ヤシの木は189属約2400種類もある!
ヤシ科のヤシの木は189属があり、さらに種類は2400といわれています。熱帯と亜熱帯地域で自生し、地域固有のヤシの木があるのです。細い葉をたくさんつけるヤシの木は涼し気なため、南国ムードを演出する観葉植物として人気があります。
多くのヤシの木は、夏は直射日光を避けて半日陰で栽培し、冬は耐寒性がないため屋内で管理します。屋内であれば日本の冬でも栽培できるので、素敵なヤシの木を見つけて育ててみませんか。(本記事は2021年7月4日時点の情報です)
楽しみ方①ヤシの木の葉っぱ
ヤシの木の最大の魅力は、いろいろな形をした細い葉っぱにあるといえます。ほんとんどのヤシの木の葉っぱは深く細く切れ込んでいるため、涼し気に見えるのです。
さらにヤシの木の主な葉っぱは、複数の葉っぱが羽のように葉軸に付いている「羽状複葉」、掌のような形状の「掌状複葉」に分けられます。垂れ下がらずV字状に反る種類もあるので、細かい違いも観察すると楽しいですよ。
楽しみ方②ヤシの木の花や果実
ヤシの木の果実や花は地味な印象ですが、南国らしい独特なニュアンスが感じられます。2,400種類もあるため、それぞれ独特な花や果実を付けます。
細い葉っぱの間から小さい花を付ける様子は、何だか愛しい気持ちにさせてくれることでしょう。果実はさらに独特で、同じヤシの木とは思えないほどに形状に違いがあるので驚きを隠せません。いろいろと個性的なヤシの木の花や果実を観賞するのも、楽しみ方の一つです。
楽しみ方③ヤシの木の幹
ヤシの木は葉っぱや花も楽しみの一つですが、それぞれの種類ごとに特徴がある幹も鑑賞価値が高いといえます。竹のような節のある種類やかさぶたのようなゴツゴツした種類、まっすぐ伸びずにやや曲がっている種類などがあり、実にユニークです。
小さい苗のうちはまだ特徴がはっきりしていないですが、大きくなるにつれ特徴が出てくるので、苗の成長を楽しみに待ちましょう。
ヤシの木の人気な11種類と特徴
①地植えで越冬できる「ココスヤシ」
ヤシ科ブティア属の「ココスヤシ」は耐寒性に優れている、アルゼンチン北東部やウルグアイなどの南米が原産のヤシの木です。羽状複葉が放射状に伸び、他のヤシの木に比べて樹形にはまとまりがあります。
多くのヤシの木は耐寒性が弱いため、日本では屋外で越冬させられません。しかしココスヤシは冬場でも-7℃までは屋外で栽培できるため、本州の温暖地域では街路樹や公園の庭木などで地植えされているのです。
②小型で可愛い「テーブルヤシ」
ヤシ科テーブルヤシ属の「テーブルヤシ」は中南米が原産で、テーブルの上で観賞できる小さい種類です。非常にコンパクトな観葉植物として楽しめる小型のヤシの木となっています。
葉は美しい濃い緑をしており、羽状複葉です。テーブルヤシには葉の形状が″矢羽状″で、色が灰緑色のヒメテーブルヤシという種類も人気があります。
③ヤシの実で苗を育てる「ココヤシ」
ココナッツジュースで有名なヤシ科ココヤシ属のココヤシは、ポリネシア周辺が原産のヤシの木です。少し斜めに伸びる点や途中で屈曲している点が特徴で、葉は成長すると美しい羽状複葉になります。
日本ではココナッツの種子から生えた樹木が鉢植えで販売されており、南国ムード満点です。
④黄緑色の細い葉が涼し気「アレカヤシ」
ヤシ科ヒメタケヤシ属の「アレカヤシ」はマダガスカル原産のヤシの木で、株立ちする種類です。放射状に茂る細い黄緑色の葉が涼し気なことから、飲食店や公共施設で見かけることが多い種類となっています。
ヤシの名前どおり、殻に包まれた長さ2センチほどの種子が実り、鳥類などの小動物が食糧とするヤシの木の種類です。
⑤掌のような葉が美しい「シュロチク(棕櫚竹)」
ヤシ科カンノンチク属の「シュロチク(棕櫚竹)」は、中国南部や南西部が原産の小型のヤシの木です。ヤシ科ですが、低木の竹に似ている点から名づけられました。
株立ちする幹から出る″掌状複葉″の葉は垂れ下がらず上向きで、傘のように美しく広がります。別名「緑の宝石」とも呼ばれ、飲食店などの観葉植物として人気です。
⑥食べられる小さい果実「シンノウヤシ」
ヤシ科ナツメヤシ属の「シンノウヤシ」は別名をフェニックス・ロベレニーといい、ラオスやベトナム北部原産のヤシの木です。小型から中型の種類のヤシの木で、羽状複葉の細い葉は100枚ほどの小さい葉から成っています。
涼し気な印象なため日本の蒸し暑い夏でも爽やかに過ごせることでしょう。黄色の小さい花を付け、小さい果実は食用になります。
⑦葉が反り上がる「トックリヤシモドキ」
ヤシ科トックリヤシ属の「トックリヤシモドキ」は、インドの東方沖のマスカリン諸島が原産です。羽状複葉の葉は下がらず、軸に沿って上に反るのが特徴となっています。
トックリヤシとの違いは、″モドキ″の最大樹高は10メートルですが、トックリヤシは15メートルです。根元も太くなるため観葉植物は″モドキ″がよいでしょう。
⑧編み笠にも作れる沖縄原産の「ビロウ」
ヤシ科ビロウ属の「ビロウ」は、日本(沖縄県)や台湾原産のヤシの木です。葉は傘のように美しく丸く広がる掌状複葉になっています。
沖縄では古来「クバ」または「アヂバ」の名前で知られており、葉で編んだ笠が風通しのよさと撥水性の高さで漁や畑仕事などで利用されてきました。果実は与那国島では味噌に利用され、若い芽は食用されています。
⑨V字に反る葉が美しい「ケンチャヤシ」
ヤシ科ケンチャヤシ属の「ケンチャヤシ」はオーストラリア原産で、自生地での樹高は7~8メートルほどになります。超披針形の葉は羽状複葉で、小葉が20~30対になっているのです。
葉の軸に沿ってV字にくっきり反る点が、多くのヤシの木とは異なります。ゆるやかな弓状にカーブする姿が美しく、観葉植物としても人気な種類のヤシの木です。
⑩カロリー豊富な果実「ナツメヤシ」
ヤシ科ナツメヤシ属の「ナツメヤシ」は古くから栽培されており、メソポタミア周辺が原産といわれています。同種でフェニックスがあり、羽状複葉の葉が幹から立ち上がるように放射状に伸びる姿は勇壮です。
デーツと呼ばれるカロリーの高い果実はビタミンCも豊富で保存性が高いことから、原産地域では主要な食品の一つといわれています。
⑪葉が切れ込んでいない「ウチワヤシ」
ヤシ科ウチワヤシ属の「ウチワヤシ」は名称通り団扇(ウチワ)のような独特な葉っぱが特徴の、アフリカ原産のヤシの木です。多くのヤシの木の葉っぱは深く裂けて細い形状の複葉ですが、ウチワヤシの葉っぱは裂けていない単葉となっています。
ヨーロッパでは人気ですが、日本ではあまり流通されていないので機会があれば栽培してはいかがでしょうか。
ヤシの木の育て方の10のコツ
ヤシの木は熱帯から亜熱帯で自生する植物のため、観葉植物として、日本では沖縄県以外の地域で越冬させる場合は鉢植えをおすすめします。沖縄県は冬の気温が20℃近くあるため、屋外でも安心して栽培できるのです。
ヤシの木の育て方は多くの種類に共通しています。育て方の10のコツについてご紹介するのでご参考にしてください。
1.屋外で「ココスヤシ」を育てる場合
ココスヤシは耐寒性が比較的強くて耐陰性があるため、半日陰の場所でも地植えできます。用土は、腐葉土と有機質肥料を混ぜたものを株を植える穴に埋めます。ココスヤシの苗木を入れ、ぐらつかないよう株を土でしっかり盛り付けて安定させてください。
冬場は霜が当たらないように株元をワラで覆っておきます。種からの実生でも増やせるので、ぜひ種まきに挑戦してみませんか。
2.ヤシの木は直射日光以外の「日向」が好き
ヤシの木は太陽が大好きですが半日陰でも育つため、一年中屋内での管理ができます。しかし成長期の春から秋にかけては屋外の日の当たる場所で管理してください。苗を日光に当てることで丈夫なしっかりした株に育ちます。しかし直射日光は葉焼けを起こすので避けて管理してください。
冬は屋外での越冬は難しいので、屋内の日光が当たるガラス越しなどの場所で保管します。
3.ヤシの木の「水やり」は乾燥していたら毎日
鉢植えをしたヤシの木の水やりは、表土が乾燥してから鉢底穴から水がでるくらいにたっぷり与えてください。ヤシの木は夏は乾燥しやすいため、水切れしないように毎日水やりをしなくてはいけません。
反対に気温が低くなる冬は乾燥気味で管理してください。表土が乾燥して数日後に水やりする程度で問題ありません。葉水は、ハダニなどの害虫防止のためにも年間を通して霧吹きで与えます。
4.ヤシの木の「用土」は腐葉質で高排水性
ヤシの木は有機質に富んだ腐葉土を好みます。市販されている観葉植物用の土でもよいですが、排水性を高めるために赤玉土を少し混ぜてください。
自分で作る場合は排水性を高めるために、赤玉土小粒(6):腐葉土(3):軽石小粒(1)がおすすめです。排水性が悪いと根腐れを起こすので注意します。
5.ヤシの木の「肥料」は2か月に1度
ヤシの木の肥料は2か月に一度程度でよく、5月~9月頃に緩効性化成肥料の置き肥を与えます。有機肥料はコバエが発生することがあるので、化成肥料のほうがおすすめです。
休眠期に当たる冬場の肥料は与えなくても問題ありません。置き肥が残っている場合は取り除いておきます。基本的にヤシの木はあまり手を掛けなくても丈夫に育つ観葉植物です。
6.ヤシの木の「植え付け・植え替え」
ヤシの木は全般的に生育が旺盛なため、毎年5月~8月には植え替えたほうがよいとされています。ただし、猛暑になることが多い真夏は避けたほうがヤシの木の負担が少なくなります。
植え替えの方法は、鉢植えした苗の株に付いている土を1/4ほど落とし、株の大きさよりも一回りから二回りほど大きめの鉢に苗を植え付けてください。植え付けた後も水やりを忘れないようにしっかり与えます。
7.ヤシの木の「病気と害虫対策」
ヤシの木の病気は「炭疽病」があげられます。春から秋に発生しやすく、葉っぱに3~20ミリメートルほどの黒いカビの斑点が出ます。対策は、重曹や食酢を薄めたものをスプレーで散布するのが効果的です。見つけ次第スプレーすることで、他の部分への広がりを押さえられます。
害虫は、アブラムシやカイガラムシ、ハダニが年間を通して発生しやすいため葉水を欠かさないことと、見つけた場合は殺虫剤が効果的です。
8.ヤシの木の「増やし方」
ヤシの木の一般的な増やし方は「種まき」となり、5月~8月にかけて種まきを行います。苗を育てるのもよいですが、種まきから育てると愛情も深くなるかもしれませんね。
株立ちする種類のアレカヤシなどは種まきではなく、株分けを5月から8月にしてください。テーブルヤシは挿し木と取り木ができるので、大株になった時に葉鞘部に出てきた幹や根を利用します。
9.ヤシの木の「剪定」の仕方
ヤシの木の葉っぱが垂れ下がってきて古くなったときは剪定をしてください。剪定方法は葉っぱの付け根辺りを切り落とすだけです。
葉先が枯れて変色した場合は、その部分だけ剪定するだけでよいです。剪定した後は休ませるために1週間程度は半日陰に置いて管理しましょう。また、鉢底から根が大きく伸び出てきた場合は早めに切り落としてください。
10.主なヤシの木の夏越し・冬越しの方法
ヤシの木の鉢植えは、夏期に屋外で管理するときは直射日光を避けて栽培してください。半日陰の場所で栽培すれば、葉焼けを起こすこともないので安心です。
ココスヤシは本州の温暖な地域であれば屋外でも越冬させられます。ココスヤシ以外のヤシの木は、冬期は屋内に移動して冬越ししてくださいね。
ヤシの木でお部屋を南国ムードにしよう!
ヤシの木の多くは沖縄県が北限のため、本州以北での地植えは越冬が難しいといわれています。地植えできる種類はココスヤシとなり、本州の温暖な地域で育てられる種類です。
ココスヤシ以外は鉢植えで、夏は直射日光を避けて屋外で管理し、冬は屋内のガラス窓に近い場所で管理します。ヤシの木の一般的な増やし方は種まきとなり、株立ちする種類は株分けです。ぜひ育て方が簡単なヤシの木の栽培を楽しんでみませんか。
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出典:ライター撮影