ヤマブキ(山吹)とは
ヤマブキ(山吹)は、中国、日本が原産。北海道から九州地方の山野に生える、バラ科ヤマブキ属に分類される落葉低木です。互生している葉は卵型で、葉先は尖り、縁は鋸歯状です。表面は濃緑色、裏面は淡い緑の色をしています。
ヤマブキの樹高は1~2mほど、分枝させた細い枝に晩春から初夏にかけて、山吹色と例えられる、小さい黄色い花を細い枝にいっぱい咲かせます。半日陰でよく育ち、庭園や公園などに栽培されているのが見られますね。
ヤマブキの花
ヤマブキの開花時期は、晩春から5月の初夏で、昔、小判の色を山吹色と称した様に、径2~3cmの鮮やかな黄色の花を咲かせます。一重咲きと八重咲がありますが、一重咲きの花は花弁が5枚で多数の雄しべが特徴です。
八重咲ヤマブキは、雌しべが花弁に変化させていますので結実しませんが、野生の一重咲きヤマブキは隔年で花後に結実させ、楕円形をした痩果(そうか:硬い果皮に包まれ、ひとつの種子を持つ)を作ります。
ヤマブキの種類
普通ヤマブキは一重咲きを指し、八重咲種は園芸品種となります。「ヤエヤマブキ」は雌しべが退化していることから結実はしません。「斑入りヤマブキ」は、一重咲きで葉に斑が入ります。
「白花ヤマブキ」は花色が白いのが特徴で、「菊咲ヤマブキ」は文字通り菊の花に似た花です。他に枝に黄色の筋が通る「黄筋ヤマブキ」があります。「シロヤマブキ」という名の品種がありますが、これはシロヤマブキ属の分類ですので別種です。
万葉集に詠まれたヤマブキ
ヤマブキは古来から愛された花木で、当時は八重咲種のヤエヤマブキが主に庭園などに栽培されていました。かの太田道灌(おおたどうかん)の故事で有名な“七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞ悲しき”の歌は有名ですね。
万葉集に詠まれたヤマブキ
万葉集に詠まれたヤマブキは十七首あります。その内の一首に高市皇子の詠んだ歌で、「山吹の立ちよそひたる山清水、汲みに行(ゆ)かねど道の知らなく」があります。
この歌は“人の死を悲しみいたむ歌を集めた「挽歌(ばんか)」に所収されていて、”たちよそひ“を意味する「黄泉(よみ)」と山吹の「黄」、「清水(泉)」から、その世界を表しています。
ヤマブキは生薬にも!
ヤマブキは古来より生薬としても栽培、利用され、棣棠花(たいどうか)という中国名から、棣棠(たいどう)という生薬名が付けられていて、全草が利用できますが、花の部分が特に薬効があるとされています。
開花時期の花や葉、根などを採取して干乾しによる乾燥をさせます。日本では昔から乾燥した花を直接傷口に貼って、切り傷などの止血剤として用いられ、また、乾燥した花、葉を煎じて利尿剤にもされます。
ヤマブキの名前の由来と花言葉
ヤマブキは、学名Kerria-japonica、Kerria(ケリア)は、この種の発見者ウイリアム・カーの名です。Japonicaは万葉の頃から日本で愛されてきたという意味からの種小名です。
イギリスでは、Yellow-Rose(黄色いバラ)、Japan-Rose(日本のバラ)との呼び名があります。
ヤマブキ(山吹)の名の語源
晩春の頃、鮮やかな黄色の花が山全体を彩るほど、いっぱい咲かせることから、“山春黄(やまはるき)”と呼ばれていたものが、やはり転訛して“山吹(やまぶき)”となったという説があります。
また、ヤマブキは花を付けた細い枝が風にそよいで揺れる様から、昔は“山振り(やまぶり)”と呼び、後に転訛したとの一説もあります。
逸話による呼び名
蔵玉集(室町期の和歌集)に記された逸話で、その昔、愛し合っていた男女が、周りのやっかみを帯びた噂によって別れなければならなくなり、二人の面影を一対の鏡に映し、土中に埋めて別れました。
その後になって、鏡を埋め込んだ場所には、実を結ばないヤマブキが生い茂ったという言い伝えから、鏡草(かがみぐさ)とか、面影草(おもかげぐさ)と呼ぶ別名もあるのです。
ヤマブキの花言葉
ヤマブキの花言葉は、丈夫で生育が旺盛なことから「旺盛」、黄金の色を山吹色と例えられ、金の連想に繋がることから「金運」、花を付けた細い枝が風に吹かれて、たおやかに揺れる様子から「崇高」「気品」があります。
春に開花する桜は、花が先に咲き、後に葉芽を出しますが(山桜を除く)、ヤマブキは葉を繁らせるまで、花を咲かせないということから、“いつ花が咲くのだろうか”という意味で「待ちかねる」という花言葉もあります。
ヤマブキの栽培管理
ヤマブキの育て方①/植栽場所
ヤマブキを植える場所は、適度に日射しが当たり、水はけが良い、できれば肥沃な土壌の場所が栽培に適しています。真夏の直射日光、西日が当たる場所は避けて、落葉樹の下あたりの半日陰状態がよいでしょう。
ヤマブキの株の古い枝は3~4年が寿命で、次々と新しい枝を株の周囲に芽出しさせて大きな株に生長しますので、栽培する場所は株が広がるのを見越して、広めのスペースを確保するとよいでしょう。
ヤマブキの育て方②/植え付けと植え替え
ヤマブキの苗木の植え付けは、休眠期に入る前の10月中旬から11月下旬頃までと、2月下旬から3月下旬頃までが適期です。根回りの2倍の大きさに植え付け穴を掘り、赤玉土(小)7:腐葉土3の用土を被せて潅水します。
手入れも容易で、地植えでは移植の場合を除いて、植え替えの必要はありません。年数を経るに従って、株の周囲に新しい枝を出して大きくなっていきますので、他の植物とのバランスを考えて植え付ける様にしましょう。
鉢植えの植え替え
ヤマブキは株が広がり、次第に大株になりますので、基本的には地植えにした方がよいのですが、鉢植えでも楽しめます。鉢植えの場合は、鉢中で根がいっぱいになり、放置すると根詰まりを起こして株を弱らせてしまいますので、2年に1度は植え替えが必要です。
鉢植えの植え替え手順
10~11月に株を鉢から抜き取り、枯枝や弱った根を整理しながら、一回り大きな鉢に移し替えるか、株分けをして複数の鉢に植え替えます。水はけをよくするために、鉢底に大粒の軽石を敷き、上述の植え替えと同様の用土と手順です。
ヤマブキ(山吹)の苗木
ヤマブキの育て方③/水やりと肥料
ヤマブキは一度地に植えたら特に水やりの必要は有りませんが、湿潤を好み、乾燥にはやや弱いので、夏の高温時などには、朝夕の涼しい時間帯に潅水しましょう。その際に葉水を掛けると、病害虫の予防にもなります。
ヤマブキへ施す肥料は特に必要ありませんが、花つきをよくするには、芽吹き前の2月中旬から3月上旬に、株元から少し離れた個所に溝を掘り、有機質の緩効性肥料を適量施し、花後に同肥料を施肥しておくとよいでしょう。
ヤマブキの育て方④/増やし方
ヤマブキを増やす方法は、株分けと挿し木による二通りがあります。株分けは落葉後の10月下旬から12月中旬ころが適期です。大株ですと掘り上げるのが大変ですので、株があまり大きくならないうちに行うとよいでしょう。
ヤマブキ・株分けの仕方
落葉後すぐに行い、厳冬期は避けます。株を掘り上げたら、根つきの枝を5~7本ずつ程度に別けて、赤玉土(小)7:腐葉土3に用意した土に植え付け、たっぷりと潅水して、株元にワラなどを敷いてマルチングしておくとよいでしょう。
ヤマブキ・挿し木の仕方
挿し木の適期は開花時期後の6~7月上旬頃です。若枝の先、10~15cmの枝を切り取り、上部の葉を半分に切って下部の葉は取り、挿し口を斜めに削いで、60分ほど水に浸けて水揚げをします。
育苗箱かビニールポットに赤玉土(小)6:腐葉土2:バーミュキライト2の用土に挿し込み、水やり後、半日陰で管理します。発根して根が生長するには時間がかかりますが、翌春には植え付けることができるでしょう。
発根促進剤
挿し木には、挿し穂口に発根促進剤を塗布すると発根の成功率がアップします。
ヤマブキの手入れ方法
ヤマブキは3~4年で古い枝の寿命となり、新しい枝を次々に出して株を大きく広げていきますので、枝同士が混みあったり、絡みあったりして風通しが悪くなり、病害虫の発生にも繋がりますので手入れが必要です。
ヤマブキは自然のままの樹姿がよい風情となりますが、庭木とされているヤマブキは、新しく出る枝の生長を促す意味で、間引き剪定や、枯枝の整理などの手入れ作業を落葉後に行うことが必要となります。
ヤマブキの刈込
ヤマブキは刈込みを行う必要はありません。特に、夏場を過ぎての刈り込みをしますと、切り口から細い新枝が多数出て、絡み枝となり、風通しが悪くなると同時に、翌年の花付きが悪くなってしまいます。
また、枝の半ばほどからで剪定をすると、その部分から枯枝となってしまう恐れがありますので注意が必要です。生垣などの手入れとして、刈込みを行うのであれば、開花時期後すぐにする必要があります。
ヤマブキの剪定
ヤマブキの枝は4~5年ほどが寿命で、次々と新しい枝を株元から出します。強剪定は落葉後の厳冬期を除き、12~3月初旬頃までに行い、まず、枯枝から始め、風通しを悪くする混みあった枝を株元から切り戻します。
不要な枝の切り戻しをする場合は、株元から切らないと、切った所からまた芽が伸びてうるさくなってしまいます。年数を経た株は、周りに新しい枝を旺盛に出しますから、あまり株を広げたくない時は、まめに切り戻しをしましょう。
決まりのある庭木の剪定
剪定は、なれないと枝先から切っていってしまいがちです。庭木の剪定方法には、一定の決まりがあります。図解付きでよく説明されている参考本が出版されていますので、分かりやすい図解を剪定の参考にされるとよいでしょう。
庭木の剪定(図解付き)
イラストと図解で、ひと目でわかる庭木の剪定 基本とコツ
ヤマブキに発生する病害虫
ヤマブキの病気
ヤマブキは病気や害虫には比較的強く、あまり被害は見られませんが、病害として枝間の風通しの悪さと、湿潤状態が続く時などには、まれに“環紋葉枯病(かんもんはがれびょう)”や“ウドンコ病”の発生が見られます。
環紋葉枯病
梅雨の時期など気温が低く雨の多い時に発生しやすい病気で、葉裏に糸くずの様な病菌によって、始め灰白色の輪紋状の斑点が生じ、次第に大きく広がり、葉が腐れたり枯れたりします。
病菌が飛散して他の植物に伝染する前に早期に発見するのが必要です、葉に症状が現れたら、すぐに病気の葉を枝ごと切り取り処分し、ボルドー水和剤などの殺菌剤を散布しておきます。
ボルドー液殺菌剤
ウドンコ病
ウドンコ病は、カビの一種で、風通しが悪い状態の時や水はけが悪い土壌によって発生します。葉がうどん粉をまぶした様に白く覆われ、ひどくなると光合成ができなくなって、株全体が生育不良になります。
主に、春から初夏、秋口に多発する病気ですが、他の季節でも発生が見られます。症状が分かりやすいので、発見次第殺菌剤を散布し、病気の枝を切り取って廃棄処分にしましょう。
園芸用殺菌剤
ヤマブキの害虫
ヤマブキに付く害虫は、乾燥状態の時に発生する“ハダニ”や、湿潤状態の時など、主にアンズや梅などの核果類の他、多くの植物に発生する“シロオビアワフキ(白帯泡吹虫)”という、あまり耳慣れない害虫が付く場合があります。
ハダニ
梅雨に時期から夏にかけて主に多く発生。葉から養分を吸汁して、生育を妨げるのです。葉の裏側にまず寄生して、最初小さな斑点が生じ、被害が進むと葉の葉緑素が抜けてカスリ状になって、落葉させます。
ハダニは風などに運ばれて飛来し寄生します。水に弱い性質がありますので、株全体に適宜葉水をまんべんなく掛けてあげるとよいでしょう。被害が初期の場合は殺ダニ剤を株全体に噴霧して防除します。
殺ダニ剤
シロオビアワフキ(白帯泡吹虫)
葉の脇などに白い粟粒のかたまりが有ったら、シロオビアワフキを疑います。成虫は1~1.2cmほどで、セミによく似ていて翅(はね)に白い帯が斜めに付いていることから名前となっています。
4月頃に泡のなかで幼虫が植物の養分を吸汁して育ち、6月頃に羽化して成虫になります。植物を枯らすほどではないことと、大量に発生することは稀ですが、見つけたら泡ごと取り除きましょう。
殺虫殺菌剤
ヤマブキのまとめ
ヤマブキは北海道から九州までの山野に自生していて、万葉集にも十七首の歌が詠まれているほど、日本人には馴染みが深く、愛されてきた花木です。もっとも万葉の頃のヤマブキは実の付かない八重ヤマブキが主でした。
現在でも生け花の材料や、茶花としても使われていますが、切り花にすると、水揚げがあまりよくなく、水下がりが早いのが難点です。やはり庭への地植えをして楽しむのがよい様です。
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