違い
ここで「草本植物」、「木本植物」の違いの説明をしましょう。草本性と木本性の違いをざっくりいうと「草は数年で枯れるイメージ、木は何十年も生き続けて年々太く大きくなっていくイメージ」です。
草本と木本の大きな違いは「形成層」の有無がポイントとなります。木本にはありますが、草本にはありません。形成層は木質部(木の幹の内部の堅い部分)をつくりながら成長することで、幹は太くなっていきます。一方、形成層のない草本は、ある程度成長するとそれ以上太くなりません。
定義の決め手は「園芸学に基づく植物や栽培の特性」
果物と野菜の違いをわかりやすく解説!
果物と野菜の違いのそれぞれの定義をわかりやすく言い直しましょう。果物は「2年以上以上栽培する植物で、果実を食用とするもの」、野菜は「田畑で栽培されていて、おかずであり、加工を前提とされる、木になるのものではないもの」ということになります。このように「生産」分野としての果物と野菜の違いの決め手は、「園芸学に基づいた植物や栽培の特性」です。
スイカが「野菜」といわれる理由はここにあった
農林水産省では、果物と野菜を先に述べたような定義で違いを区別しています。スイカは一年生植物で、果樹の定義である「概ね2年以上栽培する」の部分に反しています。よってスイカは「野菜」と分類されるのです。他にもメロン、いちごも同じく一年生なので「野菜」としてカテゴライズされます。冒頭でお話したスイカについて果物か野菜かの意見の違いはここからきているのです。
果物だけど野菜と呼ばれる「果実的野菜」とは?
しかしスイカもメロンもいちごも普段は、野菜ではなく果物として食べられていることが多いと思うのです。そこで農林水産省は野菜に分類されているものの果物として食べられている作物を「果実的野菜」として分類しています。
農林水産省は毎年、果樹と野菜をわけてそれぞれ「生産出荷統計」を作成しています。このとき野菜を「根菜類」「葉茎菜類」「果菜類」「果実的野菜」「香辛野菜」として分類おり、スイカ、メロンやいちごは「生産」「流通」分野では「野菜」として扱われているのです。
野菜だけど果物と呼ばれる「野菜的果実」とは?
一方で「野菜的果実」と呼ばれるものも存在します。その代表がトマトです。トマトは木本植物になる果実ですので、農林水産省の定義でいうと「果物」ということになります。しかし野菜として扱われることが多いので「野菜的果実」と呼ばれています。もうひとつの疑問、「トマトは果物か野菜なのか」も意見がわかれる理由もここでわかりました。
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バナナ、パイナップルは「果物」か「野菜」か?
「果実的野菜」はメロン、スイカ、いちごの他にもあります。その代表的なものが「バナナ」と「パイナップル」です。バナナやパイナップルは木になるイメージですが、バナナやパイナップルがなるのは木ではありません。
バナナはバショウ科、パイナップルはパイナップル科の草本植物です。木になるものではない、という観点から果実的野菜に分類されます。しかしバナナ、パイナップルは多年草という観点からいうと「果物」ということもできるのです。
総務省の果物と野菜の違いの定義は?
家計調査にみる総務省の果物と野菜の違いの定義は?
今度は「消費」分野の代表として、総務省の果物と野菜の違いの定義をみていきます。総務省は毎年、国民生活の家計収支の実態を把握するために「家計調査」を作成しています。そのなかの収支項目かに「食料」の分類があります。そこで、果物と野菜の違いはどのように区別されているかを説明します。
スイカは総務省では「果物」と分類される
まず野菜についてですが、野菜は「生鮮野菜」と分類され、さらに「葉茎野菜」「根菜」「他の野菜」の3つの項目にわけて統計がとられています。また果物については、「生鮮果物」として統計がとられているのです。そしてメロン、スイカ、いちごはこちらに含まれるということになります。
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文部科学省の果物と野菜の違いの定義は?
食品成分表にみる文科省の果物と野菜の違いの定義は?
「消費」分野の代表のもうひとつとして、文部科学省の果物と野菜の違いの定義をみていきます。「日本食品標準成分表」とは、文部科学省が国民の栄養改善の目的より食品のさまざまな栄養成分をデータとしてまとめたものです。
スイカは文科省の定義でも「果物」に分類される
こちらのデータでは、果物は「果実類」、野菜は「野菜類」として分類され、さらに「野菜類」は「緑黄色野菜」「その他の野菜」「野菜ジュース」「漬け物」にカテゴライズされています。そしてメロン、スイカ、いちごは「果実類」にカテゴライズされているのです。
総務省と文科省の定義は「食卓での感覚」に近い
「消費」分野の総務省と文部科学省の果物と野菜の違いの定義を確認してみると、より私たちの日常の感覚に近いと感じたのでないでしょうか。メロンやスイカ、いちごはスーパーでは間違いなく「果物コーナー」に並べられていますし、食卓で実際に食べるときも「果物」として食べています。
その作物が食用として「おかず」としてなのか「デザート」としてなのかどちらを目的とするのかに基づいていてわかりやすいです。
簡単な果物と野菜の違いの定義を紹介!
行政での果物と野菜の違いの定義や判別方法について触れました。トマトやスイカが果物と野菜で意見に違いがある理由を理解できたのではないでしょうか。しかし冒頭にも触れたように果物と野菜の違いの線引きに明確なものはありません。それは地球上にある作物(植物)は、多種多様でひとつの定義できっちりと分類することがむずかしいのです。
この章では、そんな線引きのむずかしい果物と野菜の違いについて、公的なもの以外のさまざまな見解を紹介します。いろいろな果物や野菜を頭に浮かべながら考えてみてください。きっと理解が深まりやすくなるでしょう。
果物と野菜の違いを「食べ方」で区別してみよう
まずは果物と野菜の違いを食べ方で区別する方法を紹介しましょう。果物と野菜の違いの基準を「実だけを食べるものは果物、実以外の部分も食べるもの野菜」と定義づけます。
たとえば「りんご」と「にんじん」を例に出して考えましょう。りんごは実のところしか食べないので果物。そしてにんじんは実の部分も食べますし、葉の部分も食べるので野菜です。わかりやすくて簡単な定義だと思います。
例外は「なす」「かぼちゃ」「メロン」など
もちろんひとつの定義なので例外はあります。例えば「なす」や「きゅうり」です。これらは実だけを食べます。実以外のものを食べないのでこの定義に照らすと「果物」ということになります。「かぼちゃ」「スイカ」「メロン」などもこちらの定義では果物になってしまうのです。
果物と野菜の違いをの定義を「調理法」で区別してみよう
次に果物と野菜の違いを調理法で区別する簡単な方法を紹介しましょう。果物と野菜の違いの基準を「そのまま食べられるものを果物、加熱したり、調味料を必要とするものを野菜」と定義づけます。
たとえば「もも」と「ごぼう」を例に出して考えましょう。ももはそのままで食べられるので果物。そしてごぼうは加熱したり、調味料とともに調理したりして食べるので野菜です。
例外は「トマト」「レタス」「水菜」など
こちらにも例外がありました。それは「トマト」「レタス」。これらは加熱して食べることもありますが、そのまま生でも食べられます。この定義に照らすと「果物」ということになるのです。その他にも「パプリカ」「水菜」などもこちらの定義では果物になってしまいます。
果物と野菜の違いをの定義を「収穫法」で区別してみよう
次に果物と野菜の違いを収穫法で区別する方法を紹介しましょう。果物と野菜の違いの基準を「樹木から収穫でき、1年、2年たってもまた収穫できるものを果物、畑などで育てて1年かけて育て、収穫したら翌年は再度、種や苗からもう1年育てないといけないものを野菜」と定義づけます。
たとえば「柿」と「かぼちゃ」を例に出して考えましょう。柿は樹木から収穫した後、1年後もまた収穫できるので果物。そしてかぼちゃは3月から4月に種まきが行われ、6月から10月にかけて収穫され、翌年にはまた種まきをしなければならないため野菜です。
例外は「トマト」「ごぼう」「ほうれん草」など
ただこちらの定義にも例外はあります。野菜はほとんどが1年で収穫される一年草ですが、なかには1年以上生きられるものも。その代表が「トマト」です。トマトは低温に当たらなければ越年でき、そのまま2年目も実を収穫できます。この定義に照らすと「果物」ということになるのです。
その他にも「にんじん」「ごぼう」「ほうれん草」などは収穫せずに生やしておくと、2年目に花を咲かせ種子を落としたあと枯れていく作物なので例外となるでしょう。
松本人志さんの提唱した「果物と野菜の違い」とは?
さまざまな定義をもってしても、なかなか果物と野菜の違いを決定付けるものがないなか、2018年にお笑い芸人コンビ「ダウンタウン」の松本人志さんがテレビ番組で果物と野菜の違いを提唱したことが話題になりました。
同氏もインターネットなどで果物と野菜の違いについて調べつくしたもの、矛盾が多いので困惑を隠せなかったということで、自身の定義を提唱したのです。
その果物と野菜の違いの定義とは「マヨネーズで食べれるか、食べられないか」という非常に簡単でかつ斬新なものでした。マヨネーズ食べれたら「野菜」。食べられなかったら「果物」だと同氏はいいます。
この判別法に対して視聴者からは称賛や共感の声が溢れました。お笑い芸人ならではのユーモアな着眼点と国民が誰でも判断できる基準を提唱したことで、多くの称賛と共感を呼んだのです。
まとめ
今回は果物と野菜の違いについてお話ししました。スイカが野菜で、トマトが果物と位置付けられる理由は、実は園芸学や植物の特性に基づいていたのです。これであなたの頭の中もすっきりしたことでしょう。人に聞かれたときも迷わずズバッと答えられるようになればかっこいいです。ぜひ今回得られた知識を披露してみてください。
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当サイトでは果物や野菜についてのさまざまな記事があります。果物や野菜について知識を深めたい方はぜひ以下の記事のチェックしてみましょう。ぜひさまざまな見解を知ることで奥が深い果物と野菜の知識を深めてください。
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