鑑賞用「クラブアップル」の魅力とは
花や果実の容姿が愛らしい
「クラブアップル」と呼びますが、食用のりんごではありません。鑑賞用の小型のりんごで白やピンクの花を咲かせるのですが、この愛らしい花が魅力的で果実よりも花を楽しむ人も珍しくないのです。
クラブアップルと一言に言っても品種はたくさんあります。品種によって果実の色や形、花の色、木の形などの特徴が大きく異なるため、自分好みのクラブアップルを探せるところも魅力のひとつだと言えるでしょう。
果実は加工すれば食べられる
クラブアップルは通常のりんごに似ていて甘く美味しい果実だと思いがちですが、残念ながら酸味が強すぎて美味しいと思えるものではありません。基本的にそのまま食べることはおすすめできないのです。
しかし、食べられるというわけではないものの、ジャムなどの加工品として活用できますので、違う楽しみ方をするようにしましょう。この記事の最後に、クラブアップルを使用したレシピも紹介していますのでぜひ参考にしてください。
クラブアップルの主な品種とは
ドルゴクラブ
クラブアップルの木に真っ赤な果実をつける品種「ドルゴクラブ」も人気です。ドルゴクラブとは見た目も美しく、街路樹として鑑賞用で楽しまれることも多い品種だと言えるでしょう。
果実は酸味が強いのが特徴で、8月中頃には深みのある赤色になり、良い香りを放つことでも有名です。収穫することはできますが、そのまま食べるのではなく、酸味を生かせるゼリーなどの加工原料として使われることが多いと言えます。
ゴージャス
クラブアップルの品種の中でも「ゴージャス」は、初心者にも扱いやすい品種として人気です。樹木の高さは4~5mと低めでコンパクトなため、家庭で栽培できるのが人気の要因だと言えるでしょう。
春に咲かせる淡い色の美しい花には風情があり、秋にできる果実は深みのある赤色が特徴的で、秋を感じさせてくれるはずです。この品種も酸味が強いことが特徴であり、収穫後は加工品で使用することがほとんどだと言えるでしょう。
レモイネ
「レモイネ」というクラブアップルの品種もあります。この品種の花は赤や濃いピンクの花びらですが、花びらの根元だけが少し白っぽいのが特徴のひとつになります。
葉の色も緑色というよりは、赤っぽい銅色が入っていて可愛らしさの中に渋さもある独特の雰囲気だと言えるでしょう。この品種も他と同じく果実の酸味が強いため、収穫した果実はジャムやゼリーなどの加工品として使うことがほとんどです。
クラブアップルで失敗しない育て方のコツ
クラブアップルの育て方のコツ①育てる環境を選ぶ
樹木を栽培するのは難しいと感じる人も多いですが、クラブアップルは耐寒性が強く、初心者でも育てやすい樹木として人気があります。また、耐寒性が強く乾燥にも強い特徴があると言えるでしょう。
しかし、真夏の強すぎる日差しや強い西日がある場所で地植えすると枯れてしまい、最悪の場合果実が育たない恐れもあります。この場合は植え替えするなどして、日差しが強すぎず、湿度が高すぎない場所で栽培してください。
クラブアップルの育て方のコツ②種から育てられるか考える
クラブアップルは種から育てることもできますが、発芽から果実をつけるまでに数年はかかってしまうので、苗木を購入して地植えか鉢植えにして育てる人が圧倒的に多いのが現状です。
通販でもクラブアップルの苗木は販売されていますので、品種ごとの特徴などを考慮しながら苗木を選ぶとよいでしょう。長い歳月をかけて種から育てるのも醍醐味ですが、樹木の栽培に慣れていないなら苗木から育てることをおすすめします。
クラブアップルの育て方のコツ③鉢植えなら7号鉢を用意する
クラブアップルを鉢植えにするなら、7号鉢以上が大きさとして適切だと言えるでしょう。水はけのよい培養土を用意し、鉢底石を敷いて土を入れたら、苗を土ごと植え付けます。
鉢植えであれば移動させやすいため、初心者のうちは鉢植えにしておくと失敗を最小限に防ぐことができるでしょう。クラブアップルは耐寒性が強いですが、苗は霜に弱い特徴があります。苗から始める場合は真冬を避けて鉢植えにするようにしてください。
クラブアップルの育て方のコツ④地植えなら高地や斜面が理想
苗木などを使用して鉢植えする場合だけではなく、地植えにする場合も真冬を避けるようにしてください。地植えにするなら、斜面など水はけのよい場所を選び、植え付ける場所には腐葉土を混ぜておきます。
植え付けた木は支柱を立ててしっかりと支えるようにしましょう。地植えの方が育てやすいと言われていますが、鉢植えほど移動させやすいとは言えません。地植えにするか苗で鉢植えにするかよく考えてみてください。
クラブアップルの育て方のコツ⑤植え替え方法(春夏)
クラブアップルの適切な植え替えの時期や植え替えの方法を紹介していきます。植え替え時期は秋から梅雨に入る夏前がよいでしょう。植え替え方法ですが、できるだけ根を大きく掘り起こすようにします。
また、特に鉢植えから鉢植えへの植え替えは、根を崩さないようにしてください。植え替える時、根を乾かしてしまわないように気をつけましょう。
クラブアップルの育て方のコツ⑥植え替え方法(秋冬)
秋冬の植え替えも春夏と同じような方法で植え替えます。クラブアップルは強く植え替え時期が前後したからと言って、枯れたり腐ったりすることはありません。
地植えでも鉢植えでも「植え替えは真冬を避ける」とだけ覚えておけば問題はないでしょう。鉢植えでも地植えでも同じように「根を乾燥させないこと」「根崩れさせないこと」を意識してください。
クラブアップルの育て方のコツ⑦水やりをしすぎない
地植えにしたクラブアップルは保水性が高いという特徴があり雨だけで十分です。真夏など土の表面が乾燥してきたと感じた時に適量水やりをすれば問題はありません。鉢植えの場合も同じで、土を触ってみて乾燥していると感じたら水やりをします。
ちなみにクラブアップルは、乾燥しているくらいで育てたほうが果実が甘くなりやすい特徴があるとされていますので、参考にしてください。
クラブアップルの育て方のコツ⑧肥料を適量与える
植え付けの時に肥料を十分与えておいて、その後は毎年、春(4~5月)と秋(9~10月)頃に化学肥料ではなく生物由来の資源を原料とする有機肥料を与えるようにしてください。
春は新芽の栄養補給に、秋は株の栄養補給になります。リン酸などがバランスよく配合されている肥料を混ぜ込んでおくと、病害虫対策としても役立ち、健やかにクラブアップルを栽培することができるでしょう。
クラブアップルの育て方のコツ⑨アブラムシなどの害虫対策
クラブアップルは、アブラムシなどをはじめとした病害虫が発生しやすく、病害虫が原因で生育不良になることもあります。果実を食べる場合以外は、薬剤を散布して駆除するようにしてください。
事前に病害虫の発生を防ぐ薬剤もありますので、活用するようにしましょう。
クラブアップルの育て方のコツ➉剪定をする
多湿が苦手という特徴があるクラブアップルですから、湿度が高くなりやすい梅雨の時期はこまめに剪定をして、通気性をよくするようにしてください。こうすることで、うどんこ病や病害虫の発生を最小限に防ぐこともできるのです。
また、新芽がつく前の2~3月頃も剪定の時期です。新芽がつきやすいように枝を短めに剪定したり、また、枯れ木など不要だと判断できる枝も切ったりするようにしてください。
剪定をすることで得られるメリットとは
- 樹木の形を整える
- 通気性をよくする
- 病害虫の繁殖を防ぐ
- 効率よく栄養がいきわたる
クラブアップルの育て方のコツ⑪増やし方は「挿し木」「接ぎ木」
クラブアップルを種子から育てるのも醍醐味ですが、長い歳月がかかるため「挿し木」や「接ぎ木」といった農芸法で増やすことが多いです。挿し木とは、茎や枝を切って土に挿して育てる方法であり、種子から育てるよりも早く成長させることができます。
接ぎ木は、木の一部を切断して切断面に別の木を接着させる方法であり、異なる品種の花を1本の木にまとめたり、病害虫に弱い木を強くしたりするメリットがあると言えるでしょう。
花が咲かない!考えられる理由とは
考えられる理由①開花適齢期ではない
クラブアップルの花が咲かない場合、クラブアップルならではの原因がいくつか考えられます。まず、クラブアップルの木の年齢はどのくらいでしょうか。
そもそもクラブアップルの木が実をつけるほど成長していないことも考えられますし、木が古くて開花適齢期を過ぎていることも考えるでしょう。木の年齢が原因の場合は対処法は残念ながらありません。
考えられる理由②日当たりに問題がある
クラブアップルを日当たりに問題がある場所に地植えしていたり、鉢植えの鉢を置いていたりすることも原因のひとつとして考えられるので、その場合は移動させるようにしてください。剪定をこまめにすることでもまんべんなく日光が当たるようになるでしょう。
クラブアップルは日当たりのよい場所を好みますが、日差しが強すぎてもいけません。クラブアップルの花が咲かない場合は、日当たりも見直すようにしてください。
クラブアップルの意外な花言葉と語源とは
見た目とは正反対!クラブアップルの花言葉
クラブアップルの花言葉は、可憐な見た目からは想像しにくいものもあります。アダムとイブが禁断の果実を食べたことが由来の「誘惑」や「後悔」がその代表だと言えるでしょう。
さらに、ギリシャ神話でトロイ戦争の引き金になったと言われているできごとが由来で「品定め」などの意味も持っていると言われています。それとは別に「同調」という花言葉もあるとされ、どれも可憐な容姿からは想像できない花言葉だと言えるでしょう。
クラブアップルの興味深い語源とは
クラブアップルという名前には、大変興味深い意味合いが隠されています。クラブアップルの特徴を思い出してください。甘い食用りんごとは特徴は異なり、小ぶりで酸味が強いのが特徴でした。
クラブアップルを食べた人が、酸っぱくてしかめっ面になってしまうことから、この名前になったのです。「クラブ」とは「カニ」という意味もあるのですが「不機嫌な」という意味もあり、意味合いとしてはこちらの方が強いと言えるでしょう。
クラブアップルのおすすめレシピとは
クラブアップルジャム
便利に使えるジャム作りもおすすめです。クラブアップルとグラニュー糖を約1kg前後用意してください。ガラス瓶にクラブアップルとグラニュー糖を交互に入れていき、涼しい場所で約半年間ねかせます。その後鍋に入れて中火で沸騰させましょう。
沸騰したら、まずはの果実を取り出します。果実を網などでこして、必要に応じてハチミツを加えながら瓶に詰めましょう。酸味が弱まり爽やかな風味の美味しいジャムになります。
クラブアップルゼリー
クラブアップル3.5kg、クラブアップルがかぶるくらいの水(約2~3リットル)、グラニュー糖1kg前後、レモン汁100㏄を用意してください。水にクラブアップルを入れ沸騰したら弱火で煮崩れるまで約3時間煮込みます。それを布巾でこしましょう。
そのりんごの液を鍋で煮詰め、2/3ほどの量に煮詰まってきた時点でグラニュー糖とレモン汁を加えます。しばらくそのまま煮込み、トロッとしたら冷やしてできあがりです。
クラブアップル酒
生食には向かないとされるクラブアップルですが、果実酒として活用されることが多く、クラブアップル酒は爽やかな風味で人気があると言えるでしょう。瓶にクラブアップルとクラブアップルの4割程度くらいの氷砂糖を入れます。
クラブアップルは種も皮も取らずにそのまま使用してください。果実酒用のホワイトリカーを注ぎ込み、そのまま冷暗所で3~6ヶ月保存してできあがりです。
クラブアップルの花と果実に癒されよう
クラブアップルは育て方が簡単なうえ、鉢植えで苗から育てることができるため初心者でも始めやすい花だと言えます。樹木は育て方が難しそうだと敬遠していた人でも、クラブアップルなら挑戦しやすいのではないでしょうか。
クラブアップルの果実を収穫し、ここで紹介したレシピを参考に、クラブアップルの爽やかな風味を堪能してみましょう。花の美しさだけではなく収穫した果実の風味も楽しめる贅沢な時間を過ごしてください。
果実のなる植物が気になる方はこちらをチェック!
クラブアップル以外にも、果実をつける植物はたくさんあり、ガーデニングしやすいものもあります。果実がなる植物は、花以外でも楽しみがたくさんありますので、ぜひ挑戦してみてください。

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