コチョウランの基本情報
コチョウラン(胡蝶蘭)は冠婚葬祭でよく見かけるお花で、フォーマルで優美な印象が特徴です。自宅で育てる、身近な花だと思えないかもしれませんが、実はコチョウランが初心者でも栽培を楽しめるお花だということをご存じですか?
コチョウランの渡来
コチョウランは原産地の熱帯雨林で木や岩に、張りついて生きるワイルドな花。コチョウランが、実際に発見されたのは19世紀。イギリスの「オーキッドハンター」と呼ばれる人々に見い出されました。
日本には明治時代に渡来しましたが、当時の庶民にとっては雲の上の花でした。その後、日本でも温室の普及や品種改良のおかげで、コチョウランが一般に知られるようになったということです。
基本情報
学名 | Phalaenopsis aphrodite Rchb.f. |
属名 | ラン科コチョウラン属 |
英語名 | Orchid |
和名 | コチョウラン(胡蝶蘭) |
原産地 | フィリピン、マレーシア、インドネシア、オーストラリアなどの熱帯雨林地域 |
開花時期 | 3~5月 |
草丈 | 30~80cm |
耐寒性 | 低い |
耐暑性 | 高い |
花言葉は「幸福が飛んでくる」
コチョウランの花言葉は「幸福が飛んでくる」「純粋な愛」といった、多くの方に喜びを与える言葉です。花の色それぞれにもすてきな花言葉があり、冠婚葬祭に安心して贈れる花として知られています。
コチョウランの花言葉を詳しく知りたい方は下記の記事も読んでみてください。

胡蝶蘭の花言葉!色別で変わる意味をご紹介!シーン別の贈り方も!
胡蝶蘭は高級感のあるお花のプレゼントとしてよく利用されていますよね。その理由は上品な見た目だけではなく花言葉にあります。白、ピンク、赤、紫、...
コチョウランの品種
蘭の仲間にはシンビジウム、デンドロビウムをはじめ、カトレヤやプレイオネなど約2万種類あるそうですが、ダントツの人気がコチョウランで、別名ファレノプシスとも呼ばれています。コチョウランの種類やその特徴をみていきましょう。
大輪の「グリーンアース」
グリーンがかった色の、格別上品で大輪のコチョウランは、交配技術の粋を集めてできたということです。世界でも珍しい注目の品種で、どのような場でも見劣りしない美しさと色で、特別な贈り物となるでしょう。
ミディの「満天紅」
満天紅(まんてんこう)の花径は大輪の半分ほどの6cm前後。いくつもの花びらが群れて咲く様子に観賞価値があります。ミディのコチョウランの中でも人気品種で、母の日などにおすすめです。
ミディの「パプリカ」
オレンジ色の花びらに、コチョウランのリップと呼ばれる部分がピンクの可愛い姿に人気があります。オレンジ色は生命力を感じさせ、親しみやすい色ですから、もう一歩近しい間柄になりたい方への気持ちが上品に伝わるでしょう。
ミディの「アマビリス」
アマビリスは花径約5cmの小ぶりなコチョウランで、フィリピンが原産国、白いコチョウランの交配母種として大切な存在です。清楚で置く場所を選ばないので、室内に優雅さと生命力をプラスできます。
室内OK!コチョウランの育て方
育て方①置き場所はレース越しの日光があたる窓辺
室内で直射日光のあたらない明るくて、空気の流れがある場所がおすすめで、明るくて風が通るサイドテーブルの上、レースのカーテンがある出窓や窓辺に置くといいでしょう。
コチョウランの原産地は、ジャングルの木漏れ日程度の日照で、コチョウランは直射日光に耐えられないのが弱点。日本では、地植えでなく室内で栽培されるのが普通です。ちなみに、日本や中国原産の紫蘭(シラン)は、地植えで育ちます。
育て方②水やりは季節ごとに変える
コチョウランの水やりは、午前中に行いましょう。また日本の季節に応じて変わりますので下の表を参考にしてくださいね。葉が枯れたら、水の与え過ぎによる根腐れかも知れません。
春 | 10日に1回 |
夏~秋 | 5~7日に1回、梅雨の時期は水やり不要 |
冬 | 20日に1回 |
【ポイント】コチョウランの植え込み材は土ではない
コチョウランに水を与えるときに、植え込み材は土ではなく水苔やバークだということを知っておきましょう。コチョウランの気根は空気中に根を出して成長するので、土中に埋められたら、根は呼吸できずに根腐れしてしまうからです。
植え込み材の中でも水苔は乾くとすぐにわかるので、初心者の方に向いています。水苔についてもっと知りたい場合は、次の記事を参考にしてくださいね。

水苔(ミズゴケ)の使い方&戻し方!植え込みで必要な知識とコツをご紹介!
水苔の事はご存知でしょうか?水苔とはガーデニングなどを行うときに、鉢に一緒に植えることで鉢の水もちを良くする事ができる植物です。今回はそんな...
育て方③人が快適に感じる温度と高め湿度を
適温
コチョウランの栽培適温は18~25℃で、早春や秋に気温が15℃ぐらいに下がると、コチョウランの成長が鈍化し休眠の時期に入ります。寒い時期でも最低10℃以上でコチョウランの手入れをしましょう。
湿度
コチョウランの湿度は60~80%が理想的で、特に冬、暖房を使う時期の湿度にに注意しましょう。夏や冬の季節に、エアコン使用時、送風が直接コチョウランにあたらないようにし、加湿器や葉水を行って湿度調整します。
【ワンポイント】葉水を覚えよう
高湿度を好むコチョウランの手入れに「葉水」は欠かせません。夏の葉水は夕方行うと、コチョウラン本体の温度を下げる効果があるといいます。逆に冬は午前中行いましょう。葉水は花びらを避けて、葉の両面に行いましょう。
育て方④肥料は液肥が便利
野生のコチョウランは、熱帯地方の雨にさらされ、落ち葉や鳥の糞の微量な栄養分を得ますし、もともとは栄養分を求めない植物です。
とはいえ、植え込み材に植えられたコチョウランには5~9月の成長期に、住友化学園芸の「マイガーデン液体肥料」のような速効性肥料を、500~1000倍に薄めて水分として週1回与えましょう。
【ワンポイント】開花中は肥料を与えない
お花が咲いているコチョウランに肥料はいりません。そもそも肥料はコチョウランの根や茎への栄養補給ですから、開花中に肥料を与えると花の寿命が短くなることもあるので注意しましょう。
育て方⑤剪定
コチョウランの花は、寿命が30~50日ぐらいだといわれています。コチョウランの花が終わったら、株元から4cmぐらい残して、剪定鋏で切りましょう。
2番花を早く咲かせたい!という場合は、開花中に茎の根元から3~4節の上2cmを残し、清潔なカッターで斜めにカットするのがおすすめ。管理よく育てれば5ヶ月ぐらいで2番花が咲きますが、環境により2年ほどかかって2番花が咲くことがあるといいます。
育て方⑥植え替えは2~3年で
コチョウランは2~3年ごとに植え替えしましょう。水苔やバークが古く傷んできたり、根腐れして元気がなくなったりしたら植え替えどきです。
植え替え適期は4月で、植木鉢からコチョウランの根を傷めないように取り出し、乾燥したり、腐ったりした根をハサミで取り除き、古い植え込み材料も取り外します。
準備するもの
植え替えで準備するもの
- 水苔または洋蘭用のバークチップ(sかssサイズ)
- 鉢は水苔なら素焼き鉢、バークなら蘭用プラスチック鉢
- 水苔の場合は鉢底ネット
- 清潔なハサミ
植え変え手順【水苔】
湿らせた水苔をコチョウランの根回りに巻き、鉢のサイズにあわせて整え、鉢穴に鉢底ネットを置いて、コチョウランを鉢に置きましょう。
鉢の空間を水苔で満たし、指で押し込んで整え、水は植え替え後1週間経過してから与えます。
植え替え手順【バークチップ】
バークチップを植え込み材として使う場合は、まず鉢底にバークチップを敷いて、コチョウランを中央にそっと置きましょう。
根を傷つけないように、根の周囲をバークチップで満たして完了です。水やりは植え替えして1週間たったら行います。
【ポイント】鉢増し
コチョウランの気根が目立ってきたり、鉢底穴から飛び出したりしていたら、植え替えよりも「鉢増し」をした方が効果的です。
4~6月が適期で、今の鉢よりも一回り大きい鉢に植え替え、植え込み材をほどよくプラスするのがコツで、コチョウランの葉や根が健全に成長できるでしょう。
育て方⑦支柱の立て方は簡単
野生のコチョウランは成長すると花が下垂するのが特徴ですが、栽培するコチョウランは支柱を立て、誘引すると見た目がアップしますよ。コチョウランの茎が長く育ったら、市販の支柱や「洋蘭つる植物用クリップ」を使うと簡単です。
直立した支柱なら立てるのも簡単で、蘭の茎の色に似ている支柱がよく、茎が長かったら前にカーブさせる支柱立てにも挑戦してみてくださいね。支柱で根や茎を傷めないように注意しましょう。
育て方⑧冬越えは温度変化に注意
コチョウランは日本の寒さに耐えられないのが弱点。冬、家の南側ならカーテンのある窓辺に置き、夕方窓辺の気温が急降下する前に、鉢を暖かい部屋の中央に移動しましょう。
冷え込む夜は、段ボールで囲うと保温になります。冬の季節は暖房で湿度が低くなりがちですから注意しましょう。また、根が灰色になったり、葉にしわが寄っていたりしたら水分不足が原因です。
育て方⑨病害虫対策は早期発見を心がける
害虫
害虫はカイガラムシやハダニがつくかもしれません。カイガラムシは成虫なら古歯ブラシでこすりとり、幼虫なら薬剤駆除が必要です。
赤い点が動くように見えるのが特徴のハダニは葉裏につく吸汁害虫で、薬剤駆除しましょう。葉裏に葉水を行うと、水に弱いハダニ予防になります。
病気
病気はボトリチス菌由来の「灰色かび病」が出る可能性があり、花びらにグレーの斑点が出たら発症部分を取り除き、発生初期なら薬剤対処してください。
長年育てていたコチョウランの一番下の葉が黄色く枯れたら、葉の寿命ですから、完全に枯れてから手で取り除きましょう。
コチョウランQ&A
コチョウランは「CAM植物」だと聞いたのですが、どういう意味でしょうか?
はい、ラン科やアナナス科の着生植物は夜間に光合成を行うCAM植物で、夜気孔を開いて光合成を行い、昼間は気孔を閉じて水分をむだ遣いしないそうです。
ギフトでコチョウランを頂きました。ラッピングのまま飾っていいですか?
きれいな包装を1晩楽しんだら、セロファンははずしましょう。遅くても最初の水やりにははずします。セロファンをそのままにしておくと、蒸れて根腐れやカビが発生するかもしれません。
コチョウランのまとめ
室内でのコチョウランの育て方をお伝えしました。初心者の方でもできる基本的な世話で、コチョウランの花が長持ちしたり、2番花を咲かせることができるとおわかりいただけたでしょうか。
コチョウラン栽培にはときに辛抱も必要ですが、コチョウランの生命力に驚かされるでしょう。おうちでコチョウランの手入れを通じて、植物が生きる大自然を実感できたら素晴らしいですね。
コチョウランが気になる人はこちらもチェック!
コチョウランは「ファレノプシス」「オーキッド」とも呼ばれ、世界中に愛好家がいる着生植物です。コチョウランについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてくださいね。

ファレノプシス(コチョウラン)の育て方!綺麗な花を咲かせる方法とは?
お祝いで贈られることの多いコチョウラン。別名をファレノプシスといって、原産地では多くの種類が自生しています。ファレノプシスの特徴から花言葉の...
出典:photo-ac.com